※この作品はR-18です。

半血魔王のクロニクル ~黒き貴公子シリーズ総集編~   作:古弥須 凱

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36話 ボディチェック

 

【挿絵表示】

 

 

 

人間界、森の奥深く――サバト会場となる古城近隣の深い闇。

 

月が、血のように赤く染まった空から、不気味な光を投げかけていた。

 

そこには下級悪魔たちがワイワイと集まり、”花嫁狩り”イベントの参加受付の列を作っていた。

 

「よぉ、今回のメインのお姫さま、見たか? マジでかわえーよなぁ!」

 

「清楚な姫君が生贄台で犯されてる姿、想像しただけで興奮するぜ♡」

 

「中継もバッチリ入るから、魔界中が視聴する大イベントになるな!」

 

受付会場には黒い魔力結界が張られ、アーチ型の魔力探知ゲートと、荷物検査用の専用レーンが並行して設置されていた。

 

”花嫁狩り”の参加者たちは、そのゲートを次々と通過していく。

 

魔力が基準値以下であるかをチェックし、上級悪魔が潜入しないようにするためのセキュリティだ。

 

参加者はまずゲートで肉体の魔力を測定(チェック)され、次に持ち込みアイテムを別レーンで透視(スキャン)される。

 

武器、護符、毒物、呪物など、上級魔力を秘めたものが持ち込まれないよう、厳重に検査される。

 

その列の後ろに、黒いフードを被った男が一人、静かに立っていた。

 

銀縁の眼鏡を押し上げ、淡い灰色の瞳で受付の魔族を見据える。

 

「レジナルド・チェンバース。種族は、人間だ。申告する魔力はゼロ。参加を希望する」

 

受付の魔族は一瞬、目を丸くした。

 

「人間……? ”花嫁狩り”に、人間が参加だって?」

 

周囲の下級悪魔たちがざわつく。

 

「人間だってよ!」

 

「魔力がねぇなら、参加条件はクリアしてんだろうけど……そんなヤツが花嫁狩りに参加してどうすんだ?」

 

「おいおい、アイツ死にに来たのか? 笑えるぜ」

 

レジナルドは静かに、サバトの主催者である、フォルネウス男爵の了承状を差し出す。

 

受付の魔族は了承状を読み、この無謀な参加希望者(チャレンジャー)に向き直った。

 

「……男爵様の了承済みか。人間の参加者なんて初めてだぜ」

 

ざわつきが広がる中、レジナルドは指示されるままに魔力探知ゲートを通過する。

 

警戒音は鳴らず、申告どおり「魔力値: 0」と表示される。

 

受付の魔族は肩をすくめ、レジナルドの体をスキャンする魔術具を当てる。

 

「あんたが人間ってことなら、念のため盟約まで開示してもらうぜ。何か隠してるもんがあれば、即失格だからな」

 

魔力透視(スキャン)が始まる。レジナルドの体内に、蒼い盟約の刻印が浮かび上がる。

受付の魔族は目を細める。

 

「……これは……ルシエル公爵閣下との盟約か。

 

出生名:レジナルド・チェンバース

魂魄所有:ルシエル公爵閣下

契約年:魔界歴2203年

契約期限:肉体が滅ぶまで

 

3年前の契約……。あんたは死ぬまで、公爵様の奴隷ってわけだな」

 

レジナルドの銀縁眼鏡の奥は、少しも揺るがなかった。

 

間違いなく言葉どおり、彼はその肉体が滅ぶまで、ルシエルに忠義を誓っていた。

 

続いて、持ち物検査レーンに案内された。

 

アルフレッドに授けられた、ヒクイドリを宿すという小さな魔法護符(アミュレット)。

 

魔術検査具を当て、持ち込みアイテムの魔力スキャンが開始される。

 

ビイイイイイイ!!!!と激しい警戒音が鳴り響き、検査官の魔族はひっくり返った。

 

「おい、お前! こんな強力な――」と言いかけて、検査具の数値を見る。

 

「魔力検出値: 3」

 

受付の魔族が眉をひそめる。

 

「魔力3? 完全に基準値以下で、それであんな音が出るか? 誤作動かもしれんから、もう一度かけろ」

 

再度スキャン。

 

さらに激しく、荒れ狂うような警戒音が鳴るが、「魔力検出値: 3」の表示は変わらない。

 

受付の魔族は首を傾げる。

 

「同じ数値か……基準値以下ではあるし、とりあえず良し、通過しろ」

 

レジナルドが荷物検査を終え、魔法護符(アミュレット)を受け取って控え場所へ移動しようとした矢先。

 

後方で何か、もめごとが起きているのに気づいた。

 

振り返ると、検査官たちに囲まれて、双子の淫魔、リリアとソフィアが、べたべたとねちっこいボディチェックを受けている。

 

(あかん、信じられへん!……誰か嘘やと言ってくれ――)

 

リリアとソフィアは、僅かに局部と乳首を隠しただけの、紐にしか見えないマイクロビキニしか身に付けていない。

 

小さな黒い翅と尻尾だけをぴょこぴょことくねらせて、なにごとか叫んでいる。

 

桃色の乳首が、薄いビキニの布地に透け、か細い腰の曲線がくねくねと動き、その白い肌が、好色な魔族たちの視線を釘付けにしていた。

 

検査官の一人が、リリアの小さな胸に手を伸ばし、ビキニの紐をずらしながら執拗に揉みしだいている。

 

検査官の指が、乳首を指の腹で転がす。

 

「あんっ……はぁ……♡ だめ…………やめてくださぁい……んんっ……♡」

 

リリアの体がびくんと震え、甘く震える喘ぎが漏れる。

 

もう一人の検査官が、ソフィアの尻肉を掴み、ビキニの紐をずらし、指を這わせて中を探っている。

 

ソフィアの尻が、ぷるぷる震え、

「ふふ……あっ……んふぅ……♡ おじ様たち……指で……広げないで……はぁ……あんっ……♡ あっ……んんっ……♡ そこ……もっと………はぁん……あぁんっ……♡」

と、積極的に喘ぎを漏らして、検査官の手に自ら腰を押しつけて、蜜を滴らせる。

 

検査官の指が、ソフィアの内ももを撫で回し、紐の下に潜り込んで、ゆっくりと蜜壺を掻き回す。

 

ソフィアの体がびくびく痙攣し、

「あっ……はんっ……♡ 指……深く……あんっ……んふぅ……♡ おじ様たち、もっと私たちを……ねちねち弄ってぇ……あぁっ……はぁん……♡」

と、喘ぎ声が甘く、高く、連続で響き渡る。

 

周囲の悪魔たちが興奮してどよめく。

 

「双子の淫魔がこんなエロいビキニで……!」

 

「検査官、もっと調べてくれよ! 中も外も全部!」

 

「もっとやれ! きっちりボディチェックしろ!」

 

これでは検査会場なのか、ここがサバト会場なのかわからない大騒ぎだ。

 

レジナルドは慌てて、双子たちを確保し、人気のない控えエリアへ連れ込んだ。

 

「この、どアホ!!!お前ら、なんでこんなとこへ来てん!

 

ここがどういう場所かわかってんのか? !これからリーザ様を巡って、他の悪魔らと殺し合いすんねんぞ!

 

お前らがおってどうなんねん。すぐ帰れ!!」

 

「でもレジナルドさんなんて、魔力0(ゼロ)じゃん~♡ それこそ即死だよお♡」

 

「わかっとるわ、ボケ!!!! 百も承知じゃ!!!!!」

 

かつてなくレジナルドに感情的に怒鳴られて、ソフィアはしゅーんとなっている。

 

リリアは……じっと黙って、大きな瞳でレジナルドを見つめていた。

 

「とにかく……来てもうたもんはしゃーない。

 

閣下はサバトの会場へ、直接向かわれてる。

 

お前らは飛べる――閣下への伝令役(メッセンジャー)として役に立ってくれたらそれでええ」

 

口元に指をあて、レジナルドは自分の中でもう一度、作戦を組み立てなおしている。

 

リリアとソフィアを安全に、かつ最大限に有利に活用する。そうすることで、少しでもこの作戦に活路を見出す――。

 

この凄惨な”花嫁狩り”競争(レース)で、生きて戻れるとは思っていないが、自分の役割だけは果たしたかった。

 

「レジナルド、心配するな。お前を死なせるようなことはしない。俺が守ってやる」

 

突然、ルシエルの言葉が、リリアの声となってレジナルドに届いた。

 

「え……」

 

リリアの瞳には、ぼんやりと紫色の光が宿っている。

 

その表情は凛々しく、厳しくはあったが、臣下を見守る優しさをどこか纏っていた。

 

「か……閣下……ですか?」

 

レジナルドが確かめるように、リリアの顔を覗き込んだ。

 

淫魔の仔に入り込んだルシエル卿は、体にぴったり張り付いた、艶めかしいマイクロビキニの姿のままで、いつものように冷静にレジナルドの瞳を見つめ返している。

 

「いま、リリアの肉体を借りている。”俺”は意識だけだから、魔力検査もなんなくスルー出来た。

 

まぁ不正行為(チート)だが、こうでもしなきゃお前を守ってやれないだろう」

 

「お体のほうは、サバト会場に?」

 

「そうだ、意識を分けている。貴賓席でそれなりに応対もせねばならんから、なかなかにややこしい。こっちはすごい熱気だ。下品で、淫らで、汚らわしい雰囲気でいっぱいだ。早く出たくてたまらん」

 

精神を二つに分ける――そんな高度な能力(ちから)のある魔族が、どれだけいるのだろう、とレジナルドは己の主人のことが、空恐ろしくなった。

 

「お前は、おもしろい話し方をするんだな。レジナルド。初めて聞いたぞ。いつもの口ぶりよりもずっと面白い」

 

レジナルドの訛り(くにことば)をからかう表情は、可愛らしい淫魔の仔(リリア)のそれだが、その内面は計り知れない魔力を持つ、魔界の公爵ルシエル卿だ。

 

「閣下、そもそもこの双子の衣裳は――」

 

「これか?」

 

と、リリアの姿をしたルシエルは、きわどいビキニの白い尻から生えている、淫魔のしっぽをぴょこぴょこと動かして答えた。

 

「俺の趣味だ。可愛いだろう。こいつらに良く似合う」

 

ソフィアもぴょんぴょん跳ねながら、調子に乗って横から口を出してくる。

 

「ソフィアもすきー♡ このビキニ可愛いし、エッチだしいいと思う~、ルシエルさま趣味いーよね♡ 今度、コスプレえっちしたーい♡」

 

「ちょっと過激だったか、検査官どもにべたべた触られて気味悪かったが……

俺もとりあえず、あーん♡とか、いやーん♡ とか言って胡麻化しておいた。

まぁ女性の肉体で、ちょっとした快楽を味わうのも、悪くないものだな」

 

レジナルドは、混乱のあまり頭をかかえてうずくまる。

 

人間である自分、淫魔の仔のソフィア、そしてリリアの中に精神だけ入っている、ルシエル。

 

ここからどう勝機を見出せばいいのかを、もう一度組み立て直す(シュミレートする)――。

 

(どんな無茶ぶりやねんな、ほんま。

俺はえらいもんを”花嫁狩り”に持ち込みしてもうたで――)

 

”花嫁狩り”競争の開始まで、あとわずかに迫っていた。

 

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