※この作品はR-18です。

半血魔王のクロニクル ~黒き貴公子シリーズ総集編~   作:古弥須 凱

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16話 失態

 

【挿絵表示】

 

 

 

王宮の私室は、深夜の静寂に包まれ、ランプの灯りがゆらゆらと揺れている。

 

甘い香油の匂いが部屋に立ち込め、エドマンドが双子の”姪っ子たち”を連れて現れたときには、アレクシス王太子の息遣いはすでに荒く、普段の冷静な仮面はどこかへ消えていた。

 

双子の淫魔(サキュバス)であるリリアとソフィアは、人間の娘に見えるように少しばかり魔術で容姿を変えている。

 

それでも、その瞳には年齢には似合わない、潤むような艶かしさがあった。

 

双子はメイド服のブラウスの胸を押さえ、少し緊張したおずおずという雰囲気で、王太子の前に傅いた。

 

「こちらが姉の二コラ、そして妹のルルと申します」

 

アレクシス王太子は、はっきりとした情欲の炎に燃えて、ニコラとルル――双子の小間使いを見つめている。

 

「なかなかに愛らしい」

 

「恐縮です。お恥ずかしい話ながら、私の姪たちは、年齢(とし)のわりにませておりまして――」

 

エドマンドの静かな指示で、双子はおずおずとメイド服を脱ぎ、恥ずかしそうに白い裸身を晒した。

 

――ふわっと、部屋の中に甘い芳香が漂った。

 

妹淫魔(サキュバス)ソフィアのもつ能力――甘く欲望を誘う香りが少しずつ部屋の中に漏れ出してくる。

 

レジナルドは、思わず声を出しそうになるほど動揺した。

 

(――ソフィアのやつ、順番まちがえとるやんか)

 

レジナルドが双子らを置いて部屋から退出し、王太子と3人になった段階で、まず甘い催淫の霧で酔わせる――

 

事前の打ち合わせで、さんざん言い聞かせておいたはずだった。

 

作戦参謀(ストラテジスト)のレジナルドは内心、激しく舌打ちした。

 

(くそ、やりにくくなったわ――)

 

淫魔たちの魔力がもたらす肉体の変化が、王太子だけでなく、生身の男である自分にもそのまま作用してくるのがわかった。

 

くらくらと目の前が妖しくゆらめき、意識が薄れていく。

 

(あかん、まずいわ)

 

人間の男であれば、一時も持たずに魔性の肌に触れたくてたまらなくなる、魔の芳香だった。

 

アレクシス王太子を見やると、もう完全に淫魔の仔たちの催淫術にかかり、甘くすり寄る彼女たちを抱き寄せ――今まさに堕ちていこうとしている。

 

このままでは、参謀たるレジナルドの意識まで、艶かしい宴に取り込まれてしまう。

 

ここで我を忘れ、王太子と一緒になって愛欲の虜になってしまったら――この作戦すべてが台無しだ。

 

――そもそも、この淫魔(サキュバス)の双子と愛欲の限りを尽くして交わりあったら、人間としての寿命がどれほど縮むかわからない。

 

必死で頭を振って――体の心底から上り詰めようとする快楽への欲求に耐える。

 

(ここで失態を犯すわけにはいかん。――完全に自分を抑えるしかない)

 

荒くなる呼吸で白く曇りはじめた銀縁眼鏡を、震える手で外す。

 

そして、レジナルドは――王宮の召使エドマンド・グレイという存在に"完全に"憑依した。

 

エドマンドの陰茎(ペニス)は完全に勃起し、肌は空気に触れるところすべてがじりじりと熱に炙られていた。

 

それでも彼は、ただの召使(サーヴァント)としてその場に立っていた。

 

*

 

リリアとソフィアは裸のまま、アレクシス王太子のまわりに絡みついていた。

 

肌が触れ合う湿った音と、王太子の荒い息遣いが、静寂を破る唯一の響きだ。

 

悪魔の接吻(キス)で蕩かし、舐めあげて、この世のものとは思えない快楽へ堕とす――。

 

リリアは、アレクシス王太子の首筋に唇を這わせながら、ちらりと視線を上げた。

 

そこに眼鏡を外して立っているレジナルド――彼の瞳(め)の、あまりの鋭さに戸惑った。

 

淡い灰色の瞳が、氷のように冷たく、感情の欠片すら宿していない。

 

(レジナルドさんが変……何だか、こわい――)

 

執務室で見せる、冷たくも礼を失しないルシエルの第一従者(ヴァレット)としての顔。

 

プライベートで見せてくれる、人間らしく温かい、屋敷の年長者(おにいさん)としての顔。

 

そのどちらでもない、姪むすめの肢体すら甘い餌として差し出す、冷酷な王宮召使(サーヴァント)のエドマンド・グレイがそこに立っていた。

 

(リリア、これはどうなってるの……?レジナルドさん、めちゃくちゃ怒ってるみたい)

 

思わず念話(テレパシー)でソフィアは姉に問うた。

 

(わからない……レジナルドさんは一度外に出て、また後で戻ってくるはずだけど――)

 

「何をしてる、ルル」

 

王太子の召使"エドマンド・グレイ"の声は、低く、静かで、一切の温度を感じさせなかった。

 

「早くひざまづいて、殿下に唇(くち)でご奉仕しなさい。」

 

その言葉に、双子はびくりと体を震わせた。

 

エドマンドの声は、氷の刃のように鋭く、命令として突き刺さる。

 

ソフィアは、殿下の膝からゆっくりと降り、リリアとともに、床にひざまずいた。

 

「さあ殿下、お選びくださいませ。まずはどちらの娘(こ)に舌を使わせましょうか?」

 

召使(エドマンド)はカツカツと靴音を立てて近づくと、恐々と彼を見上げていたソフィアの顎を乱暴に掴み、持ち上げる。

 

強引に、親指を口のなかにねじ込まれ、淫魔(サキュバス)の仔はおびえた。

 

「わたしのお勧めは、このルルですね。

 

おなじ双子ですが、この子の方が少し舌が薄く、動きもなめらかです。持って生まれたものでしょう。

 

男根をしゃぶるために生まれてきたような子ですから」

 

ソフィアは戸惑いながら、レジナルドを見上げたが、"エドマンド伯父"が、そのまま冷たく見下ろす。

 

甘い芳香に酔わされた王太子は、ぼんやりと半分口を開いて、そのようにしろと動作で示した。

 

「殿下(ユアハイネス)。ご満足を最優先とさせていただきます」

 

リリアが衣服をほどき、すでに固く屹立している王太子の陰茎(ペニス)を露出させる。

 

エドマンドは――ソフィアをその前に跪かせる。

 

ソフィアはできる限り大きく唇をひらき、リリアのみている前で、ゆっくりとそれを飲み込んでいく――。

 

王太子の口から、ああ……と深いため息がもれ、ソフィアは目を閉じたまま、すこしずつ前後に首を動かしていく。

 

甘く舐め上げ、蕩かすように軽くかじる――。

 

黙ってその様子を見下ろしていたエドマンドは、ソフィアの後頭部をつかむと、ぐっと強く喉奥まで押し込んだ。

 

「もっと奥で。――王太子(プリンス)を深く受け入れなさい、ルル」

 

リリアの真横で、ぐぅっとソフィアの呼吸音がつまる。

 

「もっと喉奥(おく)だ――そこが一番、殿下に気持ちよくなっていただける」

 

(レジナルドさん、やめて!)

 

リリアの心の声が聞こえる。――いや、聞こえなかった。

 

二度、三度と、そのままソフィアの頭を残酷に押し込んでいく。

 

「殿下(ユアハイネス)、いかがでしょう。この子の舌は、まるで魔性のもの。極上の味わいとは思われませんか――」

 

「まさにそうだ――これは魔性だぞ、エドマンド。お前の姪むすめは魔性(ディアボロ)の舌だ――」

 

「ではもう少し動かしましょう――殿下の高まりに合わせて」

 

召使(サーヴァント)は、王太子の荒くなる呼吸に合わせて、淫魔の仔(ソフィア)を"動かした"。

 

ぬちゃぬちゃと唾液の泡立つ音。

 

思わずリリアは顔をそらす。

 

「いや、もう殿下は持ちますまい。夜は長うございますゆえ、まずはこのまま……ルルの喉奥(のど)が受け止めましょう」

 

「ああっ……なんだこれは――まるでこの世のものとは――堪らない――」

 

「そうでしょうとも――ご存分に、殿下(ユアハイネス)」

 

アレクシス王太子は、身も世もない声をあげて、ソフィアの口内にどくどくと大量の精を放つ。

 

冷酷無比な王宮召使(サーヴァント)、エドマンド・グレイは、冷たく微笑し、ソフィアのちいさな後頭部、そこにつたわる震えを手のひらに感じていた。

 

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