ドMで引きこもりな私でも露出調教してくれますか? 作:わずみかん
「キュンッ!!」
「んぐぅううう!!」
しかし、その雄々しい性器が笹原のマ〇コに突き刺さるより早く、俺はレトリバーを羽交い絞めにし、なんとか笹原から引き剥がす。
今のは、本当に危なかった。
「あ、あわ……」
笹原の尻が小刻みに揺れている。ギリギリ犬の性器が触れる前に間に合ったとは思うが、それでも笹原は目を白黒とさせて怯えていた。
「お、おぉ! これは元気が良いですね!」
「すいません本当に!! ちゃんと言って聞かせますから」
「あ、いえっ!」
それにしてもこの犬、やっぱ大型なだけあって重い、重すぎる。俺に抱きかかえられたままジタバタと暴れるせいで抑えておくのは数秒が限界だ。
「こら!! じっとしてろ!!」
「クゥ~ン……」
飼い主に怒鳴られて、そいつはようやく大人しくなる。それからぐっとリードで引っ張られると、大人しく飼い主の足元へと戻っていった。
「ご迷惑おかけしました。ほら、もう行くぞ」
「あ、あぁ、では、お元気で」
その後、互いに軽い会釈と挨拶をすると、向こうは来た道を戻っていく。
「うっ……」
男性の姿が曲がり道に消えた時、笹原は地面に付いていた片手で口元を塞いだ。
「……おい、大丈夫か」
「ごめん、なさい……。やっぱりまだ少し、外には慣れてないみたい……」
……そうか。
と、俺は小さく言葉を返す。
その後、足をよろめかせながら立ち上がった笹原に、俺は背中をさすってやることもできず、ただ微妙な空気のままに二人で夜道を歩いていく。
笹原の表情を見ると、そこにはまだ性的な興奮が残っているのか頬を赤く染まらせているが、同時に吐き気を抑えているせいか、目元がかなり苦しそうだ。
俺はその後も言葉が出せず、笹原との間にしばらく静寂が続く。
しかしこの辺りはと言えば、あの高級住宅地とは違い一般的な庶民家の並ぶ住宅街だ。この時間でも、近くの家の中からは様々な生活音が聞こえてくる。例えば食器を洗う音、シャワーの音、テレビのバラエティ番組の音、そして人の声。これまでも周りにあったはずの音が、笹原との間にできた妙な空気によってより鮮明に浮かび上がってくる。
それは紛れもない人の気配だった。四方八方から他人による物音が耳の中になだれ込んでくる。むしろ、どうして今までその音が拾えなかったのか疑問すら浮かぶ勢いだ。もしかすると、それだけ俺は異常だったのかもしれない。
頭が次第に冴えてくる。絡んでいた鎖が解れていくように、思考が正常へと戻っていく。まるで大怪我を負った人間がアドレナリンによって痛みを感じなかったように、俺もこの異常事態に麻痺していたのだ。
「俺は……」
一気に自分のしでかした事を理解していく。流れに身を任せる事でなんとか押さえていた自分の中の理性が、正常さを取り戻し、無理矢理に俺に状況を教え込んでくる。
俺は何をしようとした? 笹原が引きこもりで、外に出ると気を失うくらい酷い状態になるって知っていながら、それでも自分の欲求を優先してあの飼い主と近づいたのだ。あの場で、何気なく距離を置く事さえできたはずなのに。
笹原は今にも倒れそうなくらいに重々しい足取りだった。これが、笹原が俺に望んだ事なのか? そんなはずはない。笹原は自分一人ではできないからこそ、そのサポートを俺に頼んだのだ。これじゃあまるで、俺が笹原を追い込んでいるみたいじゃないか。
違う。〝まるで〟なんかじゃない。俺が、俺こそが、自分の黒い欲望に抗う事もせずに、ただただ笹原を苦しめた。こんなものは、露出プレイでもなんでもない。ただの、拷問だ。
「前田君、私なら大丈夫だよ」
「な、何が大丈夫なもんかよ!! お前、今どれだけ酷い顔してるか分かってるのか!?」
今更だ。あまりにも今更すぎる。だいたいここまでやっちまったのは自分自身じゃないか。
自分に情けなさすら感じる。一度その流れに身を任せたのなら、最後まで突き進むべきだった。自分の感情にすら流されずに、役に徹してやるべきだった。だが、今の俺ではそれすらもままならない。
カラン、と道路にリードの金具が当たり、乾いた音が響く。気が付くと、俺の手元からリードは滑り落ちていた。
「前田君……?」
「俺には、お前の露出プレイってもんに協力する資格はなさそうだ」
何言ってるんだろうな、俺は。資格ってなんだよ。そんなもの、端から有るわけでもないじゃないか。
ただ俺は、ここから逃げ出したいだけなのかもしれない。自分の醜さを知って、それから笹原を傷つけてしまったこの場から、一刻だって早く逃げ出したいのだ。
足が震えだす。気が付くと、俺の胸にはまた恐怖心と緊張感が膨れ上がっていた。
だけどそうじゃない。そうじゃないんだ。それじゃあ、ダメなんだ。
そいつはさっき自分で言った言葉のはずだ。
『謝るくらいなら初めからするなよ。それにお前が決めたんなら、どんな手段を使ってでも貫き通してみろ』
「はぁ……ふぅー……」
俺は一度深呼吸をして、天を仰ぐ。
今日は、満月か。
「前田君、だ、大丈夫……?」
笹原は心配そうにこちらに目を向ける。そんな顔で言われて、大丈夫もクソもあるかっつの。
「気にしないでくれ、変な事を言っちまった。お前の方こそ、よくぶっ倒れないでいられるな」
「私は、ほら……。好きでやってるから」
そこで照れ笑いされても困るんだがな。
と言うか、その回答は答えになってるのかなってないのか分らないぞ。
「…………すまん」
「ど、どうして!? どうして前田君が謝るの?」
「今日はお前の頼み、あまり叶えてやれなかったからな」
「……大丈夫だよ。私は、前田君のこと、信頼してるから」
すると笹原は腰を突き出して、その片指で秘部をこちらへ開いて見せる。心臓のようにビクン、ビクンと動く膣は今にも男のチ○コを飲み込みそうだった。
どうやら、それが笹原なりの意思表示らしい。いかがわしいにもほどがある。しかもむわっとした人間臭い匂いが鼻にまで届いてくるし……。
「その、気分っつうのか? ぶち壊しにして悪かったな」
「そ、それなら、また……一緒に外に出てくれるなら……許してあげるっていうか……その」
「なんだよ?」
「あ、ううん! なんでもないよ」
だからその視線をちらちらさせながら照れるのは止めろっての。
「それにしてもさっきまでの前田君、やっぱり凄かったよ」
「あんまり褒められたもんじゃないけどな。それよりも、早くお前の家に戻るぞ。じゃないとこっちの心臓が持たないからな」
「う、うん。分かった。今日は、無理言ってごめんね」
「……だから気にすんな」
すると笹原は腰をかがめると、口元を押さえていた手で俺が落としたリードを拾い上げる。
「えっと、ね? これだけは最後まで持っててもらえると、助かる……かも」
「……しゃあねえな」
こいつも懲りないと言うか図太いと言うか。
そんなこんなで、俺達はまた移動を始める。
満月の夜、俺がふと横を見ると、そこにはやはり絶世の美少女が肌を露わにしながら、俺の横で一緒に足を進めていた。
その後、俺達は運良く誰とも遭遇する事もなく、笹原の家にたどり着くことができた。
まあ問題があったとすれば、笹原が時折「ごめんね、やっぱりイク……」と小さく吐息を零してたくらいだろうか。
「それで、着いたはいいがどうやって中に入るんだよ? 鍵、閉まってるんだろ」
なにせ笹原は全裸のままだ。しかもリードのついた首輪のおまけ付きである。このままインターホンを鳴らして中からお姉さんに開けてもらうには不味い格好だ。
「姉ちゃんにポストに鍵を入れてもらうように頼んだから。あ、ほら、有ったよ」
笹原は玄関先に取り付けられたポストの口に強引に腕を突っ込むと、ごちゃごちゃと手探りして赤いウサギのキーホルダーが着いた鍵を取り出す。
「ポストの中って、不用心じゃないか?」
「この中、私くらい腕が細くないと入らないから」
「まあ、それはそうかもしれないけどさ」
確かに俺の腕だと太すぎて入らないだろうけど……。にしても今時ポストの中に鍵を隠すって古典的過ぎじゃないか?
「まあいいよ。それじゃあ俺はもう帰るぞ」
「う、うん」
そう言うと、笹原はもごもごとして俯いたかと思うと、小さく「よし」とつぶやいてから、こちらにぐっと首を伸ばす。
「うわ、なんだいきなり」
「えっとね、ま、また明日ね!」
「明日?」
「う、うん。明日」
「明日って、もしかしてまたこんなことするのか……?」
「ち、違うよ!? えっと、明日はよかったら、その、外で歩く練習に付き合って欲しいと言うか……やっぱりこのままじゃ、色々とダメだろうし……」
またもや顔を俯かせながらもじもじとさせる笹原。こいつ、何というか思い切りの激しい時と陰気な時の差が激しいな。
「……まあ、気が向いたらな」
「う、うん!」
また明日、か。
けどやっぱりあの後だからか、俺はそっけない態度で言葉を返す。
瞼の裏にはどうしても、顔色を悪くしてふらふらとした笹原の姿が残っていた。だけど、こいつはあそこまでの仕打ちをうけてなお、俺を露出プレイのパートナーとして信頼しているようだ。
「じゃあまたね、前田君!」
すると笹原は手に持った鍵を扉に刺して、その細い腕でぐいっとドアを開かせる。
バタン、と扉が閉まり、笹原が家の中に入っていったところを見送ると、俺は笹原の家に背を向け、のこのこと帰路に着く。
にしても、今日はどっと疲れる一日だった。
「あいつとは、今後も同じような事を繰り返すんだろうかな。だとしたら、俺はどうすれば良いんだろうな」
なんて独り言をぼやきながら、俺は自分の家へと戻る。
「あぁ、そうだ」
そこで俺は昼間のことを思い出し、ふと脇道へ目をやった。そこは、笹原が盛大に吐いた場所だ。
だが、見ると嘔吐した後は綺麗さっぱりに元通りになっていた。誰かが掃除してくれたのだろうか。だとしたら、悪い事をしてしまった。
「ま、吐いたのは俺じゃないんだけどな……」
なんてまた独り言を漏らして、俺は自宅へ向かう。
「…………」
こっちの方はやっぱり静かだ。真っ直ぐな暗い夜道に街灯が沿うように立っていて、じっと見てるとまるでそちらに誘導されてるみたいに感じる。
辺りには人気はなく、俺は軽く首を回しながらふらっと歩いていた。
「…………、ん」
だが、少し離れた街灯。その下に一人の人間が佇んでいるのが見える。
雰囲気からして、まだ若い女性、否、女子っぽい。俺と同じ高校生くらいだろうか。そいつは何故か、さっきの笹原のようにスポットライトを浴びるかのように街灯の光を受けながら、俺の方をじーっと見ている。
その体型はやはり俺のクラスメイトと同じくらいで、高校生と言うのが一番妥当なところだろう。髪型は首筋まである金髪で、後ろにひょこっとポニーテールのように括られている。茶色いチェック柄のミニスカートに、白いYシャツに赤いネクタイを締めていて、学生服? にしてはあまりにも着崩れているようだが。
にしても、こんな時間に年頃の女子が一人で出歩くなんて珍しいな。さっきからじっとしているが、誰か人でも待っているのだろうか。
なんて、俺はその程度の認識でそいつの方を眺めていた。
緊張の糸も解れて、さっきまでの危険な綱渡りと比べると今なんて穏やかなもんだ。だからこそ俺は夜更けにたった一人、女の子がこちらを見ているなんて、そんな普段なら絶対に違和感を持つ光景にもさほど関心を示さなかった。
ところがだ―。
「――先輩」
互いの距離が残り数歩というところまで来た時、そいつは俺にギロリと目を向け、そしてあまつさえこちらに言葉を投げてきた。
「ねぇ、先輩。良かったら少しお話しませんか?」
「先輩……?」
俺はその呼ばれ慣れない呼び名にふと反応する。
「人違いじゃないか。俺に後輩の知り合いは居ない」
そう。悲しい事に、俺には後輩と呼べる人物は誰一人として居ない。妹をカウントしようにも、あいつはまだ中等部だ。体だけなら大人より成熟してそうだけど。
「ふふっ、ねえ、それはそうと、さっきまで先輩、面白そうなことしてましたよね」
無視してそいつの横を通り過ぎようとしたところで、俺はその言葉に足を止める。
「……なんの事だ?」
「とぼけるんですかぁ? 良いですよ、先輩がそうしたいならそれでも」
こいつ……。まさか、笹原と歩いてるところを見られたのか……?
だが、それにしては雰囲気が変だ。妙に落ち着いてると言うか、大騒ぎする気配もない。なんだ、いったい、こいつは何なんだ。
その顔を見てみると、少しギャルっぽいと言うか、化粧が派手な印象はある。しかしこいつもこいつで整った顔立ちをしてるし、いわゆるグラビアアイドルやファッション誌の読者モデルなんて存在と同じ匂いがした。目元はくりっと大きくて、唇も柔らかそうだ。髪も丁寧に手入れされているのか、街灯の光が反射しそうなほどに艶がある。胸元は大きく開けているせいか、巨乳と呼べるほどにふくよかな二つの膨らみが見える。つまるところ、そいつは一般的に言う美少女らしかった。
「俺にいったいなんの用がある?」
「先輩ぃ~? 知ってますか? あの人の事」
あの人? こいつはいったい何の話をして―。
「先輩がさっきまで露出プレイに勤しんでた相手ですよぉ~。笹原カンナ先輩。あの人の過去とか、トラウマとか、知りたくないですかぁ~?」
「っ!?―」
そいつはまるで俺の驚く顔が満足だったように、にぃっと唇を吊り上げる。そして、不意に俺の腕に手を絡ませると、大げさに抱きついてきた。
「な、なにっ!?」
「先輩、あの人が引きこもりになったげ・ん・い・ん。知りたくないですか?」
俺を先輩と呼ぶその謎の女子は、俺にそう言いながら楽しそうにハニカむ。