【起】
1. 喧騒の隙間、二人だけの熱
遠くから届くお囃子の音と、屋台の香ばしい匂い。
夏の湿り気を帯んだ夜風が、提灯の明かりに照らされた賑やかな境内を吹き抜けていく。
「先輩、待ってよ……っ。下駄、まだ慣れてなくて……」
「わるいわるい。……ほら、手」
「ん……♪」
白地に青の朝顔が鮮やかに咲く浴衣に身を包んだ由海は、2個上のサークルの先輩であり、高校3年の夏から付き合って2年目になる彼氏の手をきゅっと握り締めた。
紺色の帯でキュッと絞られたウエストから、150cmの小柄な身体とは思えないほど豊かなヒップラインの曲線が艶やかに浮き出ている。
大学の講義や連日のアルバイトに追われ、最近はなかなかゆっくり会う時間も取れずにいた。溜まっていたストレスと寂しさを吹き飛ばすように、由海は先輩の隣で嬉しそうに目を細める。
たこ焼きやかき氷を分け合い、人混みの中で触れ合う肩と体温。
すれ違う人々から「あの子の浴衣姿、すごく綺麗だな」と羨望の視線を向けられるたびに、先輩の手を握る力に少しだけ甘えが籠もった。
2. 境内の奥、人目を避けた静寂へ
祭りの喧騒がピークを迎える頃、二人は賑やかな本殿の裏手、境内と隣接する地元の公園へと続く暗がりの参道へと足を進めた。
鬱蒼とした木々に囲まれた公園は、街灯の光も届きにくく、昼間の家族連れの賑わいが嘘のように静まり返っている。遠く聞こえるお囃子の音が、かえって二人の間の沈黙と緊張感を際立たせた。
「……ふぅ、こっちは人、全ぜんいないね」
「そうだな。ちょっと休もうか」
暗がりのベンチに二人並んで腰を下ろす。
夏の夜風がふわりと吹き抜け、浴衣の裾を揺らした。由海の首筋から漂う、ほのかな汗の匂いと爽やかな石鹸の香りが、暗闇の中でくっきりと先輩の鼻腔をくすぐる。
「今日……由海、すごく可愛いよ。朝顔の浴衣、似合ってる」
「……本当? 先輩に見せたくて、頑張って自分で着付けたんだよ」
うつむきながら頬を染める由海。
19歳になり、少し大人びた雰囲気と女性らしい丸みを帯びた身体。経験を重ね、お互いの肌の感触を知り尽くした恋人同士だからこそ漂う、甘く濃密な空気が二人の間を満たしていく。
3. 触れ合う肌、解け始める甘い期待
「ねぇ、先輩……。最近、全然ゆっくり一緒にいられなかったから……すごく会いたかった」
「おれもだよ、由海。……ずっと抱きしめたかった」
先輩の手が、由海の華奢な肩を引き寄せた。
重ね合わされる唇。最初は柔らかく確かめ合うようなキスだったが、長らく愛に飢えていた二人の熱量は一瞬で跳ね上がり、お互いの舌を絡め合う深く濃厚なものへと変わっていく。
「んむ……っ、ん、ふぁ……ッ……」
暗闇の静寂の中に、二人の湿った水音がやけに生々しく響く。
先輩の大きな手が、浴衣の上から由海の丸みを帯びた胸や、和装用シームレス下着越しのみっちりとしたお尻の肉感をなぞる。
「あっ……ん、先輩……ここ、お外……だよ……っ」
口ではそう言いながらも、由海は拒むように胸に回した手で、先輩の服の生地を強く握り締め、自分から身体を押し付けた。
遠くで響く祭りの音と、目の前にある大好きな人の熱い体温。誰かに見つかるかもしれないという緊張感が、由海の秘められた感度をどこまでも高めていくのだった。
(【起】・完)