ドMで引きこもりな私でも露出調教してくれますか? 作:わずみかん
誰なんだこいつは……?
笹原が引きこもりになった原因だと……? どうしてこいつがそんな事を知ってる……!
「っ、離せよ!!」
俺は腕を振り上げて、そいつを強引に振りほどく。
「先輩ぃ~、どうですか? 私の話、聞きたくないですかぁ~?」
その口調と言いクスクス笑う顔と言い、いちいちイラつく奴だ。
「……目的はなんだ?」
「目的? そんなの決まってるじゃないですかぁ! 私は先輩と少しだけお話したいだけですよぉ」
「……お前とは関わりたくない、と言ったら?」
「うーん、そうですねぇ~……。もしそう言われちゃったら、私は先輩を警察に通報すると思いますよ?」
「っ!! くそ、脅迫のつもりか……!!」
こいつにはどうやら笹原との事を見られているらしい。ここまで言い切る以上、証拠になる写真画像なんかも撮られると思っておいたほうが良いだろうな……。
下手に逆らえば、窮地に陥るのは俺と笹原だ。おまけに、こいつは笹原の事まで知ってるようだし、言い逃れもできないだろう。
「っ……、俺はいったい、この数日で何度脅迫されたら良いんだろうな」
苦笑いを浮かべながら俺はそう零す。昨日にも笹原から一度、そして今日も笹原から一度、それから今。あれ、思えば俺、二日間で脅迫され過ぎじゃね?
「ふふ、ふふふ、ねぇ、先輩。私、先輩とこうやってお話できてとても嬉しいんですよ? だって、私、ずっとずっと先輩の事、見てたんですから」
「俺を見てた、だと……?」
「はい。なにせ先輩は、私の大切な先輩ですから」
こいつは何を言ってる。さっきも言ったが、俺はこいつを知らないし、ましてや後輩でもないはずだ。それが、どうしてこいつはこうしつこく俺を先輩と呼ぶ……?
冗談か? からかってるつもりなのか? しかしだとしたらどうしてだ。俺の動揺でも誘おうってのか。だがそんな事してどうなる。こいつに何のメリットがある……?
「先輩。スマホとかって、持ってます?」
「……あぁ」
「ちょっと貸してください」
するとひょこっとこちらに手を出してくるそいつは、やっぱりニヤニヤと不気味な笑みを浮かべている。
俺のスマホで何をしようって言うんだ。分からない、がしかし、ここで逆らえば恐らくまた笹原との露出プレイをネタに脅迫されるだけだろうな。
「……ほらよ」
「わぁ~い!」
見えない。こいつの目的も、何もかも。こいつはどうして俺に接触してきた? 笹原とはどういう関係だ……?
さっきまでのこいつは、夜道にたった一人で突っ立ってやがった。まるで俺を待ち構えてるみたいに―。
いや、それは流石に考え過ぎか? だが今分かってるのは、俺はこいつに脅迫の材料を握られてしまっているらしい、ということくらいだ。
クソ、また面倒な事になった……! 俺はさっさと帰って寝たいだけだってのに。
「私、先輩の事、こう見えても大好きなんです。先輩は私のこと知らないでしょうけど。だ・か・らぁ――」
「は、おま―」
すると、そいつはおもむろに―。
「えいっ!」
自分のスカートと、それからパンツをずり下ろしたかと思うと、俺のスマートフォンで自ら撮影する。
『ピロリンッ』
「あ、こういう格好も好みだったりしますか?」
すると次は、Yシャツのボタンを外し、がばっとその下のブラを晒け出したかと思うと、斜め上に腕を伸ばし、自分の顔も含めて全体が写るようにスマホのシャッターを切る。
『ピロリンッ』
「お、おま、いったい何のつもりなんだ!?」
「ふふ、ほら、良く撮れてませんか?」
そう言うと、そいつは俺にスマホを差し出す。
見ると、そこにはパンツを脱いだ状態で、ブラを残してほぼ全裸姿の自称後輩の姿が、ピースサインとウィンクした顔を含めてばっちりと映っていた。
やや日に焼けた肌は健康的に露出され、巨乳を包むピンクのブラはフロントフックから肩ヒモまで丸見えだ。それどころか、下腹部では綺麗に整えられた陰毛すら写りこんでいる。その下の太股はちょうど良い肉着きで、まるで誘っているかのようにぴったりと閉じられていた。
周りの風景から、それを見た人間なら誰でもこいつが野外で露出して撮った画像だと直ぐに判断できる。
「……どうしてこんなこと」
「どうして、ですか?」
俺はそいつの訳の分からない行動に呆気にとられる。こいつは、こいつは俺を脅迫しようとしてたんじゃないのか? 目的までは分からないにせよ、笹原との露出を材料に、俺に何かを要求しようとしていた。さっきまでの言動からは、そうとしか思えなかったが、しかし。
「人って言うのは、誰かに脅迫可能な立場に立たれると、それだけで冷静さを失ってしまうものなんです。私、よく知ってますから。もっとも、先輩はそんな肝っ玉の小さな人だとは思ってませんよ! だからこれは、私なりの証です」
「証……?」
「はい。これで私はもう、先輩を脅迫したりできる立場じゃありません。もしも私が何かしようとしたら、その画像をネットでもどこでも晒してください。それで、私の人生も終わりにできます」
こいつ、正気か……?
どうしてわざわざそんな事をする。どうして、自分が一方的に優位な立場でありながら、それを放棄した?
第一、なんの証だか知らないが、何のメリットもなくただリスクだけを負うこの行為になんの意味があるんだ。こいつは、ただただ自分の人生を破壊する膨大な危険を生み出しただけだ。
「……お前、名前は」
「名前、ですか? ふふ、まさか先輩から直接名前を聞かれるなんて思ってもみませんでした。そうですね、折角ですからお答えさせていただきましょう。私、
「……鈴谷、な」
やっぱり分からない。こいつの言動からは何も。
「あ、そうだ。ここじゃあなんですし、近くのファミレスにでも行きませんか? 先輩とは立ち話じゃなくてゆっくりお話したいですし!」
鈴谷はまたパンツとスカートを履き直し、Yシャツのボタンを閉めると、ステップを踏むように歩きだす。
「……分かったよ。お前に付いてってやる」
俺は半ば諦めながら、きゃっきゃと一人はしゃぐそいつの背中をついて歩く。
こいつが勝手にあんな写真を撮ったとは言っても、弱みを握られた事に変りはないしな。
しかしどうやら俺は、また一つ面倒に巻き込まれたらしかった。それだけは、これまでの経験ではっきりと分かってしまう自分が少しだけ嫌になった。