ドMで引きこもりな私でも露出調教してくれますか? 作:わずみかん
「う、うぅ~ん……」
夜の野鳥や虫の鳴き声の中で、ベンチに寝かされていた笹原がぱちくりと瞼を開ける。
「えっと、ここは……?」
「公園のベンチだよ。お前、失神して気絶しちまったからな」
「そう、なんだ……、へへ、やっぱり私ってダメダメだね。また前田君に迷惑かけちゃった」
そう言うと笹原は照れくさそうに笑う。
あの三人を鈴谷が打ちのめした後、俺と鈴谷で笹原を負ぶって公園まで移動させたのは良いが、その途中で何度も絶頂を続ける笹原は結局快楽のあまりか気を失ってしまった。
おかげで俺も鈴谷も笹原の汗とマン汁に塗れる事になったのだが、俺はともかく鈴谷まで嫌な顔を一つせず、二人で笹原をこのベンチに寝かせたというわけだ。
あれから1時間くらいだろうか。ようやく目が覚めたと思ったらこの笹原の満足そうな顔だ。悪態をつく気も引っ込んでしまう。
「先輩。それじゃあ笹原先輩も大丈夫そうなので、私はこれで」
「ああ、悪かったな。つき合わせちまって」
「いえいえ! 私でもお力になれて嬉しかったです。ではでは、後はごゆっくり~!」
さっきまでは笹原の隣で心配そうに顔を覗き込んでいた鈴谷も、笹原が目を覚ますと茶化すようにそう言って、軽やかにステップを踏みながら公園の闇の中へ姿を仕舞いこむ。
「あいつも相変わらずだな。って言っても、今回ばっかりは礼を言わなきゃだが」
鈴谷の乱入、あれがなければ俺達は今頃どうなっていたか。あの三人組に囲みこまれて、笹原は……。
いや、考えてもしょうがない。というよりも考えたくないって方が本音か。何よりその原因を作ったのも、そうなる可能性があると分かっていながらああすると決めたのは俺なのだ。今更何を思ったところでしょうがない。
「笹原、それで、体調の方は大丈夫なのか?」
「う、うん! ちょっとだけ下がスースーするけど」
そりゃパンツもズボンも履いてないんだから仕方ないだろと思うところだが、こいつの場合のスースーするは『マンコにローターが入ってないから刺激が足りない』って意味だったりするから恐ろしい。
「バイブとローターなら外したぞ。あのまま付けてたらお前の方が干からびそうだったからな」
そうでなくても汗と潮吹きで大量の水分が抜けてるはずなのに、こいつの場合は気絶したまま無意識下でもバイブの振動を快楽として享受していた。何度もガクガクと腰を捻りながら体液を撒き散らす笹原に半ば呆れたが、こいつは性格だけじゃなく体の方まで本当にどうしようもないドスケベ具合だ。
という事で、俺はこいつからローターを取り外し、それは鈴谷に預けている。だから今の笹原が身に付けているのは、正真正銘ワンピースの一枚だけだ。
「そんだけ下らない事が言えるなら大丈夫そうだな」
「折角の前田君との露出プレイだったから……。折角なら、もう少しだけ付けてたかったのにな」
そう言うと、笹原は物寂しそうに乳首とマンコをさする。
「あひぃん……!」
だが、既に体の方はすっかりできあがってるようで、こいつはそれだけでも軽く腰をひくつかせる。
「はぁ~……どうやら心配してやった俺の方が馬鹿馬鹿しかったみたいだな」
「心配……? してくれてたの?」
この公園、それは笹原のトラウマになっている記憶の中の景色そのものだ。ここで笹原の親父さんは鈴谷の母親と性行為をしていて、その場に笹原は居合わせてしまった。
トラウマの根源、その舞台となる場所。笹原にとっても精神的にかなりのプレッシャーがあるものと思っていたが、どうやらそれ程でもないらしい。
「なんでもねえって。ほら、動けるんならさっさと行くぞ」
「あ、待って! きゃ」
俺が踵を返して歩き出すと、笹原は慌てて腰を上げ後ろを追いかけてくる。だが足腰がおぼつかないままの笹原は直ぐに足が絡まり、べたんと転倒する。
「何やってんだよ」
はぁ、こいつはこいつでまるで緊張感が無いって言うか……。俺の方は取り繕ってはいるものの、今でも心臓がバクバクだって言うのに……。
そう、俺達がこれから行う事。それは、紛れも無い青姦プレイ、つまり野外でのセックスだ。
それも近所の公園でのセックスと言うエロ漫画のようなシチュエーションである。まさか俺の童貞がこんな形で散らされるとは思っても見なかったが、それでも俺はこいつとの約束を果たすためにそれが必要だと判断したのだ。
「置いてくぞ」
「ま、待ってってば前田君~!」
後ろからテクテクと歩いてくる笹原は、そっと俺の肩に近づくと、その手を握る。
「おま、なんだよ急に――」
その手は、小刻みに震えていた。
流石に絶頂の繰り返しで体調が悪化したのか、それとも夏場とは言えワンピース一枚はまずかったのか。様々に原因をめぐらせるが、俺は直ぐに直感する。
笹原は堪えているのだ。自分の中で濁流のように押し寄せるトラウマの恐怖に、必死になって。
「…………」
そうだよな。恐くないはずが無い。こいつの人生にとって一番の恐怖体験――。その場に来ることが、恐くないはずがない。
俺は言葉の途中で口を閉ざし、その手を握り返した。
「えへへ、やっぱり前田君は優しいね」
「言ってろ」
俺は横に存在する笹原の息遣いを音で感じながら、ただ前を向いて足を歩ませる。
笹原の親父が不倫していたと言うその場所。目的の場所は既に鈴谷から聞いている。もう数十秒も行けばそこまでたどり着けるだろう。
「ねえ、前田君」
「なんだよ」
「前田君って、童貞だよね?」
「なぁ!?」
な、急に何言ってんだよこいつは!?
思わず大げさに笹原へと体を向けてしまった俺を、あいつは下目使いに覗き込んでくる。
「…………」
その柔らかな唇は、どこか小悪魔的に微笑んでいる。
「どど、どどど、童貞……」
童貞ちゃうわ!! と言ってやりたいところだが、どうしようもなく童貞なので、
「……です」
と、仕方なく白状する。
だってしょうがないじゃん! この年で女の子とエッチなんてするか普通!? もしそうだったとしたら俺じゃなくてきっと世間の方が間違ってる。
「そうなんだ」
すると笹原は嬉しそうににやける。
「なんだよ。悪いか?」
「べ、別にそうじゃないっていうか、むしろ……」
「ああそうだよ童貞だよ俺は。だからセックスの作法なんかも全然わからん。精々エロい動画で見た程度のレベルだよ」
俺はそう開き直るように言葉を吐く。すると、笹原はふふっと嬉しそうに笑った後、実はね、と言葉を続けた。
「私もなんだよ。私も、処女なんだ」
「…………」
流石の俺も、その言葉にはドキッとする。
「だから、私の初めての相手は前田君なんだよ?」
「…………じゃあ、おあいこだな」
あまりの胸のざわつきに平常心を失いかけてた俺は、そんな見当外れも甚だしい返答をしてしまう。
「うん、そうだね」
それでも満足げな笹原だったが、しかしその手はまだ震えたままだ。
「で、なんでいきなりカミングアウト大会が始まったんだ? 俺は少し心に傷を負ったわけなんだが」
「んーと、それはね」
すると笹原はその場で立ち止まると、俺に顔と体を向けて、闇夜の中で、ただ月明かりだけで照らされた顔で俺を見つめながら―。
「それは……、きっと私も、緊張しちゃってるからかな」
何かを言いかけた笹原はぐっとその言葉を飲み込むように、にぱっとハニカんだ。
「なら俺もだ。今度こそおあいこだな」
なんだか柄でもない事を言ってるようで凄く気恥ずかしい。
けど大体だ。この状況で何時もの調子で居ろって方が無理な話だ。
「そうだね。きっとおあいこだ」
そんなふうに答える笹原を連れて、俺はまた足を進める。
そして―。
「……ここか」
俺達は整備された歩道の途中でまた足を止めた。
その歩道の横には沿うように植えられた垣根がある。高さはちょうど俺と同じくらいで、向こう側はあまり見えない。だが所詮は垣根だ。隙間からは僅かにあちらの砂の色が見えるだろうし、声だって丸聞こえだろう。
こんなところでセックスしていたのか。そりゃ、近くを誰かが通りかかれば何をしてるのか分かってしまう。
今日もそうだが、この時間帯になれば通行人は皆無と言っていい。それなりに広い公園ではあるが、街灯も少ないし、こんな物静かで暗い場所をわざわざ通ろうとする人間はほとんど居ないだろう。居るとすれば、少しでも早く家に帰りたいとか、そういうせっかちな人間だ。なにせココを突っ切れば、笹原の家なら少しの近道にはなるわけだからな。
だからこそ、笹原がこんな場所で出くわしてしまったのは不運としか言いようが無い。それも笹原が少しでも早く家に着いて、家族とクリスマスを楽しみたいって言う、そんな純粋な想いが招いてしまった不運だ。
「なぁ、これからどうすれば」
俺は少しの感傷に浸った後、笹原へと向き直る。
「……私ね。あの時に見たこと、きっと一生忘れないと思うんだ。けど、同じ場所でね。同じような事をして、違う思い出で上書きしちゃえば、きっと私も少しは変れるんじゃないかなって、そう思うから……。だからね」
そして笹原は俺の手をぐっと引っ張って、ばさっと垣根の中へ引きずり込む。
「笹原!?」
垣根の向こう側は歩道とは違い、荒々しい雑草や樹木が生い茂っている。ほんの一歩入っただけなのに、暗闇も相まってまるで森の中に迷い込んだみたいだ。
雑木林の隙間から月の光が差し込む。そうしてできたまだら模様のコントラストの中に、笹原の口元が見えた。
「前田君。私を、ここで犯して」
口の動きと同時に、どこかそんな不安そうな声が聞こえた。