※この作品はR-18です。

半血魔王のクロニクル ~黒き貴公子シリーズ総集編~   作:古弥須 凱

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12話 最愛のひと

 

【挿絵表示】

 

 

 

月光が薄く差し込む、ルシエルの寝室は、甘い花の香りに満ちている。

 

彼の名をやさしく呼ぶ幻影は、また現れた。

 

美しい裸身をさらした少女――透き通ったプラチナブロンドの長く豊かな髪が、寝台に横たわるルシエルの首に、さらさらと優しく触れる。

 

「来ないでくれ、姉上……」

 

体は鉛のように重く、動くことができない。

 

体温だけが異常に高く、ただ、熱い。

 

下腹部が疼いて、硬く張り詰め、息が浅くなる。

 

「……姉上……お願いだ……」

 

振り絞るような声、哀願だった。

 

「今宵、お前が呼んだから来たのよ、ルーク」

 

少女の声は優しく、耳に溶け込むようにやわらかい。

 

「俺は呼んでいない……もう、貴女(あなた)を呼ばないと決めたんだ…」

 

「泣いているのね、接吻(キス)してあげるわ、ルーク」

 

「……貴女(あなた)は、俺を弱くする」

 

「そうよ、私のせいよ。お前はいつまでも子供ね、ルーク。泣き虫で、甘えん坊だったあの頃と変わらない。だから、すべてを私に委ねていいの」

 

ルシエルの端正な顔立ちの上に落ちてきた影が、ゆっくりとその唇を吸う。

 

その柔らかさを、彼は覚えていた。

 

甘くとろけるような、接吻(キス)。

 

舌が絡み合い、唾液が糸を引く。

 

「ルーク、わたしを拒まないで」

 

彼女の舌は、ルシエルの口内を優しく、甘く吸った。

 

蜜のような味が広がり、ルシエルの意識をさらに溶かしていく。

 

「あ……あ……」

 

ルシエルは声を漏らした。

 

拒否の言葉とは裏腹に、体は熱く反応する。

 

「私を呼ぶのは、いつもお前がひとりで……寂しい時でしょう」

 

「そうかも知れない。俺は永遠に一人ぼっちだ。――ずっと寂しくて堪らない……」

 

「なぜ?……私はずっとあなたの側にいるのよ、ルーク。寂しくないわ」

 

優しく微笑みながら、弟君の頭を白い両膝に引き寄せる。

 

膝枕の温もりが、彼の傷つき、ささくれだった心を慰めた。

 

「――姉上が去ってから、俺は乾いて乾いて、ずっと乾いているんだ」

 

「欲しいのね、ルーク……」

 

豊かな白い乳房が、果実のように重たげに揺れる。

 

ルシエルは、赤子が甘えるように、その桃色の乳首を口に含んだ。

 

雪のように白い乳房に吸いつき、舌先で転がしながらその感触を確かめる。

 

彼女の指が、ルシエルの髪を優しく梳く。

 

もう一方の手は、ゆっくりと彼の胸を滑り、腹を撫で、さらに下へ。

 

「ああ……姉上――」

 

ルシエルは目を閉じたまま、体の芯から昂まり、震えた。

 

体が熱い。

 

硬く、疼く。

 

彼女の指が、ルシエルの熱く張り詰めた陰茎(ペニス)を優しく包み込む。

 

ゆっくりと、上下に動かす。

 

熱い蜜が指先に絡み、ちゅく……ちゅく……と、湿った音が静かな寝室に響く。

 

「お願いだ――ビーチェ……俺をこれ以上、惨めにしないでくれ」

 

言葉で拒みながら、姉君の指の執拗な動きに合わせて、無意識に腰が動いてしまう。

 

ビーチェ、と堪えきれず名を呼んで彼女にせがんだ。

 

彼女は優しく、しかし確実に、彼の先端を親指で撫で、ゆっくりと扱き続ける。

 

「可愛いルーク。お前は、私の指でされるのが好きだった。いつも小さく喉を鳴らしながら、高まるのを堪えていたわ」

 

「やめてくれ」

 

「あの森で遊んだわ。お前はいつも、私の唇や指をせがんだ」

 

「姉上――もう」

 

「お前の匂いが好きだった。口の中にふくんで舐めながら、汗ばむお前の顔を見るのが好きだった。弟としてでなく男として愛していたわ、ルーク」

 

「姉上――ああ、ビーチェ……もう……我慢できない――」

 

「好きなだけ放っていいのよ」

 

このまま、白く爆ぜるのがわかった。

 

あの森の中――

 

あのときと同じように。

 

姉君のしなやかな指先に嬲られて、彼はぐっ……と喉を鳴らしながら、勢いよく大量の精を放つ。

 

耐えられないほどの強烈な快感と自己嫌悪に晒され、自然と涙が流れる――

 

ビーチェは弟を抱きしめ、優しく全てを受け入れた。

 

そしてそれは、ルシエルの渇きを癒す唯一の方法だと知っていた。

 

*

 

罪深い夜を重ねて、姉弟は裸のままで見つめあう――

 

「私たちの愛は、公爵家を滅ぼすと、父上は言ったわ」

 

「――構わない。姉上がいてくれれば……俺はそれで良かった」

 

「父上は、お前のお母さま――瀕死のプロセルピナ様に血を飲ませていたわ。

 

自分の舌を切って……ほんの数日の命を伸ばすだけのために――

 

お前のお母さまを愛していらしたのよ。

 

だから父上は私ではなく、お前を生かしたわ」

 

「俺たちの罪だ――

 姉上だけが――贖(あがな)った」

 

「お前はまだ子供だった。

でも、そうね……私たちはこの愛を断つことが出来なかった。お互い破滅するまで……」

 

「俺だけが生きている」

 

「ええ、そう――私は死んだわ。それから、お前はずっと苦しんでいる。

 

私と愛し合うことで弱くなっていく。私たちはゆっくり破滅していくのよ」

 

「――愛したい女がいるんだ」

 

「知ってるわ、美しい人ね。――お前を愛してくれるの?」

 

「いや――彼女は俺を憎んでいる。

俺を愛してくれたのは、この世でただ姉上だけだ」

 

幻影(ビーチェ)は、弟君に、最後にそっと寄り添った。

 

「愛されないとわかっていて、彼女を愛すると決めたのね」

 

 姉君は、成年した彼よりも年若かった。そして永遠に彼女は若く、美しいままだった。

 

「あなたが好きよ、ルーク。あなたは私の最愛のひとなのよ。決して忘れないでね」

 

ルシエルの冷たい頬に触れ、別れを惜しむように接吻した。

 

「私の、可愛いルーク。永遠にあなたを愛しているわ」

 

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