※この作品はR-18です。

ドMで引きこもりな私でも露出調教してくれますか?   作:わずみかん

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第44話

 静かに時が流れる。普段は当たり前に来ていた校舎でも、夏休みだとまた違った雰囲気に包まれていた。

 

 保健室の窓の向こうでは日がオレンジに輝いて神々しく辺りを照らしている。あちこちから聞こえていた生徒の声は途絶え、代わりに友人達と交わす別れの言葉が聞こえ始めていた。校門からはまた一人と誰かが去り、着々と俺達は取り残されていく。

 

 今日も一日が終わろうとしているが、俺の胸にある感情はただただ灰色だ。悲壮感も高揚も無く、それまでと変らない日々の終わりに過ぎない。

 

 御影先生は汚れた笹原の制服を洗いに行ってくれている。そのせいか、二人きりになった保健室の中は静寂に包まれていて、そこには山もなく谷も無い。そういう何時しか俺が求めていたような時間が緩やかに過ぎていた。ただ一つだけ違う点があるとすれば、それは目の前で眠っている一人の女の子の存在だろうか。

 

 そいつはあれだけの事を人にさせておきながら、結局はまた誰かの世話になって、仕舞いには一人だけ平穏の中でベッドに横たわる。はた迷惑な奴だが、それでも今は柔らかな顔で目を覚ます時が来るまでは安寧の中で瞼を閉じている。そんな笹原を俺はただ座って眺めていた。

 

「う、うぅー……」

「やっと目が覚めたか」

 

 喉を唸らせながら笹原がぱちくりと目を開ける。まずは不思議そうに天井を眺めて、それから横に座る俺を見つめる。

 

「私……やっぱり、またダメだったんだ」

「そうだな」

 

 俺は淡々と答える。変に感情が湧かないのは、きっと俺が灰色だからだ。

 こいつは人生を賭けた博打を打った。それに勝てばトラウマから解放され、こいつは過去から自由になる。だが、どうやらその博打は上手く行かなかったらしい。

 

「また、振り出しに戻っちゃったね」

 

 恥ずかしそうに布団で鼻まで顔を隠しながら、笹原を俺の様子を伺うように言葉をかける。

 

「そうでもないさ」

「へ……?」

「だってそうだろ。男に近づくだけでも無理だった。そんなお前の男性恐怖症だが、少なくとも〝触れられる〟までは耐えれるようになったんだ。たいしたもんだと思うぜ」

「そう、かな」

「勿論、根本的な解決にはなってないがな。けど、お前にその気があるんなら、何時かはきっと、そいつが克服できる日も来るさ。少なくともお前は自分の中にあるもんと向き合って、自分から変ろうとしたんだからな」

 

 そう、こいつは俺とは正反対だ。

 俺は自分の中にあるもんを見ようともしないまま、いやそもそも、見るべきものがあるのかも知れないまま、ただただ灰色の人生を歩もうとしてしまった。

 

 原因は……おそらく俺の特異体質だろう。そいつがどうして俺に宿っちまったのかも分からない。なのに、知ろうともしない。ただただ目を逸らすように生きてきた俺と、こいつは正反対なのだ。

 だからこそ素直に思う。こいつは、やっぱり俺とは違うのだと。

 

「それに触れられなければいいっていうんなら、少なくとも引きこもりからは脱却できるじゃねえか。なにせ前と比べれば普通に外を出歩けるようにはなったわけだからな。だからやっぱ、お前は立派だよ」

「……ありがと」

 

 笹原は恥ずかしそうに布団から出した目をこちらに向ける。

 

「えっと、ね。その……やっぱり、前田君にはこれからも迷惑かけちゃうと思うし、だからって私にお返しできることもあまりないかもだけど……」

「なんだよ、かしこまって」

「私、やっぱりあの時に家に来てくれたのが、前田君で良かった」

 

 そう言うと、また少し布団を持つ手を下げて、笹原は顔を見せる。

 その下には、恥ずかしそうで、だけど嬉しそうに笑う笹原の唇があった。

 

「えっとね……。これからも、その、こんなドMでエッチな私だけど……前田君は、そんな私でも露出調教してくれますか?」

 

 笹原はベッドから体を起こし、俺と向き合ってからそう告げる。

 これまでの俺だったら答えは決まっている。そんな滅茶苦茶なもんは見てみぬふりで、踏み込む事もなくて、ただただ自分の世界に厄介事が入り込まないようにしていた。だけど今の俺は、こいつとの約束を最後まで守ってやりたいと思ってしまう。

 これはきっと、俺の体質のせいなのだろうか。それとも――。

 

「決まってるだろ。俺にはお前との約束を破るなんて、到底できそうもないからな」

 

 と、俺は二人きりの保健室でそう笹原に答えた。笹原との時間がこれからも続いていくのだろうかと、そう予感しながら。

 

 

 

 

 




 【あとがき】
 作者のわずみかんと申します。ここまではご愛読いただき誠にありがとうございます!

 これにて第一章は完結となります。最初はわりと「引きこもり美少女なのに露出性癖な女の子とか居たらエロいし可愛いよなぁ」という思いつきで始めた連載ですが、予想以上にたくさんの方に楽しんでいただけて書き手としては感無類です。

 今回は前田と笹原のプロローグ的な物語になりましたが、次の章ではさらに二人の関係がどうなっていくのか、ドスケベ全開な青春を夏らしいイベント盛りだくさん(Hな意味でも)で進めていこうと思います!

 それではこれからの前田と笹原の物語に私自身も思いを馳せつつ、短くなりますがあとがきはこれにて〆にさせていただこうと思います。もしも第一章でご感想などありましたら送っていただけると大変喜びます。また評価やお気に入りもとても励みになりますので、よろしければ是非お願いします!
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