※この作品はR-18です。

半血魔王のクロニクル ~黒き貴公子シリーズ総集編~   作:古弥須 凱

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35話 月光

 

【挿絵表示】

 

 

 

魔界のルシエル公爵邸、最奥の私室。

 

十二夜の月が、巨大なアーチ窓から冷たく青白い光を投げかけていた。

 

ルシエルは寝台に腰掛け、黒いローブを羽織ったまま、膝の上に広げた古い詩集を無意味に眺めていた。

 

紫の瞳は、いつもより深く沈み、苛立ちと渇望と、抑えきれない不安が混じり合って、静かに燃えていた。

 

今夜は、十二夜だった。

 

今ではその魔力を借りなくても、ルシエルとリーザの夢の世界は、分かち難く強く、固く結びついていて、夜毎にはかない愛を交わし続けていた。

 

明日、リーザは他国への花嫁行列の輿に乗り、森に入る。

 

そこでフォルネウス男爵の罠が待ち受け、彼女は悪魔の饗宴(サバト)の場で生贄台に裸で繋がれ、衆目の前で犯され、無惨に屠られる運命だ。

 

レジナルドはすでに覚悟を決めて、人間の身ながら命を賭けた特攻を申し出た。

 

ルシエルはそれを了承した。

 

だが、今夜だけは、何も考えたくなかった。

 

ルシエルは指先を震わせ、詩集のページを強く握りつぶした。

 

不安で、不安でたまらなく、吐き気がする。

 

彼女に迫るあまりにも大きな危機を伝え、何も出来ることはなくとも、せめて警告するべきなのかもしれない。

 

しかし、今夜だけは、リーザにそれを悟らせたくなかった。

 

(……リーザ……お前を、失いたくない)

 

夢の扉が、音もなく開く――。

 

 

*

 

 

リーザの寝室。

 

オルヴェス王国の王宮、最上階の王女私室。

 

嫁入り前夜の静けさの中、深い青のネグリジェを纏ったリーザは、ベッドに横たわり、目を閉じていた。

 

明日、彼女は他国の王子のもとへ輿入れする。

 

政略結婚の道具として、「ルイーゼ」ではなく「一国の王女」として。

 

心は重く、胸の奥に、ルシエルの影がまだ消えずに残っている。

 

愛を乞い、嘆き、怒り、そして苦しむであろう、彼に会うのが辛かった。

 

それでもリーザの肉体は、十二夜の訪れを待っていた。

 

夢の扉が、静かに開く――。

 

 

*

 

 

リーザは、霧に包まれた森の東屋(ガゼボ)に立っていた。ルシエルと初めて出会ったあの場所だった。

 

「ここは……」

 

月光が白いドレスを透かし、金色の髪を銀色に染める。

 

そこに、黒いマントを纏った姿で、ルシエルが静かに、ゆっくりと近づいてきた。

 

リーザの心臓が、激しく高鳴った。

 

「……ルシエル……」

 

ルシエルは、答えず、ただ、彼女の前に跪いた。

 

膝をつき、リーザのドレスの裾に、そっと額を寄せる。

 

「リーザ……」

 

声が、いつもより低く、震えていた。

 

「今夜だけは、お前を怖がらせたくない。ただ、お前と一緒にいたい」

 

いつもなら、激しく押し倒され、服を剥ぎ取られ、奥を容赦なく突かれる。

 

お前は俺のものだと吠え、唸り、リーザのすべてを奪いつくそうとするのがルシエルだった。

 

しかし今宵、ルシエルはそっと彼女の髪を撫で、額にキスを落とし、首筋を優しく舌でなぞる。

 

リーザの息が、乱れる。

 

「……ルシエル……どうして……?」

 

ルシエルは、彼女の耳元で囁く。

 

「俺は……お前を失いたくない。お前が他の男の妻になるなんて、考えたくもない。

 

でも、お前を怖がらせたくもない。

 

だから今夜は、俺のすべてを、お前に預ける」

 

彼は、リーザのドレスの肩を押し下げ、ゆっくりと解きほどいていく。

 

白い肌が露わになるたび、ルシエルは息を呑む。

 

「きれいだ……リーザ」

 

彼は跪き、彼女の胸に唇を寄せ、乳首を優しく吸う。

 

リーザの体が、びくんと震え、甘い声が漏れる。

 

「あ……っ……ルシエル……」

 

ルシエルは、彼女を木のベンチにに横たえ、脚を開かせ、ゆっくりとその花芯に舌を這わせる。

 

リーザの蜜が溢れ、それを甘くかきまわしながら啜るみだらな音が響く。

 

彼女の腰が、勝手に浮き上がり、「ルシエル……そこ……ンン……」と、甘い懇願がこぼれた。

 

ルシエルは、彼女の奥に指を沈め、ゆっくり、深く、愛撫する。

 

「ルシエル……私……あなたが欲しい……」

 

ルシエルは、優しく、しかし深く、自分のものを彼女の中に沈める。

 

リーザの内壁が、きゅうきゅうと固く締め付け、熱い蜜が絡みつく。

 

ルシエルは、いつもよりゆっくり、深く、腰を動かす。

 

「リーザ……愛してる」

 

リーザの腕が、彼の背中に回り、爪を立てる。

 

「あ……ルシエル……私も……愛してる……」

 

二人は、溶け合うように体を重ね、甘く、優しく、深く、愛を確かめ合う。

 

これまでは怒りのように湧きあがる衝動から迸る射精ですら、今夜は凪のように優しかった。

 

ルシエルは汗にまみれて、固くしがみつく彼女の奥に熱く大量の精を注いだ。

 

「お前は俺のものだ……でも、お前が俺を選んでくれるなら、俺はお前のものになる」

 

彼の紫の瞳が、彼女の心を捉え、ひたすらにその愛を乞うていた。

 

「わからない……どうすればいいのか、私にはわからないの」

 

「――構わない。俺たちの夢は続く。お前が選んでくれ」

 

夢の中で、二人は、静かに、深く、抱き合った。

 

十二夜の月光が、最後の光をなげて、二人の影を優しく包んだ。

 

 

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