※この作品はR-18です。

半血魔王のクロニクル ~黒き貴公子シリーズ総集編~   作:古弥須 凱

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15話 近親相姦 下

その夜、二人は何度も交わった。

 

一度からだが離れても、すぐに抱き合い、口づけを貪り、互いの体液でしとどに濡れそぼった。

 

ベアトリチェの豊かな乳房を揉みしだき、乳首を強く吸う。

 

姉君の膣内(なか)へ何度も注ぎ込みながら、ルシエルは決して満足しなかった。

 

「離れたくない……ビーチェと、一日だって、離れていたくない……。

俺たちは離れていると、きっと悪いことが起きる。

ビーチェと俺は——ずっと一緒にいなければ駄目なんだ」

 

射精の余韻のなかで、ルシエルは姉の乳房に顔を埋めた。

 

ベアトリチェは優しく弟の黒髪を撫で、しかしその瞳には、冷たい現実の影が宿っていた。 

 

「ルーク……私は、アスモデール殿下の婚約者として、王宮に呼び出されることになったわ。

半年後には、正式な婚約式……。

 

お前も、婿養子先を探さなければならない。

公爵家として、父の名代の女当主として、お前を他家に送り出す準備を進めなければいけないわ……」

 

ルシエルの紫の瞳が、暗く揺れた。

 

「……嫌だ。絶対に嫌だ。

お前を、他の男に抱かせるなんて……考えただけで、頭がおかしくなる」

 

彼はベアトリチェの体を強く抱きしめ、再び硬くなったものを姉の内部に押し込んだ。

 

「俺も、結婚なんて考えたくもない。お前以外の女に満足できるはずもない」

 

ベアトリチェは甘く喘ぎながらも、弟の耳元で囁いた。

 

「わたしも、お前以外の男ではもう満足できない。

私たちは、血の絆で結ばれている。

でも、現実は私たちを……引き離そうとしている」

 

ルシエルに激しく突き動かされて、美しい姉君は息を詰まらせた。

 

「私たちは一緒にいても、いなくても破滅する……

もうそう定められてしまったわ」

 

「ビーチェ。他の女などいらない。

お前を妻にしたい……お前に注ぎ、俺の子を産ませたい」

 

ルシエルは、はっきりと魔界の禁忌を口にした。

 

どのような残虐な行為も、謀略も、弑逆も、謀反も、淫らで破廉恥な欲情も、倫理にもとるすべての事象が許されている、この魔性の世界で。

 

——サタン王家から唯一禁じられているのが、肉親同士による結婚だった。

 

子孫へと繋ぐ魔性の血を、よりいっそう濃く重ね、強い子孫を得るための近親相姦の悦びを、王家はみずからの一族の中だけに許していた。

 

ベアトリチェとルシエルの関係が露見すれば、魔界でもっとも旧い一族である、ハデス公爵家は破滅する。

 

彼らは、初めて関係を持ったその時から、その事実を知っていた。

 

ベアトリチェは激しい快楽に身をよじった。

 

「ええ…ルシエル、もっとお前の魔精を注いで。わたしを塗りつぶして…」

 

「お前は、俺の妻だ、ベアトリチェ。——俺の子を産む女だ」

 

言葉と肉体の両方で、愛する女性(ひと)をきつく責め立てながら、ルシエルは姉君の膣内にむけて、衝動のままはげしく射精を繰り返した。

 

やがて訪れる破滅の日々を待ちながら、なお一層はげしく肉体を求めあい、愛し合った。

 

 

*

 

 

その日から、二人の愛はさらに歪んだ。

 

ベアトリチェが王宮へ向かう日が近づくにつれ、ルシエルは一日に何度も姉を求めた。

 

昼は幻術で隠れ、夜は寝室に忍び込み、時には狩猟場の奥、ワインセラーの暗闇で、激しく交わった。

 

ベアトリチェもまた、弟の執着を拒まなかった。

 

むしろ、積極的に誘うようになった。

 

「ルーク……今夜も、私をお前のものにして……もうすぐアスモデールに抱かれるこの肉体を、思う存分、お前に犯してほしいの」

 

彼女は弟の前で自ら脚を開き、豊満な乳房を揉みながら、淫らに腰をくねらせた。

 

ルシエルは嫉妬と狂気に駆られ、姉を壁に押しつけ、後ろから獣のように貫いた。

 

「俺のものだ……ビーチェ……お前は、俺だけのものだ……!」

 

射精の瞬間、ルシエルの魔力が暴走しかけ、部屋の家具が震えた。

 

ベアトリチェは恍惚と喘ぎながらも、心の奥底に感じる破滅の予兆に突き動かされるように、より一層みだらに絶頂を繰り返した。

 

(ルークは……もう、私なしでは生きられない……。

そして私も、この子の肉体に貫かれなければ、一晩もこの疼きに耐えられない……)

 

婚約期間が本格的に始まると、現実は容赦なく二人を切り裂いた。

 

ベアトリチェは王宮へ頻繁に招かれ、アスモデール王子と公の場で並ぶ姿を、魔界中に晒された。

 

一方のルシエルは、婿養子候補として他家の姫君との会食、舞踏会、お茶会を強いられた。

 

彼は、毎日のように値踏みされ、女たちの視線に晒された。

 

ベアトリチェが許す時には、”味見”と称して、その肉体を提供した。

 

魔界の令嬢たちは、彼女の母親、姉妹、友人たちと一緒になって、”未来の婿養子”にまたがり、ルシエルを存分に犯し続けた。

 

そして、なによりもルシエルを苛立たせたのは、ベアトリチェに課せられた婚約の儀式だった。

 

すべてが、厳格な契約に基づいて行われる魔界では、王族の婚儀完了までに数十年の時間がかかる。

 

ベアトリチェの婚約が成立してからも、彼女は花嫁となるための、数多くの儀式を積み重ねなければならなかった。

 

魔界の婚姻に、花嫁の処女性は不要だった。

 

誰よりも淫らに、烈しい情欲に啼き狂い、男の情欲を燃えたたせる……。

 

妻として、王子の妃として求められる資質として。

 

その婚約期間である年月を費やして、ベアトリチェは彼女の婚約者のまえで、淫蕩な花嫁であることを証明しなければならなかった。

 

そしてついに、その最初の儀式の日が決まった。

 

王宮から届いた召喚状には、サタン王家の黒い紋章が刻印されていた。

 

 

*

 

 

その最初の儀式を翌日に控えた夜。

 

ベアトリチェは鏡の前に、素裸のままで立っていた。

 

重々しく白く実った乳房、そして女神のように豊かな曲線(カーブ)を描いた、完璧な美がそこに映し出されていた。

 

魔界の王妃となることを約束された公爵令嬢——それが、ベアトリチェの本来の役割だった。

 

そこに確定している、逃れられない未来。

 

その事実を、自覚しなかったことは一度もなかった。

 

ただ、いつか終わりが来ることを知りながら、終わらせることが出来なかった。

 

彼女の背後——その寝台にある裸のルシエルが、ただ彼女を見つめていた。

 

立ち上がり、鏡の前の彼女を後ろから固く抱きしめた。

 

「……お前は、俺のものだ」

 

ベアトリチェは答えなかった。

 

答える必要もなかった。

 

彼らが自ら招いた「破滅」が、もう二人の目の前まで来ていた。

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