異世界転生を阻止されたので現代で復讐を果たします。 作:六本線
しかしある日、キョウゴの生徒だという「ユウマ」が訪ねてきたことで状況は一変する。
ユウマが見せたのは、配信の裏で行われていた虐待の記録──
そしてその中には、キョウゴが関与している決定的な映像も含まれていた。
真実を突きつけられたモモカは、婚約者の裏切りと自分の過ちを知り、
ユウマと共に“この件を家族へ伝える”決断をする。
だがユウマはまだ満たされない。
自分を追い詰めた大人たちへの復讐は、これで終わりなのか──
桃源郷寺モモカは猿渡キョウゴの婚約者である。
キョウゴはとにかく優しく、モモカを毎日の様に甘やかしてくれる。学校の先生という大変な仕事の後でもモモカが苦手な家事を率先してやってくれる。一緒にお風呂に入ったり、その後のいちゃいちゃもたっぷりとこなしてくれる。婚約している間に妊娠でもしようものならお父様にキョウゴがボコボコにされてしまうのでいちゃいちゃの時はゴムをしっかりとするのは忘れない。
モモカとキョウゴが結婚できる条件はキョウゴが今もっている学年が問題なく卒業したらとなっている。キョウゴ曰く、私立でみんな頭が良くイジメなんて起こる状況ではないから結婚は確実だよと言ってくれている。だからモモカはキョウゴと結婚できる日を楽しみに待っていたのだ。
「わ、え、えっと……どうしたのかな?」
「猿渡先生のお宅で間違いないでしょうか? 先生に相談したいことがあって……いつでも来ていいからって言ってたから」
ピンポーンと家のインターフォンが鳴る。家にいてやることがないモモカは何か頼んだかなと思いながらカメラの映像を見ると見慣れない物が映っていた。
教師というのは休みでも忙しいようで、キョウゴは日直があると言うことで今日は家にいない。だというのにキョウゴの生徒だと思われるかわいいワンピースを着た子がキョウゴを尋ねてやってきてしまった。モモカはこんなことは初めてでどうしたらいいかわからなかったが、モモカは外にいる子の顔を見て驚き、迷わず家に上げることにした。
「キョウゴは仕事にいっちゃったから……学校で会えるかも知れないけど入れ替わりになったら可哀想だもの。入って」
「え、そうだったんですか。ごめんなさい。そ、それじゃあお邪魔します」
桃源郷寺モモカはとても綺麗な女性だった。
キラキラとした黒髪ロングストレートとても似合う大和撫子な顔、少しお腹がぽちゃっとしているが身長が高かったりと全体的にスタイルが良く、半袖のセーターのような服を大きく押し上げる胸は信じられないほど大きくユウマの頭とそれほど変わらない大きさである。少しぽっちゃりとしている影響か前を歩くお尻がどんっっと大きく見える。そんな大きなお尻を包んでいるのは生地の薄いタイトなスカートなので下着の形だけでなく柄や色まではっきりと浮かんでしまっている。
「ソファに座って待っててくれる? あ、飲み物は何がいい? オレンジジュース? 炭酸系は……炭酸水ならあるけど」
「オレンジジュースをお願いします」
グリッジ曰く、モモカは男性にあまり慣れていないという話だった。箱入り娘のようで長い間女子校で過ごしたこともあり男に免疫がなくへたをすると追い返される可能性があったらしい。この格好をするのは他にも理由があるらしいが……ワンピースを着用して、下着まで女物にし、グリッジにメイクまでばっちり施され落ち着かないユウマにとってはかなりどうでも良かった。
モモカがおぼんにコースターとオレンジジュースがたっぷり入ったコップ、ストローとアイスコーヒーを持ってきてくれる。それをユウマの前に置いてから自分の席にアイスコーヒーを置くとユウマの前に座る。
「はい、オレンジジュースどうぞ。それでえっと……キョウゴのクラスの子でいいのよね? 本当に?」
「ほ、本当です。猿渡先生のクラスです」
「えっと、間違っていたらごめんね? ユウマ……ちゃん?」
「先生から聞いてるんですか?」
いや、そんなはずはない。猿渡先生はイジメが露見すると逆玉がなくなってしまうのだ。そんな厄ネタを自ら話の種にするはずがない。
肩に乗っているグリッジがクツクツと笑いを堪えるように震えて笑う。どうやら何か知っているらしい。グリッジがぱちんっと指を鳴らしてしばらくするとモモカが驚愕の表情を浮かべながら机の上に乗っていたスマホを手に持ち画面のロックを外す。しばらくすると動画や画像が保存してあるアプリを開いてユウマに見せつけてくる。いや、グリッジに操られて見せつけてくる。そこには見たことのある動画がたっぷりと保存されていた。
『この方、ユウマちゃんのファンだった方ですね。かなりのファンだったようでわたくしめがここに来たときも夜中にこっそり見ていたほどですし』
「あぁ、なるほど……あなたも加害者なんですね」
「え、えっと……その、まさかユウマちゃんがキョウゴの生徒さんだなんて思ってなくて……もっと遠い所の話だと……」
『ひとつ画面を通すだけで遠くのことと認識してしまうのはこちらの世界の住人の悪いところですねぇ』
ネットの情報だけでなくテレビの情報も嘘と本当が交差している。テレビはまだドラマやアニメだとフィクションの区分をまもっているからわかりやすいところもあるが、ネットではその区分も曖昧としている。子どもであれば仕方ないのかも知れないが……ユウマの配信を楽しみにしていたのは主に大人だろうと……その大人がどうして止めてくれないんだとユウマは感じていた。出来ることならそういった大人にも復讐してやりたいと思っていたのでこれは……嬉しい誤算だった。いや、ひょっとしたらグリッジはここまでわかって手を回してくれていたのかも知れない。
ユウマは自身のスマホを開いてデータを再生する。
「僕は一度たりとも望んでこんなことはしてきませんでした」
「で、でも」
ライブ配信で笑顔を見せなければ配信が終わったと同時に殴られた。殴られるだけならまだ良かったが、道具を使わずに後片付けをさせられたり……手を使わずに後片付けを強要されたりして心が折れてしまった。オモイが持っていたデータは配信のデータだけではなくオモイが複数台所有しているスマホでも撮られた映像が残っていたので口で説明しなくても良いのはありがたい。
あまりに悲惨な映像にモモカは目を閉じて目を背けようとするが、グリッジが気を利かせて無理矢理目を開かせてくれる。
「あ、な、なんで目が閉じられない……」
「目が乾ききる前にちゃんと瞬きはさせてあげるのでしっかりと見てください」
問題のシーンはここからだ。この日は猿渡先生……つまり、モモカの旦那がやってくる映像。
「きょ、キョウゴ……え、どうして、問題はないっていってたのに……し、知ってたの」
「そういうことです……どうしますか?」
瞬きをしてもらうついでにユウマはグリッジに拘束を解くように命令する。モモカはソファに座ったままぐったりとうなだれる。時間ならまだたっぷりある。職員室の物品をいくつかグリッジにこっそり壊してきてもらっていたのでその対応に追われているだろうから猿渡先生がここに帰って来るまでにあと数時間はあるだろう。
「ごめんなさい、申し訳ありませんでした」
モモカはソファから降りてユウマに土下座で謝ってくれた。少なくともこの人は謝れる人間だと知ってユウマは安心した。
「データのコピーをもらってもいい? お父様とお母様にこの件はしっかりとお話をしなければいけないから」
「わかりました。すぐにでも送ります」
更に両親に相談する約束までしてくれた。これで少なくとも猿渡先生には復讐が完了したと言って良いのかも知れない……でも……何か物足りない。猿渡先生の狙っていたものは崩れたが人生プランが完全になくなってしまったわけではない。僕は死ぬことまで考えた……それに見合った被害を猿渡先生が受けたと言えるのだろうか? ユウマは考えてしまう。まだ足りない何かをしなければと……
あとがきという名の語り
お世話になっております。申し訳ございません。若干の体調不良とアパートの駐車場やら道を新しくする工事が重なって全く集中することが出来ず、2日ほどお休みをいただいてしまいました。
工事もようやく終わったのでぼちぼち再開していきます。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。