異世界転生を阻止されたので現代で復讐を果たします。 作:六本線
大切な親友・ヒトハを傷つけてしまったショックで部屋に閉じこもるトウコ。
しかし、届いた一通のDMが状況を一変させる。
『今すぐ、オモイの配信を見なさい』
画面に映ったのは、ルールを破って顔出し配信をするオモイ。そして語られる“超能力”と“復讐”の宣言。
朝の不可解な出来事も、すべて空気(ユウマ)の仕業だったのではないか――トウコはようやく真相に辿り着く。
ヒトハとの通話で誤解が解け、ふたりは再び“トップ”として並び立つ。
だが、空気が得た力は未知数で、正面から挑むのは危険すぎる。
それでもトウコは思いついてしまった。
アニメや漫画の主人公なら、こういう時どうするか――。
「ヒトハ、あたしに良い考えがあるんだ。ひょっとしたら簡単に空気をぼこぼこにできるかもしれない」
トウコが導き出した“勝てる方法”とは何なのか。
そしてヒトハが空気にこだわる理由とは――?
今日、一体何が起こったのか……芦刈トウコは全くわからず、ただただ大事な親友を傷つけてしまったと言う事実だけを重く受け止めて帰宅した後すぐに自分の部屋に閉じこもってしまった。
成績は優秀ではないが、顔立ちは整っており身長もかなり高い。柔道をやっていてそこいらの男子どころかもっと上の大人にも負けない自信がトウコにはあった。色んな女子から『王子様』だとちやほやされてかっこいい自分を演じるのは嫌いではなかった、むしろ可愛い女の子に囲まれるのはドキドキしたし楽しかった。しかし、正直に言えば限界が来ていた。いつストレスでぼろが出てもおかしくないような状況で助け船を出してくれたのが伊治ヒトハだった。トウコはヒトハと並んでいるときだけ女子達から囲まれることなく自然に過ごす事ができた。それだけではなく、最高のストレス発散方法まで教えてくれたのだ。トウコにとってヒトハは恩人であり、憧れの人であり大切な人であり……好きな人でもあった。
そんな人を何故かわからないが傷つけてしまった。謝ろうにも女子達に囲まれていたのでそれもできず……SNSで話がしたいとDMを送ってみても既読すら付かない。こみ上げる不安を少しでも緩和しようと顔に手を添える。右手にほんのりと残っているヒトハのお尻の感触を思い出してぞくぞくっと身体を震わせてしまう。こんなことでは絶対に嫌われる気合いを入れ直し、改めてスマホの画面をみると先ほどはなかった『既読』がついている。このまま既読無視されるかもしれないが、トウコの鼓動は一気に早くなり期待に満ちあふれる。
『今すぐ、オモイの配信を見なさい』
ヒトハから送られてきたDMは意外な言葉であったが、トウコは言われたとおりオモイが配信しているページを開く。高額スパチャでも飛び交っているのだろうか? あの空気が金を稼いでさえくればひょっとしたまたあの3人で集まれるかもしれない。トウコは期待しながら配信を見るとそこには何故かオモイの顔がどアップで映っていた。オモイの配信は『ユウマちゃん』を酷い目に合わせて視聴者を楽しませるというのがコンセプトのはずだ。身バレしないように自分たちは絶対に出ないと決めていた。そのルールを破っているのにトウコは少し怒りを覚えたが……トウコの口の周りがおかしい。口の周りが黄色い物で覆われているのだ。
『よいしょ。飲まないと溺れちゃうよ? あ、これ? これは僕の超能力みたいなやつ……これのおかげで復讐できるようになったんだ。そうそう、これを見ているかわからないけど……残りの2人も復讐するから楽しみに待っててね?』
「なんだ……これ……」
超能力? 復讐? 残りの2人?
トウコはそこまで頭はよくない。将来はオリンピックで活躍するために勉強なんかしている暇はないし、勉強なんてしなくてもいい。頭を使うことと言えば女の子へのプレゼントを考えたり、ヒトハの事を考えたりするのでいっぱいいっぱいだ。そんな頭をフル回転させてユウマちゃん。否、空気が言っていたことを考える。少し時間はかかったが……朝の不思議な出来事は空気の仕業だったのではないかという答えにたどり着く。燃しそうなのであればただじゃ置かない。
ぴりりりりりりっっっ。
配信を表示していたスマホの画面が着信を知らせる画面に切り替わる。電話の相手はヒトハである。トウコは迷うことなく通話にでる。
『……もしもし……最初に聞かせて……朝のは勝手に身体が動いたの?』
「もちろんそうだよ! あたしがヒトハを傷つけるなんて事あるわけないじゃないか……その大丈夫かい?」
『……はぁ、安心したわ。そうよね。私こそごめん、トウコのこと疑っちゃって』
この言葉が聞けただけで沈んでいたトウコの心は一気に晴れやかになる。あとは空気をまたわからせてやればいつもの日常が戻ってくるはずだ。
「どうする? 今から学校に助けに行く?」
『なんで?』
「なんでって……」
オモイは空気を少しひねった方法で虐めるアイディアをたくさんでしてくれてそれが面白かった、そしてそれが最終的にお金儲けに繋がった。お金は仲良く山分けして……トウコはオモイを仲間だと思っていた。
『元々あの子はお父さんとお母さんに勉強してるんだって見せるためにお友達になった子だし……宿題を見せてくれたり、それなりに便利だったけど、代わりはいるわよ。お金は少し惜しいけれどオヤジ狩りとかしてればいいでしょ……それともトウコは私とふたりきりじゃいや?』
「まさか、ううん。確かにそうだね」
『それよりもあいつ……変な力を手に入れて調子乗ってるみたいね。なんとかしてストレス発散の道具に戻ってもらわないと』
クラスのカーストグループのトップ3ではなくトップ2……自分とヒトハのツートップ……ふたりきりという状況に気が付かされると確かにオモイはもういらない。代わりがいるのであれば補充すれば良いし、補充はあとからでもできる。今はふたりきりのトップという状況を堪能するのも悪くない。トウコは思わずにやけそうになる顔を必死に抑える。
「それは確かに……でも朝の出来事も空気の仕業だとするとかなり厄介じゃないかい?」
『問題はそれよね……』
ふたりしてうーんと唸る。元々考えるのが苦手なトウコはすぐに考えるのを諦めてヒトハのうなり声とヒトハと同じ悩みをもっているという幸福に身を任せてしまう。同じ悩みを共有できるなんてまるでつきあっているみたいだと大興奮だ。
『アニメや漫画のキャラクターじゃあるまいし、反則よね』
アニメや漫画……それはトウコが得意とする分野である。トウコが格闘技を始めたのもアニメや漫画のキャラクターのように強くなりたいと思ったのがきっかけだ。こういった能力には必ず何かしら弱点があるはず。あの空気の能力はどちらかと言えば操るというよりも強制的に無理矢理動かされていたような感覚がある。技術ではなく力尽くで投げられているような感覚に似ていた気がする。ということは空気の能力は不思議な力というよりはもっとこう……パワー的な……なにかのはず!! トウコはない頭を必死にひねってそんな時、アニメや漫画のキャラクターならどのように立ち向かっていったかを思い出していく。
その能力を超えるパワーで無理矢理うごくのはどうだろうか? ヒトハのお尻を叩くときにどれだけ踏ん張っても止められなかったことを考えると難しそうだ。
それならたくさん人を集めてボコボコにするのはどうだろう? こういう能力には人数制限や分散すると弱くなるなんていう制約がつきものだ。一緒の道場に通っている子達に声をかければある程度は集められそうではある。多少やられるかもしれないが、逆らえないようにボコボコにしてしまえばあとでいくらでもやり返すことは出来るだろう。しかし、少し現実的ではないし、話して信じてもらえるかもわからない。
あとは――
「ヒトハ、あたしに良い考えがあるんだ。ひょっとしたら簡単に空気をぼこぼこにできるかもしれない」
『本当? 頼んでもいいの?』
「もちろんだ、任せて欲しい。すぐにヒトハのストレス発散道具をもってきてあげるよ」
トウコは自分が思いついた方法なら勝てると確信していた。それと同時にちょっと違和感もあった。オモイは替えが効くからとすぐに切り捨てたが、どうしてあの空気にこだわるのだろうか? 復讐するといっているのだから降りかかる火の粉を振り払うためにこだわるのだろうか? だとしてもヒトハならもっとうまい方法を思いつくのではないか? トウコは少し考えたが答えが出てこなかったので考えるのを諦めて、空気をぼこぼこにする為の計画をたてるのだった。
あとがきという名の語り
お世話になっております。長編はエロ一辺倒でなくこうしたものを挟まなきゃイケナイのが少し苦手だったりします。
考えるのは楽しいんだけど出力するのは途端に難しくなるのやめてくれませんかねぇ!
少しでも楽しんでいただければ幸いです。