半血魔王のクロニクル ~黒き貴公子シリーズ総集編~ 作:古弥須 凱
公爵邸の最奥。
厚い防音と魔術結界で外界から完全に隔絶されたルシエル夫妻の主寝室。
淡い青白い魔力結晶のランプはただ優しく、ゆっくりと揺らめきながら、ベッドの周囲を柔らかく照らしていた。
窓はすべて厚い遮光カーテンで閉ざされている。
外の世界がどれだけ騒がしくても、ここには決して届かない。
全てに疲れ果てて、ルシエルは、寝室のベッドの上にいた。
眠っているリーザの体を引き寄せ、そっと彼女の唇に口づけを落とす。
柔らかな唇が触れ合うと、すぐに熱を帯び、舌を滑り込ませて深く絡ませる。
甘い吐息が混じり合い、ルシエルは妻のやわらかな口内を味わうようにゆっくりと舌を這わせた。
長い金髪が乱れて肩に絡まり、ルシエルの指がその髪を優しくかきあげる。
「リーザ……お前の声が聞きたい」
紫の瞳がかすかに潤む。
愛する人を胸に抱きながら、ルシエルはあまりにも孤独だった。
彼女の体は温かく柔らかく、甘い吐息を漏らしていた。
彼女の肌を、その熱を感じたかった。
白い首筋に唇を寄せ、舌を這わせて甘く噛むと、リーザが小さく喘いだ。
その反応に、ルシエルはいつしか我を忘れていた。
リーザの胸元をゆっくりと開き、白い乳房を露わにする。
両手で優しく包み込み、柔らかな膨らみを揉みしだいた。
指先で乳首を摘み、軽く転がすと、リーザの体が無意識にびくんと震える。
ルシエルは乳首に唇を寄せ、舌先で転がし、強く吸い上げた。
甘い疼きが彼の下腹部を熱くこわばらせ、陰茎は痛いほどに硬く反り返っていた。
「……お前がいないと、俺は一夜も耐えられない」
寝衣をさらにまくり上げ、白い腿までを露わにする。
深い眠りに落ちている美しい新妻……その秘部に指を這わせる。
すでに熱く湿り気を帯び、内腿が無意識に震えていた。
ルシエルはリーザの表情を伺いながら、ゆっくりと指を沈めていく。
すぐに、潤む――くちゅ……と音をたてて、若妻の肉襞が押し開かれていく。
リーザは「あ……」と小さく声をあげ、唇を少し開いた。赤い舌がちらりとのぞいた。
「お前も……こんなに濡らして……高まっている」
その潤みを確認するように、ルシエルはあえて言葉に出した。
リーザの肉体は、深い眠りの中にあっても、こんなにも敏感に反応を返してくる。
蜜月の間、新妻として夫に激しく愛し抜かれていた体は、彼の与えた快楽を確かに深く覚え込んでいた。
「言葉にできなくとも、俺を欲しがっている……そうだろ……リーザ。お前は俺の妻だ。俺のものだ……」
ルシエルはリーザの片脚を持ち上げ、自分の陰茎を彼女の太ももに押しあてた。
先端から溢れる透明な液を塗り込むように、内腿に欲望をこすりつける。
ゆっくりと腰を前後に動かすと、ぬるぬるとした摩擦が甘く、熱く、神経を直撃する。
かりそめの慰めとして始めた行為だったはずが、そこから得られる背徳的な快楽は、ルシエルという男の本能を余計に昂らせた。
呼吸が乱れ、じっとりと汗が滲む。
リーザの体も無意識に反応し、内腿がわずかに震え、ぬめりが増して滑りが良くなる。
先端が彼女の秘部に軽く触れるたびに、リーザの体がびくっと震え、吐息が少し乱れる。
ルシエルは腰の動きを速め、陰茎を内腿の谷間で出し入れしていく。
そっと2本の指を添えて、リーザの花芯を開き、濡れた粘膜のあたたかさを彼自身で感じた。
硬く反りかえった陰茎は、新妻の慎ましやかな肉襞を割りひらき、クリトリスを容赦なく擦り立てる。
その摩擦が与える快楽に、リーザの体が無意識のままで震える。
「気持ちいいだろう……気持ちいいと言ってくれ、リーザ……俺も、たまらない……」
リーザの吐息が少しずつ乱れ、無意識の反応で内腿がルシエルの陰茎を捕らえるように強くこわばる。
「あ……」
熱い摩擦が積み重なり、リーザの秘部から微かに溢れる蜜が混じる。
とろついた粘液の感触がさらに濃厚になり、肌の間で甘い音を立てる。
「こんなに熱くほてっている……俺を欲しがっている。リーザ……俺が欲しいか……」
うわごとのように耳元で繰り返しながら、ルシエルは激しく葛藤した。
彼の美しい妻の肉体は、彼にすべてを委ね、すべてを赦してくれていた。
意識を失い、夢の世界に囚われていても、彼の愛撫に応えてくれている。
リーザは彼を愛している……だからこれは罪ではないと、ルシエルは思う。
「あぁ……俺を受け入れてくれ、リーザ。ほんの少しだけでいい……」
もはや自らを律することができなかった。
ルシエルはリーザの片腿を抱え、少しずつ陰茎を沈めていく。
今まさに、その胎内に彼の子を宿した、最も愛する女性。
魔界で正式に結ばれた妻――神聖なまでに清らかで美しいリーザを、彼は自身の欲望によって凌辱していた。
すでに熱く濡れた部分が音を立てながら彼を飲み込み、そっと締めつける。
おお……と、ルシエルはその快感にこらえきれず低く呻く。
「お前の
リーザの体は無意識に震え、微かな喘ぎのような吐息が漏れる。
温かくとろけた肉襞がルシエルに絡みつき、彼を受け入れ、欲望を熱で包み込む。
最初は浅く、遠慮がちに、リーザを優しく、ゆっくりと貫く……。
喉元に詰まるような快楽を押し殺し、早くなる腰の動きを宥めながら――
「大丈夫だ、リーザ……すぐ終わる……」
自分に言い聞かせながら、ルシエルはゆっくりと快楽を味わうように、その腰を動かしていく。
しかし、リーザの蜜壺がやわやわと締め付ける快楽に負け、動きは少しずつ速くなる。
彼は首を振りながら、悶え苦しんでいた。
男としての快楽が彼を苛み、夫としての罪悪感が、それを燃え立たせる……。
一度押し寄せた快楽の波をやり過ごしたあとは、もう止めることは不可能だった。
ルシエルは、ついに我慢することをやめた。
いや、できなくなった。
むしろ、彼にしては我慢が長く保ったほうだった。
リーザの乳房を両手で激しく掴み、そのまま彼女の肉体を自分の股間に激しく密着させていく。
もっと深く、もっと激しく。
ルシエルは彼自身の陰茎を、リーザの中に根元まで深々と差し入れている。
彼の子を孕んでいる、美しい妻の白い片脚をもちあげたまま、激しく腰を打ちつけていた。
柔らかな肉がぶつかり合う湿った音が響き、リーザの体が無意識に揺れる。
リーザは眠りながら声を漏らし、夫であるルシエルの求めるまま、その愛を無抵抗に受け入れていた。
「……お前がいないと俺は壊れる……だから、俺を受け入れてくれ……リーザ……俺の精を飲み干してくれ……」
絶頂が近づき、ルシエルはより強く妻を抱きしめた。
リーザの肉体は彼の中にありながら、その心は夢の中にしか存在しないことを知っていた。
もう押し寄せる絶頂を拒むことができず、彼はリーザの肉体のもっとも奥深いところで、全身を震わせ激しく射精していた。
声をあげたくなるような、圧倒的な快楽……
大量の精液がどくどくと放出されるたびに、ルシエルの思考は真っ白になる。
彼女の膣内で、何度も跳ねながら彼の陰茎が最後の一滴を放ち切るまで、貪欲に悦楽をむさぼっていた。
リーザの体が無意識のなかで、激しく痙攣する。
吐息が乱れ、精を一滴残らず飲み干したいとでもいうかのように、甘く彼をしぼりとろうと収縮を繰り返す。
ルシエルもさらに腰を押しつけ、陰茎を深く埋めたまま脈打つ。
ルシエルは満ち足りていた。
妻を犯し、彼女に精を注ぎ、ただその行為に満たされていた。
「……お前は俺の妻だ。永遠に俺のものだ……俺の精で満ちてる……」
満足の余韻、そしてどこか冷たい感情が同時に胸を去来する。
汗に濡れ、重たく水分を含んだ黒髪をかきあげたルシエルが見たのは――
彼のすぐ目の前で、彼の顔を覗き込む少年――イフの赤い瞳だった。
「お前は……!」
「俺の母上を犯しておいて、ずいぶん満ち足りてるんだな?公爵。
手淫よりずっと良かったろう」
イフの赤い瞳に浮かんでいるのは、アスモデールがサバトの晩に浮かべたのと同じ、あざけりの色だった。
「これで、よくも父親ヅラができるものだ。お前の息子も胎内で呆れてるだろう。まぁまた黙りこくってしまうだろうな。
父親に突っ込まれて、あんな間近にバシャバシャ
そうなったら、あいつの
イフの夢の中に、知らない間に引きずり込まれている――
「お前の惨めさは、見飽きてしまった。もういいよ。母上のところへお帰り。母上は優しい。負け犬だって愛してくれる」
イフの指先が、ぽうっと明るく灯り、ルシエルの額の中へ、ゆっくりと沈められていく。
「夢の中のお前が、本当の姿だよ、公爵。
――お前は欲望に負けて、母上を思うさま汚した。俺は見ていたし、お前の子も感じただろう。
言葉にするのもおぞましい……まさに最低の夫で、最悪の父親だな。
こんなのを父と呼ばなきゃならない、
公爵……お前は
イフの声が途切れた瞬間――視界が暗転し、何もかもが消えた。
*
ルシエルは、目を覚ました。
そこは、夢の中と同じく、彼ら夫婦自身の主寝室だった。
彼の腕に抱かれ、妻のリーザはその瞳は閉じたまま、微かに胸を上下させて眠っている。
ルシエルは手のひらで口元を覆う。
あの光景は――夢だった。
悪夢だったが――たしかに夢だった。
本当のルシエルではない……
欲望のままに
夢の中のお前が、本当の姿だと言った、イフのあざけり声が、まだ聞こえるようだった。
ルシエルが堕ちた快楽の全てが本物だったことは、彼が腿下まで夢精として放ち尽くした、大量の白濁が示していた。
やりきれない思いで、彼は下半身をシーツで拭った。
リーザの髪を乱暴に撫で、額に唇を押しつけた。
彼の美しい妻に、なにか言葉をかけたかった。
しかし言葉にしようとするだけ、虚しさがつのり、今の彼には何も発することが出来なかった。
そしてその日以降、ルシエルの夢は、すべて悪夢となった。
――イフの夢から、彼はもう逃げることが出来なくなっていた。