※この作品はR-18です。

半血魔王のクロニクル ~黒き貴公子シリーズ総集編~   作:古弥須 凱

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28話 リーザの誘惑

 

【挿絵表示】

 

 

 

満月の光が、王宮の最奥に位置する王族専用の私室を、淡く青白く染めていた。

 

ルシエルが夢の扉を押し開くと、そこにリーザは立っていた。

 

彼女は今までに見たどの姿よりも、清らかで、儚く、美しかった。

 

深い青のドレスは、まるで夜空に咲く縹竜胆(はなだりんどう)のようだ。

 

裾には、銀の刺繍が細かく波打ち、月光を受けて静かに揺れている。

 

金色の髪はゆるやかに編み込まれ、首元には細い銀の鎖が一本だけ。宝石はつけていない。

 

ただ、その白い肌と青い布のコントラストが、息を呑むほどの清しさを放っていた。

 

リーザはルシエルを見上げ、静かに微笑んだ。

 

「……ごきげんよう、ルシエル」

 

声は穏やかで、しかしどこか遠くを眺めるような響きがあった。

 

夢の中の彼女は、もう拒絶の言葉を口にしない。代わりに、ゆっくりと手を差し伸べた。

 

「一緒に来て、案内したいところがあるの」

 

リーザはルシエルを導き、長い回廊を抜け、重厚な扉を開けた。

 

そこは小さな礼拝堂のような部屋だった。

 

壁一面に、先代国王の肖像画が掛けられている。威厳ある顔立ちの男が、玉座に座り、厳しく前を見据えていた。

 

リーザはその絵の前に立ち、静かに語り始めた。

 

「父上は……とても優しい人だった。でも、王として生きることを強いられて、笑うことを忘れてしまったの。

 

私がまだ幼かった頃、よくこの部屋に連れてきて、絵を見ながら話してくれたわ。『お前は王家の娘だ。強くなれ、孤独を恐れるな』って」

 

彼女の声は、かすかに震えていた。

 

「でも父上を喪って……それから、私は本当に一人になった。

 

王宮の中で、誰も本当の意味で私を愛してくれなかった。アレクシスでさえ、ただの道具として見ていた」

 

ルシエルは黙って彼女の横に立ち、肖像画を見上げた。

 

リーザの言葉が、胸の奥に染み込んでくる。彼女の孤独は、かつての自分が抱えていたものと、驚くほど似ていた。

 

リーザの父の隣に、もう一枚の肖像画があった。

 

未完成の王妃の肖像。

 

ドレスは美しくあでやかで、絹のような布が柔らかく波打ち、肩から流れるヴェールは月光のように透けている。

 

体躯は優雅で、豊かな曲線を描いていた。だが、肝心の顔は描きかけのままだった。

 

ただ、左の瞳だけが、完成していた。

 

夜の海のように深い藍色の瞳――。

 

リーザは静かに言った。

 

「母上は……とても美しかったそうよ。王宮画家はとうとう、母上の美しさを筆で残すことが出来なかった。

 

でも不思議なことに、今となっては誰も彼女の名前を覚えていない。

 

公文書にも、記録に残っていない。

 

ただ『王妃』とだけ呼ばれて、ある日、王宮から名前とともに霧のように消えてしまったの。

 

私がまだ赤子だった頃に」

 

ルシエルは、レジナルドの報告書を思い出していた。

 

それは、リーザについて緻密に調べ上げられた文書のなかの、ただ一つの「空白」だった。

 

ルシエルは肖像画に近づき、キャンバスの下部に目を凝らした。

 

そこに、薄く残された下書きの文字があった。

 

魔力を宿して目を凝らすと、古い筆跡で、かすかに浮かび上がる。

 

普通の人間の視力(め)ではとても読めないはずだ。

 

”王妃ノーマの肖像”

 

ルシエルの指が、キャンバスに触れる。

 

片方だけの藍色の瞳が、まるで彼自身を映す鏡のように、静かに見つめ返してきた。

 

「……ここは、王族しか入れない部屋よ。私の知る限り、王族以外でこの部屋に入ったのは貴方だけ」

 

ルシエルは一瞬、息を止めた。

 

彼女の指先が自分の掌に触れた瞬間、胸の奥で何かが熱く疼いた。

 

彼の求婚(プロポーズ)を受け入れる心構えが、ようやくできたのか――

 

そんな期待が、抑えきれずに浮き上がる。

 

「……リーザ」

 

ルシエルはゆっくりと振り返り、彼女の頰に触れた。

 

「俺の妻になれ。……俺の世界で、共に生きてほしい」

 

リーザは微笑んだ。

 

「なぜ急ぐの?……もっと貴方のことを知りたいわ――ルシエル」

 

自らの手で美しいドレスを肩から滑り落とした。美しい――ふたつの乳房があらわになる。

 

目の前の光景に引き寄せられるように、ルシエルはその胸元に口づけた。

 

「もっと私のことを知ってほしいの。再び出逢ったあの十二夜で、貴方はわたしに言ったわ。

 

”人間の姫の立場を捨てて、淫らな女として俺に尽くせ、――果てしない快楽を、貪り合おう”と」

 

彼女の瞳は、高まりを隠しきれずに潤んでいる。

 

レジナルドの策略による媚薬の影響なのか、あの王宮図書館で交わした激しい性愛の影響なのか……

 

ルシエルには、彼女の心が見えない。だが、彼女の熱く火照る肌のぬくもりに灯虫のように吸い寄せられた。

 

「この夢の中で……わたしは貴方の望むままの女になるわ。貴方に与えられる快楽に溺れ、私の肉体のすべてを貴方に委ねたいの」

 

リーザのドレスが、まるで蜜のように溶けて床に落ちた瞬間、二人の周りを甘い熱気が優しく包み込んだ。

 

ルシエルは言葉を失い、ただ彼女を強く抱き寄せた。

 

リーザの体が自然に寄り添い、細い腕がルシエルの首に回る。

 

彼女の指が黒い髪を優しく梳き、耳元で甘く掠れた声が溶けるように響いた。

 

「……ルシエル……私、もう……あなたに全部をうばわれたいの……」

 

ルシエルは彼女の唇に、羽のように軽く触れた。

 

最初はただ温もりを確かめるだけの、優しいキス。

 

リーザの唇が自然に開き、柔らかな舌が恥ずかしげに絡みつく。

 

二人はゆっくり、深く、時間を忘れて溶け合うようにキスを重ねた。

 

唾液が甘く糸を引き、互いの息が一つになる。

 

「ん……あ……ルシエル……もっと……深く……」

 

ルシエルは彼女の首筋に唇を滑らせ、優しく吸いながら舌でゆっくりとなぞる。

 

リーザの肌がびくんと震え、甘い吐息がふわりと零れる。

 

彼女の指がルシエルの背中に優しく爪を立て、甘く縋るように引き寄せた。

 

「あぁ……そこ……溶けちゃう……ルシエル……わたしを好きにして……」

 

ルシエルは彼女の胸に顔を埋め、ピンクの先端を優しく唇で包んだ。

 

舌先でゆっくりと転がし、甘く、ねっとりと吸う。

 

リーザの体が弓なりにしなり、甘い声が部屋に溶けていく。

 

彼女の腰が無意識に揺れ、ルシエルの下腹部に擦り寄る。蜜が太ももを伝い、じっとりと濡れて滴り落ちる。

 

「リーザ……お前のここが、こんなに甘く濡れて……俺を待ってる……」

 

ルシエルは優しく彼女を床に横たえ、手を下腹部に滑らせた。

 

指先が秘部に触れると、熱くぬるぬるとした蜜が溢れ、指に絡みつき、離れない。

 

ゆっくりと指を沈め、内壁を優しく撫でる。

 

リーザの体が溶けるように震え、甘い蜜がさらに溢れ出し、指を甘く締めつけた。

 

「あ……んん……ルシエル……深く……もっと……あなたで……いっぱいにして……溶かして……」

 

彼女の瞳は涙のように潤み、ルシエルを甘く見つめる。

 

ルシエルは自身の陰茎を彼女の入り口に優しく当て、ゆっくりと沈めた。

 

二人の体が溶け合うように、境界が曖昧になり、ぬるぬるとした温かな感触が、二人を甘く繋ぐ。

 

リーザの内壁が優しく、ルシエルを締めつけ、果てしない快楽が全身に広がる。

 

「んん……あぁ……ルシエル……いっぱい……あなたで……溶けちゃう……大好き……」

 

律動は優しく、ゆっくりと、溶けるように。

 

ルシエルは彼女を抱きしめ、腰を優しく揺らす。

 

リーザの脚がルシエルの腰に絡みつき、二人は溶け合うように動きを合わせる。

 

甘い吐息が重なり、蜜が絡み合い、ぬちゃぬちゃと甘くトロけた音が響く。

 

部屋中に、二人だけの甘い熱気が満ちていく。

 

「リーザ……お前を愛してる……言え、永遠に俺のものになると……」

 

リーザの体がびくびくと震え、甘い絶頂が近づく。

 

彼女はルシエルの背中に爪を立て、甘く喘ぐ。

 

「あぁ……ルシエル……いっしょに……」

 

「言え、言うんだ、リーザ…俺の妻になると――言ってくれ、今すぐ……!」

 

射精をこらえる苦しみに呻きながら、ルシエルが求める形の愛に、リーザは応えなかった。

 

限界まで律動を続けながらも、姫君の甘い締めつけに堪えきれず、ぐっと喉を鳴らしてルシエルが精を放った。

 

リーザという美しい花が与える快楽に、すでに彼は耐えられなかった。

 

黒髪から汗を滴らせ、荒々しく息をきらすルシエルを抱き寄せ、リーザはその額に接吻する。

 

二人は夢の中で完全に溶け合い、果てしない甘い快楽の底へ、ゆっくりと、永遠に落ちていく――。

 

 

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