ドMで引きこもりな私でも露出調教してくれますか? 作:わずみかん
俺は高架下に沿って男達が消えた方へと向かう。
右も左も分からない街の中を俺はただ走り続ける。だがどれだけ走っても、あいつらの
姿が見えてこない。
「クソ、クソクソ、クソっ……!」
血の匂いと焦りが俺の頭をかき乱す。
おかしい。遅れは少しのはずなのに、どうして追いつかないんだ。
俺は改めて辺りを見る。高架下に沿って道が真っすぐに伸びていて、その周りにはいくつかの飲食店と、さらに周りには住宅街が広がっていた。
「路地の方に入り込まれたら流石に見つからない……! でもスズを連れたまま住宅街の方なんて入るか? いや、流石にそんなことは出来ないはずだ……!」
抵抗するスズを強引に連れている以上、もし人気のある住宅地なんかに入ればメガネでなくても警察に通報する。
となれば、人目につかない道がどこかに必ず有るはずだ。そしてそいつが限られた順路になる以上、きっとあいつらが隠れられそうな場所もその近くにあるはずなんだ。
にしても土地勘がさっぱりないせいで、これ以上どちらに向かえば良いのか全く見当もつかない。第一もしそんな道があるにしても、地元の人間でない俺が見つけるのは至難の業だ。
ダメだ。このままじゃ本当に間に合わなくなる……!
「どこだ、どこに行った……!?」
俺はさらに首を辺りへ振る。しかしあるのは住宅地の民家と、それから高架下に軒を連ねる飲み屋だけだ。
「……っ!」
だが俺の視線は、ある方向で止まる。
見つけたのは高架下の向こう側、右側の道路の奥に見える砂浜だった。
「そう言えば、あいつら海浜公園にスズを呼び出したって……!」
俺は縋る思いで砂浜へと出る。
そこは聞いていたとおりレジャー向けの砂浜公園だった。平日でも水着姿のカップルや家族連れで盛り上がっている。
高架沿いの道から階段を降りると海の家があって、そして看板には敷地内の案内が描かれていた。
「無理だ……。こんな視界も広くて、人も多い場所にスズ連れ込むなんて、絶対に……!」
だが俺に残されたヒントはここまでしかない。
考えろ、考えろ考えろ。
一呼吸入れて、ゆっくりと息を吐いて、それから考えろ。
あいつらはすぐ近くにいるはずだ。そして人気の無い場所にスズを連れ去ったはずなんだ。
「……クソっ! こういう時にメガネなら直ぐ答えを見つけるんだろうな」
しかしそのメガネも今は居ない。
焦る気持ちからつい悪態をついてしまう。メガネが悪いわけじゃないのは分かっているが、自分の無力さを思い知ると憤りが湧いてくる。
「人気の無い場所で、ここから近いところ、海浜公園……」
そこで俺は、ふと案内地図に描かれたある場所に目が行く。
そこは海浜公園の中でも一番隅にあって、なおかつ周りに人の来そうな場所はない。
「公衆、トイレ……!」
海浜公園の端に有り、かつ利便性が悪そうな場所にある公衆トイレ。
海の家が近い砂浜の客はまず間違いなく使わない。おまけに道路からも距離があるから、周りから見える心配もない。
「ここか……!」
俺はそのまま地図にある公衆トイレへと走り出した。
最短ルートを通る為に砂浜を真っすぐに突っ切る。視界の左右には海水浴を楽しむ人達の姿があって、何故かそいつらの笑顔だけがやたらと目に入った。
きっと自分が羨んでいるからだと思った。俺とは縁遠い世界だと思っていた充実のエンジョイライフってやつを満喫しているその姿を、俺は妬んでいるのだ。
自分の人生なんて灰色で良いと思っていた。そこには彩なんてなくて、輝かしい青春も艶やかな学生生活も、俺は早々に諦めているのだ。
自分に魅力が無くて、周りにも興味が持てない。否、興味が持てないのではなく、興味を持ってもらえないだろうと諦めているからこそ孤独を演じていているのだと思う。しかし俺はそういう人生を、やっぱりどこかつまらないと感じているのだ。
だからこそ、俺にとってこの数日間が特別だった。
なのに、それがどうしてなんだよ。どうして周りの連中には何の災難も不幸も無くて、こうまで幸せを謳歌してるってのに、俺だけがこうして泣きながら走らなきゃならないんだ。おかしいだろ、不公平じゃないか。
俺が何したって言うんだよ。どうして俺だけが掴みたいものを掴めなくて、周りの連中だけがさも当たり前のようにそいつを持ってるんだ。
……そうだよな。そこに何の違いがあるのか分からなくて、そしてそいつを理解してないからこそ俺には掴めないのだという事も、心のどこかでは分かっている。分かってるからこそ、分かっていながらに理解しないふりをし続ける自分に愛想が尽きたのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ…………!」
だけど、どうか。
どれだけ自分が惨めで、無力で、くだらない人間だとしても、今この時だけは特別な何かであってくれ。
神が居るというのなら祈るし、仏が居るなら懇願する。もしもその他の誰かに頭を下げて済むのなら、俺の頭なんて幾らでも下げてやる。
だからどうか。スズだけは無事であってくれ。
俺とスズとのたった一つの約束だけは、守らせてくれ。
「はぁ、はぁ、はぁ……!!」
そうして俺は砂浜を抜けて、目的だった公衆トイレの前に立った。
「……声がする」
しかも公衆トイレの男子便所の方からは、数人の人間の声が聞こえてくる。
『お、お願い、お願いします……!』
『ぎゃはは! 今更だっての!』
「……スズ!!」
そこから聞こえてきたスズの声に、俺は条件反射にトイレの中へと駆け込んだ。
「スズ、スズ!!」
「あ……?」
すると同時に、あの男がこちらをギロリと睨む。
「おうおう。ヒーローのお出ましってか。ホントうざいクソガキだなぁおい」
そして公衆トイレの床に押さえつけられているのは、他でもないスズだった。
「今からいいトコなんだよ。ほら、あっちいけクソガキ」
数人の男に手足と体を掴まれて、そしてあろうことか胸や股間部をまさぐる様に、男達の手が這っている。
俺は一瞬にして、スズが何をされているのか分かった。
「お、お前らぁあああ!!」
叫びをあげ、俺は男達に向かって駆け出す。
「うぉおおおおお!!」
「馬鹿だなぁホント」
視点が、周る。
何が起こったのか、俺にはすぐ分からなかった。
視界がくるっと回転する。体が宙に浮いて、そのまま背中が床に激突した。
「かはぁっ……!?」
目に見えたのは公衆トイレの天井で、そこでようやく自分の身体が転がされたのだと知った。
「クソが!! クソガキ!! クソクソ!! 死ね、死ね!!」
そして男の顔と、靴の裏が俺の顔に重なると、そいつが力強く落下してくる。
「が、がはっ!」
「おうおう、容赦ねえなぁやっぱ」
痛い。
痛い痛い痛い!!
「おら! このボケ!!」
何度も何度も顔が踏まれる。起き上がろうともがくと、今度は脇腹に重い衝撃が走って、痛さのあまりに呼吸が止まる。
「が、はっ」
なんだこれ。痛い。
痛い、痛い。
「何様のつもりだお前? あぁ?」
「コ、コン!? お願い、もうやめて! 止めて、下さい……!」
「なに言ってんだよ。こいつとお前とは別件だろ? お前はお前で、俺にするべきことがあんだろうが。こいつはそれ邪魔したからこうなっただけだ」
声は聞こえるが、会話の内容までは分からない。
なんだよこれ。今までの中で一番痛てえ。こんなの、妹と喧嘩して以来だ。
「あ?」
痛くて、口の中から血の味がする。それでも俺は、脇腹を手で押さえながら立ち上がった。
「……馬鹿じゃねえの?」
男の呆れた顔が俺を睨む。
「スズを……スズを返せ!」
「……はぁ。これだから物事を知らないガキは嫌いなんだ」
すると男はくいっと顎をこちらにやると、それを合図にスズを押さえていた何人かが俺の身体を取り押さえる。
「やめろ、クソ、この!!」
「暴れるなって、今からお前に良い事聞かせてやるからよ」
男はそう言うと、胸ポケットから煙草とライターを取りだして、そいつを一呼吸だけ吸って吐く。
「お前、こいつが俺らとどういう関係か、知ってんのか?」
「し、知るかよ……! そんなことはどうでも良いだろ!!」
「どうでもよかねえよクソガキ。こいつはな、売られたんだよ」
それは同然のように発せられた言葉だった。
「売られた……?」
だからこそ俺は、その言葉の真意を理解するまでに時間がかかってしまった。
そんなことがこの世にあるとまだ知らなくて、だからこそ想像すらできなくて、でも男の言葉にやたらと悪意が篭っているのだけが感じ取れる。
「だから売られたんよ。鈍いなぁおい。こいつはな、母親に売られたんだよ。借金のかたにな」
売られた。それは『何』をだ?
「こいつの母親はな、俺の親父に借金こさえてんだよ。数百じゃねえぜ? 数千だ。だからこいつの母親は自分の娘が慰み者になるのも黙認してる。ま、大人の取引ってやつだな」
「お前、何言って……?」
そんな事、あるはずない。
あってたまるか。
「それじゃあ、スズは……」
「こいつはまだガキだが、顔も体つきも悪くねえ。だからこうやってほぼ毎晩呼び出して、させてんのさ。俺達に『奉仕』ってのをな。ぎゃははは! そろそろ風呂に落とす頃合いだろうから、その調教も兼ねてな」
「…………」
スズが黙る。俺もまた空いた口を塞げないまま、男を凝視していた。
「それじゃあ、スズが呼び出されたって言うのは……」
「そうだ。こいつの母親のせいだよ。ま、母親の方は返済のあてが有るなんて言っちゃあいるが、どうだかな。どちらにせよ、親子揃ってソープ勤めになんのは目に見えてる」
「そ、んな……」
俺には男の出す言葉の節々が理解できなかった。しかしそいつが何を意味していて、何を言っているのか。どことなく察する事は出来た。
「それじゃあスズがこんなことになってるのは、スズの母親のせいだっていうのか……?」
街で絡まれて困ってるとか、ただいじめに遭ってるとか、そう言う理由じゃなくて、もっとどろっとしててどす黒い理由――。
「そうだよ。だからよく聞けやクソガキ。お前のやってることは見当外れも大概なんだぜ? 俺達は別に悪人じゃねえ。こいつは被害者でもねえ。これは正当な報いってやつだ」
違う。そんなのは間違ってる。
そう頭で思っても声には出せなかった。
変に頭が回る。こいつの言ってることまで『理解』しようとしてる自分に反吐が出た。
「…………」
スズは黙ったまま何も言わない。多分男の言ってることは真実で、スズもそれが分かっているのだ。どうして自分がこんなにも惨い仕打ちを受けているのか、分かっているからこそ『助けて』の一言が出ないのだ。
「まあ丁度良いわ。そこで見てろよ。最後の仕上げが待ってるぜ」
「な、何するつもりだ……!?」
「んなこたぁ決まってんだろ? おい」
男が声を出すと、スズから手が離れていく。そして代わりに男がスズが抱きかかえるように持ち上げた。
「ほら、こことかさぁ。ガキの癖に育ちは良いよな」
「なっ……!?」
すると男はぐったりしたスズの胸を大きく握り、そして指で感触を確かめるように揉みしだく。
「う、はぅ……」
「ほらな。散々弄ってやったからよ、もう感じてんだぜこのメスガキ」
男は次にスズの胸の上をぐりっと指先でつまむと、そのまま指の腹でねじりまわす。
「う、んんっ……!」
「ボーイフレンドに見られて嬉しいか真昼? お前がいっつもされてるところを見られてよぉ」
男はさらにスズを引っ張ったままトイレの奥へと向かっていく。そこには扉が開いたままの個室便器が有った。
「いよいよだぜ坊主。お前のお気に入りが他の男のもんになる瞬間だ」
男は便器に座ると、スズの身体を持ち上げて自分の上に座らせる。
そしてその後に、カチャカチャとズボンのベルトを緩めると、そこから何かを取り出した。
「よっと」
それは何か、ではない。俺は男の股間部から大きく沿った棒状の物を見て、体が震えた。
「お、お願い……やめて、下さい……」
「なに言ってんだよ真昼。お前も楽しみにしてたんだろぉ?」
男はスズの足を強引に左右へ開かせると、ツインテールの片方を握って強引に顔を持ち上げる。そしてその耳元で囁くように、そうスズに言った。
「い、いや……!」
スズの身体が震えている。しかしただ恐怖に震えているだけではない。
身体は小刻みに震えていて、だけど一定のリズムが有った。そこには、恐怖とは別の感情まで孕んでいるように見えてしまう。
「運が良かったなぁガキ。その歳でこんな幸運なイベントに立ち会う機会なんて中々ないぜ。本来ならヤバいルートで裏物を取り寄せるとか、アングラな配信サイトを拝むかしねえと見れない光景だ」
男はスズの頬をめろりと舐める。それに反応してスズの身体はゾクリとしなった。
「スズに、スズに、何をする気だ……?」
「ここまでして分からないかなぁ。これだからガキッてのはからかい甲斐が無いんだよな。まあいいや。そこで大人しく見とけや」
男はスズの太ももをさすり、そのままゆっくりと、じらすように股間部へとなぞる。
「いや……、いや……」
スズは涙目になった瞳をぎゅっと閉じて、口を食いしばらせながら何かに耐えている。
体がまた震えている。ぞくりと、まるで何かに這われているようにスズの身体が痙攣する。
「さて、いよいよ御開帳だ」
「や、やめろ……」
俺はそう声に出す。だが男は下卑た笑みを返すと、スズのパンツをぐいっと手でまくり上げた。
「いや、いやぁ……」
「ほーら。見えちまった」
スズは強引に足を開かせられたまま、スカートをまくられ、さえぎる物が何もない状態で秘部を晒される。
「うひょおお!」
「待ってました!」
周りの男達が騒ぎ、歓声を上げる。
「お前ら、まさか……!」
「その通り。これからこいつの処女を奪う」
嘘だろ。
そんな事が、現実であるのか……?
「公衆トイレのそれも男子便器の上で、男の見世物になりながら処女を散らすんだ。なぁ、最高だろ真昼?」
「……っ」
スズは何も言わない。諦めてしまったのか、それとも抵抗できないのか。何も言わなかった。
「ク、クソぉおおおお!! ふざけるな!! お前、スズにおかしなことしてみろ!! 絶対にゆるさないぞ!!」
「吠えてろよ雑魚が。お前には何もできやしないっての」
ヤバい、ヤバい。
なんだこれ、嘘だろ?
こんなバカな事が、本当に起こっていいのか?
「……コン」
スズが小さくか細い声でそう呟く。
「ぎゃははは! 助けてくださいってか? なら頼む相手が違うよなぁ?」
ダメだ。このままじゃ本当に……!
「スズ……。俺、スズと約束したよな……。なら、そいつは絶対に守るよ。だから、だから……」
「はぁ? 何言ってんだよんな涙声で」
そうだ。約束したんだ。
スズは助けを求めてて、だから俺がスズを守るって。そう約束したんだ。
だから頼む。俺がスズを救わなきゃならないんだ。だから……!
「ぎゃははは! それじゃあいくぜ!!」
「やめろ、やめろぉおおおおおお!!」
男の先端がスズの秘部に向かう。
俺の目の前で、俺の手が届かない場所で、それはいとも容易く行われた。
「スズぅううううう!!!!」
「ぎゃはははは!!」
男が容赦なく腰を突き上げる。
「あ、あぁ……!」
ダメだ。ダメなんだ。俺が、スズを守らないと。
でも……俺は……。
やっぱりスズを守れないのか。約束も何も守れないまま、俺は……。
あぁ、気が遠くなる。俺はこのまま、なにもできないまま、こんなところで……。
…………
……
…。
「はぁ、はぁ!!」
気が付くと、俺は全身汗まみれにしながら横に寝かされていた。
そこでふと額に柔らかなものが触れる。そして頭の下も、コンクリートとは思えない感触で包まれていた。
「ふふ、気が付いたんだ」
「時宮、先輩……?」
目を開けると、時宮先輩が俺の顔を覗き込む。
「って、これ!?」
「そ、膝枕。一度してみたかったんだ」
先輩はお茶目に笑うと、俺の頭を優しく撫でる。
「お、俺は……」
「前田くんってば、あれから気を失っちゃったんだよ?」
「気を、失った……?」
「まあ、30分くらいだったけれどね」
辺りを見回すと、そこは公衆トイレの中だった。
首を横にすると、そこにはバケツとモップが丁寧に置いてあって、床は少し湿っていたが、照明の光が反射するくらいに綺麗に磨かれていた。
「そ、そう言えば俺、時宮先輩と……!」
「はいはい。焦らない焦らない」
起き上がろうとすると、先輩が手でそっと俺を押さえつける。と言うよりも、先輩の胸が邪魔で顔を上げれなかっただけだけど。
「前田くん。体はもう大丈夫?」
「か、体……?」
「うん。ほら、例の恐怖症」
「恐怖症……?」
そうだ。俺は先輩との約束を守ろうとして、ここで先輩をレイプするつもりで……。
「やっぱり、なんともないみたいね」
「と、時宮先輩、俺は……」
「前田くん。大切な事は、きちんと思い出せたかしら?」
時宮先輩はやっぱりメガネ越しに、柔らかな笑みを俺へと向けた。
「思い、出し……」
そうだ。
俺は、長い夢を見ていたんだ。
あの夏の、あの日に起こった出来事までの、その長い記憶の夢を。