※この作品はR-18です。

半血魔王のクロニクル ~黒き貴公子シリーズ総集編~   作:古弥須 凱

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8話 イフの夢

イフが、胎児の念波によって容赦なく弾き出された瞬間、意識が"現実"に戻った。

 

あたたかな膝の上に抱かれたまま、ゆっくりと目を開ける。

 

「どうしたの、イフ?」

 

彼の母――リーザ王妃の声が、優しく耳に届く。

 

少年の体は、まだ華奢でか細く、白い髪が母の胸元に触れる。

 

父、アスモデールゆずりの赤い瞳が、母の穏やかな顔を映す。

 

「……夢を、見ていました」

 

イフは小さく呟き、母の胸に顔を埋めた。

 

リーザの指が、イフの髪を優しく梳く。

 

「どんな夢?怖かったの?」

 

イフは首を振って、母の胸に顔を押しつけた。

 

「わたしに、弟がいて……仲よくしようとしましたが、ケンカになりました」

 

まぁ、と母は優しく微笑んだ。

 

「お前は優しい子なのに、どうしてケンカになったの」

 

「弟は、わがままでした。母上を独り占めしようとするから、わたしが叱ったのです」

 

イフは、ふくれた顔のままで、彼の母にぎゅっとしがみついた。

 

「弟は、いらない。わたしだけの母上でいい」

 

リーザ王妃は、彼の幼い孤独をそっと抱きしめてくれた。

 

イフの頭を抱き、限られた面会の時間の限り、彼に愛情を注ぐ。

 

「世界中の誰よりも、母さまはイフを愛してるわ」

 

「わたしの父上よりも、ですか?」

 

「お父様……アスモデール陛下のことは心からご尊敬申し上げているわ。とても立派な方よ。

 

お前の父上で、魔界を統べる、とても大変な責務を負っていらっしゃる方……。

 

だからこそ、母さまはイフに、お父様が誇れるような、立派な皇嗣になってもらいたいわ」

 

父を、アスモデールを愛している、とは言わなかった。

 

それでもただ、一心に向けられる深い母の愛情が、イフには嬉しかった。

 

「母上……わたしは、詩を書いてきた」

 

イフは小さな手で、懐から折りたたんだ何枚かの紙を取り出す。

 

数枚は、傅育官の監視の目を盗み、こっそりと古い詩集から、書き写した詩。

 

そしてイフが書いた――母上の好きな夜空の星と、母上の笑顔を詠んだ、拙い一行詩。

 

「母上、読んでください……」

 

リーザは紙を受け取り、優しい声で読み上げる。

 

「母上の笑顔は、

夜の闇を照らす星より明るく、

わたしの心を、いつも温かく包む……」

 

リーザは読み終えて、イフの頰を両手で包んだ。

 

「とても素敵よ、イフ。母さまは、嬉しいわ。大事にするわね、これは母さまがこれまでに戴いた、どんな贈り物よりもうれしい」

 

イフのおさない瞳が、ただ純粋な喜びに輝いた。

 

「母上……わたしは、もっと上手になりたい。母上に、もっと褒めてもらいたい」

 

リーザはイフを強く抱きしめた。

「お前は私の宝物よ、イフ。母さまが持っていたすべてを引き換えに、手に入れた宝物。

 

お前に会えなくて、毎日さびしいわ。でも、どんなに厳しい日々でも、この時間だけは、母さまはイフだけのものよ」

 

イフは母の胸に顔を埋め、小さく息を吐いた。

 

母上の膝の上。

母上の胸の鼓動。

母上の甘い香り。

 

鼓動を止めかけている、あの胎児(おとうと)がいる暗い胎内とは違う。

 

ここは、"現実"の母の膝の上。

 

イフだけが、母であるリーザの愛を独占できる場所だった。

 

「……母上、わたしを愛してる?」

 

リーザはイフの髪を優しく撫でながら、耳元で囁く。

 

「愛してるわ、イフ。母さまが愛しているのは、この世でただイフだけよ」

 

イフは小さく息を吐き、母の胸に顔を埋めた。

 

イフは、彼が母であるリーザの夢の中に築き上げた"幻の世界"の中で、静かに微笑んだ。

 

 

*

 

 

そして、同じイフの夢の中で――。

 

リーザ王妃は、寝台に横たわるアスモデールの前に、ほぼ裸身の姿を晒して立っていた。

 

あの呪われたサバトの夜、彼女の運命はすべて変わってしまった。

 

生贄としてアスモデールに捧げられた人間の姫君として、リーザは彼の陰茎に深々と差し貫かれた。

 

彼女を救おうとしたその恋人……ルシエル公爵は血の海に沈み、何も出来ず、地に伏せて惨めになにか叫んでいるだけだった。

 

そして、ルシエルの見ている前で、リーザはアスモデールの与える、果てしない快楽の闇に堕ちた。

 

彼の精液をねだり、甘くとろけきった子宮の中に、魔界の皇胤を迎え入れた。

 

アスモデールに荒々しく組み伏せられたまま、リーザの膣奥深くに注がれ、種付けされた悪魔の貴種――それがイフだった。

 

イフを産みおとしてからの年月が、リーザの美しい体躯をさらに磨き上げていた。

 

魔界の空気の中でどこか冷たく、それでいて柔らかな曲線が、灯りの影に浮かび上がっていた。

 

アスモデールが強制的に着せた黒い下着は、ほとんど布地を残していないエロティックなデザインだった。

 

レースの細い紐は、彼女の豊満な白い胸の乳首だけを辛うじて覆い、腰の辺りでは薄いヴェールのように透けて、秘部を隠すどころか、誘うようにその肉襞の存在を強調していた。

 

黒いストッキングが太ももを締めつけ、ガーターのベルトが肌に食い込み、彼女の白い肌をより妖艶に際立たせていた。

 

黒い下着……ほとんど布地をもたないランジェリーに痛々しく縛られたリーザの白い裸身は、真裸でいるよりも数倍エロティックに映る。

 

アスモデールは寝台に悠然と横たわり、赤い瞳でリーザの全身を品定めするように見つめていた。

 

「いい眺めだ、王妃。お前の淫らな本性を隠しきれてはいないが、そこがたまらない。

 

脚を広げてみるがいい、そうだ。――随分と"そこ"に食い込んで痛そうだ」

 

夫に言葉で嬲られるまま、リーザは黙って従った。

 

脚を開いて向き直ると、なお一層きつく、下着が紐状に彼女の秘部に張り付き、クリトリスを擦り上げた。

 

「んっ……」

 

無反応でいたかったのに、もう声が漏れてしまう。

 

「いいだろう、お前の蜜壺は、その下着に拘束されているわけだ。

 

今夜もお前の義務を果たすがいい。

 

最後に、そこを解き放ってお前にたっぷりと褒美をやろう」

 

リーザは静かに目を伏せ、寝台に近づいた。

 

アスモデールの足元に膝をつき、ゆっくりと彼のローブの裾をめくる。

 

露出した彼の下腹部は、すでに熱く膨張し始めていた。

 

リーザの細い指がそれに触れ、優しく握りしめると、アスモデールは低い声で笑った。

 

「お上品な口技はいらぬ。娼婦のように、淫らに舐め回せばいい。

 

お前は王妃だが、俺が求めるのはみだらな蜜壺としてのお前だけだ」

 

リーザは命令に従い、唇を寄せて陰茎の先端を舐め上げた。

 

熱い息を吐きながら、舌を絡め、ゆっくりと喉奥まで飲み込む。

 

アスモデールの陰茎が、彼女の口内で脈打ち、大きさを増していく。

 

リーザの豊満な胸が、動きに合わせて揺れ、黒い下着のレースが肌に擦れて、甘い痛みを生む。

 

かろうじて布地に隠されていた乳首が、その揺れによってすでに露わになっていた。

 

アスモデールはリーザの髪を掴み、腰を押しつけて喉奥までを犯した。

 

「ああ……いいぞ、王妃……ずいぶん上手になってきたな――

 

お前の口技が丁寧に、淫らになるたび、俺はあの半血(ハーフブラッド)の哀れな公爵を……嘲り笑いたくてたまらない」

 

屈辱を受けながら、リーザはただ涙を浮かべて耐えた。

 

「それだけで、ルシエル(あいつ)を殺さずに、生かしておいた価値がある……

 

お前は俺の子を産み、王妃として夜毎、俺に奉仕する」

 

高まる快楽に呼吸(いき)を弾ませながらも、アスモデールは言葉でリーザ王妃をなぶり続けた。

 

「お前は俺の精液厠(トイレ)なんだよ、リーザ。

 

王妃だと思っているのは周りだけだ。俺も、そしてお前もわかっている。

 

そしてもう一人、お前の恋人だったルシエルも、左遷された魔界辺境の地で、その事実に夜毎苦しんでいるだろう。

 

愛する女が、精液厠にされ、犯されていることを想像して、卑しく手慰みでもしているだろう」

 

アスモデールの掌が、リーザの髪の中で開き、そのまま極限まで押し込まれた。

 

「出る」とだけ、アスモデールは言った。

 

「………………っ!!」

 

放つ瞬間にだけ低く、長く吠えて、アスモデールは彼の妻、魔界の王妃の口内に大量の魔精を放った。

 

リーザの喉奥いっぱいに、苦く、粘ついた白い滾りが流れ込んでくる。

 

飲みこぼすことを許されず、むせかえるような濃い精液を、リーザは苦しみながら飲み下した。

 

「そうだ……良かったぞ、王妃。

 

お前は良く出来た妻だが、口技もなかなかに育ったな。

 

お前の恋人……ルシエル卿(あいつ)も、お前が与える快楽を、ここまで味わうことはなかっただろう」

 

アスモデールは、リーザの顎を手で持ち上げて、残酷に笑った。

 

リーザもまた、涙に潤んだ瞳を向けた。

 

アスモデールの満足を得、その欲望を鎮めなければ、彼女の夜の務めは終わらなかった。

 

「今夜はもう、どうぞお許しになって……」

 

リーザは、王妃の務めとして、アスモデールに肉体を奉仕し続けなければいけなかった。

 

夜毎のこの行為は、彼女の体を疲弊させ、心を蝕んできた……しかし、彼女の夫、アスモデールは容赦しなかった。

 

「お前が差し出したのは、まだ口だけだぞ。王妃。

 

俺はまだみなぎっている。お前の蜜壺のなかに、思うまま"排泄"したい。

 

裸になって、上に乗り、腰を振れ」

 

王妃は、エロティックな黒いレースの下着を外す。

 

――ほとんど紐でしかない、彼女の肉を拘束していた部分はすでに、雫を垂らすほど濡れそぼっていた。

 

命じられるままにアスモデールの腰にまたがる。

 

そのまま、自分の白い指先を二本添えて、もう濡れそぼって淡く光っている肉襞を、そっと開いた。

 

すでに回復し、烈しく反り返ったアスモデールの陰茎を花弁にあてがい、リーザは息を詰めて、ゆっくりと腰を落としていく。

 

「……ん……あぁッ」

 

甘く蜜をこぼしながら、王妃はアスモデールの長い陰茎を、根元まで受け入れた。

 

初めて貫かれ、処女を奪われた時と同じ痛みに震え、悶える。

 

「お前が感じていてどうする、リーザ。お前は、本当に淫らな女だ。自分の快楽ばかり膣奥で味わっている」

 

彼女の白い尻の片方を、アスモデールは烈しく叩いた。

 

「お前の膣で、精液を最後の一滴まで残らずしごき出せ。

 

それが終わるまでは眠らせん。それが――お前の務めだ」

 

リーザは涙をこぼし、アスモデールの上で烈しく腰を振り続ける。

 

みだらに――そして彼女の本能の求めるままに、快楽に飲み込まれていく。

 

かつての恋人……ルシエルも知らない、淫蕩の日々に犯され、開発され尽くした王妃としてのリーザは、夢に囚われたまま、淫らに花開いていた。

 

クチュクチュと音を立てて、アスモデールとリーザの接合部が深く浅く繋がり、時にぐりぐりと擦り合わされる。

 

「ああっ……陛下……もう、もうお許しください――どうか、もう……」

 

「その手は食わないぞ、王妃。お前がねだるのは、早く俺を終わらせたいからだ。

 

若い頃はずいぶんと騙された。お前の与える快楽にはやり、今よりずっと……早漏(はやうち)だったな」

 

リーザのうねる腰をしっかりと掴みながら、アスモデールは彼女の快楽を操作(コントロール)した。

 

「だが、たまには良いかもしれない。俺たちの新婚時代を思い出す。

 

魔界のありとあらゆる場所で、お前を犯し、味わい尽くした。

 

イフを胎内に宿しながら、お前は……激しく俺を求めて腰を振ったな、リーザ。

 

おれの子を宿した子宮の内部に、まだ足らずに精液をかけてくれと、求めてよがり泣いていた」

 

リーザは堪えきれず、嗚咽をもらしたが、アスモデールは意に介さなかった。

 

彼の美しい妻……みじめな負け犬の半血(ハーフブラッド)から奪い取ったリーザ姫を征服し、屈服させ、性のはけ口としてその体内に熱を放つ喜びに溢れていた。

 

「受け入れろ……リーザ。……もっと子を産ませてやる……イフの弟を……お前に授ける……」

 

リーザの膣を烈しく突き上げながら、アスモデールが呻いた。

 

「いや……っ!許して…………!どうかもう……」

 

「ああ……締まってきたぞ、王妃……お前の膣奥がわなないてる……」

 

「ああっ……!…だめぇっ………」

 

リーザの頭が真っ白になり、その瞬間にすべての抵抗をぬぎ捨てて、肉体すべてで烈しい絶頂に達していた。

 

アスモデールが、彼女の膣内にいつ精を放ったのかすらもわからなかった。

 

気がついた時には、彼女の内部でどくどくと夫の陰茎が脈打ち、夥しい精液にリーザの下半身が濡れていた。

 

リーザの肉体は、夜毎アスモデールに与えられる、屈辱的な閨(ねや)の快楽をもって、かつての愛を……ルシエルを裏切りつづけていた。

 

(……ルシエル……ごめんなさい……わたし、また……乱れてしまった……)

 

心の奥底で、かつての恋人を想いながら、彼女は寝台にぐったりと身を横たえた。

 

周りに熱く息を乱した、数人の小姓たちが近づいてくる……

 

アスモデールの寵愛を受けた、子飼いの貴族の子弟たち。

 

彼らは、王妃リーザの美しい肉体を、アスモデールの命じるままに、その目の前で夜ごとに貪り続けていた。

 

彼らの指が、一斉にリーザの裸体に迫り、腕を取られ、脚を開かされ、容赦なく蜜壺へ差し込まれる。

 

「いやぁああああ……!もう、赦して……」

 

夫であるアスモデールの見ている前で……また犯される。

 

小姓たちは遠慮なく、王妃を卑猥な言葉でなぶる。

 

「王妃さまのエロまんこ……もう濡れ濡れですよ。今夜も……僕たちを欲しがっている」

 

「いやっ……やめなさい!」

 

「こんなに汁を垂らしてる。僕たちの大好物だ。いやらしい……エロまんこだ」

 

大きく拡げられ、そのまま小姓の少年の欲望に貫かれた。グチュグチュと音をたてて、最初からみだらに泡立った。

 

「……あっ!ダメっ……!やめ……やめなさい……!」

 

リーザは泣き叫びながらも、最初から腰を振って彼らの欲望に応えた。

 

アスモデールが……彼女の夫がニヤニヤと笑いながら彼女を眺めていた。

 

「ああ……本当にがっかりだ。王宮の皆が憧れる、美しい王妃さまが本当はこんな……淫乱な女性(ひと)だなんて……」

 

グチュッグチュッと生々しい音を立てて、リーザの濡れそぼった淫部は、若く逞しい肉棒に貫かれている。

 

「あッ……あッ……いや……

気持ちいい…!……だめ……やめて……!

そう……そこ……もっと……エルシーリンド……」

 

拒みながらも、彼らの要求を受け入れてしまうことを、リーザの肉体はもう知っていた。

 

夫の可愛がる小姓たちに、彼女は下半身を委ね、その精をねだらされる。

 

小姓のエルシーリンドは、冷たく笑って仲間たちを見回した。

 

「たまらないな……王妃さま。もうトロトロだ――僕の精液をどこに出して欲しいんですか?

 

言ってください……僕たちの大好きな……このエロまんこに出してと、口に出して、ほら……」

 

はげしく貫かれながら、リーザは、首を振って耐えた。

 

いつも、最後には言わされることはわかっていても、心を折りたくなかった。

 

「あ……っダメ…………見ないで……いく……いきます……」

 

「さぁ、言って……殿下の前で言ってください……その美しいお口で」

 

責められるまま、白い乳房を振り立ててリーザは唇を押さえた。

 

「ああ……お願い……わたしの……エロまんこ……に出して……!!」

 

小姓たちは一斉に笑った。

 

涙をながして屈辱と快楽に耐えている王妃を見下ろしながら、小姓のエルシーリンドは所望されるままに、王妃の膣に大量の精を放った。

 

リーザはもう、あえてルシエルの名を呼ばなかった。

 

彼に抱かれているのだと、そう想像することで耐えようとしたこともあった。

 

しかし今では、その事でさえも、愛するひとへの裏切りとしか思えなかった。

 

ありとあらゆる痴態をさらし、彼らの尽きせぬ欲望によって、夜通し犯し続けられた。

 

 

*

 

 

(母上はまだ、――あいつの父(ルシエル)を愛しているのか)

 

イフはあえて、父と母の情交を見なかったが、彼らの寝所で何が行われているかは知っていた。

 

母の精神の中に作り上げた、彼だけの王国の中で……王妃である母・リーザは夜毎に彼の父に犯され尽くしていた。

 

ここは、イフが作り出したもう一つの世界であり、現実とは違うif(もしも)の夢でしかなかった。

 

偉大なるサタン帝王の後を継ぎ、彼の父・アスモデールが魔界を統べ、美しい母、そして魔界の王妃であるリーザが彼に寄り添う。

 

イフは、魔界のもっとも強大な血筋の正統な皇嗣――。父と共に、魔界の頂点に立つ存在のはずだった。

 

そして、現時点でそれは、彼の母の中に作り出した夢であり、ただの幻だった。

 

それでもイフは、この世界を捨てられないだろう、と思った。

 

このまま、母のなかに、イフの理想、夢の世界を作り続けたとして――。

 

現実世界でのリーザは眠り続け、衰弱し、やがて胎児とともに命を落とすだろう。

 

そうなった後のことは、イフにもまったく見当がつかなかった。

 

彼はあまりにも幼く、ただリーザの愛情を求めているだけだった。

 

母上が死んだら、どうなるのだろう、とイフは考えてみたが、わからなかった。

 

自分と同じように、肉体を失ったら、いつまでも一緒にいられるのだろうか。

 

それとも、消えてなくなってしまうのだろうか。

 

母が命を失ったあと、弟である胎児もくっついてくるのなら、それはそれで邪魔だな、とイフは思った。

 

仲良くしてやろうと思ったのに、弟はイフを拒絶し、弾き飛ばした。

 

あいつは、きらいだ。

 

イフはまた、考え込む。

 

誰か――彼を助けてくれる存在が必要だった。

 

イフと、母であるリーザを守ってくれる力を持った、力強い保護者。

 

弟である胎児と、その父であるルシエル公爵を憎み、排除したがっているなら、なお都合が良かった。

 

そして――サタン帝王の嫡子であり、彼の父であるアスモデールが、まさにイフの求めているその存在そのものだった。

 

いつか父に会いに行こう、とイフは思いついた。

 

夢の中ではなく現実で……

 

父・アスモデールが、母であるリーザを手に入れ、もう一度交わり、彼の肉体を作ってくれさえすれば、イフは魂としてそこに宿ればいい。

 

彼は……産まれたがっていた。

 

母であるリーザの胎内に、胎児として眠り、育まれることを夢見た。

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