八月も終わりに近づいた、ある昼下がり。
外は相変わらずの猛暑だが、俺の部屋――ことぶき荘二〇一号室は、今日も新品のエアコンのおかげで快適な避暑地だった。
冷えた床に転がって俺は完全に腑抜けていた。
傍らでは、猫宮凛が俺のゲーム機のコントローラーを握って、画面に向かって毒づいている。
その反対側では、玉藻琴音が発泡酒を片手にだらしなくクッションに寄りかかっていた。夏休みの終わりが近いせいか、明日は追試だか試験だかがあるらしく参考書を膝に乗せてはいるが、一ページも進んでいない。
メスガキ猫と、酒クズきつね。
このカオスな組み合わせが、俺の部屋でゴロゴロしている。
最初のころは二人とも一触即発だったが、最近はなんというか、微妙に共存している。共通の話題が「おっさんのちんぽ」なので、仲がいいのか悪いのかもわからない。
そんな平和な地獄にノックもなしにドアが開いた。
「おっさーん!ただいまー!うち帰ってきたでー!」
やたらとでかい声。関西弁。
この声の主を俺は嫌というほど知っている。
上の階の三〇二号室に住む、たぬきの獣人――狸穴瑠衣。
夏休みの旅行に出たきり、そのまま地方の避暑地のホテルで住み込みのリゾートバイトをしていてかれこれ一ヶ月ほど留守にしていたはずだ。
久しぶりに見る瑠衣は、こんがりと日焼けしていた。丸っこいたぬき顔に、ぱっちりした目。頭上の茶色い丸耳と、腰の後ろのふさふさ尻尾は元気に揺れている。
両手には、大きな紙袋。
「見てや見てや!お土産こ〜んなに買うてきたで!」
瑠衣は返事も待たず紙袋の中身を畳の上にぶちまけた。
温泉饅頭。
温泉饅頭が、出てくる出てくる。ひと箱、ふた箱、みっつ、よっつ……絶妙に多い。一人暮らしの男が消費するには明らかに過剰な量の温泉饅頭が山になった。
そして、その脇に転がったのは、ラベルに温泉地の名前が書かれた水のペットボトル。
「これ、温泉水!飲めるやつやで!体にええねん!」
「……なんか、めちゃくちゃ不味そうな色してるな、これ」
ペットボトルの中身は、うっすら黄ばんで濁っている。硫黄だか鉄分だか知らないが、少なくとも喉が渇いて飲みたくなる色ではなかった。
「失礼やな!ミネラルたっぷりやねん!……ま、うちも一口飲んでゲロマズやったけど」
「持ってくるなよそんなもん」
俺のツッコミも聞かず、瑠衣は得意げに今度は一冊の通帳を突きつけてきた。
バン、とテーブルに叩きつけるように。
「じゃじゃーん!見てや、これ!うち、一ヶ月でこんだけ貯めたんやで!」
覗き込むと確かにそれなりの数字が並んでいた。残高二十五万円。
「おお……ちゃんと貯めたのか。えらいじゃねえか」
「せやろ!交通費も向こう持ちやったし、外国人のお客さんからチップもガッポガッポ貰えてん!ぜんぶ足したら三十万は超えてるわ!うち、やればできる子やねん!」
……正直、驚いたホストに貢いで借金まみれだったこの女が、真面目に一ヶ月働いて三十万。人間、変われば変わるものだ。
と、感心していたところで。
瑠衣の視線が、ようやく部屋の中央――ゲーム機を握った凛に留まった。
「……ん?」
瑠衣の動きがぴたりと止まる。
丸い目がぱちくりと瞬いた。
「な、なんやこいつ……」
たぬきの脳内に電流が走ったのが見えた気がした。
§
瑠衣は凛をまじまじと見た。濃紺の猫耳。小柄で華奢な体。どう見ても、中学生。
そして、たぬきは盛大に勘違いした。
「おっさん、あんた……姪っ子ちゃんおったんかいな!」
「は?」
「いやー、言うてや!こんな可愛い姪っ子ちゃんおるなら!えーっと、ちっちゃい猫ちゃん、おいくつ?」
姪っ子。
なるほど、そう見えるか。中年男の部屋にいる子供となれば、まあ、そう解釈するのが一番平和的ではある。
訂正しようとした俺より先に、凛がゲーム画面から顔を上げた。
その口元が、にぃっと吊り上がる。
……あ、まずい。これは、メスガキのスイッチが入った顔だ。
「こんにちは〜、たぬきのお姉ちゃん♡」
「お、おう、こんにちは。うち瑠衣な。よろしゅうな」
瑠衣はすっかり保護者ヅラで、山になった温泉饅頭のひと箱を開けた。
「ほら、猫ちゃんお饅頭食べ。お姉ちゃんのお土産やで〜」
そう言って、あろうことか彼女面で餌付けを始めた。
……なおこの女、俺の彼女でも何でもない。ただのセフレだ。なのに、なぜか凛の前ではやたらと「おっさんの女」感を出してくる。
ちなみに、ホストの涼太くんはどうしたのか、と聞いたら長くなる。
なんでも、瑠衣が一番の太客の座を一晩で二百万を落とした別の女に奪われたらしい。それでだいぶ吹っ切れかけている。かけているだけなのだ……いまだに未練がましくホストクラブに行こうとしては、風俗を辞めて金がないので毎回断念している。哀れなものだ。
凛は差し出された温泉饅頭をひょいと受け取った。
「ありがと〜お姉ちゃん、やさし〜♡」
そして、もぐもぐと食べながら、傍らに置いていた自分の鞄から、一枚の封筒を取り出した。
猫のマークが描かれたあの封筒。俺の「回数券」だ。
「あ、お姉ちゃん、これ見て♡」
「……なんやそれ」
凛が封筒の口をぱかりと開けて中を見せる。
みっしりと詰まった、万札の束。
瑠衣の顔が凍りついた。
「……は?」
「えへへ♡」
瑠衣が震える指で封筒の厚みを目測する。
……たぶん、あいつは今暗算している。自分が一ヶ月汗水垂らして貯めた二十五万円(通帳)と、この子供が無造作に持っている封筒の厚みを比べている。
明らかに封筒の方が分厚いだろう。
「な……なんで、あんたみたいなちっちゃい子が、うちより金持っとんの……!?」
瑠衣の悲鳴じみた問いに、凛はちらりと俺を見た。
そして、実に楽しそうに――マウントを取るように、煽るように言い放った。
「これ?おじさんからもらったお金だよ。これでね、いっぱいエッチしてるんだ♡」
……おい。
半分は嘘だ。いや、九割嘘だ。
この封筒の金は俺が渡したものじゃない。もともと凛が俺から奪ったのを「回数券」として返してきただけで、しかも最近は勝手に額が増えている。
なぜ増えるかというと、こいつがパパ活だか何だかで稼いだ金を、親に見つからないように、安全な俺の家の封筒にこっそり隠しているからだ。俺は貯金箱扱いである。
だが、そんな内情を瑠衣が知るはずもない。
瑠衣の顔がみるみる青ざめ、そして――俺を見た。ゴミを見るような心底軽蔑した目で。
「……おっさん」
「ち、違う、これには深い事情が――」
「あんた……姪っ子に、金渡して手ぇ出しとんのか……!? この人でなしっ……!最低や……サイテーの中のサイテーや……!」
違う。姪じゃない。金も渡してない。最初は?というのは考えないでおこう。
だが、その全部を説明しようとすると、逆にもっと地獄みたいな真実――回数券で搾り取られている――を明かすことになる。
俺は口をつぐむしかなかった。
そんな修羅場の空気の中、当の元凶である凛は、けろりとした顔でゲームを再開した。
「ねーねー、みんなでゲームしよ〜♡たぬきのお姉ちゃんもやる?」
……こうして、なぜか四人(俺、凛、琴音、瑠衣)で、レースゲームをする謎の時間が始まった。
瑠衣は「うちが一番や!」と絶叫し、琴音は「うっさい」とコントローラーを投げ、凛は無言で全員をぶっちぎった。
ひとしきり遊んで満足すると、凛は「じゃあね、おじさん♡」と、るんるんとスキップで帰っていった。
琴音も「明日、試験だから。……たぬき、あんまりおっさん困らせんなよ」と言い残して、隣の部屋へ戻っていった。
§
部屋には帰ってきたばかりの、説教モードのたぬきと、俺だけが残された。
「おっさん」
凛と琴音がいなくなった途端、瑠衣の声のトーンが、ぐっと低くなった。
腕を組み仁王立ちで俺を見下ろしている。
「話がある。座り」
「……はい」
俺は正座した。今日、二度目の正座説教である。ことぶき荘の女たちは、なぜこう俺を正座させたがるのか。
「あのな。うち、色々あって人のこと言えた義理やないのは、わかっとる。ホスト狂いやったし、情報商材売りつけようとしたし。せやけどな」
瑠衣はびしりと俺を指さした。
「さすがに、あんなちっちゃい子に手ぇ出すのは、あかんやろ!しかも姪っ子て!身内やん!」
「いや、だからあれは姪じゃ――」
「うちかて獣人やから、わかるで。獣人の価値観やったら、発情期きてる子はもう大人扱いやし、あの年齢でも別に……」
と、言いかけて。
瑠衣ははっと自分の口を押さえた。
「……いや待て。獣人の理屈で納得しかけたけど、身内はあかん。近親はあかんやろ。人としてあかん」
そして、自分で自分の頬を、ぱちん、と叩いた。
「しっかりせえ、うち!流されるな!」
「……お前、一人で百面相してるとこ悪いんだけどな」
自問自答の末に説教の軸を取り戻したらしい瑠衣が、再び俺に詰め寄る。
「で?あの子との関係、ちゃんと説明してみ?」
「……えー、あー、それはだな。まあ、色々あってちょっと、その、複雑な事情がだな……」
「なんやその歯切れの悪さ!やっぱり後ろ暗いことしとるんやんか!」
「いや、後ろ暗いっちゃ後ろ暗いんだが、お前が思ってるのとは方向性が違うというか……」
俺は必死にごまかそうとした。だが、ごまかせばごまかすほど瑠衣の目が据わっていく。
まずい、と思ったときにはもう遅かった。
瑠衣の丸い目にじわりと涙が盛り上がる。そして――ぶわっとたぬき尻尾が膨らんだ。
「……なんやのそれ」
地雷を、踏んだ。
「うちが、一ヶ月も離れとる間に、若い女とっかえひっかえして……!うちのことなんか、どうでもよかったんやろ!」
「い、いや、そんなことは」
「あるやろ!絶対あるやろ!うちなんか、しょせん都合のええサンドバッグやもんな!ホストの涼太くんにも捨てられて、おっさんにも遊ばれて、うちの人生なんやねん!?なぁ!?」
メンヘラモードだ。
完全にメンヘラモードが発動してしまった。
ホストに一番の座を奪われた鬱憤と慣れない一ヶ月のバイトの疲れと、帰ってきた早々の修羅場。そのすべてが決壊した。
瑠衣はその場にぺたんと座り込んで、ぼろぼろと泣き始めた。
「……やっちまった」
俺は、深く後悔した。
この女の情緒は天気みたいに変わる。そして一度崩れると、なだめるのがとにかく面倒くさい。
だが放ってはおけない。
そういう貧乏くじを引く性分なのだ、俺は。
§
俺は泣きじゃくる瑠衣の背中にそっと手を回した。
「悪かったよ。……いろいろ、誤解させたな」
「……うっ、ひっく……」
「一ヶ月、慣れない土地で、よく頑張ったな。えらかったな」
背中をゆっくり撫でる。
瑠衣の肩がぴくりと揺れた。
「三十万も貯めてよ。お前、ほんとに、頑張ったんだよ」
「……ほ、ほんまにそう思っとる……?」
「思ってるよ。ホストに全部溶かしてた頃のお前を知ってるからな。今のお前は、ちゃんとしてる」
俺は彼女の丸い茶色の耳の付け根を、指の腹で優しく撫でた。
獣人の耳は、感情に正直だ。さっきまでぺたんと寝ていた耳がぴくぴくと反応し始める。
泣きじゃくっていた瑠衣の呼吸が、少しずつ別のものに変わっていく。
「……おっさん、それ、ずるいわ……」
「なにが」
「うちが、弱っとるときに、そういう優しいこと言うの……ずるいって……」
俺は、彼女の体をそっと畳に横たえた。
ハーフパンツを脱がせ、下着に手をかける。すでにじっとりと湿っていた。
「ほら。泣きながら、もう濡れてるじゃねえか」
「い、言わんといて……恥ずかし……」
指をそっと秘裂にあてがう。
発情期でこそないが、たぬきのそこは相変わらず熱くてうねっている。ぬぷり、と指を沈めると、分厚い肉壁がきゅうっと吸い付いてきた。
「んっ……♡」
「仕事、大変だったろ。もうなんも考えなくていいからな」
俺はあやすように、優しく指を出し入れした。
腹側のあのざらついたツボを指の腹でゆっくりと撫でる。
くちゅ、くちゅ、にちゃ……
「あ……っ♡あっ、そこ……っ♡おっさん、そこ、うちの弱い……っ♡」
「知ってるよ。ここが好きだもんな、お前は」
「うん……っ♡すきぃ……っ♡」
優しく、丁寧に。
責め立てるのではなく、慰めるように、労わるように。
瑠衣の表情からだんだんと険が取れていく。涙で濡れた目が、今度は快楽で潤みとろけていく。
「よく頑張った。お金も、よく貯めたな」
「ん゛っ……♡あ、あかん……そんな優しいこと言われたら、うち……っ♡」
「いいから。ほらイっていいぞ」
「……っ♡う、うちっ、イく……っ♡やさしくされて、イくの、はずかしいのにぃ……っ♡」
ざらついたツボを少しだけ強く押し上げる。
瑠衣の腰がびくんと跳ねた。
「あっ♡あっ♡イく、イくっ……♡おっさぁん……っ♡」
びくびくびくっ♡
瑠衣の体が、ゆるやかに痙攣した。
激しい絶頂ではない。慰められて、包まれて、安心しきってのぼりつめる穏やかなアクメだった。
とろん、と力の抜けた顔で瑠衣が俺を見上げる。……ああこの顔だ。この安心しきった顔を見ると面倒くささもどこかへ消えてしまう。
と、そこで。俺はふと思った。
……そういえば。獣人の尻尾の付け根って感度抜群だよな。
琴音も凛も、あそこを触ると面白いくらいに乱れる。
絶頂して気の抜けている瑠衣の、んもりと膨らんだ茶色い尻尾。その付け根が無防備にこちらを向いている。
ちょっと、からかってやるか。
俺は瑠衣の体をうつ伏せにさせ、腰だけを持ち上げさせた。いわゆる寝バックの体勢。
絶頂の余韻で、瑠衣の丸い尻が無意識にふりふりと左右に揺れている。誘っているのか、単なる生理反応か。たぶん後者だ。
俺はその尻の上――尻尾の付け根を指先で撫でようとした。
だが。狙いが少しだけずれた。
指先が、尻尾の付け根のさらに下――つぼまった小さな窄まりを、つっ、とかすめてしまった。
その瞬間。
「ん゛っ、ほ゛ぉッ♡♡」
聞いたことのない声が、瑠衣の口から漏れた。
……なんだ今の。
いつもの甘ったるい嬌声でも絶頂の濁声でもない。
喉の奥から、ぎゅっと絞り出されたような、低くて、汚くて、そして――やたらと生々しい声。
瑠衣ははっと自分の口を押さえた。そして、俺の枕に顔をぼすっとうずめた。
茶色い丸耳の下の皮膚が真っ赤に染まっている。尻尾はぶわりと膨らんだままぷるぷると震えていた。
「……おい、瑠衣。今の声」
「…………」
「なあ今の」
「…………しらん」
枕に顔をうずめたままくぐもった声で否定する。耳まで真っ赤にして恥ずかしがって何も言おうとしない。
……へえ。
これは、いいものを見つけた。俺の中の意地の悪いスイッチがかちりと入る音がした。
§
俺は右手の指を再び瑠衣の濡れた膣内に沈めた。
そして、左手には――念のため、そこらにあったコンドームを一枚指に被せる。衛生的にそのほうがいいだろう。
ゴムを被せた左手の指先をさっきの窄まり――瑠衣の後ろの穴にそっとあてがった。
「ちょ、おっさん……っ!そ、そこは、あかんて……っ」
「動くなよ。ちょっと、いじるだけだ」
「い、いじるて……ひっ、ん゛っ♡」
くにくに、と。
窄まりの周りをゴム越しの指で、優しく撫で回す。同時に、右手の指で膣内の弱いツボをこりこりと刺激する。
前と後ろ。二つの穴を同時に。
すると――瑠衣の体が、目に見えて変わり始めた。
「ん゛っ♡……ほ、ぉ゛ッ……♡な、なんや、これ……っ♡う、うちっ、こんなん知らんっ……ぅ゛っ、お゛ッ♡」
声が汚くなっていく。
甘い嬌声が、喉の奥で潰れて濁った音に変わっていく。
膣内の締め付けが、さっきとは比べ物にならないほど強くなった。
くちゅくちゅっ♡にちゃにちゃっ♡
「あ゛っ♡ん゛ぉッ♡だめ、だめやってっ♡お尻ッ、そこいじられたらっ、うちっ、おかしなるっ♡ほ゛ぉ゛ッ♡」
「へえ。後ろ、こんなに感じるのか。知らなかったな、お前のこんな一面」
「言わんといてぇっ♡は、はずかしっ……ひっ♡はずかしいのにっ、き、きもちえぇっ……♡ん゛っ♡ほ、ぉ゛……っ♡」
みるみるうちに、瑠衣のおまんこがぐちゃぐちゃに溶けていく。あふれた愛液が太ももを伝い、ぽたぽたと畳に垂れていく。
前後の同時責めで感度が一気に振り切れたらしい。
瑠衣は枕に顔を押し付けたまま、尻だけを高く上げて、汚い声で喘ぎ続ける。
「ん゛お゛ぉ゛ッ♡も、もうっ、あかんっ♡でっ、でるっ、なんか出るぅっ♡ひ゛ッ♡ほ゛ぉ゛ッ♡」
「いいぞ。出せ!全部出しちまえ!」
「い゛くっ♡うちっ、い゛くっ、イぐっ♡イぐぅぅ゛ッ♡ん゛ほ゛ぉ゛ぉ゛ーーーッ♡♡」
プシィィィーーッッ♡♡
瑠衣の秘裂から、勢いよく透明な飛沫が噴き出した。
潮吹き。畳と俺の手に飛沫が飛び散る。
全身をがくがくと震わせ、瑠衣はそのままぐったりと畳に突っ伏した。尻だけを上げた無防備な格好ではぁはぁと荒い息をつく。まさに放心状態だ。
汚い声で盛大にイって、たぬきは完全に意識を飛ばしかけていた。
「……ふぅ。すごい潮だな、おい」
「はぁ……はぁ……お゛……う、うち、なにされたん……頭、まっしろ……」
とろん、と焦点の合わない目。
だらしなく開いた口の端から、涎が垂れている。
……だが、この程度で終わらせる気はもうなかった。
俺は、放心している瑠衣の腰を、がしりと掴んだ。
いきり立った肉棒の先端をぐちゃぐちゃに溶けた膣口にあてがう。
そして、一気に。
ずぶぅうう……っ♡
「ん゛お゛ッ……ほ゛ぉッ♡♡」
挿入された衝撃で、瑠衣が一気に現実に引き戻された。放心していた瞳に、ぶわっと光が戻る。
「ちょ、ま、待っ……いきなり、入れたら……っ♡うち、まだイッたばっかりで……っ♡」
「知るか。お前が汚い声出すのが悪い」
俺は容赦なく腰を打ち付け始めた。
パンッ♡パンッ♡パンッ♡
「あ゛ッ♡ん゛ッ♡お゛ッ♡ま、またっ、きたっ♡奥っ、ごりごりってっ、当たっ……ほ、ぅ゛ッ♡」
たぬきの膣内は、発情期でなくとも名器だった。
分厚い肉壁がうねりながら万力のように締め上げ、俺の肉棒を奥へ奥へと搾り取ろうとしてくる。
そして俺は、ピストンを続けながら――さっきのいいものを思い出した。
ゴムを被せたままの左手の指を、再び瑠衣の後ろの窄まりに。今度は撫でるだけじゃない。
にゅっ、と。指先を埋めた。
「ひ゛ッ♡♡そ、それはあかんっ♡おっさんっ、そこ入れたらっ、ほんまあかんてっ、あ゛かんてぇ゛っ♡♡」
瑠衣が恥ずかしそうに必死に懇願する。
だが、その声は拒絶にしてはあまりにも媚びていた。
「あかんて言われてもな。もう入っちまったぞ」
「ぬ、抜いてっ♡おねが、っ♡そこはっ、汚いしっ、うちっ、変にな゛っ……ん゛ぅ゛っ♡ほ゛ぉッ♡」
「変になればいいだろ。ほら」
俺はゴム越しの指を、ゆっくりと出し入れした。
前の穴を肉棒で後ろの穴を指でいじる。薄い肉の壁越しに、自分のちんこの動きが指に伝わってくるのがわかる。
ぬっちゅ♡にっちゅ♡パンッ♡
「お゛ぉ゛ぉ゛ッ♡♡あ゛か゛っ、あかんあかんっ♡りょ、両方いっしょはっ、両方はあかんて゛ぇっ♡ん゛ん゛ッ♡♡」
瑠衣の声が完全に獣のそれになった。
喉の奥から絞り出される、低くて野太い、オホ声。
可愛らしいたぬき顔からは想像もつかない、汚くて、みっともなくて、どうしようもなく興奮する声だった。
前後を同時に犯された膣内は、狂ったようにうねりまくっている。
きゅうきゅうと締め付けては緩み、また締め付ける。
「お゛ッ♡お゛ッ♡ん゛ォッ♡う゛ち゛っ、もう゛っ、わ゛けわからん゛っ♡あ゛たまっ、おかしなる゛っ、なる゛ぅ゛っ♡お゛お゛ぉ゛ォッ♡」
「まだだ。まだイくなよ」
「む゛りっ♡むりむりっ♡とまっ、とまらんっ、とまらにゃい゛イ゛ッ♡の゛ぉ゛ーーッ♡」
プシャッ♡プシィッ♡
瑠衣は、また潮を吹いた。一度、二度。もう、意味のある言葉はほとんど出てこない。
中止を懇願しているのか、もっとねだっているのか本人にもわかっていないだろう、媚び媚びの喘ぎ。
「お゛っさぁん゛っ♡ゆるち゛て゛っ、もうゆるし゛てぇ゛っ♡……もっ、やめた゛らいやっ゛♡ん゛ぉ゛ッ♡ど、どっちやのっ、うちわか゛らんっ、わか゛らんのぉ゛っ♡」
「どっちだよ」
「し゛らんっ♡し゛らんてぇ゛っ♡ん゛に゛ぃ゛ゃ゛ぁ♡♡」
汚い声で絶叫しながら瑠衣は何度も、何度も絶頂を繰り返した。
体を痙攣させ、白目を剥きかけ、涎を垂らし、それでも俺のピストンと指は止まらない。
そして、ついに。
しょろろろ……
瑠衣の下から潮とは違う、生温かい液体が漏れ出した。
……失禁だ。快楽の限界を超えてたぬきはとうとう漏らしてしまった。
「……あーあ。漏らしやがった」
畳に広がっていく染み。
布団も俺の手も瑠衣の太ももももうぐしょぐしょだ。
……洗濯だるいな。正直そう思った。この布団を干して洗うのは明日の俺の仕事だ。
だが。
失禁するほどの絶頂で限界まで昂ぶった瑠衣のおまんこが、最後の力を振り絞るようにきゅんきゅんと切なく締め付けてくる。
その必死のおねだりみたいな締まりに――俺の理性も限界だった。
「くっ……もう、出すぞ」
「だ゛し゛てっ゛♡おっさんのっ、いち゛ばん奥ぅ゛っ、うちのおくにっ、だしてぇ゛っ♡」
俺は一番深いところまで腰を突き入れ、子宮口に亀頭を押し当てた。
そして、限界まで我慢した欲望を解き放つ。
どびゅるっ!!!びゅくびゅくっ!!ぶびゅるるるっ!!!
「お゛ほ゛ぉ゛ッ♡♡♡いぐっ♡いぐいぐっ♡い゛ぐぅ゛ぅ゛ッッ♡♡ん゛ほ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛〜〜〜ッッッ♡♡♡」
その瞬間、瑠衣はこの日一番の絶頂を迎えた。
背中が折れそうなほどのけぞる。全身が雷に打たれたようにガタガタと痙攣する。
喉の奥から人のものとは思えないほどに、汚くて野太いオホ声が部屋中に響き渡った。
そして――ぷつり、と糸が切れたように。瑠衣は白目を剥いて失神するように布団に沈んだ。
轟沈だった。
§
――ゴンッ!!
壁が鳴った。
隣の二〇二号室から渾身の壁ドン。
「うっさい!たぬき女ぁっ!!明日試験なんだけどっ!!」
琴音の怒りの罵声が、薄い壁越しに響いてくる。
……そりゃそうだ。あんな汚い声で絶叫してれば隣まで丸聞こえだ。俺は心の中で琴音に謝った。すまん、明日の試験頑張ってくれ。
布団の上では、瑠衣がぴくりとも動かない。
完全に、意識を飛ばしている。だらしなく開いた口から涎を垂らし、汚い声の余韻みたいな細い呻きを漏らしているだけだ。
俺は、ため息をついて立ち上がった。
メインの布団は、もう、ひどい有様だった。
大量の潮吹きと、愛液と、汗と、そして失禁のおしっこ。あらゆる体液を吸い込んでとんでもない状態になっている。
……こんなところで寝られるわけがない。
俺は押し入れからスペアの布団を引っ張り出した。これは、琴音と関係を持ち始めたころに買ったものだ。
あの頃学んだのだ。性行為のあとの布団はぐっちゃぐちゃで、とても寝られたものではない、と。だから、替えの布団はこの家の必需品になった。
俺は汚れきったメインの布団の上に横たわる瑠衣に、タオルケットを一枚かけてやった。
こいつは、このまま朝まで起きないだろう。
そして、乾いたスペアの布団を、少し離れた場所に敷いて、その中に潜り込む。
横目で汚れた布団と、その上で幸せそうに轟沈しているたぬきを眺める。あの汚い声を思い出すと、正直ちょっとクセになりそうな自分がいて少し怖い。
だが。
あの失禁の後始末を思うと、俺は静かにこう心に誓うのだった。
……瑠衣のアナルをいじるのはほどほどにしよう。
冷房の効いた部屋にたぬきの寝息と、隣の部屋から漏れてくる琴音の参考書をめくる苛立たしげな音がかすかに響いていた。
ことぶき荘の夜は今日も汚くて、面倒で少しだけあたたかい。
そのうち温めていた異世界物を書きたい