※この作品はR-18です。

ドMで引きこもりな私でも露出調教してくれますか?   作:わずみかん

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健全男女のデートな一日 鈴谷真昼の場合⑤

「むぅ~……」

 

 本屋を出た俺達は、中央通りを向こう側にわたるべく交差点を待っていた。

 

「しょうがねえだろ。何時まで拗ねてんだよ」

「だってだって!」

 

 隣では鈴谷が残念そうに頬をむくれさせている。

 

「そもそも俺達がエロ本買うってのがまず無理難題なんだよ」

「それでも私にとっては宝の山だったんですよぉ」

 

 事のあらましを話せば、レジに大量の同人誌を積み上げた鈴谷だったが、店員さんから苦笑いで『年齢確認の出来る物はお持ちですか?』と聞かれ、『見た目は高校生でも中身はアダルトです!』なんて答えたものだから問答無用で追い出されてしまった。お前はどこぞの小学生探偵かよ。

 

「まあ気持ちは分かるけどな。俺も昔に似たようなことあったし」

「そう言えば先輩のお部屋にもエッチな本、たくさんありましたよね」

「そっちじゃねえよ。俺が言ってるのはモデルガンの話だ。あのBB弾とか発射するやつな。それから男子にそう軽々とエロ本事情を聞くな。禁句だぞ」

 

 最近ではオモチャの銃ですら年齢制限がかかる世の中だ。まあ威力が強いやつだと普通に段ボールとか貫通するから危険と言えばそうなんだけど。

 

「お前の方こそ大量にあったエロ漫画どこで買ってるんだ?」

「私のは通販とか近所の本屋さんとかですかね?」

「なら今回も通販じゃダメだったのかよ」

「それが同人誌だとどうしても通販で売って無い物もあるので、お店で買わなきゃなんですよねぇ」

 

 そう言うと鈴谷はまた溜め息を吐いた。どうやらその同人誌を買えなかったのがよほど残念だったらしい。

 

「良いですよぉ。私は先輩とエッチな本が見れただけで満足しますから」

「こっちはお前のバカに付き合ったせいで、もうあの店に行けなくなったけどな」

 

 これで欲しかったラノベの新刊も買えず仕舞いだ。

 

「いいから次行くぞ。どうせまだ続けるんだろ?」

「えへへ。そうですよねっ! デートはまだこれからですもんね!」

「だから抱き着いてくるな暑苦しい!」

 

 すると鈴谷は人の大勢いる路上でも気にもせず腕に抱き着いてくる。

 

 普段は何事も器用にこなすイメージの強い鈴谷だが、この後輩は基本的に頭の中が直線的と言うか、ありていに言えば馬鹿なのだ。

 

 何も考えて無さそうに見えて実は色々と考えていたり、かと思えば何か考えが有りそうで何も考えていない。その行動理由の全てが自分の欲望に忠実過ぎるせいで、やはり頭の方は悪くなくてもこいつの場合は馬鹿なのである。

 

 しかしそれでも鈴谷にも抱えている過去がある。笹原との事もそうだが、5年前の夏に起こったあの事件の記憶を持ちながら、鈴谷はまだ笑顔でいようとしている。

 

「…………」

「どうかしましたか先輩ぃ?」

「いや、お前もつくづく懲りねぇなって思ってさ」

「はい! だって私は一生先輩の肉奴隷で居続けるって誓いましたからぁ!」

「公衆の面前でなんて宣言してくれちゃてんだよ。お前のせいでめっちゃ見られてんじゃんかよ」

「きっといいカップルだなぁって思いながら見てるんですよぉ」

「そうかそうか。どうりでさっきから誰も俺と視線合わせてくれないわけだ」

「皆さん照れ屋さんなんですね」

「お前のその無駄にポジティブな自信はどっから来るんだよホント……」

 

 それから俺達は信号が青に変わった横断歩道を渡る。

 

 やはり秋葉と言えば都心の一等地だ。どこに行けども人の多さは変わらず、時間が経つごとに人の密度は上がっていく。

 

「あ、見て下さい先輩! メイドさんですよっ!」

 

 すると鈴谷は何かを見つけて指さし、同時に視界に映ったビラ配りのメイドさんに一目散に駆けていく。それから「いぇーい!」なんて言ってメイドさんと写真を撮ってもらっている。お前は初めてアキバにきた外国人観光客か。

 

「こらこら、人様に迷惑をかけるなって」

「どこのお店なんですか?」

「人の話聞けよ」

 

 すると鈴谷は相手をしてもらったメイドさんのビラを見て、次に俺の方へと駆け寄ってきた。なんだか凄く嫌な予感がする。

 

「先輩っ! 次はここ行きましょう!」

「やっぱりか……」

 

 鈴谷は目をキラキラに輝かせながら俺にそう言い寄ってくる。

 

「えっと、すいません。変な絡み方しちゃって」

 

 俺はひとまずメイドさんにそう言うと、そのメイドさんもちっとも嫌がる素振りを見せずに笑顔で答える。

 

「いえいえ、私なら全然大丈夫ですよ。むしろこんなに可愛い女子高生様に抱き着かれるなんてご褒美ですから」

 

 するとそのメイドさんは嬉しそうに頬に手を添える。

 

 その声を聴くとまるでアニメキャラのようにきゃぴきゃぴとしていた。こう言うのをアニメ声と言うのだろうか。

 

「それよりも、良かったら彼氏さんもご一緒にいかがでしょうか。うちのお店はランチも評判が良いんですよ」

「か、彼氏……?」

 

 それからメイドさんは俺に向けて謎のウィンクをかましてくる。いやなに、何の合図なのそれ?

 

「今ならカップルサービスもやってますので」

「いや、俺とこいつは」

「カップルサービスって何があるんですか?」

「今ならなんと! 制服コスチュームが無料でレンタルできちゃいます!」

 

 メイドさんはそう言うと、やっぱりまた謎のウィンクを向けてくる。いやさっきからなんなんだこの人。

 

「いえ、だから俺とこいつは別にカップルじゃ……」

「先輩?」

 

 メイドさんの言葉を否定しようとしたところで、鈴谷が俺の服をぐいぐいと引っ張る。

 

「今日は私が先輩の彼女なんですよね?」

「……まぁ、確かにそうは言ったけどさ」

「ならお願いですぅ。私このお店に行きたいですぅ!」

「何がお前のレーダーにそこまで引っかかったんだよ」

「だってカップルサービスですよ? 制服コスチュームが無料ですよ?」

 

 どうやら鈴谷はカップルだのコスプレだのという言葉に反応してしまったらしい。

 そもそも制服コスプレって、お前の場合は普段から女子高生だろ。

 

「ついでにカップルのお客様にはワンドリンクもついてきます」

「いや、ついでの方がまともじゃないですか」

「そうですか? この街だと普通だと思いますけど」

 

 コスプレ制服の方がサービスとしての重要度が高いって、流石は秋葉原だな……。

 

「まあいいか。ちょうどクソ暑い気温にもくたびれてきたところだしな」

 

 それにこいつの場合、一度言い出したら聞かなさそうだしな。その辺りは姉妹っぽいぜ。

 

「ありがとうございます。それでは二名様ご案内~!」

 

 と言う事で、俺達はそのメイド喫茶に行くことになった。

 

 

 

 

 

 

「こちらです」

 

 しばらくして案内されたのは、路地を一本入った所にあるビルの中だ。

 

 階段を登り二階にたどり着いたところで、少し怪しげな扉と立て看板が見えてくる。

 隠れ家的と言えばいいのか、特に目立ったわけでもない雑居ビルの中にあるせいで知らなければそこに店が有るとは思えない雰囲気だ。

 

「なんだかドキドキしますね!」

「鈴谷はメイド喫茶とか入った事ねえの?」

「はい。初めてです」

「そうなのか。さっきはあれだけ興味持ってたし、てっきりそう言うのも好きなのかと思ったよ」

「あ、でもメイドさんのコスプレしながらのお仕事には少しだけ興味あるかもです」

「……それはどうして?」

「だってぇ、ミニスカですよ? 中に色々と仕込みながらお給仕するって考えたらもう涎が」

「メイドさんに謝れ。今すぐ全国のメイドさんに謝れ」

 

 頬を染め始める鈴谷に、俺は軽く引き気味に言葉を返す。 

 

「それではどうぞ、ごゆっくりしていってくださいね」

 

 と、やはりアニメキャラのような声で言いながらメイドさんが扉を開く。

 

「「いらっしゃいませご主人様~!」」

 

 それから俺達が中に入ると、聞いたことのある掛け声と共に二人のメイドさんがこちらに頭を下げる。

 

「結構混んでるんだな」

「そりゃもう。私達のお店は一部マニアの方に有名ですので」

「なんか店の入り口といいその触れ込みといい、かなり怪しいお店に感じるんですけど……」

 

 しかし店の中は意外にも落ち着いた雰囲気の喫茶店になっていた。

 

 シックな木目の壁と床、それから背の広いソファに黒いテーブル。所々には観葉植物も置いてある。

 

 知らなければ分からないような店にも関わらず、席は二十名ほどの男性客でほとんど埋まっていた。それでもゆとりのある店内はさほど窮屈さはなく、ゆったりとしたBGMなんかがかけられている。

 

「それではこちらのテーブルにどうぞ」

 

 それからメイドさんにテーブルまで案内してもらうと、俺達は荷物を置いてひとまず息を入れた。

 

「皆さん可愛いですね」

「メイド喫茶なんて初めて入ったぜ」

 

 落ち着いて店内を見回してみると、そこかしこでメイド服を着たスタッフが男性客に明るい笑みを振りまいている。

 

「けどなんつうか、あのメイド服ってやけにスカート丈短くないか?」

「ふふ、やっぱり先輩ってそういうところばかり見てるんですね。あ、なんなら私のスカートの中も見ちゃいます? 先輩になら特別に見せちゃいますよぉ。ほーら、今日のパンツは何色でしょう。ちらっ」

「別にお前のパンツとかいらねぇっての」

「もう見飽きちゃいました?」

「そんな普段からパンツ見まくってる変態みたいに言うな」

「なるほどそうですか。やっぱり先輩は見せられるより覗き見る方が好きなんですね。確かに無意識に見えちゃってる女の子のパンツの方が背徳的です」

「そんな謎のポリシーは持ってねえよ」

「でも本当はぁ、先輩も私のスカートに興味深々なんですよねぇ」

 

 そう言うと、鈴谷は小悪魔的に目を細めながら、わざとらしく足を組んでスカートを乱す。

 

 すると軽く持ち上がったスカートから絶妙な加減で太ももが露になる。なんとも姑息と言うか、俺の視線はまるでフレア弾に誘導されたミサイルみたいに鈴谷の方へと集中する。いかん、こいつの挑発に乗せられるな。耐えろ俺……!

 

「べ、別にお前のに興味なんかねえよ」

「そう言いながらちゃんと見てくれる辺りが先輩ですよねぇ。本当に先輩ってばエッチなんですからぁ」

「下らないことしてないで、さっさとメニュー選ぶぞ」

「見たくなったら何時でも言って下さいね。先輩のためなら私、どんな場所でもお見せできちゃいますから」

「だからならねえっての」

 

 俺はそう言ってため息をついてから、手元に有ったメニューを開いてみる。

 

 するとメニューの中は美味そうな料理の写真がずらりと並んでいた。種類もかなり豊富だ。

 

「こういう店にしては食い物も結構あるんだな」

 

 そう言えばさっきのメイドさんもランチが評判だとか言ってたっけ。

  

「先輩はどれにします?」

「つっても、腹もそこまで減ってないしな」

 

 時間を見ると時刻は午前の12時前。起きた時間が遅い事もあって、やはり腹の加減はいまいちだ。

 

「じゃあ何か適当に頼んどいてくれ。別に嫌いなもんとか無いから」

 

 そう言ってメニューを手渡すと、鈴谷は不服そうに顔をしかめさせた。

 

「もぉ、先輩? そう言うところが鈍いんですよ?」

「何がだよ?」

「こういう時はもっと会話を弾ませるものなんです」

「会話たって、メニューを選ぶだけだろ?」

「……そんなんだから先輩は何時まで経ってもダメなんです。それだと笹原先輩とも上手くいきませんよ?」

「どうしてここで笹原が出てくるんだよ」

「鈍い先輩の将来の事まで心配するだなんて、私ってなんて健気な後輩なんでしょう」

「悪かったな鈍くて。そもそも女子と一緒に外出とかこれまでだってあんまなかったんだよ」

 

 どうやら俺の受け答えは鈴谷的には落第点らしい。しかし女子とのデートなんてこれまで復習はおろか予習すら許されなかったのだから仕方ない。

 

「んじゃあ、この特性オムライスってのにするわ。一番安いし」

 

 俺はさっき見えたメニューの中で一番安価だった物を注文する。

 値段としてはこの手の店にしては良心的なのか、どれも800円程度の物ばかりだ。

 

「じゃあ私はこのスイーツパフェにします!」

「昼間っから生クリームばっか食ってると太るぞ」

「先輩って本当にデリカシーが無いですね」

「……あぁ、悪ったよ。折角のデートってやつだもんな」

「いえいえ、私だから喜んじゃいますけど」

 

 そう言うと口元を嬉しそうに綻ばせる。なんつうか、こういう表情だけは普通に女の子っぽいんだけどな。

 なんて話していると、またさっきのメイドさんがテーブルまでやってくる。

 

「注文はお決まりですか?」

「えっと、俺はこの特性オムライスで、他はスイーツパフェをお願いします。それとオレンジジュース二つ下さい」

「ありがとうございます~! あ、それとこちらはもう一つのサービスになりますね」

 

 そう言うと、メイドさんは俺に一つの鍵を手渡した。

 

「こちらの奥に更衣室がありますので。制服のコスプレ衣装もその中に用意してありますから」

「コスプレの貸し出しってそういうシステムなのか」

「はい。あ、なんなら彼氏さんも一緒にどうですか?」

「一緒にって、男用の制服もあるんですか?」

「いえいえ~! 同じお部屋でくんずほぐれつなカップルお着替えを楽しんでいただければと~」

「なるほど!」

「いやなるほどじゃねえよ。どこに納得してんだよ」

 

 メイドさんの言葉に食いつくように立ち上がる鈴谷。いや何一つ良くないからね? と言うかこのメイドさんも何言ってるのさっきから。

 

「そこはですよ先輩? 郷に入っては郷に従えとも言いますし、ここはメイドのお姉さんが言う通り一緒にお着替えをですね! お互いにイケない所も見せ合いながらお楽しみするのも良いのではないでしょうか」

「だから良かねえって言ってんだろ! それにそこまでいくと郷ってよりもはや魔境の間違いじゃねえか」

「メイドの私が言うのもなんですけど、アキバが魔境って言われるとそうなんですよね」

 

 メイドのお姉さんは指をピンと立てると、俺の言葉にそう乗っかってくる。いや魔境呼ばわりの元凶はあんただからね?

 

「いいから早くいって来いって。俺は待ってるから」

「分かりましたぁ。それでは少しだけお時間を頂きますね!」

 

 すると鈴谷は渡された鍵を持って店の奥へと引っ込んでいく。

 

「まったく、騒がしいところに来ちまったな…………ん?」

 

 それからソファに背を倒していると、なんだが周りの客がそわそわしてるような気配がする。

 

『おい、今の子かなり可愛くなかったか?』

『まるで美少女ゲームのヒロインみたいだったよな』

『天使だ』

 

「…………」

 

『おい、あいつさっきは彼氏だとか言われてなかったか?』

『あんなに可愛い女の子と一緒にお出かけだなんて裏山けしからん!』

『リア充爆発しろ!』

 

 それからこちらに集まってくる視線、ないし殺気をひしひしと感じながら、俺は肩身を狭くしつつ先に運ばれてきたオレンジジュースを飲むのだった。

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