ドMで引きこもりな私でも露出調教してくれますか? 作:わずみかん
更衣室を出ると通路にシャワー室があり、そこで軽く体を流した後に外に出る。すると早速とばかりに出口からはプールサイドが広がっていた。
南国を意識しているのか、あちこちにヤシの木や南国っぽい植物が植えられている。床はあずき色のゴム製で、陸上で走る地面みたいに弾力がある。
上はガラス張りなので日当たりが良く、だが気温調整されているおかげでそこまで暑くもない。まさにプールを存分に楽しめる環境がここには作られていた。
「若者に人気って言ってたけど、それも頷けるな」
本格的な作りについ関心していると、女性更衣室の方から水着に着替えた四人がずらずらと歩いてくる。
「おーい。前田くん~」
「少し遅くなってしまった」
御影先生はやっぱりイルカを抱えながらそう言うと、昨日と同じ水着姿で現れる。髪は普段と同じく後ろで止めており、水着姿ながら女医っぽいクールな雰囲気は健在だ。
その後ろの時宮先輩はメガネはつけたまま髪を下ろしていて、昨日と比べると少し露出の少ないフリルのあしらわれたピンク色のビキニを着ている。とは言ってもビキニはビキニなのでそれなりに肌が露出しており、時宮先輩が着ると凄まじい威力を発揮している。
「先輩ぃ、なんだか時宮先輩の方ばかり見てません? もしかして先輩って巨乳フェチなんですかぁ?」
にやにやと笑みを浮かべる鈴谷も、やはり昨日とは違う黒と白のストライプ柄のビキニだ。しかもサイズをわざと小さ目にしているのか、胸のサイズに比べトップがかなり小さい。そりゃもう溢れんばかりにキツそうな恰好だが、そいつはもうセクシーというよりも卑猥という言葉の方が的確である。であるはずなのだが、それも鈴谷が着るとまるでグラビアモデルの衣装のようなそれっぽさになってしまう。これが美少女の力か。恐ろし過ぎる。
「私の方もほら、どうです先輩ぃ?」
鈴谷はそう言うと、こちらの視線を集めたいのか腰をきゅっと捻って「うふーん」とか言いそうなポーズを決める。
「あぁ、似合ってるよ。つうかお前は何着てたって似合うだろ」
「ありがとうございます先輩っ! 先輩にそんなに褒めてもらえるなんて、私すっごく幸せ者です。幸せ過ぎてもう先輩の夜のお相手をさせていただくしか、ハァ、ハァ……」
「鈴谷は何を言ってるのだ?」
「すいません。こいついつもこんな感じなので」
「ねぇ、私はどうかな!」
最後に笹原が俺の前にちょこんと立つと、「えへへ」と嬉しそうにこちらに笑みを向けた。
こいつも昨日とは別の水着を着けており、薄緑の下地に胸の間には同じ薄緑色のリボンが付いている。それから腰には薄紫のパレオを巻いてあった。
「まぁ、その。似合ってるよ」
「ありがとうー。前田君も水着似合ってるね」
「別にお世辞とかは言わなくていいよ。俺なんてどうせ鍛えても無いし」
「そうかな?」
「そうそう。体が細いから筋肉が浮き出てるだけで、そんなにカッコいいもんじゃないからな。俺の体なんて」
「ふーん……?」
改めて笹原に体をじろじろ見られ、なんだかむず痒くなる。
つうか先輩含めて、結局昨日に水着ショップで試着していたのとは全然別の水着じゃねえか。やっぱり俺要らなかったんじゃないの?
「女性更衣室もそれほど混雑してなかったし、やはり客は少なそうだな。そちらはどうだ?」
「えっと、男子の方もそれほど人は居ませんでしたね。まだ午前中ですし、昼から増えてくるのかもしれませんが」
「私は人が多い場所はあまり得意ではないからな。これくらいなら丁度いいんだが」
更衣室を出てからも辺りを見てみるが、やはり他の客はまだほとんど居ない。俺達の他には数組のカップルや学生が居るくらいだ。家族連れもちらほら見えるが、やはり数はそれほど多くない。
「それに思っていたよりも広いのだな。ここの他にも二階や三階フロアまであるようだ」
御影先生が振り向いてから首を上げると、更衣室の上も別のフロアになっており、さらにその上はテラス席が設けられている。天井近くにはウォータースライダーのパイプなんかが通っており、外から見るより中はずっと広そうだ。
「ひとまず皆で回りましょ。折角来たんだし、楽しまないと。ほらほら、前田くんも」
すると時宮先輩が手を引いて、俺をプールへと誘い出す。まともに話すようになったのはつい最近とは言え、水着姿の先輩に手を引かれると男としてやっぱりドキリとしてしまう。
「先輩ぃ、私ともボール遊びしましょう!」
「わ、私もっ!」
近くのプールに一斉にざぶんと飛び込むと、暖まっていた体がひんやりとして気持ちいい。
こうしてついに、第二回目の屋外活動研究部の活動が今日も始まったのだった。
その後はプールでビーチボールで遊んだり、流れるプールで流されたり、軽く泳いだりしてプールの醍醐味を楽しむと、次は全員でウォータースライダーへ行く事になった。
「な、なんかやけに高いんですけど。本当に大丈夫か?」
俺は鉄骨の階段を登りながら、手すりの下を見下ろす。
どうやらこのスライダーは国内では最長らしく、スタート地点も地上20mと超高い。壁伝いに作られた階段を登っていると、今にも落ちるんじゃないかと心臓の底がきゅんと縮む。
人が少ない分、待機列も短かったのは幸いだったが、この高さを階段で登るのはそれだけでかなりの恐怖がある。つうかエレベーターとかじゃダメだったのかこれ。
「ね、ねぇ。私やっぱり戻っても良いかな。その、おトイレに行きたいなぁーなんて」
笹原は目をちらちらと階段の下に向けながら、完全に腰の引けた姿勢で顔を真っ青にしている。だが気持ちは嫌と言う程に分かるぞ笹原。
「ここまで来たのにもったいないわ。それに乗り場までもうすぐだから、今から下りるより乗っちゃった方が早いんじゃないかしら」
ビビってる笹原の背中を「ほらほら、進んで!」とか言いながらぐいぐい押していく時宮先輩。俺視点だと先輩が鬼にしか見えない。
にしてもどうしよう。俺も正直戻りたいんだけど。だって超高いし超怖いじゃん。え、ナニコレ。人間が乗って良い代物なの本当に?
「先輩、前空きましたよ?」
「あ、あぁ」
「あれ、もしかして先輩も怖いんですか?」
「そんなわけないじゃん」
こういう時に素直になれない性格ってつれぇ。
「もうちょっとで乗り場ですね。ホントに楽しみです!」
「お、俺なんて楽しみ過ぎて武者震いがしてくらぁ」
実はこういう絶叫系って苦手なんだよなぁ……。小さい頃家族で行った遊園地でジェットコースターに乗った時もマジ泣きして綾子に爆笑されたっけ。
つうかなんで皆平気なの? いやもう一人平気じゃないのも居るけど……。この高さだよ? 怖いよね? むしろ生物としてちゃんと恐怖を覚える方が正しいと思うんだけど。
『お待たせしました。こちら二人乗りになるので、ここからはペアになってお並び下さい。』
ついにスタートがすぐそこに迫ると、係員のお姉さんがそうアナウンスする。
「ペアですかぁ。どうしましょう?」
「5人だから、誰かが一人になるな」
「じゃあ私と御影先生、鈴谷さんと笹原さんかな?」
「えっ」
いや待ってどうしてそうなるの。
「ご、ごべんねぇ……」
「いえいえ、良いんですよぉ。そりゃ私も先輩と乗りたいですけど、先輩はこういうの強いみたいですしね」
「ま、待って」
ここでたまらず俺は口をはさむ。
「その、こういうのって確か体重が大切なんだよな。重い方が早くて楽しめるっつうか。ほら折角だしさ、俺としてはできるだけ早いスピードで楽しみたいわけよ。そう言うと俺も誰かと組みたいなぁなんて思うんだが」
なんか早口で言ってそうなセリフを実際早口で言う俺。
「体重ですかぁ。それだと先輩の相手は私か時宮先輩ですかねぇやっぱり」
「まっでぇ、おいでかないでぇえええ!!」
俺がそう提案すると、泣きじゃくりながら鈴谷の腕にしがみつく笹原。
悪いな笹原……。だが俺も生き残るためには背に腹は代えられないんだ。だってこんな高さから一人飛び落ちるなんて絶対に無理死んじゃう。
「なら私は一人で構わん。時宮が前田とペアになってやれ」
「ありがとうございます御影先生。あ、でもそれだと、私よりも笹原さんと前田くんがペアになった方が良いんじゃないかな。ほら、その方が体重も均等になるし」
「え――?」
「うーん、それもそうですね。じゃあ先輩と笹原先輩は先に行ってください。私達も後から続きますから!」
「「え――?」」
そう言うと俺は強引に笹原の隣に立たされる。それも列の先頭に。
「あの……?」
「大丈夫ですよぉ! 先輩は全然平気そうですし、しっかり笹原先輩をエスコートしてあげてくださいね!」
「………………」
そうして目の前には、ぽっかりとひらいたウォータースライダーの入り口がある。
『それでは二人乗りなので、片方の方が前に、もうお一人が後ろにお座りください』
準備されたゴムボートは8の字型になっており、それぞれの穴に一人ずつ座る仕様らしい。
「しょうがない。前は譲ってやるよ笹原」
「む、無理無理!! こんなの前なんて絶対に無理ぃいい!?」
「お前なら大丈夫さ。俺を信じろ」
「だって水だよ!? 水が流れてるんだよ!? こんなところ滑ったら落ちちゃうよ!!??」
笹原は物の見事に怯えて涙目のままガクブルとしている。だが俺にしても必死で笑顔を張り付けてやせ我慢してる状態だ。
「そんな事言うなよ。それに大丈夫だって。こういうのは絶対にコースアウトしないようにできてるから」
「で、でもあそこっ!」
すると笹原はコースの中腹辺りを指さす。見るとそこから下はパイプのコースが半分にカットされており、流しそうめんみたいになっていた。
見ると激しいコーナーがいくつもあって、下手したら勢いそのままに飛び出しちゃうんじゃね? と、つい恐ろしいイメージが思い浮かんでしまう。
「あ、ああ、あ、あの、このコースって絶対に落ちないんですよね……?」
『はい。勿論です。落ちそうになってもお客様のテクニック次第では落ちませんから』
「「テクニックって何!?」」
『うふふ。冗談ですよ。何があっても外へは落ちないように計算されてますから』
係員のお姉さんは楽しそうに微笑むが、こちらは気が気じゃない。つうか本当になんでそんな冗談言うのねぇ!?
「な、なぁ笹原。交渉しよう。後で焼きそば奢ってやるからお前が前に座れ」
「う、うふふ。前田君こそ、今後ろを譲ってくれるなら後でかき氷のメロンソーダ味食べさせてあげるよ?」
「いや断る」
「なんでどうじで!? メロンソーダが嫌いだったの!? じゃあハワイアンブルーでもミルクレモン味でもいいからぁ!!」
そう泣きじゃくる笹原は俺により着くと懇願するようにこちらにまなざしを向ける。いやかき氷の味ってどれも色が違うだけで一緒だったろ確か。
「良いから前に座れよぉお!!」
「いやだぁああああ!!」
乗り場で揉め合っていると、ふと俺の肩にゴツイ手が乗っかる。
『お客様。後ろの方がお待ちですので』
見ると、後ろにはゴリゴリマッチョのスタッフさんが俺の方をギロリと睨んでいた。
「うっ……!」
笹原の肩がビクンと強張る。俺にしてもいきなりこんなおっさんに睨まれて怖くないわけがないのだが、笹原からすればまた違う意味での恐怖になる。
にしてもこのタイミングで男性スタッフか。それも狭い乗り場だと、嫌でも至近距離になってしまう。
『彼氏さん。ここは男を見せる時と違いますかね』
なぜかスタッフさんに強面口調でそう言われてしまう。セリフにしてもなんつうか、あんたはヤクザ者か何かと突っ込みたくなるんだけど。
「ま、前田君、その……」
「……はぁ。分かったよ。俺が前に座るから、笹原は後ろ乗れ」
スタッフとは言え、これだけ近くに男が居るのは笹原からすればかなり恐怖心があるはずだ。あまり長引かせても最悪の事態になりかねないしな……。
ビクビクとする笹原にそう言うと、俺はゆっくりと前に座る。
『それじゃあ出発しまーす!』
笹原は強面の男性スタッフをちらちらと見ながら、ストンと後ろに尻を落とす。するとお姉さんが横のスイッチを押して、ゴムボートの乗ったベルトコンベアが前に動いていく。
「ひっ!?」
「な、なんだよビビってるのか笹原。こんなもんただの子供だましだって」
「前田君だってさっきは絶対怖がってたでしょ……」
「いやいや、こんなのでビビらないから。いくら俺でも家族とか行った時にこういうのは経験済みだしな」
「そ、そうなんだ」
「まぁ任せとけよ。もし落ちそうになったら……お前は道連れだ」
「カッコいいこと言うのかと思ったら予想以上に最低だったよ!?」
ついにベルトコンベアはいよいよ最終段階に入り、ゴムボートがゆっくりと傾いていく。
「ま、前田君……」
「…………」
「ま、前田君?」
「…………う、」
そして俺達は真っ暗な中へと一直線に落ち始める。
「うわぁあああああああ!!」
そうして俺の絶叫は『スーパービーチ・サンシャインプール』にこだましていった。
「ぜへぇ、はぁ……」
死ぬかと思った。
何が絶対に落ちないだよあのスタッフ。無茶苦茶ギリギリだったんですけど!
コーナーを曲がるたびにすれすれまで傾くから何度叫び声を上げたか分からない。もう拷問だあれ。精神が擦り切れそうだ。
「ばはぁー……、ひっく、うぅ……」
互いにびしょぬれになりながら、出口のプールで荒く息を吐く。
「きゃはぁああ!」
すると次に勢いよく鈴谷と時宮先輩が落ちてきた。二人の顔を見ると凄く楽しそうにしている。
「流石評判になるだけありますねぇ!」
「メガネ外れちゃうかと思ったわ。それにしても本当によくできてたわね」
ゴムボートを係員に渡した後、そんな感想を言い合えるくらいには余裕たっぷりな二人を、俺達は死んだ目をしながら眺める。
「私、ちょっと漏れちゃったかも……」
「やめろよ、これからミルクレモン味のかき氷食うのに」
ザブンと、その後に流れてきた御影先生はなぜか無表情のままだった。すーっと何事も無く落ちてきたので置物か何かかと思った。
「思いの他楽しかったな」
そう言うと、先生もゴムボートを係員に預けて俺達の方へとじゃぶじゃぶ歩いてくる。
「にしても先輩たち凄い声でしたね。上に居た私達のところまで聞こえてましたよぉ」
「げほっ、そりゃあんなもんに乗ったらな」
「うん。私きっと今晩の夢に出ると思う」
二人して青い顔をしながら、ずるずるとプールの縁へ戻って水から上がる。
「さっきより人が増えてきたな」
プールサイドを見ると、朝と比べて人の密度が上がってきてる。
時計を見ると、ちょうど正午を過ぎたころだった。
「そろそろ昼食時ね」
時宮先輩がそう言うと同じく、ぐぅうううと腹の音が鳴る。
「そう言えばお腹空いてきたかも」
「お前、あんだけキツソウな顔してたわりには食欲は有るんだな……」
「う、だってしょうがないよ。お腹はどうしても減っちゃうし」
「それじゃあ一度お昼にしましょうか。二階にフードコートが有ったはずだから」
「さんせー!」
笹原が手を上げると、特に異論も無く俺達は二階にあるフードコートへと向かうことにした。
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