ドMで引きこもりな私でも露出調教してくれますか? 作:わずみかん
笹原がダウンした事も有り、しばらく休憩を挟んだ後、今度は下山へのルートを進み始める。
「大丈夫ですか先輩ぃ~?」
「大丈夫そうに、はぁ、見えるんなら、うっ! 代わってくれ……っ!」
因みに再起不能となった笹原は自力で歩く事も困難となり、俺がおぶって帰る羽目になった。
「笹原さん体調はどう?」
「うん、少しずつマシになってきたかも……」
「だったらせめて自分で歩……」
「ごめんね、なんだか迷惑ばかりかけちゃって」
「いえいえ仕方ないですよ。それにこのルートに決めたのもここに居る全員なんですし」
「あの、余裕があるんなら歩……」
「ありがとうね。真昼ちゃん、それに会長さん」
「ふふ、どういたしまして」
俺の主張はものの見事に全スルーされ、今も額から大量の汗を流しながら俺はえっちらおっちらと笹原を麓まで運んでいる。
ただでさえ汗も止まらないってのに、背中に笹原までついてきたのでは俺の方が先にくたばりかねない。それにさらっと「全員で決めた」なんて言われたが、だから俺はジョギングコースを選んでたんだっての。この際だから「俺は一切責任取らないからな!」とか言って笹原をほっぽり出したい気持ちも山々に有るが、しかしそもそもこの部活を作らせてしまった責任については俺にも多少有るわけだ……。
はぁ、結局こういう面倒な役回りはいつも俺だ。別に今に始まったわけじゃない。
「それで、もうそろそろ、着きそうか……?」
息を切らしながらかれこれ2時間ほど進み、俺の体力も腕の力もとっくに限界を超えていた。
そろそろマジで死の淵に立ちそうだって時に、ようやく山道を抜けてまた国道へと戻ってきた。
「ありがとう前田君。ここからは自分で歩けそう」
「はぁ、はぁ……! そう、かよ……」
笹原を背中から降ろした俺はぜぇぜぇと息を切らす。まるでフルマラソンでも走ってきたかのような疲労感だ。いやまあ、マラソンなんて走った事無いんだけど。
「それにしても先輩って結構力有るんですね」
「うっせぇ、誰も好き好んでやったわけじゃねぇっての」
「前田くんもこう見えてもやる時はやる人よ、ね?」
そう時宮先輩に嬉しそうに微笑まれ、少し照れそうになる辺り俺も男の子である。
だがここで気を抜いては余計に舐められるので、緩みかけた口元をなんとか押さえ、呼吸の度に上下に揺れていた肩を落ち着かせる。
「つっても俺だって体力の限界だ。正直駅まで持つか分からんぞ」
「あ、だったらこの先にバス停があるみたいなので、ひとまずそこまで行ってみませんか」
鈴谷がスマホを手に持ちながら道の奥を指差す。
「バス停? 来る時はそんなもんなかったぞ」
「行きと帰りでは道が違いますからね。もう少し行けばあるみたいですから、そこまでもうひと頑張りですっ!」
「はぁ、バスねぇ……。半日とか待つ羽目にならないと良いけどな」
なにせここは超の付く田舎だ。田舎のバスと言えば1日に数本だけと言うこともザラにあるって聞くし。
それでも一縷の希望に賭けて、俺達はバス停の方へと向かう。
「笹原、なんだったらもう少しおぶってやっても良いんだぞ?」
「だ、大丈夫……。それに、これ以上迷惑かけられないし」
見たところ体調もまだ万全ってわけじゃなさそうだ。しかし笹原は変に気を使うというか、意地っ張りなところがある。まあ俺としてはそっちの方が楽で良いんだけどさ。
しばらく歩くと確かにバス停のような物が見えてきた。トタンで簡単に作られた待合所と標識があり、近づいてみると時刻表が張られている。
「次は2時間後ですね。どうしましょう?」
待合所には赤いベンチがあり、ひとまず俺と笹原はそこに腰掛ける。待合所と言っても辛うじて屋根が付いている程度で、古びているのかいたる箇所が傷んでいた。こういうのもよく田舎の風景とかに出てきそうな代物だ。アニメで見たこと有るし。
「俺はここで待つわ。もうこれ以上は一歩も動けないしな」
「わたしも~……」
既にへろへろな笹原と俺は残留を決める。
ここから駅までは1時間ほどの距離らしいが、それでも歩いて帰るだけの体力はもはや残されていない。
「じゃあ、私と時宮先輩は先に行って海の方でも見てきますねぇ。海までは歩いてもさほど掛からないみたいですし」
「でも、笹原さんを置いていっちゃって大丈夫かしら……?」
「心配要りませんよ時宮先輩。付き添いは先輩がやってくれますから」
「そう? じゃあ折角だから、お言葉に甘えちゃおうかしら。実は砂浜の方も少し気になってたから」
「俺達は全然それで良いぜ。むしろ一緒に待たせちまう方が悪いしな」
そう言って俺と笹原は二人を見送る。時宮先輩は「何かあったら連絡してね」と最後まで心配そうにしていた。この辺の面倒見の良さも元会長らしいよな。
「さて、そんじゃあ残り2時間じっくり待ちますか」
辺りは山と田畑に囲まれており、時折吹く風のおかげでそれ程気温は高く感じない。屋根もあるので2時間程度なら問題無さそうだ。
「ねぇ、前田君……」
しばらくして、笹原はおそるおそるといった口調でそう話を始める。
「なんだよ」
「やっぱり、怒ってる?」
「別に。どうせお前と一緒だと、これくらいの事は起こるって思ってたからな」
笹原にも多少の負い目は有るらしく、珍しくしょげている様子だ。
「あ、えっと、そっちじゃなくて……」
だがどうやら見当が外れたらしく、笹原は俺と目線を合わせないまま、じっと自分の足元を見つめる。
「その、この前の事」
この前。
それが何を指しているのか、やっぱり俺には察しが付かない。
「なんだよ、言いたい事があるんならさっさと言った方が良いぞ」
「……うん。あのね」
俺が急かすようにそう言うと、笹原は小さく深呼吸して、それからゆっくりと口を開ける。
「やっぱり、いけない事だったと思うんの。その、前田君の初めて……あんなふうに終わっちゃって……」
「初めて?」
そこでもまだ疑問符を付けていると、笹原は堪らず頬を真っ赤に染めて、ぐっとこちらに顔を近づける。
「だ、だから! 前田君の最初の相手が私だったことっ!」
くりっとした瞳は既に涙目で、笹原なりに感情がこみ上げているらしい。
「あぁ、その事な」
「なっ!? そ、そんな事って!」
「別に気にしちゃいねぇよ。俺の童貞の事なんて。そもそもあそこで捨てなきゃ、きっと俺は一生童貞マンだっただろうしな」
ようやく笹原の心中が明るみになり、俺は呆れたような素振りで笹原の身体をベンチの向こう側へとつき返す。
「で、でもね。前田君はその、体質の事もあると言うか……」
「どうしてお前が俺の体質なんて気にするんだよ?」
「だってね。前田君は一度決めたら約束は絶対に破れないんでしょ? それって、本当は嫌でもやらなきゃいけないって事だよね……」
笹原はやっぱりどこか申し訳無さそうにそう呟く。
「ま、そうだな」
「じゃ、じゃあ!!」
「でも勘違いするな。あの夜の事は約束の事もあったが、どちらかと言えば俺が決めたことだ。俺がやるって決めたんだ。だから、気にすんな」
「……っ!!」
笹原はどうやらあの夜の事をまだ気にしているらしい。自分が俺の体質を利用して、無理やり俺に相手をさせてしまったんじゃないかって、そういう負い目を感じてるらしかった。だから初めての相手が自分で、それもあんな野外での青姦だったなんて、きっと俺は恨んでいると、そう思っていたらしい。
俺がそう言葉を返すと、笹原はぐっと体を翻して、顔を逆側に向ける。それから「そういうとこなんじゃん」とかぶつぶつとぼやいて、今度はベンチから下げている足をぶらぶらと揺らし始めた。
「分かった。じゃあもう気にしない」
「そもそもお前が気にするような事じゃないだろ」
「そんなことないもん」
「じゃあお前は自分の処女の相手が俺だったことを後悔してるのか? それだって同じ事だろ」
「それは……」
するとまたしばらく黙り込んだ後、ぷすーっと頬を膨らまして「何でも良い」と拗ねたように言葉を弾いた。
「まぁ、なんだ。経過はどうあれ、俺はお前に付き合うって決めちまったんだ。一番初めのそこんとこは、どうあれ結局俺自身が決めたことだからさ」
「……じゃあ」
するとまたぐいっと顔を寄せてくる笹原。こいつ、仕草がいちいち近いんだよ。あれか、男子とか勘違いさせちゃう系女子か?
だが照れて真っ赤になった頬を隠そうともしないまま、笹原は俺の顔をじっと見つめて言った。
「じゃあ……。ここで……、してよ」