異世界M男ハーレム 作:背徳亭快楽
でもいいんだい。
中野二乃。
『五等分の花嫁』という作品に登場するヒロインの一人で、中野家五つ子の次女。
五姉妹の中では一番、気が強くて活動的。もはや毒舌とも言える歯に着せぬ言動で、他人と衝突することも多い。実際に本編では主人公の風太郎や姉妹達とも衝突する事もあった。
その一方で何事もハッキリと言う性格で、風太郎への好意を自覚してからはストレートにその気持ちを伝えてグイグイ迫っていった。
社交的で友人も多く、ファッションセンスも高い、今時の女子高生といった少女だ。
俺も漫画本編を読んでるときは好きだったけど……実際に関わるとなると、結構苦手な人種だ……
あと彼女は作中の時間軸によって、大分性格や外見が変わる。
序盤はロングヘアーで性格もツンツンしていた。風太郎に恋した後は髪も短くし、性格も大分マイルドになっていたのだ。
個人的には後半の方がいい。
あと五つ子なのに、一人だけというのは何とも……いや深くは考えまい。
俺は美柑ちゃんと一緒に自宅を出て、途中で別れて通っている高校へと向かった。
自宅の間取りと同じで、通学経路も校舎も教室ですら、俺はいつの間にか理解している。
本当に都合のいい世界だ。これで煉獄というのは無理がある気がする。
そんな事を考えながら、自分のクラスの前までやってきた俺は、深呼吸をしてからこっそりと教室の中を覗いてみた。
何処にでもあるような普通の教室。
その中に、一際異彩を放つ女子が見える。
独特のピンク色の髪。それを蝶を思わせる黒いリボンでツーサイドアップに纏めている。
黒のカーディガンと白いニーハイをバッチリと着こなした少女……間違いない、中野二乃だ。
髪が短いから恐らく後期の方だろう。
クラスの女子と楽しそうに喋っている。
……美柑ちゃんもそうだが、二次元のキャラが本当に存在するのを見ると思わず感動してしまう。
俺はそのままこっそりと教室の中へ入り、例によって何故か知っている自身の席へと向かって行く。
教室の奥、しかも一番後ろというラノベ主人公あるあるの席だった。
鞄を置いてようやく一息。
……あれ、そういえば、家の間取りとか学校の住所とかは脳にインプットされているのに、友人とかクラスメイトの記憶が全く無い。
まさかこっちの世界でもぼっちだというのか……
俺がふと悲しくなって、大きくため息をついた時だった。
「っ……」
急に視線を感じ、顔を上げると二乃とバッチリ目が合ってしまう。
彼女の碧い瞳に俺の顔が映ると、スッと目が細められる。
まるで獲物を見つけた肉食動物のような目つき。一瞬だけチロリと舌なめずりをした後、二乃は何事もなかったように友人との会話に戻っていく。
(そういえば、事前にこの世界の知識を持った状態で召喚されるんだっけ……)
美柑ちゃんも最初から俺の事を知っていたし、それなりの好意も抱いていた。というと彼女も……
二乃に責められる自分の姿が脳裏に浮かび、俺は思わずドキリとしてしまう。
しかし日中、彼女が俺に絡む事は無かった。
…
……
………
「ちょっといいかしら?」
放課後、二乃の方から俺に声をかけてきた。
俺は完全に虚を突かれたように黙ってしまう。彼女の存在感にビビッてしまい、こちらからは話しかけられなかったのだ。
それに久々の高校生活に戸惑いっぱなしだったのもある。
皆についていくだけで精いっぱいだったのだ。
「え、えっと……」
「ほら、こっち来なさい」
間髪入れず腕を掴まれ、そのままズルズルと連行されていく。
この強引さ。確かに原作やアニメで見た二乃だ。
しかしその手の柔らかさ。ふわっと香ってくる甘い体臭に、目の前の彼女が実在することを感じてドキドキしてしまう。
そのまま辿り着いたのは、学校の屋上であった。
よくラノベで学校の屋上が開錠されているという設定はあるけど、実際に開いているのは初めて見る。
放課後であるというのに、屋上には俺達以外に人の姿が見えず、貸し切り状態であった。
「あんたが、絵夢男でしょ?」
屋上唯一の出入り口である扉を閉め、二乃はそのまま俺をドアに押し付けるようにして、顔を近づけてきた。
「え、な、何で……」
「ここに来た時に、何でか知らないけど、頭の中に入ってきたのよ」
そういえば美柑ちゃんもそんな事を言っていたな。
となると俺が二乃の事を知っているように、彼女も俺の事を知っているのか……つまり俺が何故ここにいるのか。そして性癖までも……
「よくわかんないけど……あんたの根性を叩き直すために、私はここへ呼ばれたってことよね?」
すぐ目と鼻の先に二乃の端正な顔が迫る。
彼女の特徴的な前髪パッツンの姫カットがさらりと揺れた。
「人をいきなりこんな世界へ呼び出して放置するなんて、本当いい度胸してるじゃない」
「い、いや……それは……」
思わず目を逸らす。
二乃のストレートな視線は元来陰キャである俺には辛いのだ。
「何、目を逸らせてんのよ。こっちを見なさい」
が、強引に顔を掴まれて無理やり正面を向かされてしまう。
やっぱり勝気な陽キャには主導権を握られっぱなしになってしまうのだ。
「あんたのせいで、私は大事な家族もいないココへ放り込まれたのよ」
……二乃は五つ子で他に四人の姉妹がいる。
「その責任はあんたにとって貰わないと、いけないわよね」
姉妹は皆、仲が良いが中でも二乃は家族愛が人一番強く、深い。主人公の風太郎を最初は家族の関係性を破壊する『異物』として、犯罪レベルの行動をもって排除しようとしたくらいだ。
いま、あの時の風太郎に対する攻撃性が俺に向けられようとしている。
風太郎は数あるラブコメ主人公の中でもかなりの高スペックかつ強い精神を持っていたから、二乃の態度に耐えられた。
しかし陰キャで低スペックの上、マゾの俺には到底あの攻撃性に耐えることは不可能だろう……そう思った時であった。
ぐいっ、と襟元を掴まれて急に顔を寄せられる。
二乃の端正な顔が目と鼻のすぐ先に迫った瞬間――
「んんっ!?」
唇に柔らかい感触が触れた。
鼻をくすぐる微かな吐息。全身から力が抜けていくようだ。
突然、唇を奪われたのである。
しかも相手は二乃。
好意を寄せられるような理由も無ければ、される理由も無い。
なのに突然、彼女からキスされたのだから、俺は完全にフリーズしてしまう。
「あ……」
彼女の唇が離れていく。
目の前でスッと通った鼻梁と桜色の唇が微かに震える。
「ふふっ……もしかして、初めて?」
「っ……」
俺は咄嗟に顔を逸らした。図星だったからだ。
これまで生きてきて女の子とキスしたことなんて一度も無かった。
だからこそ今の行為は完全にキャパシティーオーバーになってしまい、脳がショートしたのである。
「へぇ……そうなんだ♪ ふふっ、よかったわね。人生初キスが私で」
「……な、なにを、うむっ」
「んん……ちゅう……」
何とか反論しようとした俺の唇を、二乃が唇で塞ぐ。
そればかりか彼女は小さな舌を突き出すと、俺の唇をこじ開けて口内へと侵入していくのである。
「んちゅ……じゅる……れろぉ……」
そのまま二乃は舌を絡めあい、口内を隅々まで這いまわっていくのである。
情熱的で官能的なディープキス。
まるでお前は私のモノだ、と言わんばかりの一方的な舌使いで、俺の口の中にマーキングするように二乃は舐めまわしていくのである。
「んんっ……ちゅうう……んんちゅう……」
大量の唾液が流れ込んでくる。
甘い。
ぬめぬめした舌先からとろとろの唾が染み出し、俺の口の中へ送り込まれていくのだ。
「んちゅう……♡」
舌を吸い上げられ、そのままチロチロと舐められ、歯茎までしゃぶられる。
お互いの口元からは唾液がだらだらと溢れ、首筋を汚していく。
二乃のキスによって俺の全身からtどんどんと力が抜けていき、いつのまにかされるがままになってしまうのだ。
「んんっ……ふうっ……ちゅうぅ……」
朧げな視界の先に、二乃の整った容姿が見える。
俺を求め、支配しようとする征服欲と、愛情の籠った胡乱な瞳。
愛する人を自分のモノにしょうとする彼女の強い意志が感じられた。
(ああ、そうか…)
チュートリアルの時に、この世界に召喚されるヒロインは、俺に歪な好意を抱くと説明された。
二乃の場合は本来、家族である他の姉妹に対する情愛と、初恋の人である風太郎に対する劣情、その二つが全て俺に向けられ、歪な情欲となって形になっているのだ。
五人の姉妹の中でも二乃は特に愛が深い性格だった。
そんな彼女がその全ての愛情を俺に向け、さらにサディスティックな情欲に変換されているのだ。
尋常ではない。
それがありありと二乃の表情に溢れていた。
やがて彼女のディープキスは終わり、唇が離れていく。互いの唾液がたらーっと糸を引き、卑猥な光景を屋上に作り出す。
「……私の事とか、あんたの事情とか、関係無いわ」
俺を見下ろしながら、二乃は言った。
「あんたみたいな男は、女の子に支配されるために生まれてきたの」
上気した頬。美しい瞳が、俺の顔を映している。
「そんな変態を一生、飼い殺しにして、徹底的に苛め抜く女の子がこの世にはいるの。それが私よ。残念だったわね」
本来なら様々な困難を乗り越え、葛藤を得た後に辿り着く魂の告白。
それを二乃は堂々と言った。
「これからとっても恥ずかしい目にあわせてあげる。覚悟しなさい♪」
勝利を確信したのか、二乃は上機嫌でそう宣言すると、そのまま屋上を後にした。
残された俺は、彼女の凄まじい情熱に、ただ呆然とするだけであった。
(そういえば二乃は『愛の暴走機関車』って言われる位、苛烈な恋愛姿勢だったな)
スタンハンセンも真っ青な暴走ぶりだ。
俺はこれから始まるであろう彼女との学園生活を思い、ただ項垂れる。
しかしその股間は、熱くなり怒張し始めるのであった……