※この作品はR-18です。

半血魔王のクロニクル ~黒き貴公子シリーズ総集編~   作:古弥須 凱

69 / 97
14話 不義密通 上

アトリウムの空気は、湿った土と花の甘い香りで満ちていた。

 

温かな光が丸いガラス屋根を通り、淡く床を色づかせている。

 

魔界の王妃、リーザは黒いドレスを身にまとい、侍女を伴わず一人で立っていた。

 

縹(はなだ)色の竜胆の花壇の前に膝をつき、細い指で枯れた葉を丁寧に摘み取る。

 

その花言葉は、「――悲しんでいるあなたを愛する」。

 

青く沈んだ花弁が、彼女の心に寄り添う唯一の慰めだった。

 

静寂の中、背後に人の気配がした。

 

リーザは瞬時に身を硬くし、振り向こうとした――その刹那。

 

男の手が彼女の口を塞ぎ、強引に抱き寄せる。

 

腰をがっちりと固定され、背中を胸板に押しつけられる。

 

リーザの体がびくりと跳ね、両手でこの不埒な男の腕を掴んで引き剥がそうとする。

 

指が男の肌に食い込み、必死に抵抗するが、力の差は歴然だった。

 

男は、一言も発さない。

 

ただ、手のひらで口を塞ぎ続け、指が頰に深く食い込んで息を詰まらせる。

 

リーザは全身を震わせ、肘を後ろに振り抜いて脇腹を狙う。

 

彼の体が一瞬揺れるが、すぐに腕の力が強まり、彼女の体をさらに密着させる。

 

膝がガクガクと震え、竜胆の花弁が指先から散り落ちる。

 

「んっ……! や……め……!」

 

くぐもった声が手のひらに塞がれ、消える。

 

男の息が耳元に吹きかかり、低く抑えた声が響く。

 

「静かにしろ、リーザ……俺だ」

 

その声に、リーザの瞳が恐怖で見開かれた。

 

ルシエル。

 

かつての恋人であり、今は王妃としてアスモデールに縛られた彼女の、決して忘れられない存在。

 

ルシエルは無言で、黒い豪奢なドレスの襟元に指をかけ、強く引き下げる。

 

布地が張り、乳房の輪郭が露わになる。

 

裾を大きくまくり上げ、腰を引き寄せて背後から密着させる。

 

リーザの体が前かがみになり、花壇の縁に両手をつかされる形になる。

 

必死に体を起こそうとし、膝を曲げて逃げようとするが、ルシエルの膝が腿の間に割り込み、動きを完全に封じる。

 

塞がれた口からくぐもった拒絶の音が漏れる。

 

ルシエルは自分の前をほどき、すでに熱く硬くなった自身を彼女の秘部に押し当てる。

 

リーザの体が硬直し、最後の抵抗として腰を捩るが、ルシエルは無言で腰を押し進めようとする。

 

掌の中に押し付けられた唇が、はげしく震えるだけだ。

 

気高い王妃であるリーザには、かつての恋人を受け入れる用意などなかった。

 

ルシエルは体全体で彼女を抑えつけ、一瞬自由になった手に唾を貯め、それを陰茎に塗りつける。

 

そのまま、強引に膣口に押し込んでいく。

 

「……………………ンンンッ!!」

 

柔らかい内壁が彼を飲み込み、リーザの肢体がびくびくと痙攣する。

 

彼女の膣内(なか)は、拒んでいても温かかった。

 

ルシエルは低く息を吐き、腰をゆっくり、深く打ちつけ始めた。

 

波を起こすように、ゆっくりとした動き。

 

かつて恋人同士として過ごした濃密な日々の、快楽の記憶を呼び覚ましていく。

 

突き上げるたびにリーザの腰が跳ね、抵抗の声が手のひらで震える。

 

もう、とろけるように熱い……。

 

背後から容赦なく揺さぶられ、乳房がドレスの布地越しに激しく揺れる。

 

指が花壇の土を掻きむしり、涙が頰を伝い、青い花弁に落ちる。

 

ルシエルは首筋に唇を押しつけ、強く吸い上げながら、腰を深く、速く、容赦なく動かし続ける。

 

次第に、リーザの抵抗の力が弱まっていく。

 

王妃としての恐怖と、肉体が覚えている快楽の熱が混じり合い、女としての本能が彼を強く締め上げる。

 

腰の動きが速くなるたび、塞がれた口からくぐもった喘ぎが漏れ続ける。

 

おびただしい蜜が溢れ、クチュクチュと濡れた音が響く。

 

その音は聞くに堪えないほど淫らに、ルシエルの欲望を求めていた。

 

「……んんッ」

 

ルシエルはさらに深く沈め、彼女の奥を容赦なく突き上げる。

 

彼は、一言も発しなかった。

 

そして、リーザの口を封じたまま、一言も彼女からの拒絶のことばを許さなかった。

 

ただ、ルシエルの肉体を受け入れることを、強いた。

 

熱がこもり、額から汗が滴り落ちる。

 

リーザの瞳から涙が溢れ、体が激しく痙攣する。

 

内部がはげしく収縮し、彼を強く絞り上げる。

 

膝が震え、崩れそうになる。

 

「……あっ……」

 

塞がれた口から、くぐもった悲鳴のような喘ぎが漏れ、内部がルシエルを強く絞り上げるように締めつける。

 

このイフの夢の世界で……。

 

彼は没落した辺境伯であり、リーザはアスモデールに囚われた、魔界の王妃だった。

 

イフが仕掛けた残酷な罠の中で、ルシエルは不義密通の愛欲に自ら堕ちた。

 

頭では理解していても、この夢の中の快楽を手放せない。

 

リーザの熱が陰茎を溶かすように包み込み、脈打つたびに甘い痺れが全身を駆け巡る。

 

押し殺した呼吸が荒くなった。

 

激しく抜き差しされる淫部からは、ひたすらに激しい、みだらな粘着音が響く。

 

(お前は俺のものだ……永遠に俺のものだ……)

 

魔力を封じられ、念話は使えないルシエルだが、彼女の身体は言葉を必要としていなかった。

 

全てを――彼に委ねていた。

 

アスモデールが与え続けたどんな快楽よりも、今ここでルシエルと重ねる焔が、リーザを甘く燃え立たせた。

 

体が弓なりに反り、彼のすべてを受け入れようとする。

 

(忘れるな……お前は、俺の妻なんだ……)

 

リーザの膣が熱くとろけて、彼の精液をねだり、そのすべてを飲みほそうと締め上げる。

 

もうすぐ、爆ぜる――

 

ルシエルが低く吼え、むきだしの白い腰に己を深く押しつけて震えた。

 

(……いく……)

 

限界が近づき、熱い波が下腹部から爆発的に湧き上がる。

 

すべてが、真っ白になった。

 

ルシエルは、最後まで無言のままだった。

 

めくるめく快楽の中で、熱くほとばしる大量の白濁を、魔界の王妃の膣奥(なか)に放っていた。

 

 

*

 

 

ルシエルとリーザは、アトリウムの床に並んで座っていた。

 

それぞれ背後の植物台に身を預け、静かに息を整える。

 

不義の余熱がまだ体に残り、互いの体温が微かに伝わってくる。

 

リーザの黒いドレスは乱れ、裾が膝の上に広がっていた。

 

ルシエルは無言で腰の位置をずらし、彼女と触れ合う近さに座り直した。

 

その温かさを感じて、視線を落とす。

 

二人の間に、重い沈黙が流れた。

 

「なぜ、私の口を塞いだの」

 

「俺を、拒んでほしくなかった。ここでは、お前は王妃だ。……建前など、聞きたくなかった」

 

「そうね、王妃として、イフの…あの子の母親として……私は拒みつづけるべきだった。

……でも私は、あなたに奪われることを選んだ。おそろしい罪だわ」

 

「ここは、夢の中だ」

 

「わたしたちの夢は、もう終わっているのよ。あのサバトの晩に、すべて変わってしまった。」

 

その瞳に、言葉にし尽せない悲しみが溢れていた。

 

「いまの私は、イフの母親よ。

あの子だけが生きがいなの。とても素直で、やさしい子。

イフは、すべてを奪われた私が、その代償に手に入れた、たった一つの宝よ。」

 

かみ合わない会話。

 

ここがイフの夢であることを、今のリーザに説明したとしても、きっと理解してもらえないだろう。

 

彼女はもう、この世界の王妃として生きている。

 

この夢の中の彼女は、ルシエルを「かつての恋人」としてしか認識していないのかもしれなかった。

 

「あなたが来ることは、判っていたわ」

 

リーザが呟いた。

 

「あなたが王宮に現れたとき、あなたの冷たい瞳を見たときに、私はすぐに理解したわ。

いずれ、どんな手をつかっても、私を奪いにやってくると思った」

 

彼女はゆっくりとルシエルの肩に、そっと寄り掛かった。

 

ルシエルは無言で、彼女の肩を抱き寄せた。

 

「私を手に入れるためには、たとえ破滅してもかまわない。あなたはそういう人よ」

 

リーザの言葉は、優しくも鋭かった。

 

彼女ほど、ルシエルの本質を理解してくれている女性はいなかった。

 

「そうだな。このままでは、いずれ俺たちは破滅する――この世界にいる限りは」

 

リーザは小さく笑った。その笑みは、どこか寂しげだった。

 

「ここが私たちの世界よ、ルシエル。どこにも行き場はないわ。

だからこそ、私も破滅を選んだ……アスモデール陛下は、私を許さない。

イフを、あの子を遺して……逝くのが辛いわ」

 

リーザの言葉は、不義密通の結末を見据えていた。

 

やりきれない思いで、ルシエルは彼女の額を抱き寄せ、口づけを落とした。

 

それは、激しい渇望とは裏腹の、静かな愛情表現だった。

 

「わたしたち、接吻(くちづけ)をまだしていないわ。何年振りかに会ったのに、ひどい人ね」

 

リーザが優しく微笑む。

 

胸を締め付けられる思いで、ルシエルは彼女を抱きしめ、長い口づけを与えた。

 

唇が触れ合い、そっと舌が絡み合う。

 

静かなアトリウムの中で、二人の息遣いが重なり合う。

 

リーザの指がルシエルの背中に回り、彼を抱き返した。

 

ルシエルは優しく、しかし深く味わうように、長い時間をかけて口づけた。

 

やがて唇が離れると、リーザは目を閉じ、ルシエルの胸に顔を埋めた。

 

二人は言葉もなく、ただ互いの体温を感じ合っていた。

 

不義密通の罪に落ちた、愚かな恋人たちとなって。

 

霧がゆっくりとアトリウムを包み、青い竜胆の花が、静かに揺れ続けた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。