ドMで引きこもりな私でも露出調教してくれますか? 作:わずみかん
「それじゃあまた明日ね、前田くん」
時宮先輩との交渉を終えた俺は、今日のところはひとまず家に帰る事にした。
時宮先輩とはまた明日に学校で会う約束をして、手を振る先輩に見送られながら帰路に着く。後ろを振り返ると、やはり手を振りながらもふよふよと揺れる先輩の胸がなんとも目立っている。
「笹原の奴、部活なんて作ってどうするつもりなんだか」
帰る道中も頭にあるのは、笹原が部活でいったい何をするつもりなのかだ。その片棒を担いでいる身であるが故に、この先の事を考えると不安で仕方が無い。
そうこうしていると徒歩1分の自宅にはあっと言う間に到着し、ブツブツと唸りながら玄関の扉を開けて階段を上がり、自室のドアノブを掴んで扉を開ける。そして明日の事で億劫になりながら部屋へ入ろうとした時だった。
「あれ、兄ちゃん帰ってたんだ」
ガチャっと隣の部屋の扉が開いて、そこから顔を覗かせたのは我が妹の綾子だった。
「それに制服姿だし。学校にでも行ってたの?」
「ああ、ちょうど用事があってな。お前こそ部活はどうしたんだ?」
「バレー部なら今日はお昼までだってさ。大会も近いし、私はもっと練習したかったんだけどね」
妹は俺が階段を登る音でも聞いたのか、扉を開けてその隙間からひょっこりと首を出している。
そう言えば妹には前々からこういうところがあって、俺が帰ってくると玄関まで顔も見せに来る事も多い。まるで飼い犬が主人を出迎えてるみたいだが、こいつの場合は犬と言うよりも自由奔放な性格だし、どちらかと言えば猫っぽい気もするけど。
「用事ってなにしてたの?」
何気ない様子でそう聞いてくる妹に、俺もそっけなく答える。
「別に。たいした事じゃない」
「そうなんだ。てっきり知り合いの女の子に女子制服でも借りに行ってたのかなぁっとか思ったけど」
「ブフゥウウ!!」
見ると妹の表情はいたって真面目だ。別段ちゃかしてるふうでもない。まさかこいつ本気で言ってるのか? だとしたら兄ちゃんとしてはショック絶大だ。まさに効果は抜群である。
「い、いやいやいや! どうしてそうなるんだよ!?」
実の妹から変態だなんて思われた日には精神的ダメージで二度と立ち上がれなくなるかもしれない。それどころか呼吸すら止まるかも。
「だって、この前洗面所に兄ちゃんの服置いてあったじゃん」
なっ――。
そこで俺は思い出す。否、思い出してしまった。
そうだ。綾子には誤魔化すためとは言え、笹原が脱ぎ捨てた服を俺のモノだと言ってあるんだった。
つまり、今の俺は妹に女子物の衣服を自分用に持っていて、さらには脱衣所でそれらを脱ぎ捨てるような非常識な兄貴だと思われているという事だ。いや、それどころか変な性癖に目覚めた変態だとすら思われてるかも……。
「その、あの時はちょっと茶化しちゃったりもしたけどさ。別に、私は兄ちゃんがどんなシュミをしてても、バカにしたりしないよ?」
妹よ。兄ちゃんはそんなお前の優しさに溢れた言葉が何よりも辛いのだよ……。
「あ、あれはな。綾子っ」
なんとか弁明の言葉を探すが、上手く話が出てこない。
「それに、兄ちゃんが欲しいっていうんなら、私のとかでも」
「そうかそうかそこまで言うなら仕方なく頂く……」
っていや何いってんだ!! 流石に妹が可愛過ぎるからって兄貴としてそれはダメだろ!?
「っと言うのは冗談で、まぁ、なんだ。今はお前のその気持ちだけありがたく受け取っておくよ」
「分かった。お父さんとお母さんには内緒にしとくね」
そう言うと、綾子はバタンと扉を閉めて部屋の中へと戻っていった。
ふぅ……。笹原に鈴谷に、時宮先輩の事もあるってのに、その上に妹には女装兄貴疑惑まで持たれてるって、もうそろそろ胃の方が限界を超えてズタボロになっちまいそうだな……。
「あ、そうだ兄ちゃん」
ズキズキと痛む胃を押さえて俺も部屋の中へ戻とうとすると、また隣でガバッと扉を開いて、妹が体を投げ出すように出てきた。
「今度はなんだあや……っ」
「……ん? どうかした?」
俺が妹の方を振り向くと、そこには当然のように全裸姿の妹が「?」っと顔を傾けて俺を見ている。
「お、おま、だから家でくらい服着ろっての!?」
「どうして?」
「いくら兄妹だからって、もうお互いにいい歳なんだしさ……」
「だってユニフォームが汗でべどべどで気持ち悪かったんだもん。それに家の中なんだから、別に良いでしょ?」
「お前、兄ちゃんに裸なんて見られてなんとも思わないのか」
「別になんとも」
きょとんとした顔でそう答える綾子。なんと言うか、やっぱりこいつはこういうところも含めて自由奔放だなホントに。
「正直言って目のやり場に困るんだよ」
「……もしかして、兄ちゃんって実の妹の裸見てその……興奮、してるとか?」
「その犯罪者を見るような怯えた目はやめろ」
妹は今更になって胸を隠すような仕草をする。こうしてみると長身に胸もそこそこ有るしかなりスタイルが良い体つきだったりするのだが、しかしなぜ隠し方が指先一本を乳首に添えるだけなのか。つうかあれでは隠しきれてないどころか逆に卑猥な気さえする。俺をバカにしているのかそもそも妹がバカなのか、その判断に難しいところだ。
しかも肝心の場所は隠す気すらないと言うか、綾子の場合は少しあそこに陰毛が生えてきているので、それがかえって生々しい。それでいて人を犯罪者のように見れるのだから、兄ちゃんとしては妹の倫理観とか今後が色々と心配になってくるぞ。
「で、なんだよ。何か言いたい事が有るんだろ?」
兎も角として俺もそろそろ疲れてきたので、話だけでも進める事にする。
「あ、それなんだけどね」
すると妹は体を楽にさせると、全裸のくせにまるで普段と変らない感じで背を壁にもたれさせ、首元に手を添えた。
あの仕草。まるでオペラ歌手のようなというか、喉を指で軽く抑えるような仕草は妹の癖の一つだ。あの仕草をする時、妹は決まって自分の中で迷っている事を相談する時だったりする。
そして少し顔を曇らせると、綾子はなぜかとても心配そうに横目で俺を見た。
「兄ちゃん、時宮さんと会ってた?」