ドMで引きこもりな私でも露出調教してくれますか? 作:わずみかん
食事を終えてからしばらくテレビを見た後、妹や両親達はリビングから離れてはそれぞれの部屋へと入っていった。
ここから先は家族の団らんではなくプライベートな時間だ。うちの場合、生活リズムがそうなのかいつも決まってこのルーチンで夜を迎えている。家族の時間も大切にするが、個別の時間も同じくらいに尊重されるらしい。まあ俺としては有り難い限りだが、逆に言うと実はそれぞれが何をしているのかは詳しく知らなかったりする。でもおおよそ想像の付くところでは、結婚20年目にして未だに新婚気分のあの二人は寝るまで雑談でもしてるんだろうし、綾子と言えば
俺はと言えば、リビングで準備したお盆にカレーとサラダ、水の入ったコップを乗せて部屋に戻るところだった。時間はちょうど九時ごろで、窓の外はすっかり日の沈んだ暗がりになっている。
「あ、おかえり!」
俺が扉を開けると、笹原がちょこんと床に座り込んだままこちらに顔を向けた。
「おう、遅くなったな。……って」
ただし、その手元では俺が丁寧に隠しておいたエロ本がこれでもかと散乱している。
笹原はちょうどその内の一冊をぺらりと捲っているところだった。それもまるで、女子高生がファッション誌を読んでるかのような佇まいで。
「あ、それ……! もしかして私に持ってきてくれたの!?」
なんの悪びれもなくキラキラと目を輝かせる笹原。
「お前……」
俺の眉間に皺が寄っていく。だがどうやら、笹原にはその原因が分からないらしい。
俺は一度お盆を机に置くと、スプーンを掴んでカレーを掬い上げる。そしてこれでもかと大口を開け、その中へと放り込んだ。
「あーん」
「あぁあああああ!?」
すると笹原は慌てて俺の方へと駆け寄り、まるで大切なものを目の前で奪われたかのような絶望した表情を俺に見せる。
「うん、さっき食ったばっかだけど美味えな」
「あ、あわ……」
笹原の瞳から次第に光が消えていくが、俺はお構い無しに食べ進める。
三口、四口とスプーンカレーをかき込むと、五口めでようやく笹原の腕が俺のスプーンを掴んだ。
「なんだよ」
「こ、これが人間のする事、なの……?」
「そりゃ人間が飯を食うのは当然だろうが?」
「そうじゃなくって!!」
「それに考えてもみろ。いたいけな男子高校生の部屋を勝手に荒らした挙句、人には見られたくないと隠しておいた本をこれみよがしに引っ張り出されたんだぞ。ん? そこんとこどうなんだ?」
「わ、だ、だってあれは仕方が無いんだもん! だって、えっちな漫画があると匂いで分かっちゃうんだもん!」
お前は警察犬か何かかよ……。
「お、お願いだから、一口、あ、やっぱり半分頂戴……」
要求がエスカレートするどころか数段飛び級してるんだが。
「はぁ、ほら食えよ」
「わぁ!」
俺は何度目かもわからないため息を吐いて、お盆を笹原へ渡す。今回に関しては、むしろこいつを一人のまま野放しにした俺のミスだろうな。
「んっはぁ~……」
「どうしたんだよ。んな呆け面して」
「お、おいちい……」
「確かに美味いけど、そこまでのもんか?」
「わ、私、いっつもインスタントなものばっかり食べてたから、こんなに美味しいご飯はお久しぶりかも」
そうか。言われてみるとこいつの部屋にあった大量のゴミ、そのほとんどはカップ面を食べた後の残骸だったな。
「いやいや、お前の家はお姉さんだって居るんだし、それは言い過ぎなんじゃないか?」
「お姉ちゃんは、その、ちょっとだけご飯作るの苦手だから……」
「そうは見えないぞ。紅茶だってあんなに美味しく淹れてくれたし」
「うん。紅茶はね、とても美味しいんだよ。だけど……」
なんだろう。笹原の目がだんだんと遠くを見てるような。
「私が最後に食べたお姉ちゃんの手料理ってね、生きた蛸を砂糖とチョコレートでぐちょぐちょにして、そこに生のお肉を巻いた食べ物だったから……」
それは果たして食べ物なのか?
と言うかそれ、ちょっとどころじゃないよね。
「…………なんつうか、まあ食え」
がぶがぶ!! とがめついてカレーを頬張る笹原だったが、その頬に涙が流れているのはあまり見ないようにしよう。
しかし急にぴたっと動きを止めると、笹原は涙目のままに俺の顔を覗き込んできた。
「……はぃ」
「あぁ別に良いよ。全部食っても」
「前田君優しいね、ありがとう」
「あ、あぁ……」
俺はどこかいたたまれなくなって、笹原にそのままお盆をつき返す。まさかカレーを出しただけでここまで感謝されるとは思ってなかったな。
笹原の食い意地が張ってるというか、収監されてた囚人が十年ぶりにシャバの食い物を食ってるみたいと言うか、ともかくそんな躍動感溢れる食事シーンを見てると、ものの一分ほどでカレーとサラダの入った皿が空になる。
「美味しかった……」
「口の周り、付いてるぞ」
「あ、ごめんね!」
最後に笹原はティッシュで口元に付いたカレーのルーを拭き取ると、にぱっと笑みを見せる。
「後は夜が更けるのを待つだけだな」
今はまだ夜になったばかりで、外にはそれなりに人が出歩いている。笹原を送り返すのは、せめてもう少し待ってからの方が良いだろう。
「あのね、前田君に一つ聞きたい事があるんだけど」
「なんだよ?」
笹原からの急な問いに、俺は思わず目を細める。
「さっきの本読んでて思ったんだけど、前田君って本当になんでも好きなんだね」
「あのな。そういう話はデリケートなんだ。食後のデザート代わりにしていい話題じゃないと思うぞ?」
「そうなの?」
「お前だって自分の部屋で……その、自分の持ってる本とかの話、持ち出されたくないだろ」
「そうかな? 私はむしろお話したいくらいだけど」
そうだった。こいつにはもはや常識は通用しないんだった。
「ともなく! エロ本の話は家では禁止だ! 俺だって好き好んで買い漁ってるわけじゃないからな。生理現象として、しかたなくだ」
「ふ~ん」
「……なんだよ」
「それにしては、色々な種類なのがあるなって」
笹原はどこかきょとんとした顔で、自分が床に散らかしたアダルトな漫画本を眺める。
「で、でもでも! 私も露出モノが一番好きだけど、他のやつもいけるから!」
「そんな同意求めてねぇよ」
笹原が謎にガッツポーズをするので、それを俺はしっしと手の裏で払う。
「にしても、ふたなりから始まって百合に幼女もの、それに鬼畜調教とか奴隷ものとか、あ、そう言えば敗北ヒロインものも有ったよね?」
「だ・か・ら!! そういうのはいちいち口に出すな!」
ぶっちゃけ、俺は表紙が良さそうなものを買ってるだけだし、そりゃジャンルもばらばらだ。笹原の部屋で言った通り、エロに関しては特に拘りはなかったりする。
「なんつうか、お前に付き合ってると疲れるよ」
「私は、楽しいけど……」
「お前の事は聞いてねえ。今日だって俺の普段の生活からは考えられないトラブルの連続だ」
何時もなら、この時間はベッドで横になりながらスマホをいじってる頃合だろうな。まあ、どちらにせよ有意義な時間かと言えば疑問だが、少なくともスマホで動画なり掲示板を見てるぶんには疲れない。
そんなこんなで、俺は笹原と他愛の無い話をしながら夜が沈んでいくのを待つ。
それから三時間を部屋の中で過ごして、ようやく日付が変わろうとした頃、俺は笹原に言葉を飛ばした。
「おい、そろそろ行くぞ」
「うん……」
やはりと言うか、笹原は少し緊張気味に答える。
「お前の服は誰も居ない間に洗濯機に放り込んでおいたが、まだ乾燥して無いだろうし明日にでも届けてやる」
「分かった。本当に色々とありがとうね」
「しょうがねえよ」
俺は机の下に用意しておいたビニール袋を掴む。その中にはこいつのローターやらが入っている。改めてそのピンクの物体を確認しながら、こんなものを夜間に持ち運ぶなんて今後は二度とないだろうなと思う。
俺は何気なくそのローターを一つ手で摘んでみると、タオルで綺麗に拭いたからか、表面はやけにつるつるとしていた。
「何してるの、前田君?」
「あ!? な、なんでもない」
しまった。何故かローターに目移りしてしまってた。何してんだが……。
「もしかして、私の事とか、思い出してた……?」
「べ、別に。そんなんじゃねえよ。ただの興味本位だ」
どこか誤魔化すようにそう言葉を漏らす。それから顔を隠すように、俺は笹原へ背を向けた。
「あんまり騒いでると妹にバレる。早く行くぞ」
なんだろう。確かにこのローターを見てると、笹原のあの痴態が頭の中でフラッシュバックする。
乳首と膣内にローターを固定させて、その振動で身もだえする笹原の表情―。
止めろ、止めなきゃ。これ以上は、立つ……!!
今はそんな場合じゃない。笹原がもしもまた帰り道で気を失ったりしたらどうするとか、そういう事を考えておいた方がいいに決まってる。
「……ねえ」
「なんだよ笹――」
俺は後ろへ振り向く。
そして、笹原は俺と目が合うと、その水色のワンピースの肩紐をきゅっと解いた。
「なっ」
はらっと解けたワンピースの片側がめくれていく。そして、笹原の乳房の片方を露にさせた。
「お前、どうして服なんて脱いで……」
俺が驚いた顔を見せると、笹原はもう片方の肩紐も解く。すると体との接点を完全に失ったワンピースは、そのまま重力に任せて床へと落ちていく。
「こっちも―」
そして間を置くことなく、笹原は滞りない手つきでスパッツにも指をかけ、太股から足先へとずらしていく。
「ば、馬鹿! そんな冗談やってる場合じゃないだろ!? お前だって分かってるはずじゃ…っ!」
俺がそう怒鳴ろうとすると、笹原は人差し指を口の前で立てて、「しーっ」とジェスチャーした。
「妹さん、気付いちゃうよ?」
「お前……」
こいつ、マジか。
見ると、既に笹原の体を覆い隠すものは何も無く、その裸体が部屋のライトに照らされて、俺の瞳にはっきりと写り込む。
「うん、そうだよね……そんな場合じゃないよね……、でも、やっぱり私、我慢できないんだ。これから外に出るって分かってると、どうしても疼いちゃって、それで、胸の辺りがきゅっとしちゃって」
分かってた。分かってた事なんだ。
だけど、それでも改めて実感させられる。
「だから、ね? 私と露出プレイ、しよ」
こいつはどうしようもなくド変態で、露出狂いなんだ。