ドMで引きこもりな私でも露出調教してくれますか? 作:わずみかん
「あの、私の顔に何か付いてます?」
どうしてだ。
どうして、よりにも寄って。
「っ!!」
俺は大慌てで鈴谷へと振り向く。だがあいつはまだぼ~っとどこか上の空になってるようで、こちらには気が向いていない。
「あ、いやぁ、本当に奇遇ですね。でも、どうしてここに?」
「ちょっと夜にアルバイトをね。他と掛け持ちだから、こっちにはあまり来てないんだけど」
「そ、そうなんですか……。大変そうですね」
と、愛想笑いする俺だが、ちょっと待って。
どうして笹原のお姉さんがここに居る。だってそうだろ。笹原はついさっき家に着いたはずで、あいつのポストにだって鍵が……。
あぁ……。
そうだ。確かにそうだった。笹原はお姉さんに連絡してポストに鍵を入れてもらうように頼んだとは言ったが、家に帰ってるとは一言も言わなかった。
なるほど。それで笹原もあそこまで堂々と家に入れたのか。お姉さんが家に居ないのを知ってたから。おそらく買い物から帰ったお姉さんはポストに鍵を入れ、それからまたアルバイトへと出かけたのだ。
「それにしてもこんな時間にファミレスだなんて、本当に良く働いてらっしゃるんですね」
「ありがとう。ほら、うちってお父さんとお母さんが出張に行ってるけど、仕送りとかは特にないのよ。生活費くらいは頑張って稼がないと」
ぐっと手を握ってガッツポーズするお姉さんはやっぱり美人だ。ウェイトレス姿も愛嬌があって可愛い。
それに腰周りを締め付けるデザインのせいか、胸のラインがより強調されてるって言うか……。
「前田君?」
「なんでもありません」
「そう? あっ! そうだわ。良かったら今日は一緒に帰らないかしら? ちょうど後少しでシフトも終わりなの」
「あの、えっと……」
俺はもう一度鈴谷の方を見て、それから答える。
「すいません、今日はちょっと大切な話があるらしくて」
「あっちの席の子、もしかして前田君のお友達? 可愛い子よね。モデルさんみたい」
いやそう言う意味じゃあなたも十分モデルみたいですけどね。
とは内心でしか突っ込めず、俺は冷や汗を流しながら苦笑いでその場はなんとか誤魔化す。
「それじゃあごゆっくり。私はもう少しだけしか居られないんだけど」
「あ、いえ、お仕事の邪魔してすいません」
するとそこでこちらに手を振りながら、笹原のお姉さんは厨房の方へと戻っていく。
はぁ……。マジで肝を冷やした。
あんな訳の分からない奴と一緒にいる時に、笹原のお姉さんと会うなんて思ってなかった。
と言うか、そうか。この時間にアルバイトしてるのか。制服も良く似合ってたな。
「……で、あいつはメロンソーダだったか」
俺はしばらくお姉さんの戻っていった厨房の方を眺めた後、コップに適当な量の緑色の液体を注ぎ込み、自分のコーヒーと一緒に持って席へと戻る。
「ほらよ、これで良いか」
「あ、はい。ありがとうございます」
俺が鈴谷の前にメロンソーダの入ったコップを置くと、はっと我に返ったように肩をびくつかせる。
「それで、つまり話をまとめるとこうか。お前はどういうつもりか知らないが俺をストーカーしてて、盗聴器を仕掛けてたおかげで笹原との関係も全て知ってると」
「はい!」
なぜかそこで自信満々に返事する鈴谷。いやそこは威張れるところじゃないからな?
「……で、それがどうして笹原の過去のトラウマと関係あるんだ」
俺はまずその質問から投げる事にした。勿論、俺としては「どうしてお前は俺のことなんてストーカーしてたのか」と言う問いから入りたかったが、今は兎にも角にもどうしてこいつが笹原の話を持ち出したのかが優先だ。
「先輩なら分かるんじゃないですか、その理由」
「…………」
俺はニコニコとこちらに目を向けてくる鈴谷を、静かに睨み返す。
「先輩、笹原先輩とこんな約束してましたよね。『引きこもりの笹原先輩が野外露出できるように調教する』って」
「……だからどうした」
こうして改めて言われると、やっぱり頭のネジが擦り切れてるよな……。
しかし鈴谷の前ではあくまでも冷静で居なければならない。弱みを見せたらダメだ。
「もしも先輩が本気で笹原先輩に露出プレイさせる。そこを『調教する』って言う約束のゴールにしてるんなら、まずは笹原先輩の引きこもりを何とかしないといけない。ですよね?」
……こいつ。
「だって、外に出て人と会ったら直ぐに吐き出しちゃうんじゃ、まともな露出プレイになんてなりませんから。そう思いませんか、先輩?」
「どうして俺が笹原の意味不明な約束なんて守ると思う? そこまでしてやる義理が本当に俺にあると思うか?」
「いいえ? 普通ならこんなふざけた約束なんて奇人か相当な物好きでもなければ請け負いませんよ。でもぉ~……先輩は必ず笹原先輩との約束を守ります。少なくとも、そうしようと努力するはずです」
ふざけたってお前が言うのかよ。
でも、なるほど。こいつはどうやら本気で俺に提案しているらしい。
俺から何を引き換えに得るつもりかは知らないが、本気で俺との交渉をやってのけようとしている。つまり笹原に協力するという、その約束を俺が成就させるために必要な情報を交渉材料にして。
「……お前、いったい俺のことをどこまで知ってる」
「ふふ、だから全部ですよ。私は、あなたの全てを見てますから」
「おこがましいな。たかが二ヶ月のストーカーで俺の何が分かる?」
「そうですか? 案外、そうとは限らないと思いますけど」
「お前の言ってることは全て俺が笹原に最後まで付き合う気でいることが前提だ。普通はそこまでしないだろ?」
「ふふ、先輩も素直じゃありませんね。じゃあ改めていいますね。私は、先輩の持っている“体質”についてのお話をしてるんですよ」
こいつ、やっぱりか……。
鈴谷真昼。こいつは、どういうわけか俺のあの体質について知っている。だからこその提案ってわけか。
「なるほどな」
俺は一度そう返事をして、それから再び思考を回す。
こいつの狙い。それは単純明快だ。
こいつは盗聴器の情報で、俺が笹原とした約束を知っている。そして何故か、俺がそいつに最後まで付き合う気でいる事も知っている。その上で〝笹原の過去のトラウマ〟と言う餌を用意してきたのだ。
「先輩、結局笹原先輩から引きこもりになった原因、聞けなかったんですよね?」
「まあな。本人が話したがってないんだ。しょうがないだろう」
「先輩たしかこうも言ってましたよね。詮索までは柄じゃない、でしたっけ。でも本心では違うんじゃないですか」
俺は鈴谷を睨み続けながら、しかし内心で少しだけ恐怖する。
こいつは、いったいどこまで俺のことを見透かしている。
「先輩は確かに人の詮索を嫌う人間だと思います。けれど、何か目的がある時はそうとは限らないんじゃないですか? もしも先輩なら〝例え相手が嫌がっても〟笹原先輩の言う露出プレイをさせるために、その障害になるものは排除しようとするはずです。違いますか?」
「…………」
俺は一度ファミレスの窓の外へ目をやる。そこは真っ暗に染まっており、ガラスには自分の顔が写り込んでいる。
俺は改めて自分自身を見て思った。
そうだ。確かに、こいつの言う通りだ……と。
俺は口ではああ言ったが、もしも笹原のことを『根本的に』解決するつもりなら、その引きこもりになった原因を知らなければならない。そうではければ、あいつの露出プレイと言う願望は永遠に叶わない。それは、昨日までの笹原の様子で嫌というほどに分かる。
「…………お前の望みはなんだ?」
「先輩。それって私の話に乗ってくれるって事ですかぁ~?」
「まだだ。お前の方の要求を聞いてないからな」
「ふふ、ふふふ」
鈴谷は微笑みながら、手に持っていたスプーンで唇をなぞる。
そして柔らかく微笑んでいた唇は次第に大きく開き、卑しく笑う鈴谷の表情が浮かび上がってくる。
そいつはどこか欲望的で、そして暴力的に見えた。
どうやらその表情こそが、この鈴谷という女子の正体らしい。
「それじゃあ、先輩。私の飼い主になってください」
そいつは、鈴谷真昼は、まるで喫茶店でコーヒーでも頼むように、そう軽々しくそう言ってのけやがった。
「飼い主……だと!?」
「そうです。先輩は、私みたいに可愛い女の子を甚振ったり、弄んだりするのが本当なら大好きなんですよね?」
「っ!? か、勝手な事を言うなよ!!」
「だってそうじゃないですかぁ。さっきだって、あんなのまるで露出プレイじゃなくて、奴隷をつれ回していじめてるみたいでしたし。あ、でも調教って笹原先輩が言うんなら間違いではないのかも?」
鈴谷は、まるで俺の本性を全て手に取ったように、果物を皮を順番に剥いで、それから丸齧りするように、言葉を発していく。
「先輩ぃ~。私なら先輩のお相手をもっとも~っと、先輩の望む形でできますよぉ? どんな命令だって喜んで受け入れますし。他人にレイプされたって、野犬に獣姦されたって、エッチな衣装で奉仕したって、丸裸で学校を散歩したって、なんだってします。全部喜んで受け入れられます」
なんだ。どうして―。
俺は思わず下半身に力が入る。自分の竿が次第に膨張し始めているのが分かった。だがこいつの手前、手で押さえることもできない。
いったい俺は、どうしてこいつの言葉だけで勃起してるんだよ……!!
「先輩ぃ~? 私達、理想のパートナーだと思いませんか? 先輩は女の子をいじめたくて、それから私は先輩みたいな人にいじめてもらいたいんです。ねぇ? そう思いませんか、先輩ぃ~」
「や、やめろ……」
すると鈴谷はぐいっと身を乗り出して、俺の耳元へ顔を近づけるとねっとりとした口調で囁く。
「私ならなんでもできますよぉ。先輩が今、頭の中で妄想してるような事はぜ~んぶ。手足を拘束したままおマ〇コにバイブを突き刺して、そのまま何日でも放置してください。それから、先輩の手で、全身を傷だらけにして、泣き叫ぶ私を強引に犯してくれても良いですよぉ? ねぇ、先輩」
「う、うるせぇええ!!」
俺は鈴谷の顔へ目を向け、歯を剥き出しにして眼光を向ける。
「先輩は、私を美味しく食べてください。私は、先輩に食べられたいんです。先輩も、本当はそうしたいんでしょう?」
すっと伸びてくる鈴谷の手が、俺の股間を柔らかく握る。
「うっ……!」
「このファミレスを出たら、もう私は先輩のものです。自由にして下さい。私、こう見えてもおっぱいとかには自信もあります。先輩、大きい方が好みでしょぅ?」
「……黙れよ」
「素直になっても良いんじゃないですか、せ・ん・ぱ・い……」
「黙れって言ってんだろ!!」
俺は思わず席を立ち上がり、鈴谷に向けてそう叫ぶ。
一気にシーンと静まり返った店内に、俺は自分が悪目立ちしてしまったことに気付いた。
「…………」
俺は一度呼吸を落ち着けて、ただ静かに席に着く。
「先輩、悪い話じゃないと思うんですけど?」
「お前、どこまで本気なんだ」
「ふふ、ふふふふ。なんだ、先輩。その証ならもうお渡ししたじゃないですか」
「証……?」
「そうです。証です」
俺はそこで、テーブルの上に放置していたスマホへと目を向ける。
あの画像か……!
こいつ、本当にどこまでイかれてやがるんだ……!?
「だから、私なら本気です。なんなら、もう一つ証を見せましょうか」
すると鈴谷は体を引っ込めて、それから少しだけ腰を浮かせながら、手を何かまさぐるように動かす。
こいつは、いったい何をする気なんだ。