半血魔王のクロニクル ~黒き貴公子シリーズ総集編~ 作:古弥須 凱
今日は、ルシエルが先にアトリウムに来ていた。
王宮の外れ、皇嗣イフの遊び場である森のその場所で、静かにリーザを待っている。
イフの悪夢の中。
息子セオドアを、遊び相手として引き渡した対価として、ルシエル辺境伯は、王妃リーザとの密会の時間を与えられていた。
イフは……表面上、セオドアをいじめる素振りを見せなかった。
「俺たちは、今日はもっと遠くまで遊びに行こう。――遅くなるかも知れない。ルシエル卿、それでかまわないだろうか?」
毎回、ルシエルに確認を取る。
かまわないだろうか?、と。
今日のセオドアは、いつものように彼に縋りつかなかった。
紫の瞳で父親を見つめ、静かに諦めたように言った。
「父上。……殿下のお供をしてまいります」
イフは、ちらっとセオドアを横目でみて、ルシエルの了承を待った。
「殿下、……どうぞ、セオドアをお連れ下さい」
誇り高い魔王であるはずのルシエルが、イフに従属し、頭を下げる。
現実世界がどうあれ、イフの夢の世界の中ではこうだ。
アスモデールの妻を盗む、哀れな間男となったルシエルは、父としての矜持を売り渡す。
一時の快楽、不義密通の甘い蜜のために……。
ルシエルが、息子セオドアを差し出す恥辱の感情を、イフは思うさま存分に味わっていた。
ルシエルは、我が子よりも目先の
やつの息子は、まがいものだ……愛される価値のない子なのだ。
あの生意気な弟である胎児に、その役割を投影して、イフの心は満ち足りていた。
さあ、今日はどうやってセオドアと"遊んで"やろうか。
――時間はたっぷりある。彼らにも、俺たちにも。
「ありがとう、辺境伯」
イフは形式的に言った。
「きっと楽しい一日になる」
*
噛みつき合うような激しい接吻から、彼らの情交は始まった。
ルシエルはリーザを抱き上げ、勢いのまま植物台に載せる。
黒いドレスはすでに乱れ、裾が膝までまくり上がっている。
リーザの背中が植物台の縁に当たり、いくつかの鉢植えがわずかに揺れた。
ルシエルは無言で彼女の膝を広げ、自分の体を重ねた。
「まって……まだ……」
リーザが口を離したが、そのまま、ルシエルにまた塞がれる。
見つめ合ったまま、正常位の姿勢で体重をかけ、ゆっくりと自身を沈めていく。
リーザの肢体がびくりと跳ね、くぐもった喘ぎが漏れる。
「んっ……あ……」
彼は彼女の耳元に唇を寄せ、低く、抑揚のない声で囁く。
「お前は俺のものだ……」
言葉の響きは静かだが、その腰使いは執拗だった。
リーザの内部が、無意識に締まる。
ルシエルはさらに奥まで押し進める。
「あ……うぅっ……!」
彼女の奥をゆっくりと、しかし容赦なく突き上げながら、耳元で繰り返す。
「永遠に俺のものだ……」
彼の紫の瞳が、リーザの涙に濡れた瞳を捉える。
ルシエルの与える痛みが、徐々に彼女の熱に溶けていく。
「もっと痛くして、ルシエル。もっと……わたしの中に突き
愛する男の耳元で、リーザが短く、言った。
王妃の囁きは、誰にも聞かせたくないほど熱く、みだらだった。
ルシエルの指が彼女の腰を強く掴み、密着させたまま、腰を深く押しつけた。
甘く蕩けた肉壁が、すでに彼を強く締めつけ、その熱が根元まで伝わってくる。
「……そんな言葉を、どこで覚えてきたんだ、リーザ」
ルシエルは冷たく、黒い嫉妬心を隠さなかった。
耳朶を噛んだ。
ゆっくりと腰を引き、ほとんど抜けかけたところで、また残酷に沈める。
一度の動きで、リーザの喉から甘い悲鳴が零れる。
「あっ……!」
「アスモデールに抱かれて……奴に向けるのとおなじ言葉で、俺に精をねだるのか……リーザ……答えろ」
彼の声は静かだが、底に潜む屈辱と愛情が混じり合っていた。
「やめて……ルシエル、もう……」
さらに激しく突き上げられて、短く喘いだ。
「奴のことを言われて、お前がいっそう、俺を締め付けている……たまらない、気が狂いそうだ」
腰を短く、激しく打ちつける。
「俺の敵に抱かれて、お前のからだは変わった。淫らに俺を搾りとろうと、こんなに締め付けてくる……。
お前はもう、俺の腕に抱かれ、可愛らしく声を上げて泣いていた、俺のリーザではなくなった。
だがお前の
男としての屈辱と、リーザの成熟した肉体の与える快楽の両方が彼を苛んでいた。
彼は魔王であり、肉欲を司る
リーザの心と
現実でも夢の世界でも、激しく彼女に執着し、犯し、奪いつくす。
それが、ルシエルという男のありのままの姿だった。
「こんなに、いやらしい
アスモデールに夜ごと抱かれて、快楽におぼれていたのか。
……リーザ、答えろ。……俺を裏切っていたのか」
ルシエルの腰の動きがなお一層はげしく、苛烈に膣内を責め立てる。
「お前のことばかり考えていた……お前の肌を思い出して、夜毎、自分の手で慰んだ。
……俺が孤独に苦しんでいるのを知っていたはずだ。
それなのにお前は、アスモデールの与える快楽に酔い、俺との愛など忘れて、みだらに
そうだろう、リーザ。黙っていてもわかる、お前の
リーザは応えず、両手でルシエルの背中に爪を立て、強く抱きついた。
「アスモデールは……お前に何をさせた?どんな格好で、奴を受け入れた……?
教えてくれ、やつと同じことをしたい。……奴の痕跡すべてを、俺の精で塗り替えてやる」
内部が収縮し、彼をさらに深く引き込む。
「リーザ、お前は俺を愛している……それなのに、奴に堕とされたのか。
……淫らに腰を振って、奴の子を孕んだ……俺ではなく……奴の子を」
むごい言葉を浴びせながら、激しく求める。
「……ああ……すごくいい……もっと……
もっと私をいじめて……
私を責めて、ルシエル……。
すごく……硬くて……熱い……」
涙をこぼしながら、リーザもはげしく腰を使った。
「あなたを裏切ったわ。
あれから、すべての夜で……あなたを裏切った……。
あの男に抱かれ、調教しつくされて……私は堕ちたの……。
アスモデールは寝室に……彼のお気に入りの小姓を呼び込んだ。
少年たちに囲まれて、彼らの若い欲望の視線に晒されながら……アスモデールは私を犯した……。
そして夫は……小姓たちに私の肉体を弄ばせたわ。
何人も……かわるがわる……。彼らは私の胸を吸い立て、舌であそこを舐めまわした。
二人ずつ、私の唇と、あそこに肉棒を突き入れて激しく動かした。
わたしの肉体を使った
はじめは抗ったわ……。でももう、私はどうにもできなかった……。
ああ……ルシエル、すごく感じる……もっと突いて……!」
ルシエルは息を呑み、腰の動きを一瞬止めて、冷たく問い返す。
「小姓たちに……?
奴の子ネズミどもに、王妃のお前が体を許したのか?
どんなふうに、犯されたんだ……?
全て言え、リーザ。
俺の女が、そんなガキどもにいいように
リーザの体がびくりと震え、内壁が彼を強く締めつける。喘ぎを交えながら、言葉を続ける。
「ええ……奴の命令で、毎晩のように……。
アスモデールを、口と
争うように熱いものを交互に押し込んで……お尻までなんども使われて……。
どんなに痛みを感じても、
私は夫が、じぶんのお気に入りの小姓に投げ与えた
……彼らの若い欲望にもみくちゃにされ、強引に喉奥まで犯されて、苦い精液を飲まされ続けたわ。
待ちきれない子たちは、私の身体に精液を掛けてくるの。
白く、べっとりと汚されて……小姓たちの匂いにむせかえりそうだった。
もうあふれるほど白濁を垂らしている
心でどんなに拒んでも、休むことを許されずに犯し尽くされた。
彼らは……そこを……"エロまんこ"と呼んだわ。わたしにも、そう口に出すことを要求した。
王妃であるわたしを……そう呼んで嘲って……代わる代わるに射精した。
私は王妃なのに、そんなみだらな姿を晒して……。
小姓たちの若くて逞しい
……でも、体は正直で……何度も
何度も、何度もよ。
正直にいうわ、あなたのことを忘れそうになるほどの……絶頂だった。
ルシエル、これで満足した……?
私はもう、あなたの知っているリーザじゃないわ。
あなたに愛される、資格を失ったの。
さぁ、私を責めて……もう取り返しがつかない……私はもう堕ちきった女よ」
ルシエルは嫉妬の炎に焼かれながら、腰を激しく打ちつけ、耳元で囁く。
「奴の小姓どもに……お前がなぶられ、汚されたと……想像しただけで、頭がおかしくなりそうだ。
ここは、俺だけの蜜壺だ……
あいつらの”エロまんこ”ではない……」
むごい言葉を浴びせながら、激しく求める。
「だが、それでこそ俺が取り戻す価値がある。お前の心もからだも、すべて俺のものだ。
お前の体に残る、奴らの臭いを、俺の魔精で完全に消してやる……」
「……ルシエル、私を許して……
いえ、許さないで。
もっと責めて、私の体をあなただけのものに戻して……」
頰を伝う涙を、ルシエルは舌でゆっくりと舐め取った。
こんなに苛烈に言葉を尽くしても尚、心から愛する
「俺は……俺は、お前を愛しつづけてきた。それなのに、お前は……」
「私が堕ちたのは……あなたが、私を救えなかったからよ」
リーザは、震える声で、しかしはっきりとそう言った。
「あのサバトの夜に、あなたに救ってほしかった。……あなたに初めてを捧げたかったわ、ルシエル。
あなたを、愛していたから」
二人は、見つめ合った。
「そうだな……俺はお前を救えなかった」
同じ傷を抱えた恋人たちは、互いを傷つけ、その傷からしたたる血を舐め、なお激しく求めあった。
「俺も、同じ地獄に堕ちたい……いっそふたりで、もっと堕ちよう……」
瞳を閉じ、舌を激しく絡ませる。
ルシエルは腰を速め、しかし乱暴にはせず、確実に最奥を突く。
植物台が軋み、吐息と湿った音だけがアトリウムに響く。
「リーザ……お前は俺の妻だ。永遠に、俺のものだ……」
呪文のように繰り返す。
リーザの瞳が潤み、新たな涙が零れる。
「……ええ……永遠に……あなたのものよ、ルシエル」
小さく頷き、首に腕を回して引き寄せる。
唇が重なり、舌が絡む。
噛みつくような、貪るようなキス。
「俺の子を孕め、リーザ。俺の精で、お前の子宮をいっぱいにしてやる……」
ルシエルは腰を沈めたまま、耳元で囁く。
リーザの体が激しく震え、内壁が彼を絞り上げる。
「……産みたい……あなたの子供を授けて……」
声は、ほとんど泣き声に変わっていた。
ルシエルは抱きしめたまま、動きを止めず、ゆっくり高みへ導く。
「そうだ……お前は俺のものだ。誰にも渡さない……」
からだが、溶け合うように密着する。
アトリウムの湿った空気の中で、禁断の蜜が溢れ始める。
ルシエルは低く息を吐き、首筋に唇を這わせ、最後に確信を込めて囁いた。
「ああ……俺の精で……おまえを満たしてやる……リーザ……」
その言葉が、リーザの心を縛り、体を震わせた。
ルシエルは彼女を抱きしめたまま、激しく、執拗に繰り返し腰を動かし続ける。
「お前は俺の妻だ……永遠に俺のものだ……」
植物台がギシギシと悲鳴を上げ、土がこぼれ続ける。
リーザの指が台の縁を掴み、はげしく前後に揺さぶられる。
乳房が波打ち、汗が滴る。
「あっ……あっ……してっ…ルシエル…
ルシエルは息を止めて、腰をさらに深く沈め、彼女の奥を激しく突き上げる。
「
低く抑えた声からは信じられないほどに、彼の腰使いは激しく滅茶苦茶になるまでリーザを押し開き、膣奥をえぐり抜いた。
「ああっ……お願い……いく……いくわ…!!」
鉢植えの一つが傾き、土と花が床にこぼれ落ちた。
リーザの体が弓なりに反り、はげしい絶頂が訪れる。
「リーザ……受けてくれ、
彼女の膝がガクガクと震え、激しく痙攣する。
「だめっ……ルシエル……私いく……」
その唇から小さな舌がおどり、最後に鋭く長く喘ぎが漏れた。
ルシエルが低く吼え、彼女の腰に己を押しつけて震えた。
「ああ……
くはぁっと喉に溜まった空気を、みな吐き出した。
何も、考えられなくなった。
「残酷だが……あいつらが正しかった。
お前の"エロまんこ"は……最高だ」
思わず、言葉に出た。
低く抑えた声からは信じられないほどに、彼の腰使いは激しく乱れていく。
ルシエルの堕ちた、凄まじい快楽の地獄に、リーザもためらわず身を投じてくれた。
二人は、欲望でかたく結びつき、ひとつに溶け合った。
リーザの内壁が最後の抵抗のように強く収縮し、彼の先端を締め上げた。
「出して……ルシエル……」
リーザの声が、とぎれとぎれに……しかし、はっきりと聞こえた。
「わたしの……堕ちた
ルシエルの理性の最後の糸が切れ、欲望がすべてを塗りつぶした。
彼女の髪を掴んで引き寄せ、すべてをぐちゃぐちゃに壊すつもりで、激しくえぐり抜いた。
「ああ……いくっ……!……」
リーザの体がびくびくと痙攣し、膝がガクガクと震えた。
内壁が彼の脈動に合わせて収縮を繰り返し、最後の一滴まで絞り取るように締め付ける。
全身を震わせて、リーザがか細く絶叫した。
「――――――――――!!」
こらえきれずに、熱くほとばしる大量の白濁を、リーザの
何にも代えられない、圧倒的な快楽。
ルシエルが放つ魔精が、どくどくと注がれ続ける。
一撃ごとに子宮口を叩き、溢れ出るほどの魔精が、彼女の内側を満たしていく。
リーザの声は小さく、しかし震えながら漏れた。
「あ……あ……こんなに一杯……奥まで……」
白濁が溢れ、結合部から太ももを伝って滴り落ち、植物台の縁を濡らした。
ルシエルは、ああ……と低く吼え、彼女の腰に己を押しつけたまま震えた。
そして達した後も、短く声を漏らしながら、そのまま何度も執拗に腰を突き上げた。
最後の一滴まで、彼の精液をしごき出し、リーザの中に放った。
脈打つたびに、まだ快楽の残滓がルシエルを甘く満たした。
すべてが、出尽くした。
彼はリーザを手に入れるまでずっと、ひたすら渇き、苦しんできた。
しかし、いま彼女のなかに全てを放ち尽くして――そして満ち足りていた。
ゆっくりと腰を引くと、抜けた瞬間にリーザの膣口がひくひくと震え、飲みこぼした精液がとろとろと溢れ出した。
ルシエルは力尽き、彼の愛する
リーザはルシエルの重みを全身で受け止めながら、少し息を詰まらせた。
男の
ただ、静かな情愛だけが残った。
二人は植物台の上で、息を荒げながら、ただ寄り添う。
「我を失った……だが、俺は満ち足りた。こんな快楽を得たのは、生まれて初めてだ」
ルシエルは、彼女の胸に甘えるように頭をもたせかけた。
「死んでもいい、という言葉の意味を知った」
リーザが微笑む。
「そうね、私も死ぬほど……心の底からのよろこびを、感じたわ」
つかの間の愛と、密通が露見したその時の破滅を見据えて、彼女はルシエルに寄り添ってくれていた。
彼の恋人であり、妻であるリーザの手を取った。
その指先に
「俺は、これから眠る……もし、もう目覚めなければ、お前と子と、一緒に死ぬことになるだろう。
だが……俺は必ず生きて戻る」
「ルシエル、何を言ってるの……?」
瞳の中から、ゆっくりと紫の光が薄れていく。
「お前にはすまないが、俺はこれからイフを、殺す。
……お前を、この夢から救い出す」
「まって……!」
ごとん、と音を立てて、リーザの胸からルシエルの頭が落ちた。
彼の名を呼ぶ、リーザの声を聞きながら、ルシエルは完全に意識を失っていった。