第1話:甘い追憶と、おっとり彼女の「断れない」誘惑
【起】
1. 陽だまりの再会
七月の半ば。梅雨明けが宣言されたばかりの街は、容赦のない生ぬるい熱気に包まれていた。
「――はい! こちらのモデルハウスでは、リビングの天井高を通常より三十センチ高く設計しておりまして……。ですので、実際に中に入っていただくと、数字以上の開放感を感じていただけるかと思います」
住宅展示場のピカピカに磨かれたフローリングの上で、酒宮由海(さかみや ゆみ)は、おっとりとした、けれどもしっかりと芯の通った優しい声で説明を続けていた。
「へえ……確かに、すごく広く感じますね」
案内していた若い夫婦が、感心したように天井を見上げる。その様子に、由海はふわりと胸をなでおろした。
入社二年目。住宅メーカーの営業職。おっとりして見える由海だが、その仕事ぶりは誠実そのものだ。持ち前の高いコミュニケーション能力と、困っている人を放っておけない責任感の強さで、営業成績は決して悪くない。むしろ、同期の中では一歩リードしている方だった。
しかし、その一方で、身体の疲労と精神的なプレッシャーは確実に蓄積していた。
最近は特に外回りの仕事が多く、夏の日差しを浴びながら歩き回る日々が続いている。
(ふぅ……さすがに、ちょっと足がむくんじゃったかな……)
タイトスカートの裾から伸びるストッキングに包まれた脚を、そっと意識する。
一日中歩き回ったせいで、下着の中は少し蒸れて、熱を持っているような感覚があった。元々、汗はサラッとしているタイプなのだが、密閉された衣服の中はどうしても湿気が籠もりやすい。ストッキングのウエストゴムが食い込む下腹部あたりが、じっとりと熱い。
夫婦を丁寧に見送り、ふぅ、と小さくため息をつきながら受付のカウンターに戻ろうとした、その時だった。
「――あれ? もしかして……由海?」
背後からかけられた、聞き覚えのある少し低めの声。
驚いて振り返ると、そこには見上げるほど背の高い、スーツ姿の青年が立っていた。
「え……?」
由海はキョトンと丸い目をさらに丸くした。
端正な顔立ち。高校時代よりも少し肩幅が広くなり、大人びたスーツに身を包んでいるけれど、その涼しげな目元には、見紛うはずのない面影があった。
「浩介……くん?」
「やっぱり! いや、びっくりした。こんなところで会うなんて思わなかったからさ」
嬉しそうに白い歯を見せて笑うのは、高校時代のクラスメイトであり、バスケットボール部の同期でもあった――長谷川浩介(はせがわ こうすけ)だった。
そして同時に、由海が十七歳の時に初めての身体を許し、そして自然消滅してしまった、唯一の「元カレ」でもある。
「嘘、浩介くん……! どうしてここに?」
「あ、いや。俺、今の会社でここの展示場と提携してる建材メーカーの担当になってさ。今日はその、簡単な挨拶とカタログの差し替えに来たんだよ。酒宮さんは……ここで営業やってるの?」
「うん、そうなの。私も二年目で、ここで案内を任されてて……。でも、本当にびっくりしちゃった。全然変わらないね」
「そうか? 由海のほうこそ、高校の時と全然変わってない。……いや、ちょっと大人っぽくなったかな」
浩介の視線が、由海のタイトスカートから浮き出た腰のライン、そして、ブラウス越しでも隠しきれない、豊かに膨らんだ胸元へと、一瞬だけ、吸い寄せられるように動いた。
由海は高校時代、バスケットボール部でシューティングガード兼スモールフォワードを務めていた。
当時は毎日走り回っていたため、身体全体が引き締まっていたが、社会人になって運動量が減った今、その引き締まった筋肉の上に、女性らしい柔らかくてマシュマロのようなお肉が程よくのり始めていた。胸も高校時代より一回り大きくなり、おっとりとした癒し系の雰囲気に、独特の艶っぽさが加わっている。
「もう、からかわないでよぉ」
由海はおっとりと微笑みながら、少し頬を赤らめた。
高校時代の別れ方は、決して喧嘩別れではない。お互いに大学受験を控え、進路の違いや忙しさから、連絡の頻度が自然と減り、そのままなんとなく「友達」に戻ってしまった――いわゆる自然消滅だ。
だからこそ、お互いに対して嫌な思い出は一切なく、気まずさもなかった。むしろ、心のどこかでずっと気にかかっていた、特別な存在。
「あのさ、本当はもっと話したいんだけど、これから次の取引先に行かなきゃいけなくて……」
浩介が残念そうに腕時計に目を落とす。
「うん、私もこれから午後の内覧会があるから、持ち場に戻らなきゃ。お仕事、頑張ってね」
「なぁ、もしよかったら、今度の週末、久しぶりに二人で会わない? 積もる話もあるしさ」
「えっ……うん。私でよければ、ぜひ」
おっとりとした性格で、他人を疑うことを知らない由海は、何の躊躇いもなく微笑んで頷いた。
その警戒心の薄さが、かつて浩介をどれほど惹きつけ、そして今また、彼の心に小さく、しかし確実な「熱」を灯したか、彼女自身はまだ気づいていなかった。
二人は手早くスマートフォンの連絡先を交換し、それぞれの仕事へと戻っていった。
2. 週末の待ち合わせ
約束の土曜日。
駅近くの、少し落ち着いた雰囲気のカフェ。
ガラス窓から差し込む夏の光が、木目調のテーブルを明るく照らしている。
由海は、涼しげな薄ピンク色のカーディガンに白いプリーツスカートという、上品でありながらも少し女の子らしさを意識した服装で、席に座っていた。
「お待たせ! 遅くなってごめん!」
少し呼吸を乱しながら、浩介がやってきた。私服姿の彼は、高校時代の部活の帰りを思い出させるような、カジュアルだけど清潔感のある服装だ。
「ううん、私も今着たところだから、気にしないで。お疲れ様、浩介くん」
「ありがとう。……いや、私服の由海を見るの、本当に何年ぶりだろう。やっぱり、すごく可愛いな」
「もう、席に着くなりお世辞言わないの。ほら、何飲む? 喉渇いたでしょ」
由海はキョトンとしつつも、嬉しそうにメニューを広げた。
お互いにアイスコーヒーを注文し、冷たいグラスに結露が浮かび上がる頃には、二人の間の数年のブランクは、霧散するように消え去っていた。
「本当に懐かしいなぁ。高校の時、部活の帰りによく一緒に買い食いしたよね」
「したした! 浩介くん、いっつもコロッケ三個も食べて、私に半分押し付けるんだもん」
「だって由海、美味しそうに食べるからさ。ほら、冬の寒い日に、バス停でバス待ってる時とか」
「あ……。あの時、浩介くんが自分のマフラー、私に巻いてくれたよね。すごく温かくて、嬉しかったなぁ」
紅茶色をした澄んだ瞳を細め、由海は遠い日を愛おしむように微笑む。
その表情に、浩介は胸を締め付けられるような愛おしさを感じていた。
「由海って、高校の時からずっと、おっとりしてて、みんなの癒やしだったよな。部活の男子連中も、みんな由海のこと狙ってたんだぜ?」
「ええっ!? 嘘、そんなの聞いたことないよぉ」
「由海が鈍感だっただけ。……まあ、俺が誰にも渡さなかったんだけどな」
冗談めかして言った浩介の言葉に、由海の動きが一瞬止まる。
お互いの視線が交差し、ふっと、カフェの喧騒が遠のくような錯覚に陥った。
「……ねぇ、浩介くん」
「ん?」
「私ね、あの頃……すごく幸せだったよ。お互い、受験で忙しくなって、なんとなく連絡取らなくなっちゃったけど……。嫌いになったわけじゃ、なかったから」
「……俺もだよ」
浩介は真剣な眼差しで、由海を見つめた。
「俺も、ずっと後悔してた。なんであの時、もっと由海の手を離さないようにしなかったんだろうって。……今、付き合ってる人とか、いるの?」
ストレートな質問に、由海は少し目を瞬かせ、それから静かに首を振った。
「ううん。お仕事が忙しくて、全然そんな余裕なくて……。高校の時から、ずっといないよ。浩介くんは?」
「俺も、いない。ずっと仕事ばっかりでさ」
その言葉を聞いた瞬間、浩介の瞳の奥に、確かな期待の光が宿った。
ヨリを戻せるかもしれない――いや、もう一度、この愛らしい女性を自分のものにしたい。
「あ、そうだ。俺、この後、夜からどうしても外せない地元の用事が入っちゃっててさ。今日はこのくらいしか時間が作れなかったんだ」
「そっかぁ、残念。でも、お仕事もプライベートも忙しいのは良いことだもんね」
「ごめんな。でも、来週末、もし空いてたら……一日、俺に時間くれない? 今度はもっとゆっくり、美味しいものでも食べに行こう」
「うん! もちろん。楽しみにしてるね」
携帯の画面にスケジュールを打ち込む由海の指先は、少しだけ震えていた。
連絡先を再度交換し、その日は駅の改札前で別れた。
「じゃあ、また来週連絡する!」
手を振る浩介の後ろ姿を見送りながら、由海は自分の胸の鼓動が、静かに、しかし激しく高鳴っているのを感じていた。
3. 悶々のバスタイム
その夜。
用事を済ませ、自宅のアパートに帰宅した由海は、お風呂にお湯を張りながら、今日一日の出来事を思い出していた。
(浩介くん……すごくかっこよくなってたなぁ)
浴室の鏡に映る自分の姿を見つめる。
おっとりとした顔立ちに、お風呂の熱気でほんのりと赤みが差している。
ブラウスを脱ぎ、下着姿になると、高校時代より明らかに豊かになった胸が重力に従ってしなやかに垂れ、細いウエスト(W65)とのコントラストを描いていた。
(……最近、体がおかしいの、かな)
おっとりとした外見とは裏腹に、由海には「ストレスが溜まるとオナニーをしてしまう」という、誰にも言えない秘密の性癖があった。
最近、営業の数字や人間関係、そして外回りの疲れで、由海の精神的なストレス値は**35%**に達していた。
ここ一週間、毎晩ベッドの中で指を秘部に這わせている。
しかし、どれだけ指を動かしても、頭のどこかで仕事のことや、焦りが過ってしまい、浅くしかイケていなかった。身体の奥が、常に熱く、重く、満たされない何かを求めて疼いている。
シャワーの温かいお湯が、由海の柔らかな肌を滑り落ちていく。
湯気の中に、彼女が汗をかいた時の、甘い体香がわずかに混ざり合う。
「ふぅ……あぁ……っ」
耐えきれず、由海は濡れた指先を、自分の太ももの内側へと滑らせた。
柔軟性の高いしなやかな脚が、自らの指の愛撫を受け入れるように、自然と開かれる。
薄い陰毛に覆われた秘部は、まだ経験人数が1人――すなわち浩介としか経験がないため、色素沈着もほとんどなく、驚くほど綺麗な桜色を保っていた。小ぶりで可愛らしい陰唇が、シャワーの水滴と、自ら溢れ出させた愛液で、ツヤツヤと光っている。
「ん、ぁ……っ……は、ぅ……」
人差し指と中指で、クリトリスを優しく挟み、円を描くように擦る。
いつもより、明らかに感度が高い。頭の中に、今日会った浩介の、あの優しい目元がチラついて離れない。
「浩介、くん……っ、ん、んぅぅ……っ」
シャワーの音にかき消される、我慢の混ざった甘い声。
指先を少しずつ、締まりの良い膣口へと滑り込ませる。ヒダの少ない、俵形の膣壁が、久しぶりの異物を歓迎するように、きゅうきゅうと指を締め付けた。
「はぁ、ぁ……っ、ダメ、なのに……っ」
お風呂の中での指オナニー。
お湯の熱さと、身体の奥からの疼きが混ざり合い、いつもより早く限界が近づいてくる。
しかし、体勢が安定しないため、やはり「ガツン」とした満足感には至らない。
浅い絶頂の波が、由海の身体を小さく揺らし、おっとりとした瞳に涙を浮かばせた。
お風呂から上がり、バスタオルを巻いてベッドへと滑り込む。
エアコンの風が、火照った肌を優しく冷やすが、下腹部の疼きは収まるどころか、より一層激しさを増していた。
「……もう一回、だけ……っ」
シーツに突っ伏し、お尻を少し突き出すような姿勢で、再び指を秘部へ滑らせる。
大好きな浩介のことを思い浮かべながら、Gスポットのあたりを内側から強く掻き出すように指を動かす。
「ひぅ、ん……っ、あ……もっと、奥……っ」
誰も見ていないベッドの上。
恥ずかしさから、枕に顔を埋めて声を殺しながら、由海は必死に腰を揺らした。
指のストロークが速くなり、膣内から「クチュ、クチュ」と、蜜が弾けるリアルな音が部屋に響く。
「はぁ……っ、ん、んんぅ……! イ、く、ぅ……っ!」
二度目の、少し強めの絶頂。
身体がビクンと大きく跳ね、シーツに愛液の小さなシミを作る。
ハァハァと荒い息を吐きながら、由海はおっとりとした瞳を潤ませ、力なくベッドに沈み込んでいった。
「浩介くん……来週、ね……」
満たされきらない甘い不満と、来週への期待を抱えたまま、由海はゆっくりと、深い眠りへと落ちていくのだった。
(【起】・完)