異世界転生を阻止されたので現代で復讐を果たします。 作:六本線
クラスの空気が変わり、秋空オモイは完全に孤立。
追い詰められた彼女はユウマへ謝罪し、必死に取り入ろうとする。
その裏で、グリッジはユウマに「呪いで人間関係まで操作されていた」事実を告げる。
読書だけが平穏だった理由も“異世界側の都合”だったと知り、ユウマは深い怒りを覚える。
八つ当たり気味にオモイへ命令を送りつつ、
グリッジと共に「ヒトハの前に別の復讐を済ませる」方針を固めるユウマ。
そして彼が次に標的として選んだのは──
自分たちを見て見ぬふりをしてきた担任教師だった
佐藤ユウマにとって憂鬱な休みがようやく終わった。芦刈トウコは最初の襲撃で懲りたのか日曜日の休みは何もしてこなかったのでユウマはゆっくりと身体を休めることが出来た。
いつも通り、妹と時間をずらして家を出て学校に到着する。教室にたどり着いて扉を開けると……いつもならユウマが来たことで空気が変わるところだが、今日は空気が変わることなく騒がしいままである。ユウマはなんとなく周りを見渡してトウコを探すと伊治ヒトハと一緒にいるのでいじめっ子2人はまたつるんでいるらしい。そのまわりにはトウコの取り巻きやヒトハに取り入ろうとしている女子達がわんさと集まっていて、男子達はそれを遠巻きに見ながら馬鹿話に花を咲かせている。
ただひとつ週末と違っているのは秋空オモイがたったひとりで机に向かっていることだろう。いつものメンバーからハブられて、元の真面目グループに戻ろうとしても相手にされずたったひとりでぽつんと過ごす。少し前まで人気者のグループにいたとは思えないほどの状況だ。孤独を味わっているであろうオモイが顔を上げてユウマが教室に入ってきたことに気が付くと立ち上がりユウマの席の方へと移動してくる。
「あ、あの……えっと、お、おはよう」
「……おはよう」
挨拶が帰ってきたのがよほど嬉しかったのかオモイの表情はぱっと明るくなって近くの椅子を借りてユウマと話が出来る体勢を整えていく。ユウマはそれを見ながら図書館で借りてきた本を拡げて読もうとするのだが、そんなことは関係ないとオモイが口を開く。
「その……本当にごめんなさい。言い訳にしかならないけど、私はヒトハに言われていろいろ考えてただけで本当にユウマくんをいじめようとかそういうことは」
「……」
「……しょ、正直あったけど……でもそれを謝りたくて」
周りの騒がしさで消えてしまいそうなほどに小さな声なのにユウマにはその声がよく届いていた。自分がハブられて虐められる立場がわかったから謝りたいとはずいぶん都合がいいなと思いながらも本当に反省していそうな雰囲気にユウマは色々と心配になる。任せた計画は腹黒さがなければ務まらないのだ。
「許して欲しいってわけじゃないけど……私もどうやらクラスの嫌われ者になっちゃったから……」
「計画は?」
「あーそれ? それなら大丈夫。もうここに居場所はないだろうなって思ってからネットの方で居場所を作る為に色々したついでに進めてる。もう引っかかってるよ。はいこれ」
オモイはそう言いながら綺麗なハート形に折りたたんだノートの切れ端をユウマに手渡す。ユウマはそれを渋い顔になりながら開いていくと4文字4つ区切りに書かれたアルファベットと数字のられつとケータイの電話番号、何かのIDが手書きで書かれていた。
「こっちがなんというか……みかじめ料的な感じ。ジャングルで5000円チャージできて、こっちは私の電話番号だから、いつでも好きなときに連絡して? こっちはSNSのIDだから」
「いや、いらないっていうか……」
ユウマとしては計画が順調に進んでいるのであればそれでいいし、別に話すこともないので電話番号やSNSのIDを教えられても困る。ユウマがもらった手紙を突き返そうとしたがオモイはキョロキョロと周りを確認する。ヒトハのユウマを虐めるという号令はまだ生きているようでユウマの事は誰も視線にもいれないようにしている。ユウマの席の方を確認する人すらいない。オモイはその状況を改めて確認するとスカートの中に手を入れておもむろにショーツを一気に脱いでいく。黒地に青の線で猫がたくさん描いてあるショーツを小さく畳んでそれをユウマに手渡しするとすったかたと自分の席に戻ってスマホを弄り始める。
(なんだあれ……)
『ユウマ様、色々と気になる事があると思いますので……わたくしめの方からいくつか説明を差し上げますね』
ユウマにとって本を読む時間はとても大切な時間であったが、恩人であるグリッジが説明をしてくれると言うことで本を畳んで、もらったショーツと反応する下半身を隠すように机につっぷして寝たふりをしながら机の上にいるグリッジに視線を合わせる。
『ユウマ様は呪いによってどうやら人間関係そのものも操作されてしまっていたようですね。一緒にいると嫌な気分になるような魔法も内蔵されていたようです……それが無くなったので人付き合いの感覚が大きく変わっているのではないかなと思います』
(また異世界の人たちのせい……ますます死ねなくなってきたよ。絶対に魔王様には勝ってもらわないと)
『そうですねぇ。それとあの子はもともと長い物には巻かれる精神といいますか、強い人のそばでこそ輝くといいますか……今はユウマ様に気に入られようとかなり必死みたいですね』
オモイに懐かれてもなと考えながら、ユウマは少し前から感じていた違和感について良い機会なのでグリッジに相談してみることにした。
(あのさ、この間までは本を読んでいる間だけは何も起こらなかったのに最近は色々と邪魔がはいるんだけど、異世界の魔法が作用してたりする?)
『……そのぉ、そちらについても説明をしようか悩んでいたんですが……どうやら本を読んでいる間だけはそういった魔法が止まるようになっていたみたいですね。転生に肉体は持って行けませんが、知識は持って行けるので……人間達が知識も神力ももった子にしようとしたんでしょうね。なのでユウマ様の趣味である読書も異世界人により作られた物と言えるかもしれません』
ユウマはそれを聞いて気分が悪くなる。不機嫌になるという意味でも……吐き気を催すという意味でもだ。どれだけ僕の人生を弄ぶつもりだとふつふつと怒りすら湧いてくる。異世界に対して自分が出来る復讐が幸せに長生きして暮らすことしか出来ないのがユウマはすごくもどかしく感じた。ユウマは八つ当たり気味に先ほどもらった手紙を開くとスマホにアプリをインストールし、オモイのSNSのIDをスマホに入力してフォローをする。スマホを見ていたオモイはすぐにフォローバックをしてきたのでユウマは今すぐエッチな自撮りを送るように命令する。八つ当たりだとわかっているが今、怒りを抑える方法がこれしかなかった。
『ところでユウマ様? イジメの主犯格であるヒトハに鉄槌を下す前に……他の復讐を済ませてしまいませんか?』
(……ヒトハが終わったら燃え尽きてまた死のうとするかもしれないって思ってるの?)
『……わたくしめはユウマ様の人生に幸せを、長生きできる活力を与えるのが仕事でございますからね』
(……そうだね。それならヒトハの前に他のやつらに復讐しよう)
グリッジと会話しながらユウマはオモイを観察していた。
メッセージに気が付いて、周りをきょろきょろと見渡すとスマホをカメラアプリを作動させたのだろう。その瞬間にぴかーっと強い光が出て慌ててそれを隠しながら机の下にスマホを入れる。しばらくすると割れ目をしっかりと開いた画像がユウマのDMに送られてきた。
(……とりあえず、3人と同じぐらい許せないのがひとりいるからそいつからかな……)
『かしこまりました。標的はどなたでしょうか?』
グリッジが問いかけるのと同時に教室の扉が大きく開かれて担任の先生が入ってくる。
「日直ー」
「きりーっつ」
日直のかけ声と共にクラスの全員が自分の席に戻って立ち上がる。あいつだよ……ユウマは担任の先生をにらみ付けながら心の中でそう呟くのであった。
あとがきという名の語り
お世話になっております。予約投稿の弊害とも言うべきか……これちゃんと投稿できてるのかなって気になって色々やっておりました。
さて、メインディッシュの前に他の復讐に行くことにしました。とりあえずは学校の先生への復讐ですね……はてさてどうなるのでしょうか。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。