ドMで引きこもりな私でも露出調教してくれますか? 作:わずみかん
海の家に行くと、焼きトウモロコシの香ばしい匂いや、鉄板の上で焼きそばの焦げる音が聞こえてくる。店先では『氷』と書かれた暖簾が下がり、いちごシロップのかかったかき氷をスプーンで崩す子供やカップルで賑わっていた。
「結構メニューがあるんだな」
中へ入ると、壁にずらりと書かれたメニュー表を眺める。どれも定番どころだが、逆に言えば思いつく物はほとんど揃っている。若者の食欲を湧きたてる品物の数々を前に、俺は吟味を重ねた末にやはりカレーを選択した。
「席もほとんど埋まってるし、かなり人も多いな」
店内は海水浴を楽しみに来た若者で溢れていた。夏休みだしこれも当然の光景ではあるのだが、以前のプールと比べると遥かに人の密度が濃い。まあ、あちらは食事スペースが充実していたし、逆にこれだけ広い砂浜にも関わらず売店がここにしかないのだから、この混雑も当然と言えば当然か。
「笹原には後で何か買っていってやるか。あいつがこんなところ来たら大騒ぎだ」
それから券売機で食券を購入し、カウンターへ持っていくと直ぐにカレーを渡される。やはりレトルトだから早いんだろうなぁ、なんて無粋な推測をしながら、俺は席を探した。
店内は開放的な作りになっていて、屋根の下に数十席の椅子とテーブルが並べられている。いずれも若い人間でほぼ埋まっており、かき入れ時とばかりに繁盛しているようだった。
「どこか空いてないかなぁ~……と」
こういう空間は我ながらあまり得意ではない。なんというか学校の学食なんかを思い出す。
知り合いが居ればすんなりと隣に座れたりするのだろうが、その知り合いが皆無な俺にとって、学食とは結局どこにも座れず挙句の果てには外のベンチで食事を済ます。言わばそういう場所だ。
「なんだ前田か。君も昼食を食べに来たのか?」
カレーを手に持ったのはいいものの、ここでも同じ末路を辿るのかと思っていた矢先、不意に傍から声がかかった。
「御影先生。見ないと思ったら、一人でここに来てたんですね」
「それは君に関しても同じだろ。もっとも、これからは二人になるわけだがな」
すると御影先生はその鋭い目をこちらに向け、あごをくいっと向かいの席に向ける。意地でもラーメンを食う箸は置かないらしい。
「じゃあ、折角なので」
内心俺もほっとしながら、御影先生の前にカレーを置き、腰を落ち着かせる。
見ると御影先生も水着に着替え……、もとい着替えさせられたらしく、前のプールの時と同じ首にかけるタイプのビキニ水着を着用している。
にしても相変わらず体型に見合わないと言うか、どこか子供っぽいとすら思える雰囲気のなかで、あのふくよかな部位はやはりアンバランスとさえ言える。しかしそれもまた一部のマニアにとっては魅力的だったりするのだろう。本人に言っても絶対喜ばないだろうけど。
「それにしても繁盛してますね」
「そうだな。夏と言えば海というのは定番だが、しかし出先の候補としては悪くない」
「真夏で天気も良いですからね。そりゃ誰だって遊びに出たくなりますよ」
「君もそうなのか?」
「俺は、そういうのとは無縁でしたから」
「ふむ。そうか」
すると御影先生はまたズルズルとラーメンを啜り始める。
俺も腹が空いていたので、ようやくスプーンを片手にカレーを頬張り始めた。
こういう所のカレーって、レトルト感があるのにやけに美味しく感じるんだよな。具が少なくてルーは水っぽい。なのに美味い。
席は海風も当たるし、心地も良い。人さえ多くなければ、海の眺めでも見ながら心置きなくカレーを楽しめただろう。
「君のはカレーか」
「えっと、そうですけど」
「一口くれないか」
「良いですけど、俺が先に食べちゃってますよ?」
「構わない。この短時間では口内雑菌も繁殖しないからな」
「あ、気持ち的な問題じゃないんですね、そこは」
そう言うと御影先生は俺からスプーンを受け取り、はむはむと三口ほど口に放り込んだ。一口じゃないんだ。別に良いけど。
「美味いな」
そう言って、今度は御影先生もラーメンの入った容器をこちらに差し出してくる。
「いえ、俺は大丈夫ですから」
「そうか? 歯ならちゃんと毎日磨いてるぞ」
「いえそう言う問題じゃなくてですね。と言うかこういう時って、その心配は普通しませんから」
科学的に物事を言うのはいかにも白衣の似合う先生っぽくはあるけれど、どこかズレてる気がしてならない。
「前から思ってましたけど、先生ってなんか俺と同じにおいがしますよね」
「においと言うのは、人としての嗅覚的なものか。それとも個人の性格的なものか」
「後者の方ですよ。あまり人とは関わらなさそうだったり、こういうイベントごととかに慣れてなかったり」
「そこはまあ、そうだな」
「やけに単独行動を取りたがったり」
「私の持つ単独行動スキルはEXランクだ」
「それどこのサーヴァントですか」
なぜか自慢げな顔をする御影先生。いやそれ、現実世界だとただのボッチ宣言ですから。
相変わらずゲームが好きなのか、たまに織り交ぜてくるゲームネタに突っ込みつつ、俺はまたカレーを食べすすめる。
「そう言えばさっき先生、生徒と話すのも勉強にもなるって言ってましたよね」
「そうだったか?」
「言ってましたよ。車の中でマドカさんと」
「そう言えばそんな話をした気もするな」
「勉強って、例えばどういう所がですか?」
「ふむ。わざわざ話すようなことでもないが、まあ良いだろう」
俺は会話のネタに、ふとそんな話を先生に投げかけてみた。
「私は養護教員だ。他の先生方とは違い、自分のクラスは持っていない。それでも生徒と触れる機会は多いものだ」
因みになりたいクラスはアサシンだ。と付け足したので、そちらは無視した。そこはアーチャーじゃないのかよ。
それから先生はちょうどラーメンを食べ終えて、最後の一滴までスープを飲み干した後、その無表情な仏頂面をこちらに向ける。
「保健室と言うのは行き場のない生徒の最後の隠れ蓑でもある。私の仕事はなにも生徒の怪我を見ることだけでないのだよ」
「へぇ。こう言っては失礼ですけど、先生もちゃんとそういうことを考えてるんですね」
「そう言うな。こう見えても一応大人だぞ、私は」
すると御影先生はなぜか頬を少し赤くする。やはり日頃の勤務態度に何か思う所は有るらしい。
「まあつまりだな、良くも悪くも生徒の弱い部分を見聞きすることがある。そういった時に自分に何が出来るのかを考えるのは、私としては良い勉強になってるのだよ」
「なるほどなるほど、なんだかとても良い話を聞けた気がします。流石は先生」
「君はあれだな。聞き上手なのかそれとも人を恥ずかしがらせる天才なのか、もしくはそのどちらもだな」
そう言うと御影先生は赤くした顔をぷいっと逸らした。
「いえいえ、本心ですよ」
「ならその薄ら笑いはやめろ」
「いえ、これは普通にこういう顔なんですけど」
あれ、俺って日頃からそんな顔してるの? 俺の表情筋ってもしかしてまだ死んでなかった感じ?
「しかし君と私がどこか似ていると言うのは、私も同意見だよ」
「まあ、だからこそここで二人して飯食ってるわけですもんね」
「だが唯一違う点があるとするならば、君はまだ高校生で、そして私は大人だ。だからこそこうして顧問として付き添っている。だから――」
すると御影先生はやっぱりその見通したような目つきで言うのだ。おそらく、その脳裏には笹原の姿も思い浮かべながら。
「もしも何か有れば、私のところに来なさい。力を貸せるかは分からないが、知恵と経験くらいは貸してやる」
なんて言葉を決め台詞みたいに口にして、やっぱり少し恥ずかしかったのか、すぐに視線を逸らす御影先生。
この人の場合、こう妙に決まらないところは大人と言うよりは、やっぱりまだ少し子供っぽい気もするんだよな。
ただ―。
折角の有難いお言葉だ。肝にだけは銘じさせていただくとしよう。
「君も食事を終えたのなら、笹原達のところに戻るか」
「そうですね。何か買っていってやりますか」
「それなら焼きトウモロコシが良い。ついでに私の分も買っておいてくれ」
「って、先生の分も俺が出すんですか?」
「今日は休日を返上して付き添いをしているんだ。それくらいはあって然るべきだろ?」
そう言うと、御影先生はほんの少しだけにやりと唇を綻ばせる。それから身をひるがえすと、すたすたと砂浜の方へ歩いていった。
やっぱりあの人が大人とは到底思えない。なぜなら高校生にたかる人が、大人と呼べるわけがないのだから。
砂浜を来た方に戻って、人気が少なくなるのを感じながら、俺は買ったばかりの食い物を両手にパラソルへと戻る。
するとビーチボールには飽きたのか、笹原達は砂で山を作って遊んでいた。
その背中がこちらを向くと、ぱぁと目を輝かせて全速力で走ってくる。
「あ、美味しそう!」
「結構混んでたから、適当に買ってきてやったぞ」
「ありがとうね、前田君っ!」
「別に大したことじゃないけどさ。それよりももう12時過ぎだし、飯を食ったらそろそろ旅館に向かった方が良いんじゃないか」
焼きトウモロコシを手から離した瞬間、まるで餌を我慢してた飼い犬のように笹原は飛びつくと、ガシガシと貪り始める。
「兄ちゃん兄ちゃん。私のは?」
「お前の分も買ってきてやったから、もうダンベル振り回すのはやめろ」
というかこいつ、本当に筋トレしてるし。しかもビーチで。スク水で。
「カンナの分までありがとう前田君」
「いえ、それは良いんですけど」
そう答えたマドカさんだったが、何故か砂の中に埋められていた。
「なにやってんすか……?」
「ん~? みんなにちょっといじめられちゃって」
「それ苛めの範疇超えてますよ。このまま潮が満ちたら殺人ですからそれ」
「ふふっ。大丈夫大丈夫。だって前田君が助けてくれるもの。それにほら、どう?」
「どうとは」
「気持ち大きめにしてもらいました」
見ると、マドカさんの首から下が何やら人の形に盛り上がっている。どうやら本当に埋められたわけではなく、体に砂を盛られただけみたいだった。
そしてその胸のあたりが、そりゃもう大胆に盛り上がっている。
「それ、どう見たってちょっとじゃないでしょ」
「そう?」
「だってそれ、もはや人の大きさじゃありませんもん」
スイカサイズに飛び出た二つの塊を目にして、俺はそう呆れながら言葉を返す。
「それじゃあこのお姉さんの身体を使ってサイズ当てゲーム! 今から少しずつこの砂を削って、お姉さんの本当のサイズを当ててみよう!」
「いやそれなんの罰ゲームですか。それに本人の上に砂が盛られてるんだから、どうしたって大きくなるに決まってるでしょ」
「むう、今日も相変わらずつれないわね。あ、じゃあ穂乃果ちゃんの胸のサイズを当てるってことで!」
「ふぇ、わ、私ですか?」
「この中だと一番大きいし、前田君ならきっとぴったりにできると思うの」
「何を馬鹿なこと言ってるんですか。ほら、さっさと砂から出てきてください」
「だから一人じゃ出れないんだってば。うーんと、じゃあそうね。もしもぴったり穂乃果ちゃんのサイズを当てられたら、景品を出してあげる」
「景品?」
そこでほんの少し引き付けられる俺。このゲーム内容だ。あまり期待してもしょうがないのだが、しかし夏に景品と聞いて反応しない男子は居ない。
その時に思い出したのは、幼いころに夏祭りの屋台でやっていた型抜きと言う遊びである。1枚100円で砂糖菓子の板を買うと、そこにはキリトリ状にかたどられた絵があり、そいつを綺麗に抜き出すと景品がもらえるというものだ。
俺はその時の景品が欲しくて何度も挑戦したのだが、結局はお小遣いが尽きるまで挑んでも叶わなかったという、そういうワンダフルハートな思い出である。
夏に景品と聞けば誰しもが似たような思い出があるだろう。だからこそそのワードを聞いたが最後、どうしても引き下がれなくなる。因みにどうしてこのゲーム内容で型抜きを思い出したのかは知らん。
「そ、景品。もしぴったり当てられたら、ここに居る女の子全員の胸を触らせてあげる」
なん……だと……?
マドカさんの言葉を聞いた瞬間に、ぴくん、と俺の身体が反応する。
「全員って、全員ですか……?」
「そ、全員」
その直後、俺の脳内では理性を司令官とし、ありとあらゆる体内感情が招集され会議が開かれた。
『これは罠だ! そうじゃなければここまで都合の良い話なんてあるものか!』
『いやしかし、時宮先輩の胸に合法的に触れられるなら魅力はあるぞ』
『これまでスケベ心を見せまいと拒否していたマドカさんの胸にも、この流れで触れるチャンスだ』
『妹の胸にはこの前タッチしたばかりだが、そこそこ触り心地は良かったしな』
『なんと言っても御影先生だ。あのサイズ感には惹かれるものがある』
『笹原と鈴谷は……まあいいか』
どうやら俺の理性は会議を終え、この上なく合理的で紳士的な結論を導き出したようだ。
「やりましょう。そのゲーム」
「前田くん!?」
「ちょ、兄ちゃん!?」
「これはしょうがないことなんだ、妹よ!」
「なにがどうしょうがないことなのかな!?」
「男には、やらねばならない時がある」
「それなんの理由にもなってないよね!」
困惑する妹にこれ以上ないほど的確な説明をしてやると、マドカさんはまた面白がるように笑った。
「あはは。やっぱり流石の前田君でも、一度に全員の女の子を触れるってなったら、食いついてくるんだ」
でもね、とマドカさんは続ける。
「前田君にはもちろん、失敗した時の罰ゲームもあるよ?」
「ば、罰ゲーム、ですか?」
このただでさえ罰ゲームじみた提案に失敗したら、さらなる罰が下されると言うのか。何ということだ。やはりこの人、暴君だ……!
「もし前田君が失敗したら、そのままズボンと服を脱いで、パンツ一枚でこのビーチを一周してもらいます」
な、なに……? いまなんと言った……?
「それってどこが罰ゲームになるの?」
「お前と一緒にするなこの露出狂が!」
「ひ、酷い!?」
不思議そうに顔を傾げた笹原に思わず突っ込みを返す。ここまで聞いてまだ罰ゲームの意図が理解できないとは、流石はドM変態なだけはあるな。
マドカさんの提案。それは極めて下劣で恥辱に満ちたものだ。
パンツ。それは言うまでもなく下着だ。
海パンとは形状こそ似ているが、その性質はまったく似て非なる物。海パンが人に見られることを前提としたものなら、パンツは人から隠す事を前提としたものである。
それをこの人、言うに事欠いてパンツ一枚で砂浜を一周しろだと? まさに外道、人の発想ではない……!
「それで、どうする?」
マドカさんは小悪魔っぽく微笑む。
つまり、俺はこのゲームに失敗すれば、公然のもとで下着を晒しながら駆け回る事になる。
これ以上もう人生の汚点を作るまいと思っていたが、まさかここでその戒めを破る危機に晒されるとは、くぅ……!
「み、御影先生はどうなんですか……? 胸とか、触られちゃうかもですけど」
「私か? 私は胸くらいならなんとも思わん。むしろ君がパンツ姿でビーチを走るところを見てみたい」
「わ、私も皆さんが良いのなら。前田くんもその、私の胸、触りたいみたいだし」
「兄ちゃんってば本当にアホなんだから。そう言えばスマホってどこにしまったかな?」
こ、こいつら鬼か……!?
「それじゃあ決まりね! 前田君は少しずつ砂を崩していきながら、ここだと思ったら手を止めてね」
そう言われ、俺はおそるおそるにマドカさんの横に膝をつける。
と言うかなんなんだこれ。クラスメイトのお姉さんの胸を削りながら、先輩の胸のサイズを当てるって。
「今からは穂乃果ちゃんの方を見たらダメだよ? それじゃあはい。よーいスタート!」
「うぐっ……!」
ついにゴングが鳴らされ、俺は戦々恐々にマドカさんの上に作られた二つの砂山に手で触れる。
相当大袈裟に盛られているのか、初見の感覚はかなり固い。だが、少し下にはマドカさんの本物の胸が埋まっているのだ。少しでも削り過ぎれば、砂は忽ち崩れていくだろう。油断できない。
「…………っ!」
俺は少しずつ、少しずつマドカさんの胸の砂を削っていく。
「んんっ!」
「ちょ、な、なんですか!」
「ごめんごめん。ちょっとこそばゆかったから」
いきなり変な声を出され、またびくりと身体が震える。危なかった、もう少しで削り過ぎるところだった。
そうして俺とマドカさんの胸(砂山)との相対は慎重に続いていく。
と言うかそもそも、時宮先輩の胸ってどれくらいだったっけ。元の砂山はかなりデカいとはいえ、時宮先輩のそれも一般と比べると超大型だ。
「こ、これくらい、ですかね」
にやにやと笑みを浮かべるマドカさん(の胸)との格闘を終え、俺は砂山を3回り程削ったところでついに手を止める。
頭の中で再三と時宮先輩の姿を思い浮かべながら、可能な限りは近づけたはずだ。これでも普通ならまだ大きいと思えるが、しかし時宮先輩のサイズならおそらくこれで合っているはず……!
「それでお姉ちゃん、答え合わせってどうやるの?」
「それはもちろん」
マドカさんはそれから時宮先輩の方へ目を向けると、時宮先輩は何かを察したように赤面し、それからゆっくりとこちらに歩いてくる。
「み、水着も取った方が良いかしら……?」
「そうね。正確に見比べる為には!」
「いやいや、そこまでする必要ないですから!」
ビーチウェアを脱ぎ、あやうく水着まで脱ぎかけたところを俺は慌てて止める。と言うかこの人達の何がそこまで突き動かしてるんだろう。そうまでして俺を脱がして何があるんだ? 実は男の裸に興味がある変態とか?
そうして時宮先輩はマドカさんと同じ位置に胸が来るよう調整しながら、その横にそっと寝転がる。
「うーん……」
「あ、あの、やっぱり恥ずかしい……」
「もうちょっとですから、時宮先輩ぃ!」
笹原に鈴谷、綾子に御影先生、そして俺。
5人もの人間にまじまじと見られながら、二つの胸のサイズを測っていく。
「……ねえ。これってやっぱり」
「そうですねぇ。これだと」
「時宮さんの方が、少し大きい……?」
「うむ。と言うかまだまだ全然、時宮の方が大きいような」
4人は徐々に導き出された結論を、そう口々に確認し合う。
「あの、そろそろ良いかしら……?」
「結論は出たねっ!」
答え合わせが終わり、時宮先輩が立ち上がったところで、女子達は俺を取り囲むように立ちふさがる。
「そ、そんな、馬鹿な……!? あれだけ残したんだぞ!?」
まだまだメロンくらいの大きさはあったはずだ。それなのに。
「人の想像を超えていくもの……それがおっぱいなんだよ!」
笹原にそう指差され、俺は絶望のあまり視界がぐにゃりと歪んだ。
馬鹿な、やはり時宮先輩はどうしたって規格外だと言うのか……? く、俺は甘く見ていた……!
「前田君、約束はちゃんと守らないとね!」
「や、やめろ、近づくな!」
迫りくる女子達の手に怯えながら、しかし俺にはなす術がない。
「やめろぉおおおおお!!」
こうして一人の男の叫びが、海辺で木霊していった。