異世界M男ハーレム 作:背徳亭快楽
「はぁ……」
今日何度目か分からない溜息をつきながら、俺は帰路に着いていた。
まだ唇に二乃の感触が残っている。思わずそっと口元へ触れると、あの美しい顔や甘い髪の香りまでもが脳裏に浮かんだ。
そして何よりあの表情。
背筋がゾクっとするようなサディスティックな視線と雰囲気。以前の俺なら最高のオカズになっていただろうが、実際に彼女にそれで責められると、恐怖と屈辱で胸がいっぱいになってしまうのだ。
「明日から毎日、二乃が教室にいるのか……」
俺の身体が耐えられるであろうか、そんな事を思いながら自宅へと帰ってきた時であった。
「おかりなさい~♪」
玄関を開けると、信じられない光景が広がっていた。
「何よ、鳩が豆鉄砲喰らったような顔して」
「な、なんで……ここに……」
目の前にいたのはさっき学校で別れたばかりの二乃であった。
彼女は悪戯っぽく微笑みながら、手をヒラヒラと振っている。
「何でこの家にいるか? 決まっているじゃない」
さも当然のように彼女は言った。
「私もここに住むのよ」
…
……
………
テーブルには豪華な料理が幾つも並んでいた。
美柑ちゃんと二乃。
新しい同居人の歓迎。あるいは今日から一緒に住む人への挨拶ということで、料理が得意である二人が腕によりをかけたのだという。
「まさか召喚された女の人は皆、ここに住むことになるなんて……聞いてなかったからびっくりしたよ」
「私も驚いたわよ。でもここは良い家ね。気にいったわ」
二乃はリビングを見渡して言った。
原作だと高級マンションで生活したり、ホテルに家出したり、姉妹で安アパートに転がり込んだりと若い頃の劉備玄徳並みに住処を変えていたから、新しい環境で暮らすことに慣れているのかもしれない。
「でもこれから女の子が増える度に、一緒に住むんだったら部屋が足りなくなるよ? どうするの、M男」
美柑ちゃんが不安げに尋ねた。
ちなみに最初は「さん」付けで呼んでくれていた美柑ちゃんであったが、今日帰ってきたら普通に呼び捨てになっていた。
なんでも二乃が俺を呼び捨てしているからだとか。
原作のリトに対する態度に近づいてきたようだった。嬉しいような悲しいような複雑な気持ちだ。
「い、一応、アイテムを使って部屋を増やしたり、家を大きいモノに変えたりできるらしい」
俺も美柑ちゃんと同じことを思ったので、調べてみたらMPを使ってヒロインガチャを引くだけでなく、アイテムを購入できることが判明したのだ。
その中には必要とするポイントも多いけど、家具や部屋の増築、新しい家などがあった。
まぁ……それ以外も首輪とか手錠とか鞭とか明らかに卑猥なアイテムもあったけど。
「今はまだ空き部屋が何個かあるから、大丈夫だけどこれ以上増えると、大変だよ」
「あら、なら私がM男君と一緒の部屋で寝てもいいわよ」
「ぶっ」
二乃がとんでもない発言をして、俺は完全に箸が止まってしまった。美柑ちゃんも驚いてフリーズしてしまう。
「ば、な……何、変な冗談を言ってるんだ」
「あら、冗談じゃないわよ。そもそもあんたにお仕置きするために私はこの世界に来たんだから。一緒に寝る方が、い・ろ・い・ろ、と……都合がいいじゃない」
スッと目を細め、妖艶に言う二乃に思わずドキリとしてしまう。
「も、もう、駄目だよ」
「ふふ、冗談よ。冗談」
美柑ちゃんがむっとした表情で注意すると、二乃はちろっと舌を出して笑った。でも正直冗談には思えなかった……
「でも、そのMP、っていうのを使って0にしなければいけないんでしょう? だったらドンドンMPを使った方がいいんじゃないかしら」
「あ、ああ……確かにそうだな。だったらアイテムを買うほうがいいか」
ヒロインガチャを引いて、新しい女の子を増やすよりそっちの方がよさそうだ。
と思ってアイテム購入欄を見てみるが、前述の部屋の増設とか新しい部屋とかは確かに一気にMPを消費できるものの、購入条件があって今は手に入らないようだった。
「一定数以上のヒロインがいないと、高いアイテムは買えないらしい」
「ふぅん、じゃあ安いモノをいっぱい買えば?」
「そ、それが……」
その他の安いアイテムっていうのが……所謂SMグッズなのだ。
流石にこんなものを食事中に晒す訳にはいかない。小学生の美柑ちゃんだっているのだから」
「何、悩んでるの。ちょっと見せてみなさいよ」
「あ、ちょっ……」
が、ひょいっと二乃にスマホをひったくられてしまう。
慌てて取り戻そうとするも、先に液晶を確認した二乃はにやっと笑った。
「へぇ……成程。随分と面白いモノがいっぱいあるわね」
「ま、待て……言っとくけど見てただけだ。別に買おうなんて……」
「ふぅーん……あ、特注ボンテージなんてものもあるわね。ね、M男君。赤と黒、どっちがいい?」
「う……」
駄目だ、完全に二乃のペースに嵌められている。
あといつの間にか美柑ちゃんがそんな二乃の隣で顔を真っ赤にしながらも、アイテム欄を覗き込んでいた。
小学生でそんなものに興味があるなんて、お兄ちゃんが心配しちゃうぞ……まぁリトはこの世界にいないんだけどさ。
結局、ポイントを早く使った方がいいという意見が多数決で可決され、アイテムが幾つか購入される事となった。
そうSMグッズが。
ちなみにアイテム欄等は他の人も見ることが出来るが、それを購入したり、ガチャを回したりするのは俺しか出来ないらしい。
「とりあえず一通り買っときなさい。いつ何に使うか分かんないし」
二乃の命令で買えるグッズは大体購入した。
これで俺の手持ちMPは半分くらい減って、残り62pとなっている。
「うーん、あんまり減らないね。かといってこれ以上、女の子が増えるのはちょっと……」
美柑ちゃんが困ったように言った。
「まぁ、それはまたおいおいと考えていきましょう。そう簡単にはM男君も改心しないでしょうし」
これ以上考えてもしかたない、と二乃は割り切ったようですぐに話題を変えた。
これからの生活の事とか、学校の事とか。
一応、俺達は一緒に住むとはいえ赤の他人なのだから、個人のプライベート空間は互いに干渉しない。
家事は皆で分担してやる。ただし料理は美柑ちゃんと二乃の交代制。
そんな感じに決まり、夜は更けていったのだった。
夜になった。
もう寝よう、と寝室に向かった俺はそこで大変な事実に気がついたのである。
鍵が無いのだ。
そう、俺の自室と用意された部屋には鍵がかからないのである。
つまり外部からの侵入が容易というコトだ。ちなみに女性陣の部屋には当然のように鍵が設置されている。運営側の悪意を感じる設計だ。
(もしかして二乃が夜這いをしかけてくる可能性は……いや、流石にそこまではしないか……)
そんな事を考えながら、俺はベッドに横になった。