ドMで引きこもりな私でも露出調教してくれますか? 作:わずみかん
と言うわけで次の日の朝。
俺達は一度学校で集合し、そのまま千葉公園のモノレール駅からプールへと向かっていた。
「それにしても先輩ぃ、こんなに女の子を連れてプールだなんて贅沢ですねぇ」
「何言ってんだよ。一人は要介護な上にもう一人は何をしでかすか分からん要注意犯じゃねえか。この場における俺の立場はお前らの監視役みたいなもんだっての」
「またまたぁ。先輩だって私達の水着姿楽しみにしてるでしょ?」
「俺に今日の楽しみが有るとすれば、プールの屋台で売ってる焼きそばを食う事くらいだな」
平日の朝9時30分という時間帯もあり、モノレールの車両はかなり空いていた。全員が座っても何も問題無いのだが、俺はどこか落ち着かず扉付近の手すりに掴まって立っている。別に女子に囲まれて浮き足立ってるわけじゃない。本当だよ?
「先輩、顔が固いですよ?」
「う、うっせえ」
別に変に緊張してるわけじゃないから。これは元々こう言う顔だから。何せ教室じゃほぼ毎日一人飯してるくらいにはボッチだしね俺は。ボッチと顔は関係ないけど。
「プール、プール!」
足をジタバタさせながら、一人テンションを上げる笹原は嬉しそうに車両ではしゃいでいる。そりゃもう今にもピョンピョンと飛び跳ねそうな勢いだ。
「ふー、ふー」
「御影先生なにしてるんですか?」
「今の内にイルカの浮き物を膨らませておこうと思ってな」
違う。影ながらテンションを上げてる人がもう一人居た。
「今作っても邪魔になるだけだと思うのですが」
「何を言う。戦地に赴くのであればそれなりの備えは必要だろう」
「今から行くのは紛争地帯でもなければただのプールですよ」
「それは分かっている。君も想像力を働かせたまえ。プールに行くのなら泳げぬ者にとって浮力は何よりも欠かせぬものだ。よって浮き輪は必須なのだ」
この人、やっぱクールフェイスの割には裏で盛り上がるタイプだ。
先生は先生なりに今日を楽しみにしているらしい。何せ夜な夜な一人でゲーセンに入り浸るくらいだし、もしかするとあまり大人数で出かけたりはしてこなかったのかもしれない。かくいう俺もそうだし。
「その水着って、昨日着ていた水着ですよね」
「なに。カバンの中を覗くなど不埒な」
「あぁ、すいません。つい上から見えたので」
御影先生がむっとした顔を向けたので俺はカバンから目を逸らす。確かに女性のカバンの中身を見るのはあまり褒められた事ではなかったかもしれない。
「そうだよ前田君? 先生だって女の子なんだから」
そうもっともらしく言う笹原だが、その手に持っているのは中身まで透け透けの透明ビニールバッグなのでなんか釈然としない。
流石に下着は別の袋に小分けにして入れられているが、☆柄のタオルが嫌でも目に入ってくる。
「私も生憎と新しい水着は無くてな。結局時宮に勧められたあの水着を買うことにしたんだ」
「そうだったんですか。俺も家で探したんですけど、やっぱり中学の時のしかなくて」
「私もあまりプールには行かないからな。もし昨日に水着を買わなければ、高校時代のスクール水着を使おうと考えていた」
御影先生は何食わぬ顔でそう言うが、スク水姿の先生を想像するとやっぱり違和感が拭えない。先生なのにスク水だし。先入観って恐ろしい。
「あ、ほら笹原さん。見えてきたの、あれがそうじゃないかしら?」
時宮先輩がガラス窓の外を指さすと、そこには大きなドーム型の施設があった。
「わぁ、おっきいね」
「近くにあるのは知ってましたけど、来るのは初めてなんですよね」
そいつはまるで東京にあるアイドルや歌手がコンサートを開きそうなあの某ドームのような外見をしている。
屋根の半分はガラスで出来ており、カンカンに照り付ける日光をそこから反射させていた。
「日本一長いウォータースライダーとか、波打つプールとか水着のまま入れる温水施設もあるみたいですよぉ」
「なんだかえらく詳しいな。もしかしてこう言うレジャースポット的なのはよく行ったりするのか?」
「そりゃもう脳内だけなら何百回と先輩とデートしましたしっ!」
自信満々にそう言い切る鈴谷をげんなりした顔で眺めていると、車内アナウンスが流れて車両が最寄り駅に到着する。
駅から出てプールの入り口まで歩くと、俺達は順に係員にチケットを渡し、更衣室へと向かった。
「ここで男女分かれるみたいね」
「じゃあ俺はこっちに行くんで、出たところで集合で良いですか」
「うん、分かった~」
女子更衣室に向かっていく四人。その御影先生の脇にはしっかり完成したイルカが抱えられていた。プールに入る前からイルカ完備の人なんて初めて見たかもしれない。
俺も男子更衣室に入ると、中は綺麗なロッカールームになっていた。比較的最近作られたようで、壁はまっさらな白色だ。
「やっぱ世間は平日だし、中は空いてそうだな」
ロッカーの空き具合を見てほっと安堵しながら、俺は適当に扉を開けて服を放り込んでいく。
「――っ!」
その時、はっと嫌な予感がして後ろを振り向く。
「……だ、だよなぁ! 流石についてこないって」
そこでまたほっと胸を撫でおろしながら、俺はズボンに手をかけた。
「やっぱり今日はそれなりに空いてますねぇ」
「ブフゥウウ!!」
隣で当然のように立っていた鈴谷に、俺は思わず肺中の空気を全て吐き出す。
「おま、何やってんだよ!?」
「ふふ、実は下にもう水着を着てきてたんです。どうです、似合うでしょ?」
「いやそっちじゃねえから! ここ男子更衣室だぞ!?」
「? 知ってますけど?」
「じゃあなんでいんだよ!」
「だって……だって先輩が昨日ぅ、私の着替えシーンを見てくれなかったんですもん。それで私、だったら代わりに先輩のお着替えを見ちゃおうかなって」
「見ちゃおうかなっじゃねえから! その謎に謎を塗りたくった理論はやめろホント!」
俺は鈴谷の腕を掴むと、男子更衣室の入り口から放り出す。
「やぁん」
「まったく……」
ため息をつきながら、戻ってパンツを脱ぎ、水着に着替える。それからロッカーを閉めた。
「…………」
おかしいな。目の錯覚じゃないよな。
「…………」
「…………ん? どうしたの?」
ふと下を見ると、そこにはしゃがんだまま俺の方をガン見する笹原の姿が有った。
「どうしたの、じゃないよね?」
「あ、それよりどうかな! この水着、結構似合ってるでしょ」
「ホント、お前らは…………!」
頭に青筋を立てると、俺は笹原の腕を掴んで男子更衣室の入り口から放り投げる。
「あぎゃ!?」
「馬鹿か!? 馬鹿なのかっ!? ホントどいつもこいつもなんなんだよ!?」
プールに着いてそうそうにこれである。あぁ、クソ。この先が思いやられるなぁ……。
「今のうちに胃薬飲んどこう」