第5章:金に買われた雛鳥、暗黒の競売
【起】
1. 悪魔の契約、奪われた日常
酒宮由海の11歳の人生は、ある日を境に、音を立てて完全に崩壊した。
きっかけは、父親の経営する会社の倒産だった。ありとあらゆる資産を売却し、家を追われてもなお、残された負債の額は約3億円。
小学5年生の由海にはその数字の持つ本当の恐ろしさは分からなかったが、毎日のように狭い借家のドアを激しく叩き、怒号を響かせる闇金たちの「追い込み」の恐怖だけは、肌に刺さるように理解していた。
「もう無理だ……。おい、これにサインすれば、借金は全部チャラにしてやるって言ってるんだぞ……」
「でも、由海を……あの子を差し出すなんて、そんなこと……ッ!」
精神の限界を超えた両親が交わしたのは、あまりにも非道な、裏社会との『悪魔の契約書』だった。
1. 酒宮由海を引き渡すこと。 2. 今後の娘の扱いについて、警察関係には一切口外しないこと。 3. 娘の生存状態のみ、定期的に通知すること。
脅迫と口止めが完璧に組み込まれたその書類に、後戻りの道も対抗策も失った両親は、ついに震える手でペンを走らせてしまった。
翌日。何も知らずに、静まり返った自宅で一人留守番をしていた由海は、突然押し入ってきた見知らぬ男たちによって、短い悲鳴を上げる暇さえなく拉致された。
黒いワンボックスカーに押し込まれ、運ばれた先は、どこかも分からない、重々しい空気の漂う劇場の裏手のような場所だった。
「……ここは、どこ……? お父さん、お母さん……っ」
ガタガタと歯を鳴らして怯える由海の前に、白衣を着た無表情な中年女性が立ち塞がる。
「今から検査をします。服を全部脱いで、ここに座りなさい」
「え……っ? いや! なんで脱がなきゃいけないの……っ! おうちに帰して……っ!!」
知らない大人の冷徹な声に、130センチの小さな身体を震わせて必死に拒絶の声を上げる由海。しかし、女性の瞳には、哀れみなど微塵も浮かんでいなかった。
「あなたに拒否権は無いのよ。親に売られて、ここへ来た『商品』のあなたにはね」
「――っ!?」
冷たく言い放たれた言葉の意味を理解するよりも早く、女性の慣れた手つきによって、由海のTシャツやショートパンツが乱暴に、事務的に剥ぎ取られていく。抵抗しようにも、大人の力の前にはあまりにも無力だった。
2. 冷酷な検品、曝け出される無垢
「いやぁぁっ! 見ないで、触らないでぇ……っ!!」
知らない場所で、知らない大人の目の前で、一瞬にして完全な全裸にされた由海。
「アソコは大切な場所だから、簡単に人に触らせちゃダメだよ」という、かつての母親からの純朴な躾を思い出し、由海は必死にしゃがみ込んで小さな身体を隠そうとした。しかし、それすらも冷酷に組み伏せられ、彼女の華奢な肉体は、産婦人科にあるような冷たい金属製の検査椅子へと四肢を固定された。
「……傷、アザは無し。皮膚の状態、良好。体毛の有無……完全な無毛、パイパン」
女性はルーペや器具を使い、まるで屠殺場の家畜を品定めするかのように、由海の隅々までを観察し、淡々と記録していく。
初潮すらまだ迎えていない、AAカップの膨らみすら怪しい平坦な胸。そして、ピチッと子供っぽく固く閉じた、未成熟極まるピンク色の割れ目。異物など一度も受け入れたことのない、極限に狭い膣の入り口から、排泄のためのアナルの中まで、徹底的な洗浄と検品が続けられた。
11歳の少女にとって、それは肉体を引き裂かれるよりも凄惨な、尊厳を根こそぎ奪われる屈辱の時間だった。
「はい、検品終了。次、お風呂に入れるわよ。ちょっとでも高く売れるように、隅々まで綺麗にしなきゃね」
逃げ場のない地獄のような作業が終わり、シャワーで乱暴に全身を洗われた後、由海は「大急ぎで着替えなさい」と元の服を投げつけられた。
すでに彼女の瞳からは大粒の涙が溢れ、過呼吸気味に肩を揺らしていたが、そんな絶望を嘲笑うかのように、壁のスピーカーから大音量のアナウンスが響き渡る。
『さあ、皆様お待たせいたしました! 本日のメインディッシュ、滅多に市場に出回らない極上の“上モノ”です! 最低入札価格は、500万円からスタート!!』
ジャカジャカと鳴り響くドラムロール。直後、背後の扉が開き、由海は眩い照明が照らす舞台の上へと力任せに押し出された。
3. 人権の競売、壊れゆく雛鳥
「う、あ……っ……」
舞台の上から見えた光景に、由海は全身の血の気が引き、猛烈な悪寒に襲われた。
客席にいるのは、身なりの良い、しかし仮面や帽子で顔を隠した男女。人数こそ少ないものの、彼らが放つ視線は、人間を人間として見ていない、ただの「貪り食うための肉」を品定めするような、悍ましい欲望に満ちていた。
恐怖で完全に硬直する由海を他所に、会場には冷酷なアナウンスが響き渡る。
由海の学校名、名前、誕生日といった個人情報から始まり、130cm、30kgという発育途中のサイズ、さらには先ほど検査されたばかりの「初潮前の処女」「形が良く綺麗なピンク色をした秘部」に至るまで、由海自身すら知らなかった身体のプライベートな情報が、漏れなく会場中に大音量で放送されていく。
「……っ、うあぁぁーーんっ! 嫌だ、もうやめてぇ……っ!!」
頭を抱えて泣き叫ぶ由海。しかし、客席の反応は冷淡だった。
『1000万円』『1200万円』――。
いくら初潮前の上モノとはいえ、ただ泣いているだけの子供に対して、金額の上がり幅は次第に鈍くなっていく。
舞台の袖から、先ほどの白衣の女性が苛立たしげに声をかけてきた。
「ちょっと、もっと自分からアピールしなさいよ! そうしないとお父さんの借金、返せないわよ? ほら、服を脱いでアソコを客席に見せなさい!」
「いや……っ、できない、そんなの、絶対に無理ぃ……っ!」
舞台の上で自ら服を脱ぎ、見ず知らずの大人たちに未成熟な秘部をお披露目するなど、11歳の少女の尊厳が許すはずがなかった。ただただ床にへたり込み、激しく首を振って泣きじゃくる由海。
「チッ、使えないガキね。このままじゃ、もっと酷い目に遭うわよ」
冷たい最終警告と共に、オークションの制限時間が迫る。
しびれを切らした女性が舞台上に現れると、抵抗する由海を床に組み伏せ、着ていた服をバリバリと音を立てて無理やり引き裂き、完全に全裸にした。
そして、由海に代わって、その幼い身体を客席に突き出すようにして「商品アピール」を始めたのだ。
「ご覧ください、この全く膨らみのない無垢な胸! そして、産毛すら生えていない、ピチッと閉じた完璧な処女の割れ目です!」
アピールポイントが告げられるたびに、舞台上の大型モニターには、由海のアップ映像が映し出された。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔、小さな平坦な乳首、華奢なお尻、そして、恐怖でピクピクと震えている、まだ誰の手にも触れられたことのないピンク色の女性器――。その隅々までが、高解像度のカメラで巨大な画面に晒され続ける。
そのあまりにも生々しく、屈辱に塗れた少女の姿が、客席の異常者たちの性的興奮に完全に火をつけた。
「パン、パン、パパパン……ッ!」と、入札の電子音が狂ったように鳴り響き始める。
価格は一気に跳ね上がり、2億、2億5千万、そしてついに、父親の負債額である『3億円』の大台を突破した。会場が一瞬の静寂に包まれたその時、アナウンサーがトドメの一言を放つ。
『さあ、価格は3億円を超えました! なお、今回見事落札されたオーナー様には――彼女が成人する20歳までの、完全な【所有権】が付与されます! 人権、法律、その他一切の制約はございません!』
そのアナウンスが流れた瞬間、会場は割れんばかりの歓声と、さらなる狂気の入札の嵐に包まれた。20歳までの9年間、この幼い少女をどう扱おうが、殺そうが壊そうが自由。人権すら勝手に売りに出された瞬間だった。
『――4億! 4億5千万……っ! はい、出ました! 5億円です!! 5億円で、落札ォォォーーーッッ!!』
ガーン、と冷酷なハンマーの音が響き渡り、由海の人生は完全に買い叩かれた。
5億円という破格の金額。これにより父親の借金は一瞬で完済され、手数料を差し引いても3000万円という大金が(両親にはわずか500万円しか渡されず、残りは金融屋の取り分となったが)、名目上は「由海の手元に残る金」として処理された。
だが、そんな金が何になるというのか。
11歳の酒宮由海は、衣服の残骸が散らばるステージの上で、全裸のままカタカタと震え、これから始まる「成人するまで終わらない地獄」の恐怖に、ただただ涙を流し続けることしかできなかった。
(【起】・完)