ドMで引きこもりな私でも露出調教してくれますか? 作:わずみかん
「うぅ~ん……。あれ……?」
「おう、目が覚めたか」
「前田君……? ここは……」
あれから数時間。日はすっかり峠を越し、徐々に夕方へと入りつつある時間帯だ。
笹原はぱちくりと何度かまばたきをすると、目を手でこすりながら辺りを伺う。
「私は……あれ? どうしちゃったんだろう」
「道ばたで倒れたんだよ。盛大に口からゲロ吐き出しながらな」
俺は読んでいた小説を机に置いて笹原の方へと目をやる。やはり自分がどうなったのかもよく覚えていないらしい。
笹原は部屋をぐるっと見回した後、自分がベッドで寝かされている事に気が付く。
「わわっ!」
「あんま慌てんな。ここは俺の部屋だ」
「ま、前田君の?」
「ああ。お前言ったろ? もし自分が倒れたら先に帰っても良いって」
俺は無表情のままそのやや目つきの尖った視線を笹原へ送る。
「そ、それじゃあ前田君が、私をここまで運んでくれたんだ」
「勘違いするな。あのまま放っておこうにも、お前がリーマンに捕まったら俺まで大変な事になりかねないからな。俺にとっても必要な事をしただけだ」
現に、俺は意識を失った笹原に思わず駆け寄っちまった。見ず知らずの振りをしておけばあの場では巻き込まれなかったものを……。そのせいで、あのリーマンにも他人の振りをする訳にはいかなくなっちまったし、まあ最善とまではいかなくても、これがベターな方法だったとは思う。
しかも生憎ながら、あそこから俺の家までは徒歩で十分かからない。笹原を担いでいくにしても、そこまで無理難題と言うわけでもなかったわけだ。
「あ、あれ。前田君、私のローター……それに……」
「んなもんとっくに外したわ。俺の家でまであんな卑猥なもん装着されたくない」
何かを探すような仕草をしたので、ん、と俺は顎を部屋の角に向ける。その先にはタオルに包まれた七つのローターが転がっていて、ゲロ塗れになった首輪もついでにタオルで拭き取った後、一緒にしてまとめてある。
「そ、そう……」
「なんでちょっと残念そうなんだよ」
「べ、別に! せっかく前田君の家に入れたのにローターの振動がなくて残念だなーなんて思ってないよ!」
笹原はそう言いながら手と首をぶんぶんと振った。こいつ、人をごまかすのが究極的に下手だ。
「んな事は良いから、これからどうするのか考えようぜ。お前のお姉さんはいつ頃帰ってくるんだ?」
「お、お姉ちゃんならもうしばらくは帰ってこないと思う。少し遠い所まで歩いて買い物行ってるし」
歩いて? あぁ、そう言えばこいつの家を出るときに車がまだ止まってたな。
「歩いて買い物って、また律儀な事してるな。エコ活動ってやつか?」
「ううん、違うと思う。えっと、明日にまた前田君が来るって言ったら、お姉ちゃん急に朝から買い物に行くって。夜までは帰ってこないって言ってた」
「……あぁ、そうか」
なぜだろう。色々と余計な気を回されてる気がしないでもないが……。
「それよりも前田君の方は良かったの? その、私なんて家に上げちゃって……」
それはどういう意味で言ってるんだ。変態を上げたことについてか? それともゲロまみれの人間を上げた方なのか?
と内心突っ込みたかったが、そこでいちいち追求してたら話がいつまでも進まないので、はぁー……。とわざとらしく溜息を吐いてから、また読みかけの小説を手に取る。
「俺だって家族の前でお前をかつぎ込む度胸は流石にねえよ。今日はたまたま全員出払ってるんだ。お前を家に上げた理由なんてその程度のもんだよ」
「そ、そう、なんだ……」
すると笹原は布団をめくり、トンと床に足をつける。
「あ、わぁ!」
「今度はどうしたんだよ」
「ま、前田君、こ、これ……」
見ると、笹原がめくった布団の内側には、服に付着していた吐しゃ物が移っていた。同じように笹原の背中でも、まるで影法師のように黄色い染みがシーツについている。
「ご、ごめんなさい! 私のせいだよね。ベッド、汚れちゃってる……。本当にごめんなさい!!」
「…………」
俺は二度、三度と頭を下げる笹原を一瞥すると、また小説の文章へと視線を落とす。
「別に。お前、結構汗出てたし、床で寝かせるわけにもいかなかったからな」
「で、でも!」
「だから別に俺が勝手にやっただけなんだから、お前が謝る事じゃない」
まあそれでもできる限りはタオルでふき取ったんだがな。その後に着替えさせようにも、気を失った女子の体をあれやこれや触るわけにもいかないし。
っつうか、それに関してはこいつの乳房から膣の中まで見てる俺が言うかって話だが、それとこれとはまた別問題だよな。決して自分から女子の服を脱がすのに躊躇いがあったとか言うことじゃない。うん。
「その様子じゃ熱はもう引いてるみたいだな。まだお前の家に帰れないんなら、風呂でも入ってこいよ。そのままじゃ気持ち悪いだろ」
「でも、前田君だって」
「俺?」
そこで俺は初めて自分の着ている服へと目を向ける。すると、あちこちに笹原の胃液っぽいものが付着していた。笹原を家に運ぶときにでも着いたのだろうか。
「まあ、俺は良いよ。そこまでじゃないし」
「だ、ダメだよ!!」
だが笹原はそこで、昨日までで一番の大声を出す。
「私、お世話になりっぱなしで、今回も助けてもらって、それなのに先にお風呂にだなんて……」
「あー、そうかよ」
俺としてはそれなりに鼻を刺すこの臭いを早く解消したいのだが、この様子じゃ俺が先に行かないと
俺の部屋がこれ以上ゲロ臭くなるのもあれだし、しょうがない。さっさと入ってくるか。
「んじゃ、お前はここで待ってろ。俺が風呂から出たら交代だ」
「う、うん!」
「着替えは、そうだな。妹のがあるからついでに取ってくるか」
うちで笹原の着替えになりそうな物と言えば、お袋か妹の着てる服くらいしかない。お袋はサイズ的に小さいだろうし、風呂が終わった後にでも妹の部屋によって適当なもん見繕って来るか。妹のだと逆にかなりでかい気もするが、まあ入らんわけでもないし大丈夫だろう。
「んじゃ行ってくる」
「はい! 行ってらっしゃい!」
なぜか気合いの入った返事をする笹原に?マークを浮かべながら、俺は部屋を出て階段を下りる。
にしても正直、俺はあいつの『引きこもり』を甘く見ていたのかもしれない。引きこもりについて詳しく知識が有るわけじゃないが、まさか外で他人の男に言い寄られただけで胃液をぶちまけながら気絶するって尋常じゃない。
このままあいつは外に出られずにいったいどうやって生きていくつもりなのだろう、とか、あの調子じゃ野外で露出プレイとか絶対不可能だよなぁ、とか、我ながら余計な思考が頭の中を走っていく。
だがしかし、ここまでとなると笹原カンナって奴が抱いている“引きこもり”になった原因ってなんなんだろうな。もしかすると相当なトラウマか何かでもあるのか。どっちにしても、あいつにとって並大抵の問題では無さそうだが、今の俺はそこまで言及するような立場でもないだろうな。
なんて事を考えている間に、俺は脱衣所の扉を開ける。それからそそくさと服とズボン、パンツを脱ぎ捨てて、洗濯機の横のかごへと放り込んだ。
全裸で風呂場へ入ると、まずは蛇口を捻ってシャワーノズルから水を出す。それから水の温度が徐々に上がってくるのを確認して、シャワーのお湯を体へとかけた。
「臭い、明日の朝くらいまでは取れないかもな」
肩の辺りをすんすんと嗅いでみるが、やはりどこか酸っぱい臭いがする。
「クラスメイトのオナニーを見たのも昨日が初めてだが、女子が吐いてるところを間近で見るのも初めてだ」
なんてモラルもエチケットも無い台詞を口に出してる時だった。
ガラガラ。
っと、誰かが脱衣所の扉を開ける音がしてくる。
誰だ? 笹原は部屋に居るはずだし、もしかすると
我が妹である綾子は、俺より二つも歳が低いくせに身長だけやたら高い。その上に態度まで上から目線だったりするのだから可愛くない。いや嘘だけど。普通に可愛いんだけどな。まあ兎も角、その長身を買われ、今はバレーボールの部活に入っている。今日も部活の練習とかでもう少し遅くなるはずだが、まあ時間がズレる事なんてザラだし、汗で濡れた服を洗濯機にでも放り込みにでも来たのだろう。
「笹原、ちゃんと部屋に居るんだろうな」
もしも綾子に笹原の姿が見られたらと思うと戦慄すら覚える。マジでそれだけは勘弁願いたい。状況の説明だけでも何度放送禁止用語を言うハメになるか分からん。少なくとも可愛い妹にそんな兄貴の姿は見せたくない。
「おい、もう帰ってきたのか?」
俺は風呂場のガラス戸に映る影に言葉をかける。だが、そいつは無言のままにせっせと服を脱ぎ始めた。
「今日は父さんと母さん遅いぞ。飯、確かお前が当番だったよな?」
笹原と遭遇する確率を少しでも下げる為、俺は綾子に晩飯当番の話を持ち出す。これでリビングに止めておけばしばらくは大丈夫だろう。
「俺も腹減ってるから、早めに頼むぞ」
だが、なんだろう。この人影、少し様子がおかしい。
「おーい、綾子?」
よく見ていると、その影は俺の妹にしてはかなり小柄なような気がする。加えて、何故かパンツのようなものまで脱ぎ始めていた。
綾子は普段、家に帰ってくると確かに汗を吸った運動着を脱ぎたがるが、パンツまでは流石に脱がない。というよりも、そんな格好で普段から『兄ちゃんご飯まだー?』なんてリビングでくつろがれた日には俺の身が持たん。
つまり、この影は。
「失礼、します」
「なっ!?」
「あの、えっと」
そいつは、笹原カンナは、なんのつもりか全裸で、それも手に持っているタオルでどこかを隠すこともせず、正真正銘の素っ裸で俺の居る風呂場へ入って来やがった。
「な、なんのつもりだお前!?」
「やっぱりこのままじゃ悪いなぁと思って……! その、だから私で良かったら前田君の背中、流してあげようかなって」
「余計なお世話だ!! ガキじゃないんだからそれくらい一人で足りてるっつうの! いいからお前は部屋に戻って―」
『ただいまー』
お、おいおい。
おいおいおいおいおい!!
今の声、間違いない。
「きゃ!?」
俺はいそいそと突っ立ってる笹原の腕を掴み、風呂場の中へと引き込む。
「兄ちゃーん? 先に帰ってたの?」
玄関から聞こえるのは間違いなく我が妹の綾子の声である。
「最悪だ」
この状況。間違いなく絶体絶命のタイミングである。
「あの、前田君?」
「いいから静かにしてくれ、頼む」
「だ、だけど」
見ると、笹原は何故か顔を赤らめている。
というか、笹原の顔、近い……?
「っ!?」
おそらく、さっき咄嗟にこいつの腕を引っ張ったからだろう。
体勢を崩した笹原は俺の正面へと倒れ込み、そのまま体を密着させていた。わかりやすく言うと、笹原が俺に抱きついているような格好になっている。
「なっ―」
そのせいで笹原の腕や太股はおろか、乳房の突起まで鮮明に俺の肌から感触が伝わってくる。
「わ、私は別に、前田君がそうしたいなら……」
「ちが、これは事故でっ!」
だが。
「あの、前田君」
「うっ……」
俺の下腹部、まるでそこに血液が集められてるかのように、どくん、どくんと体が唸るにつれて、あそこが立ち上がってくる。
くそ、今はそんな場合じゃないだろ!? 止まれ、頼むから止まってくれ!
と念じるが、そんなもので男子校性の煩悩が収まるなら苦労なんて無いのは当の本人が一番分かっている。
「前田、君……」
つうかどうしてこいつまで次第に鼻息荒くなってんだよ!!
俺は慌てて手を股間に当てようとするが、笹原の体が邪魔でそこに行き着けない。そしてその竿は一瞬にして成長し、とうとう笹原の体へと触れてしまう。
それも互いに抱きついている格好のせいか、俺の竿は笹原の陰唇に挟み込まれるかのように、ぴとっとその割れ目に押し付ける形で勃起する。
「兄ちゃん? ご飯はどうするー?」
のしりと廊下の床を軋ませて、綾子がこちらへ歩いてくる。
このままじゃヤバい。いやヤバいなんてもんじゃない。この姿をもし綾子に見られたら……!
考えたくも無いが、きっと朝まで生家族会議じゃ済まない。そもそも俺が家族の全員からたこ殴りに合うだけの時間を会議と称して良いものだろうか。
「頼む、こっちに来るな」
だが、どうやら神は俺を見放したらしい。
「兄ちゃん?」
ガラ、と脱衣所の扉が開く。
「い、今は風呂だ! すぐに上がるからお前は部屋で待ってろ!」
「う、うん」
不幸中の幸いか、俺と笹原は互いに体を重ね合わせてる為、ガラス戸越しの脱衣所からは二人の人間が居るようには見えないはず。
「あ、あのね、前田君」
「おま、状況分かってんのか……!? 今は喋ってる場合じゃ」
「私の、パンツ……」
「んあ?」
笹原の、パンツ?
そう言えばさっき、こいつ脱衣所で下着も脱いでたよな。
「ん、待てよ」
こいつのパンツって、まさかあの。
股間のところだけ切り抜かれてるドすけべパンツか。
「っ!?」
瞬間、俺は頭が真っ白になる。
「兄ちゃん、なんだか見たことのない服が置いてあるけど」
そして悪魔に魅入られたように、綾子はその笹原の衣服へと手を運ぶ。