港を出発した翌日、海上は穏やかに晴れ渡っていた。
雲ひとつない澄み渡る青空の下、眩しい太陽の光が穏やかな波間に反射してキラキラと輝いている。遠く右手に目を向ければイタリア半島の美しい海岸線がどこまでも続いており、遥か南の水平線上にはトスカーナ群島の島々がかすかに霞んで見えていた。睡眠を一切必要としない英霊たちが代わる代わる交代でオール番を務めることで、大型のガレー船は昼夜を問わずスムーズに水面を滑るように進み続けている。この順調なペースであれば、今日の昼過ぎにはアルプス山脈のふもとに位置する目的地の港町へと到着する予定であった。
澄み切った海風が吹き抜けているにもかかわらず、船の甲板の上には濃厚で淫らな雌のフェロモンと愛液、そして精液の甘く頽廃的な香りが立ち上り、重く停滞していた。甲板のそこかしこには、あなたという至高の雄によって心身ともに愛し尽くされ、完膚なきまでに屈服させられた雌奴隷たちが力なく腰を下ろしている。彼女たちの秘められた膣穴からは、幾度も注入された大量の白濁した精液がドロリと泡を噛んで溢れ出し、艶やかな太ももや甲板を白く汚していた。絶頂の余韻に身を委ね、ハァハァと荒い吐息を漏らす彼女たちは、あなたに向けて尊崇と完全なる隷属の光景を宿した蕩然とする視線を送り、熱い情熱を全身から漂わせている。
そんな欲望の渦の中心、船の中央において、新たな交尾の劇的な狂宴が繰り広げられていた。
あなたはブーディカに後ろから襲いかかり、その豊かな尻肉を力強く掴みながら、最奥の膣穴へ向けて怒張した陰茎を容赦なく叩きつけ、出し入れを繰り返して責め立てていた。
「あぐっ”ぅぅっ”っっほぉぉ”ぉ♡♡♡♡♡♡♡ んおぉぉ”ぉぉ”ッッ♡♡♡♡♡♡♡♡」
この場の雌たちの中でも群を抜いて豊満すぎるブーディカの女体が、あなたが腰を突き入れるたびに豪快に跳ね踊る。引き締まったウエストからどっしりと張り出した迫力満点のヒップ、そしてこぼれんばかりの爆乳が、肉と肉が強くぶつかり合う重厚な音と共にバタバタと淫らに揺れ動いた。
ブーディカは備え持った生来の包容力や気高さを脱ぎ捨て、舌を垂らしながら下品極まりない獣のような濁ったオホ声の喘ぎ声を好き放題に漏らしていた。
「あぁぁッ♡♡♡♡♡♡ 凄いっっ♡♡♡♡♡ 凄すぎるよ、私の旦那様ぁッ♡♡♡♡♡♡ 私のおまんこが、旦那様の太いおちんちんで壊されちゃうぅッ♡♡♡♡♡♡ んお”ぉ”ぉッ♡♡♡♡♡♡ 生前も夫にこんな激しく犯されたことなんてないっっッ♡♡♡♡♡ あの人の小さなおちんちんのことなんて完全に忘れちゃったッ♡♡♡♡♡♡ 私はもう、旦那様だけのドスケベな種付け専用肉便器ぃっ♡♡♡♡♡♡ 一生孕まされ続ける、ド変態雌奴隷になりましたぁぁっ♡♡♡♡♡♡」
彼女は背徳的な寝取りの悦楽に狂い、己を徹底的に貶める下品で淫猥な言葉を汚らしいオホ声と共に叫び散らす。
「お願いっっ♡♡♡♡♡ お願いだから孕ませてぇッ♡♡♡♡♡ 旦那様の強い種で私のお腹をぽっこり大きく膨らませてぇッ♡♡♡♡♡♡ 前の夫との子供よりも、旦那様との赤ちゃんが欲しいのぉッ♡♡♡♡♡ 私の子宮にドロドロの種をいっぱい流し込んで、旦那様の奴隷産婦にしてぇぇッ♡♡♡♡♡♡ んお”ほぉ”ぉッ♡♡♡♡♡ お”ほぉ”ぉ”ぉぉッッ”♡♡♡♡♡♡」
淫蕩な妊娠願望に乱れ狂うブーディカの両脇には、彼女と同じようにあなたへ尻を向け、深く腰を折り曲げた臨時スタッフの女たちが二人並んでいた。
彼女たちは自らの手で豊満な尻肉を押し開き、濡れそぼった膣穴とキュッと閉ざされた尻穴が丸見えになるように仲間たちへ見せつけながら、指先で愛液を掻き回してポタポタと雌汁を溢れさせていた。すでに二人もあなたによって散々犯し抜かれた後であり、膨らんだ秘裂からは濃厚な精液がドロドロと音を立てて溢れ出している。
「あぁんっ♡♡♡♡♡ 見てよ、このご主人様の凄まじい性豪ぶりを……♡♡♡♡♡ 一晩中私たち全員を抱き潰したのに、朝になってもおちんちんが全然小さくならないのよぉっ♡♡♡♡♡♡」
「本当に凄いわ……♡♡♡♡♡ もう他の普通の男どもじゃ絶対に満足できない体になっちゃった……♡♡♡♡♡ 私の膣の奥にも大量の種を注ぎ込まれたから、絶対にご主人様の子供を妊娠しちゃってるわよっッ♡♡♡♡♡♡ 絶対に最高の子供を産んでやるんだからっっ♡♡♡♡♡♡」
二人の女たちもあなたへの絶大な服従を口にしながら、ブーディカが幾度となく絶頂する様とあなたの力強い種付けの光景を間近で見つめ、更なる快楽の渦へと心を投じていく。
あなたはブーディカの豊かな背にドシリと体を押し付けるようにすると、熟れ切った人妻の膣穴へ極太の陰茎を根元まで力任せに出し入れする猛烈なストロークを維持しつつ、彼女の爆乳を後ろから豪快に鷲掴みにした。
「ほぉ”ぉぉっぉっっ♡♡♡♡♡♡ オ”おっ”っ♡♡♡♡♡♡♡ んおぉ”ぉ”ぉぉッッ♡♡♡♡♡♡♡♡」
溢れんばかりの圧倒的な質量を持った乳房を、まるで乳牛の乳を搾り取るかのように力任せに揉みしだき、指先で充血して小さく尖った乳首を抉り上げる。突き上げる激しい衝撃と胸への力強い圧迫に、ブーディカは背中を大きく反らせ、爆乳を上下左右へと淫らに揺らしながら下品極まる喘ぎをまき散らしす。あなたからの過激で情容赦ない愛撫に脳の芯まで蕩けさせられ、さらにあなたを興奮させようと、破滅的な欲望に染まった言葉をブーディカは喉の奥から絞り出した。
「あぁぁッ♡♡♡♡ 凄いッ、こんないやらしい乳がご主人様に揉みつぶされちゃう”ぅ”ッッッ♡♡♡♡ もっと乱暴に搾ってぇ”ッ”♡♡♡♡♡ 本当に乳首からミルクが出るくらい私を犯し抜いてぇッ♡♡♡♡♡♡ ご主人様に犯されるなら、私、どんなことだってするからぁッ♡♡♡♡♡♡ どんなときでもおちんぽ様に媚びへつらいますッ♡♡♡♡♡♡ カルデアに召喚されたら、みんなの前に全裸で引っ張り出されて、私が犯されてるところも、子宮に大量に膣内射精されてるところも全部見せつけたいのぉッ♡♡♡♡♡♡ ご主人様の種で腹が膨れても、お腹の子ごとずっと犯され続けたいッ♡♡♡♡♡♡ ご主人様のちんぽ奴隷になれて、とっても幸せぇぇっッ♡♡♡♡♡♡ ちんぽっっ♡♡♡♡♡ ちんぽ♡♡♡♡ ちんぽぉぉッッ♡♡♡♡♡♡ オッ”ッほぉ”ぉ”ぉぉッ”ッ♡♡♡♡♡♡」
その極限まで下品で淫乱な叫びに応えるように、あなたは腰の動きを極限まで引き上げ、彼女の子宮口を打ち砕かんばかりの強烈な突き上げを怒濤の勢いで繰り出していき、既に限界を達しつつあったは、ブーディカの太ももを固く抱え込むと、彼女の膣の最奥、開いた子宮口に向けて怒張した陰茎からドクドクと音を立てて熱く濃密な精液を一気に解き放った。
「オオ”っ”っぉぉ”おおぉ”ッホおぉぉ”ぉぉぉっ”ッッッ♡♡♡♡♡♡♡♡♡ 孕むぅ”ぅぅっ”っ”♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
ブーディカは雌としての至高の快楽に全身をガクガクと痙攣させ、下品すぎるオホ声を叫びながら絶頂の波に打ち震えた。彼女の子宮内には、あなたの灼熱の精液が大量に叩き込まれ、収まりきらなかった白濁液が秘裂の隙間からドロドロと溢れ出して太ももを白く汚していく。
目を白黒させ、口元から唾液を垂らして絶頂の余韻に浸るブーディカの淫蕩な姿。そして、あなたの容赦のない超濃密な膣内射精。その一部始終を見守っていた周りの雌奴隷たちは、あまりの背徳的な光景と濃厚な精液の匂いに胸を躍らせ、蕩然とした表情で自らの秘所を指で弄りながら、うっとりとため息を漏らす。
あなたがブーディカの膣から一気に陰茎を引き抜くと、溜まりに溜まった濃密な精液が彼女の雌穴から溢れ出て、太ももを伝って甲板へドロリとこぼれ落ちていく。そして間を置く暇もなく、あなたはすぐ隣で四つん這いになり、己の秘穴を開帳していた臨時スタッフの女へとのしかかり、間髪入れずにその濡れた膣穴へと怒張した肉棒を根元まで貫き通した。
「ひぃぃ”ぉぉ”おっほぉぉおお”おっっ”っッ♡♡♡♡♡♡♡」
あなたの大柄で太いおちんちんが自分の膣内に突き刺さってきたことに、女は豊満な女体を震わせながら歓喜の悲鳴を上げ、舌を垂らしながら下劣な喘ぎを甲板に響かせると、いやらしく熱が高まった膣壁に力を入れてあなたの陰茎を締め付ける。カリ首の溝まで吸い付くような性感に気を良くして、あなたは乱暴なまでに腰を振りたくって女の膣壁を擦り上げていった。
その傍らでは、別の臨時スタッフの女が倒れ伏すブーディカの股間へと這い寄り、彼女の膣口からドロドロと溢れ出るあなたの精液を逃すまいと、その秘裂に直接口をうずめて、じゅるりと音を立てて熱心に吸い啜り始めていく。
「んむっ……ぢゅるるる”っ”♡♡♡♡♡ んふっ……♡♡♡♡ ブーディカさんのおまんこから溢れるご主人様の精液、濃厚でとっても美味しいわぁ……♡♡♡♡♡♡」
あなたが女を激しく突き犯しながら、周囲で自慰に耽る他の雌奴隷たちに向かって、もっと媚びろ、と冷徹かつ威厳に満ちた声で命じた。
「はいッ♡ ご主人様ぁッ♡♡」
その命令を受けた雌奴隷たちは歓喜の表情を浮かべ、自らの両手で秘唇を左右に押し開き、深部の赤黒い肉壁とひくつく膣穴をあなたへ見せつけながら、指先でクリトリスを狂ったように抉り回して激しく自慰を披露した。あなたに少しでも自分を見てほしい、もっと犯してほしいと競い合うように腰を振る雌たちの姿に、あなたは大いに気を良くし、腕の中の女をさらに激しく、狂暴なまでのストロークで突き倒していく。そうして、あなたによる退廃的で淫靡な宴の歓声と喘ぎ声は、静かな地中海の水面へとどこまでも響き渡っていったのだった。
船内にいる女たちが、あなたによって更にもう一度ずつ子宮の最奥まで容赦なく膣内射精され、立香とマシュについては全身に小水や精液をぶちまけてドロドロに染め上げられる頃。昼夜を問わず休みなく進み続けたガレー船は、ゆっくりと船首の向きを変えて、予定通りアルプス山脈のふもとに位置する港町へとその船体を運んでいくのだった。
港町に本来詰め詰めていたはずのガリアの兵たちは、ローマの前線拠点への大規模な攻勢を仕掛けるために大半が出払っており、街全体はどこか静まり返り閑散としていた。現在、街に留まっているのは町としての最小限の機能を維持し、前線から戻ってくるであろう兵たちを迎えるための準備に必要な数十人程度の人間のみである。船はそんな彼らの見張りの一部が見守る中、港の桟橋へとゆっくり横付けされていった。
港の桟橋に最初に足を下ろしたのは、この地のガリア兵らを率いていたブーディカとアタランテであった。そして二人に続くようにして、あなたとカルデアの仲間たち、さらには船の航行を支えてくれた女たちが順に降り立っていく。その装いは、船内での淫靡で退廃的な乱宴の痕跡を残さぬように整えられ、普段の凛とした戦闘服や衣装へと戻されていた。
異変に気付いた見張り兵の一人が、慌てた様子でこちらへと駆け寄ってきた。しかし、ブーディカたちの無事な帰還に安堵したのも束小間、彼女たちの背後から次々と降りてくる息をのむような美女たちの集団を目にして目を丸くする。
「ブ、ブーディカ様にアタランテ様! 前線からお戻りになられたようで何よりです! ……ですが、その……後ろにおられる大勢の女性方は一体……? かような美しい方々を一度にお見かけするなど、ただごとではないように思えますが……」「あはは、驚かせちゃってごめんね」
兵士の動揺を察したブーディカは、面倒見の良い母親のような笑みを浮かべた。
「彼女たちはね、私たちが後方へ戻るために危険を冒して船を出してくれた大切な恩人たちなの。ローマ軍が支配する地域から目を掻い潜って海路を進めたのは、彼女たちの知識と勇気があったから。だから無碍な扱いをしたり、不躾な態度を取ったりしてはダメだからね? 明日の朝にはまたローマの方へ船で戻るそうだから、彼女たちが旅立つまでに必要な物資や食料は、惜しまずしっかりと分けてあげてちょうだい」
兵士はブーディカの言葉に深く納得したように頷き、威勢よく敬礼を返した。
そのやり取りが行われている脇で、アタランテは鋭敏な感覚を研ぎ澄まし、耳と尻尾を微かに動かしながら静かに港町全体の気配を探っていた。周囲に敵の潜伏や不審な動きがないことを確認すると、アタランテは静かにスカサハの方を向き、微かに首を縦に振ってみせた。
スカサハは満足げに首肯を返すと、一同に向けて通り通る声で告げた。
「よし、まだ町は安全なようだ。前に我々が拠点として使っていた家が残っているはずだ。船旅の疲れもある。一度そこへ戻って荷を解き、今後の作戦を練るとしよう」
スカサハの言葉に促され、立香やマシュ、ジャンヌたちカルデアの一同が街の奥へと足を進め始める。
その歩みから少し遅れて、あなたは足を止めて振り返る。ここまで共に船を進め、数々の凄絶な交尾に身を捧げてくれた臨時スタッフの女たち。性交劇団の巡業から始まり、このガリアへの航海に至るまで、あなたという至高の雄に仕えてくれた彼女たちとは、ここでいよいよ本当の別れとなる。
何やら手伝おうと鼻の下を伸ばしながら近づいてくるガリア兵たちに対し、女たちは表面上は愛想よく対応していた。しかし、その情熱的な想いが向いている先は、あなただけであった。
そっと向けられる彼女たちの瞳には、あなたへの深い感謝と、決して消えることのない狂おしいほどの情愛の色彩が濃密に宿っていた。何人かの女は、兵士たちと視線を合わせないよう自然な仕草を取りながら、あなたと目が合うと、自らの子宮が存在する下腹部を服の上から愛おしそうに、艶やかに撫でさすってみせる。まるであなたの子種がその子袋にしっかりと種付けを果たしているのを、証明してみせるかのように。
さらに一人の女は、兵士たちからは決して見えない絶妙な角度で、服の裾をそっと持ち上げてみせた。布地の陰から覗いたのは、ふくよかで柔らかな白桃のような尻肉と、あなたから注ぎ込まれた大量の精液を未だにその内部に溜め込み、ドロリと白濁液を滲ませている淫らな膣の割れ目であった。
「……♡♡♡♡♡♡♡♡」
声には出さず、しかし愛のメッセージを込めて、彼女たちはあなたへ熱い視線を送る。あなたは満足げに微笑むと同時に、彼女たちの労をねぎらい、別れを告げるように静かに頷く。そして背を向けると、先を行くカルデアの仲間たちの背中を追って力強い足取りで歩き始めた。
町の奥へと消えていくあなたの背中を、女たちは兵士との会話の合間にも、名残惜しそうに、いつまでも愛おしげな目線で追い続けていたのだった。
その後、あなたたちは何事もなく、以前まで拠点として使っていた家に到着する。スカサハが施した強力な人除けのルーンは未だに機能しており、外からは全く人気が感じられず、静寂に包まれていた。
しかし、木製の扉を開けて中へと入ったあなたたちを出迎えたのは、意外な人物であった。
「おお、そなた達! ローマから無事に戻ってこられたようで何よりである! ふむ、余の愛するローマはいかがであったか?」
そこにいたのは、皇帝ネロ・クラウディウスであった。
彼女は部屋の奥にある寝台の上に、なんの悪びれもなく堂々と寝そべっていた。豊満で眩しい全裸の上から、薄手の白いシーツを一枚羽織っている程度の無防備な装いである。ブーディカのそれを僅かに超える存在感を放つ豊満な爆乳がシーツを押し上げて大きく歪み、美神の彫刻のごとき滑らかで長い美脚が、惜しげもなく露わになっていた。さらに、シーツの隙間からはひくつくピンク色のいやらしい膣の割れ目が覗いており、目のやり場に困るような艶めかしさを部屋全体に放っていた。
そのあまりにも堂々とした姿と痴態に、立香やマシュたち一同は思わず呆気に取られて言葉を失ってしまう。しかしあなたは彼女の姿を一目見た瞬間、ある決定的な違和感に気が付いた。彼女の頭に生えていた異様な獣の角と、腰から生えていた禍々しい竜の尾が、跡形もなく消え去っていたのだ。
あなたはネロに向けて静かに尋ねた。なぜ自分たちがここにいると分かったのか、そしてその頭の角と尻尾は一体どうなったのか、と。
ネロは胸を張り、眩しい笑顔を浮かべながら朗々と答えた。
「そなたに言われた通り、最初は大人しく後方に待機しておったのだがな。ガリア側の援軍が徐々に前線拠点へと集まってくると、さすがに余のような絶世の美女が目立ってはいかんと思うたのだ。そこで、そなた達が一時的に滞在しておったという港町の存在を兵どもの雑談から耳にしてな。こっそりと拠点を抜け出してこの町へと向かったというわけだ! そうしたところ、何やら覚えのある気配を感じてな。もしやあのハーレムの女主人殿がおるのかと思うてこの家を訪ねてみたのだが、誰も留守であったゆえ、これ幸いと事が落ち着くまでここで身を隠すつもりでおったのだ! ……そなた達が戻るまで随分と退屈をしておったのだぞ?」
その言葉を聞き、腕を組んでいたスカサハが「ふむ」と深く頷いた。
「ルーンの気配を直感で見破り、潜り込んでくるとはな。聖杯による支援があったとはいえ、さすがはローマの皇帝いったところか。……だが皇帝ネロよ、我が主のもう一つの質問についてはどうなのだ? その身体の変異のことだ」
「あぁ、あれのことか! この家で気儘に過ごしておるうちに、いつの間にか綺麗さっぱり消えておったのだ。空からあの妖しい星も消えておるようだし、それと何か関係しておるのではないか? ……しかし本当にあの妖星を決して見せるとは、さすが我が夫とその仲間達よ」
「先輩。今の皇帝陛下からは、以前お会いした時に感じられたあの禍々しい力が、大きく薄れているように感じられます」
マシュがあなたの隣へ歩み寄りながら小声で告げる。それに同意するように、アタランテが腕を組みながら冷静に続ける。
「それでも、依然として魔力の気配は強大だ。……しかし、確かに前に会ったときよりは脅威には感じないな。この調子で急速に力が削がれていくのであれば、あと数日もしないうちに完全に無力化するのではないだろうか?」
「うむ、余も全く同感だ! この身体は、かつて宮殿の中庭で優雅に横臥し、極上の酒精と至高の詩吟を楽しんでおった頃の……ただの美しき人間の肉体へと戻っていくのであろう。……しかしだ。そなたたちカルデアの者が、そこまで悠長に待つ気でおるのか?」
ネロの問いかけに対し、あなたは静かに首を振って答えた。自分たちはなるべく速やかに、獣の呪いが一切及ばないガリアの地へと移動するつもりであること、そしてネロとはここで永遠の別れとなるのだ、と。
その言葉を聞いた瞬間、ネロの表情から先ほどまでの快活さが消え去り、胸が締め付けられるような悲しく、寂しげな表情へと一変した。
「……なんということだ。あれほど激しく、狂おしく、余の身体を隅々まで徹底的に犯してくれたというのに、ここで余を放逐するというのか! そなたの恐ろしいほどの猛りによって、余はもう他の男の魔羅など微塵も興味が持てぬ体になってしまったのだぞ! この子宮にもそなたとの子が本当に宿っているのかどうかも分からぬというのに! この狂った身体の責任を、一体どう取ってくれるつもりなのだ……!」
哀愁の混じった艶めかしい叫びを上げるネロに、立香が申し訳なさそうに、けれど意を決して語りかけた。
「ネロさん……ううん、皇帝陛下。私たちカルデアには、この時代以外にも、どうしても救わなければならない世界がたくさんあるの。あなたの想いに応えたいのは、ご主人様もきっと思っていることなんだけども……」
「……皆まで語るな、カルデアの少女よ。レフの奴めから、そのあたりの話は聞き及んでおる。人理とかいう、この世界そのものの理を守り抜くことこそがそなたらの使命なのであろう? その大いなる使命をこのローマで果たし終えた以上、もはやここに留まる理由がないことくらい、余とて分かっておる。
……余もまた、栄えあるローマの皇帝。時が落ち着いて国に主導権を取り戻したのであれば、いずれは愛する都へと戻らねばならぬ。前にそなたが語ってくれた時の言葉の通りだな。我らは初めから道を違える宿命であった。……なんと口惜しく、愛おしい悲劇であろうか。
……受け入れはする、受け入れはするが……それでも、やはり寂しく悲しいものよ」
ネロはそう呟くと、羽織っていた白いシーツを両腕でぎゅっと掻き抱き、全身で寂哀と悲嘆を表現してみせた。あなたと過ごしたあの濃密で過激な性愛の日々は、彼女にとっても、そしてあなたにとっても決して忘れることのできない情炎の記憶であった。あなた自身もまた、彼女との惜別には胸を強く痛めるものがあったのだ。
あなたは悲しみに暮れるネロの瞳を真っ直ぐに見つめ、力強い言葉をかけた。今でこそお互いの運命は分かたれるが、道はいずれ交わり、今度は二つの道が一本の道になる時がくるだろう。我々の所属する組織には、過去の英霊から力を借り受けるための術がある。あなたが将来、世界に誇る偉大な存在となれば、我らは必ずや再会を果たすはずだ。今度はローマ皇帝としてはなく、永遠の雌奴隷として、と。
その言葉がネロの魂の奥深くに強く響いたのだろう。彼女はあなたを見ると、溢れんばかりの愛に満ちた眼差しを向ける。
「……その言葉、余に信じさせるからには、絶対に約束を果たしてもらうぞ……♡♡♡♡♡
我が夫よ、世界を去る前にこのローマ皇帝ネロ・クラウディウスからの勅命を授ける♡♡♡♡ 余はいつか必ず、人の身を解脱して英霊となろう♡♡♡♡ 余が世界に二人と並ぶ者なき至高の美を獲得したまさにその瞬間……今度は余を、この世界そのものから強奪しに来るのだッ♡♡♡♡♡ ローマから余を連れ去ったあの時のように、世界から余を奪ってみせよッ♡♡♡♡ 二度と逃げ出せぬよう、永久にそなたの足元へ跪かせよッ♡♡♡♡♡ 余が二度と逆らえぬよう、余の子宮へその逞しい種を植え付けよッ♡♡♡♡♡ 余はそなたの皇帝であり、そなたの妻であり、そして次に会ったときには新たな身分が加わる♡♡♡♡♡ そなただけの永遠の孕ませ性奴隷だ♡♡♡♡♡♡ そなたのためであれば、あらゆる屈辱すら至高の性愛へと変えると誓った身♡♡♡♡♡♡ いずれ再び出会ったときには、その時は余の全てを蹂躙してくれ、余の愛しき夫殿♡♡♡♡♡♡」
ネロの全身全霊を込めた情熱的な愛の誓いに対し、あなたは力強く頷き、一切の迷いなく言葉を返した。
いま口にしたその言葉を忘れずに待っているがいい、再び出会ったその時には、今言ったことの全てを容赦なく叩き込んで分からせてやる、と。
「……うむっ♡♡♡♡ 待っているぞ♡♡♡♡♡」
将来、あなたの圧倒的な雄の支配下に置かれ、永遠に愛され犯され続ける己の未来を脳裏に描いたネロは、うっとりと瞳を潤ませ、あなたに対する絶対的な隷属と深い情愛に満ちた視線を注ぎ続ける。
あなたは熱い視線を交わしながらネロに無k手、先ほど港で別れた女たちが明日の朝には船でローマへ戻る予定であること、そして彼女たちの船に乗せてもらって共にローマへと帰還するのが一番確実ではないか、と提案した。
「ふむ。それは実によい提案だ! 陸路では何かと時間がかかるし、ガリアの兵隊たちをどうやって掻い潜ればよいかという問題もあるからな。女たちの船であれば無事に都へと戻れそうであろう。そなたの配慮、深く感謝するぞ」
ネロは大きく頷くと、シーツから滑らかな肢体を覗かせるように起き上がり、カルデアの一同に向かって凛とした笑みを向けた。
「カルデアの者達、この世界の危難のために呼ばれた世界の英霊たちよ。短くも濃密な時であったが、誠に世話になった。そなたたちのおかげで、我が愛するローマは危機を脱することができた。そなたらの刻んだ事績は、このローマ皇帝ネロ・クラウディウスが生ある限り、永遠に忘れぬであろう! 誇るがよい! そなたらはまさに、このローマの救世主となったのである!」
あらためて一同へ心からの感謝と別れの言葉を告げたネロは、最後にゆっくりとあなたの方へと向き直った。その瞳には、一国の皇帝としての威厳ではなく、一人の雌としての深い情愛と絶対的な服従の光が宿っていた。
「そして……余の愛しき夫よ♡♡♡♡♡ 明日の朝、都へ向けて旅立つその瞬間まで、余のこの身体と心は永遠にそなたのものだ……♡♡♡♡♡♡ たとえ離れ離れになろうとも、余がそなたの永遠の性奴隷であるという事実は決して変わりはせぬ♡♡♡♡♡♡ 必ずや英霊となり、再びそなたの足元に跪いてみせるゆえ……その時を愉しみに待っておるがよいぞ♡♡♡♡♡♡」
ネロは胸元に手を当て、あなたへの永遠の隷属を誓うように深く一礼してみせるのだった。
ガリアの深く鬱蒼とした森林地帯。木々の隙間から差し込む陽光を浴びながら、あなたたちの身体は眩い青白き霊子光に包まれていた。
ローマ特異点でのすべての任務を完遂し、カルデアとの通信が無事に復旧した今、レイシフトの帰還シーケンスは最終段階に入っていた。足元から徐々に自身の肉体が光の粒子へと分解され、存在構成因子としてのデータに変換されていく不思議な浮遊感。やがて視界は完全な白光に飲み込まれ、時空の狭間を高速で逆行するような感覚が全身を駆け巡った。果てしない時相のトンネルを抜け、現代という確固たる座標へと魂が引き戻されていく。
やがて、絶対的な静寂と暗闇の中から、微かな機械の駆動音が耳に届き始めた。
「―――バイタルサイン正常、霊子構造の定着を確認。帰還シーケンス、最終フェーズをクリア。オールグリーン」
コフィンの分厚い壁越しに、カルデアのオペレーターたちの冷静で事務的なアナウンスが響いてくる。
閉ざされた空間の中でゆっくりと目を開けると、あなたの視界にはコフィン内部の無機質な計器の光が点滅していた。無事に、カルデアへと帰還を果たしたのだ。
「霊圧処理完了。コフィン、ロック解除。―――おかえりなさい」
プシュッ、という重々しい排気音とともに、あなたを覆っていたコフィンの隔壁がゆっくりと上方へとスライドして開いていく。コフィンから身を起こし、足を床につけると、そこはカルデアの中央管制室であった。
二代のコフィンが並んだ中央広間を取り囲むようにスタッフの支援席が設けられ、各機器に配置された無数のモニターには、レイシフト成功を示す無数のデータが滝のように流れている。緊迫した作戦を終え、無事にあなた達が帰還したことに、管制室のスタッフたちは安堵の息を漏らしながらも、素早く事後処理のためにコンソールを操作していた。
あなたがコフィンの外へと出た直後、あなたのすぐ隣に配置されていたコフィンの隔壁も、同じように排気音を立てて開く。中から現れたのは立香であった。彼女はコフィンから降りると、少しの疲労感を感じさせないほど元気よくあなたの方へと歩み寄ってきた。
「お疲れ様! 今回も大成功だったね!」
立香は満面の笑みを浮かべ、あなたに向かって右拳を差し出した。あなたも彼女の笑顔に応えるように、その拳に自分の拳を軽く打ち合わせ、作戦の無事な成功を共に祝い合った。
「二人とも、無事の帰還、本当にお疲れ様! 今回もよくやってくれたね!」
ふと上階のデッキを見上げると、手すりから身を乗り出すようにして、ドクターことロマニ・アーキマンが満面の笑みでこちらへ向かって手を大きく振っていた。カルデアの司令代理として、誰よりもあなたたちの無事を祈っていた彼の安堵の声に、あなたと立香もまた、彼に応えるように大きく手を振り返した。
そんな和やかな空気の中、カツカツとヒールの音を響かせながら、一人の人物があなたたちのもとへと歩み寄ってきた。カルデアの技術的支柱であり、天才たる万能の英霊、レオナルド・ダ・ヴィンチである。
「やあやあ、無事のお帰りで何よりだね、二人とも。本当にお疲れ様」
ダ・ヴィンチはいつもの飄々とした、深い知性を感じさせる笑みを浮かべて二人を労う。
しかし、すぐに少し申し訳なさそうな表情を作り、肩をすくめてみせた。
「ただ、今回は本当に申し訳なかった。特異点での時相の揺らぎが大きかったせいか、帰還する段階以外では通信が完全に途絶えてしまった。こちらからではバイタルサインの動静や存在証明の確立という点から、『二人は無事に生きている』ことしか把握できなくてね。具体的にあちらで何が起きていたか、どんな出来事に巻き込まれていたかは、現実のカルデア側の誰も把握できていない状況だったんだよ」
ダ・ヴィンチの言葉通り、カルデアの管制室はあなたたちがローマ特異点で繰り広げていた行動の一切を内容確認する余地がなかった。特異点での異常なほどのバイタルサインの乱れは観測されていたかもしれないが、それが何を意味しているかまでは理解できず、数値の動向から推察することしかできなかったのであろう。
あなたは立香と顔を見合わせると、ダ・ヴィンチに向かって静かに言葉を返した。報告すべき内容は山ほどあるけど、まずは落ち着いたところでゆっくりと話すために特異点に召喚された仲間との合流したい、と。
その言葉はつまり、管制室のスタッフたちがいるこの場ではなく、仲の知れた者同士、すなわちあなたによって徹底的に開発され完全に堕とされている女たちしかいない閉鎖的な空間で、あの特異点の真実を語り合いたいという、暗意であった。
あなたのその隠された意図を、天才であるダ・ヴィンチが汲み取れないはずがなかった。
理知的な瞳の奥に、一瞬だけ艶めかしい熱が灯る。ダ・ヴィンチは言葉の裏に隠されたあなたの真意を完璧に理解し、管制室のスタッフたちには決して気付かれない角度で、あなたに対して蕩けるような情熱的で甘い視線を向けた。
「ふふっ……なるほどね。確かに、長旅の直後で立ち話というのも酷な話だ。分かったよ、詳しい報告は後で『落ち着いた場所』で、ゆっくりと聞かせてもらうとしようか……♡ 楽しみにしてるよ、君の口から語られる真実をね……♡」
その時、管制室のスピーカーから、スタッフの冷静な報告が響き渡った。
「―――マシュ・キリエライト、並びに同行した英霊たちの霊基定着を確認。召喚室への帰還シーケンス、すべて正常に完了しました」
「どうやら皆も無事に帰還できたみたいだ。それでは、彼女たちが待っている場所へ向かうとしようか。彼女たちも、君たちの顔を見れば安心するだろうからね」
ダ・ヴィンチの促しを受け、あなたたちは管制室を後にして、カルデアの廊下を歩き始める。
通常、レイシフト先からの英霊の帰還処理は中央管制室のコフィンか、あるいは個別の霊基維持室へと繋がれるのが一般的な処理である。しかし特異点Fやオルレアンでの経験から、カルデアでは帰還先を意図的に召喚室を英霊の帰還先へと設定していた。現地で召喚され特異点内での特殊な霊子結合を経た英霊たちを一括して回収する場合、特異点という不確定な時空から戻ってくる英霊の霊子データは不安定な状態に陥りやすい。そこで、カルデア内で最も強力な霊子収束機能を持った召喚陣が組み込まれている召喚室を帰還用のレシーバーとして使用することで、英霊たちの霊基を即座にこの世界の現界フレームへと再定着させ、霊基崩壊を防ぐという合理的な狙いがあったからだ。
三人は、無機質なカルデアの金属廊下を渡り、重厚な扉で隔てられた召喚室へと足を進めていた。空気が通る排気音とともに自動扉が左右に開くと、室内の中心にある巨大な召喚陣から、残留する霊子の粒子がキラキラと青白く舞い上がっていた。
「あ……! 先輩ッ!」
真っ先に部屋に入ってきた人影に気づいたのは、マシュであった。こちらへ駆け寄る彼女の表情には、無事にカルデアへと戻れた安堵と、あなた達と再び特異点を攻略できたことへの喜びが浮かんでいる。
召喚陣の周囲には、スカサハ、ジャンヌ・ダルク、そしてラクシュミーの姿があった。特異点内であなたという絶対的な雄に心身ともに屈服させられ、その秘所に濃密な種を注ぎ込まれた彼女たちは、あなたと視線が合った瞬間、その頬をぽっと朱に染め、瞳の奥にトロトロとした情熱と蕩けた熱を宿してみせた。
一方で、ブーディカとアタランテの姿はまだない。現地で正式な契約を結んだ二人は、一度その霊基をカルデアのデータベースへと記録してから、この部屋で正式な召喚するという手続きを経て、カルデアでもその霊基を確立することができる。
また、同じく現地で関わりのあったゴルゴン姉妹は、当然というべきかこの場にはいない。彼女たちとも濃密な関係を結ぶことはできたが、メデューサがいないと契約しないという拘りもあって、正式な契約を結んでいなかった。今後、彼女たちがカルデアの召喚に応じるかどうかは、これからの活動の中で、彼女たちの最愛の末妹との縁をどれだけ深く結ぶことができるか次第であった。
そしてガリアの港町で再会を誓い合い、船でローマへと戻っていった皇帝ネロ・クラウディウスの姿も、もちろんここにはない。彼女が英霊となっているかどうかは、今のあなた達にも予想のつかないことであった。
「無事に戻れたようだな。こちらの霊基定着も問題なく完了したぞ」
「ええ。皆さんとともにまたカルデアに帰還できて、何よりです」
室内に集まっている顔ぶれを見渡したあなたは、皆と無事に帰還できたことに心から安堵し、互いの労っていく。
一同との無事な再会と労いを終えたあなたは、立香とともに、ガリアの地で正式に契約を交わした英霊たちをカルデアへと正式に迎え入れるための召喚を開始することとした。
「よしっ……! それじゃあ私から行かせてもらおっかな!」
立香が力強く頷き、召喚室の中央に刻まれた巨大な召喚サークルの前へと一歩踏み出した。
彼女がサークルに向かって右手を掲げると、ガラス窓越しに計器類を操作する役目のカルデアスタッフらがコンソールを操作し、炉心から供給される莫大な魔力が駆動して、召喚陣のラインが青白く輝き始める。立香は凛とした表情で息を整えると、紡ぐべき召喚の誓約を声高らかに唱え始めた。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ―――」
彼女の声に応じるように、召喚サークルから湧き立つ魔力の奔流が渦を巻き、眩い光の柱となって天井へと突き抜けた。
更に続けられる詠唱の後、空間を揺るがすほどの激しい高圧の風と光の粒子が室内を乱舞し、やがてその光芒がゆっくりと収束していく。光の残滓が霧散したその中央には、獣の耳と尾を携え、緑の装束に身を包んだ狩人―――アタランテが静かに佇んでいた。
アタランテはゆっくりと目を開くと、目の前に立つ立香を見つめ、微かにその唇を緩めた。
「アーチャー、アタランテだ。……ふふ、無事に縁を繋げられたようだな、立香。ガリアでの契約通り、これよりはお前の弓となり、その歩む道を共に駆け抜けよう」
「アタランテさん! 無事に召喚できて本当によかった! 改めて、カルデアへようこそ!」
立香が嬉しそうに駆け寄り、アタランテの手を固く握りしめると、アタランテもその手を優しく握り返し、旧友との再会を祝うように温かな笑みを浮かべた。
そして彼女は、周囲に佇むマシュやスカサハ、ジャンヌたち一同へと視線を巡らせた。
「あの異変に満ちた特異点を越え、こうして正式にカルデアの一員となれたことを誇りに思う。……この先も挑むことになる多くの特異点では、まだ幼き子供たちの平穏を脅かす理不尽が満ちているだろう。世界を救うため、そして貴き人命を守るために惜しみなく矢を放とう。皆、改めてよろしく頼む」
彼女の凛とした覚悟の言葉に、マシュや立香たちは頼もしそうに深く頷く。
アタランテと立香がサークルから脇へと退くのと入れ替わるように、次はあなたが召喚サークルの前に立った。あなたが右手をかざし、魔力を注ぎ込むと、先ほど以上の圧倒的な出力で召喚陣が眩い光を放ち始めた。神秘的な光の粒子が幾重にも交差し、空間を濃密な魔力が満たしていく。やがて光の柱が最高潮に達し、ゆるやかに解け落ちていくと―――その中心から、豊満で艶やかな女体のシルエットが浮かび上がった。
そこに現れたのは、ガリアの勝利の女王、ブーディカであった。
「……あぁっ♡」
光が収まった瞬間、あなたの姿を視界に捉えたブーディカは、思わず漏れ出たような甘い声をあげた。
彼女の瞳は一瞬にしてトロトロに蕩け、ガリアの船上や港であなたという至高の雄に徹底的に犯し抜かれ、子宮の最奥まで大量の精子を注ぎ込まれた記憶が蘇ったかのように、卑しくも淫らな雌奴隷に相応しいる隷属と性愛の視線をあなたへと向ける。今すぐにでもあなたの足元に跪き、太ももに擦り寄ってその極太の肉棒をねだりたがるかのような、情熱的な欲情が彼女の全身から溢れ出しかける。
しかしブーディカはその視線の端で、召喚室の隅に控えている他の者達や、ガラス窓越しにカルデアのスタッフらがいるのに気づくと、ハッと息を呑んで、表情を一変させる。頬の赤みを気丈に抑え込み、いつもの包容力に満ちた、頼もしく優しい一人の戦士、一人の母親としての笑顔を取り戻すと、あなたと握手をして再会を祝う。
「ライダー、ブーディカよ! ふふ、無事に呼んでくれてありがとう、マスター! ガリアでは本当に色々と世話になったね。これからはカルデアのサーヴァントとして、皆の盾になり、みんなの美味しいご飯を作る仲間として、精一杯頑張らせてもらうから! ……あとで調理場の場所を教えてね。美味しいご飯の一品とか二品くらい、ぱぱっと作ってあげるから!」
表面上、どこまでも爽やかで気立ての良い女性として振る舞いながらも、ブーディカはあなただけにしか見えない角度で、自らの秘所がある下腹部をそっと服の上から愛おしそうに撫でさすってみせた。その瞳の奥には、後で誰もいない場所で種付け用肉便器として犯し抜いてほしいという、濃厚で淫らな秘密のメッセージが隠しようもなく揺らめいていた。
契約を果たした英霊たちの召喚が無事に完了すると、あなたは召喚室に集まった皆に向けて、マイルームがある居住区画へと移動しようと提案した。カルデアの設備や生活機能を説明し、仲間としての交友を深めるためという名目であった。しかし、その真の意図は全く別にある。特異点の最中であなたという至高の雄に屈服し、散々に犯し抜かれた雌奴隷たちを、今度はカルデアの秘匿空間へと連れ込み、心身ともに徹底的に犯し尽くして性的関係を確立する。それこそがあなたの真の目的である。
当然、その意図が伝わらないはずがなかった。あなたとすでに濃密な肉体関係を結び、子宮の最奥まで種付けされた者たちは、あなたの言葉の裏にある淫靡な欲望を即座に察知して、まるで溶岩のように熱く蕩けた情念の視線をあなたへと集中させた。言葉には出さずとも、今すぐにでもあなたに抱かれ、その太い肉棒で子宮を叩き潰されたいという暗黙の同意と激しい欲情を、その瞳で伝えてきたのだ。
そうしてあなたが満足げに笑みを浮かべ、召喚室を後にしようと足を踏み出す。
―――まさにその瞬間であった。
バチバチッ、と室内で嫌な放電音が弾け、天井に明々と灯っていた白光の照明が何の前触れもなく一斉に消失した。
同時に、壁面に並ぶ霊子計器やモニターの群れがブツリと暗転し、室内のあらゆる稼働音が途絶える。
「え……!?」
直後、緊急予備電源が作動し、室内の四隅に配置された非常灯が赤く妖しい光を放ち始めた。先ほどまでの無機質な清潔感はかき消され、赤と黒の陰影が影を深く落とす異質な空間へと一変する。
あなたが咄嗟に制御台のスタッフたちへ視線を投げかけると、彼らもまた突然の事態に大きく動揺し、混乱した声を交わし合っていた。
「な、何だ!? 霊子炉からの電力供給が遮断されたのか!?」
「待ってください! サブラインは生きています! ですが、コン電位が急激に跳ね上がって……召喚ラインのバックグラウンド処理が暴走しています! 制御を受け付けません!」
「まさか、二騎の英霊を連続で召喚した負荷で、カルデアの電力系が上限に達して落ちたのか……?」
疑問の籠もった視線をダヴィンチへ向けてみるものの、天才たる彼女ですら眉をひそめ、原因が掴めないといった様子で静かに首を横に振るだけであった。
その緊迫した空気の中、マシュが全員を代表するように声を張った。
「ともかく、一度この部屋を出ましょう。召喚室の専門機器の復旧はスタッフの方々に任せるしかありません。ここにいても私たちにできることはありませんから」
「そうだね。中でたむろしているとかえって作業の邪魔になっちゃうし、みんな、行こう」
立香もその提案に同意し、皆へ避難を促す。幸いにも非常用バッテリーが生きているおかげで、召喚室の自動扉は作動していた。あなたを含めて多くの者が部屋の外へ退出しようと足を向けかけた、その時。
ドクンッ——!
あなたの胸の奥で、まるで生身の魂を直接、巨大な手で力任せに握り締められたかのような強烈極まる衝撃が駆け抜けた。
ただならぬ気配に導かれ、強引に引き寄せられるかのように、あなたは召喚サークルへと振り返る。その尋常ではない雰囲気に釣られ、立香や英霊たちも一斉に振り返った。
非常灯の赤色光に照らされた召喚サークルの中心。何もない空中に、ドス黒い赤を帯んだ禍々しい光が点り始めた。それは通常の英霊召喚のような温かな光の粒子ではない。泥のように重く、血のように蠢く赤黒い魔力が、空間そのものを腐食させるようにおどろおどろしい渦を巻きながら広がっていく。ジュクジュクと空間が軋む音が響き、サークルの周囲の空気が重圧で激しく歪み始めた。
「な、何だこの数値は!? 霊子変換計測不能、限界突破! 存在規模が認識限界を超えています!」
「あり得ない! 召喚サークル内に巨大な霊子反応が直接発生! 外界からの侵入ではありません、内側から……何かが生まれてきています!」
スタッフたちの悲鳴にも似た報告が飛び交う。異常事態を察知したスカサハやアタランテ、ジャンヌたちが、咄嗟に己の宝具や武器を現界させ、あなたを守るように臨戦態勢を整えた。
赤黒い光は留まることを知らず爆発的に膨れ上がり、室内全体を禍々しい赤光で染め上げていく。世界の垣根、あるいは理の境界そのものを力任せに叩き割り、異次元から暴虐な存在が降臨してくるのを、あなたは皮膚感覚として強烈に感じ取っていた。そして同時に——言葉にできぬほど深く、決して切ることの叶わない不可逆的な因縁と絆が、その存在とあなたとの間に固く結ばれたことを確信したのだ。
その瞬間、パッと室内全体に明るい白光が戻った。電灯が再点灯し、計器類が勢いよく復旧の電子音を奏で始める。先ほどまでの不気味な暗闇が一瞬で吹き飛び、光が切り替わったその召喚サークルの真中央に、それは佇んでいた。
その身に纏っているのは純白の婚礼衣装―――だが、そのドレスはあまりにも大胆かつ不道徳に裁断されていた。頭部には透き通るようなヴェールを戴き、身に纏う生地は奇跡的なまでの絶世の美貌と、その下に隠された極上の女体を包み隠すどころか、むしろ凶暴なまでに強調していた。何よりも目を奪うのは、そのあまりにも過剰で豊満な肢体であった。華奢で引き締まったウエスト、すべらかな肩のラインに対し、胸元からは溢れんばかりの膨らみが押し出されている。服の布地を限界まで押し広げ、弾けて飛び出さんばかりのその爆乳は、まさに神の造形美と呼ぶにふさわしい圧倒的な圧迫感を放っていた。深く開いた胸元とドレスの隙間からは、滑らかな白桃のような肌と、キュッと締まった太もも、そして服の上からでもその形が克明に浮かび上がるような、肉体のラインが強調されている。淫蕩なな格好でありながら、全身から放たれる魔力の密度と存在感は破格の一言であった。存在そのものが周囲の空間を支配し、見る者を理不尽な快楽と平伏への欲求で屈服させるかのような、圧倒的な至高の美と魔力が渦巻いている。
絶世の美貌に浮き立つのは、熟しきった朱色の瞳と、艶やかに濡れた赤い唇。紛れもなく、その人物は英霊としての格を高みへと向上させ、て至高の花嫁として現界を果たした、ネロ・クラウディウスその人であった。
ネロはゆっくりと瞼を開くと、室内の誰でもない、ただ一人―――あなたへとその情熱的な視線を真っ直ぐに固定した。そして絶世の美の笑みをその唇に咲かせると、朗々と、そして誇らしげに声高らかに宣言したのだった。
「ふふ……待たせたな、余の愛しき夫よ♡♡♡ そなたとの約定を果たし、世界から余を奪わせるために……こうして至高の英霊、至高の嫁となって参上したぞ♡♡♡♡
余は偉大なるローマの第5代皇帝、ネロ・クラウディウス。人理の切っ先たるカルデアに故国を救われた恩義を返しに、英霊として馳せ参じた! これより先、余もまた人理救済のために、そならたと肩を並べて高らかに人間の美を謡おうぞ!
さあ、何を呆けておるのだ? 再開の祝杯を挙げ、そしてローマの中でも取り交わしたように、熱く激しい結婚式を、このカルデアでも執り行おうではないか……♡♡♡♡ 良いであろう、余だけのマスターよ♡♡♡♡」
その常軌を逸した宣言に、周囲のカルデアスタッフたちは驚愕のあまり完全に開いた口が塞がらず固まってしまった。そして特異点で彼女と顔を合わせ、その狂乱の艶事を共にしていた立香らは、早すぎる再会と相も変らぬ傍若無人ぶりに、頬を引きつらせる。
あなたは深く、静かに溜め息を漏らす。かつての約束を果たして現界したこと自体は褒めてやるべきだが、召喚された途端に好き勝手な宣言をして調子に乗っているこの雌奴隷を、一体どのように叩きのめし、徹底的に立場を教え込んで分からせてやろうか。あなたは脳内で、彼女に対して行う淫靡な調教の算段を巡らせた。
その冷徹で肉欲に満ちた視線を敏感に感じ取ると、ネロは恐怖どころか狂喜に瞳を輝かせた。彼女ははちきれんばかりの情愛と、あなたに踏みにじられ、犯し抜かれることを疑うことすらしない完全なる隷属の眼差しで、あなたをじっと熱く見つめ続けるのであった。
ローマの狂乱の宴が静かに幕を閉じ、歪んだ特異点が本来の歴史の形を取り戻してから、暫くの時が流れた。
ローマ本国から遠く離れたトスカーナ群島―――群青のティレニア海に浮かぶ風光明媚な島々のひとつに、緑豊かな深い森に抱かれるようにしてひっそりと佇む大きな館があった。
特異点が解消され、世界を覆っていた妖星の毒素も狂乱の熱気もすっかり消え去ったが、その地に残されたのは単なる平和だけではない。あの日、あの時、ひとりの雄―――あなたとの凄絶な性愛を経験した、性交劇団の臨時スタッフとして雇われた十人の女たち。彼女らの胎内に刻み込まれた種は、特異点の消絶をもってしても消え去ることはなかった。むしろ、彼女たちが抱く深甚なる情愛と母性の奇跡によって命の芽を育み、やがて館には元気な幼子たちの産声が絶え間なく響き渡るようになったのである。
あなたとの密で濃厚な愛を魂の奥底まで刻み込まれた彼女たちは、もはや人の世の並みの男たちでは到底満足できぬ身体となっていた。それゆえ彼女たちは、人の歴史という表舞台からそっと身を引き、この隠れ里にて仲睦まじく互いに協力し合いながら暮らす道を選んだ。余生をただ人の世の美しさと、自分たちが愛したただひとりの至高の雄への情愛を語り継ぐことに捧げるために。
―――そして今日、その陽光降り注ぐ穏やかな隠れ里に、ひとりの新たな仲間が加わろうとしていた。
庭園には、館で暮らす十人の女たちと、すくすくと育つ幼子たちの姿があった。子供たちの愛らしい歓声が響く中、森の木々が落とす濃い影を押し分けるようにして、ひとりの旅人がゆっくりと歩みを進めてくる。その身には地味な茶褐色の旅用ローブを纏い、深く被ったフードによってその顔立ちは人目から遮られていて、その腕には何かが大切そうに抱かれていた。
旅人が庭園の入り口へと足を踏み入れ、静かに足を止める。里の女たちを代表するように、一人の女がすっと前に進み出た。幼子を育む柔らかな母の装いを纏った女は、極めて慇懃な礼を捧げると、静かな声をかけた。
「遠路はるばる、よくぞこの静寂の地へ辿り着かれました、ローマの至高たる御方よ。長旅の疲れ、さぞや身に沁みたことでしょう。まずはその旅装を解き、我らが館にてゆっくりとお休みください」
その丁寧な労いの言葉に対し、旅人の女はゆっくりと首を横に振る。
「ふふ……よいのだ。余は既に、そのような大仰な礼を尽くされる立場ではない。かつての帝国の戴冠も、栄華の権勢も、すべては遠い過去の露と消えた」
その響く声は、どこまでも澄み渡り、華やぎに満ちていた。
「これからの余は、あらゆる世界のしがらみや立場に縛られることはない。ただ……己の胸に強く誓った、一つの真実の愛を成就するためにのみ、この余生を捧げるのだ。そなたたちが心から愛し、その種を体内に宿したあの一人の至高の雄……我が愛しき夫といつの日か再会するために、余もまたこの命のすべてを捧げるのだからな」
そう語り終えると、旅姿の女は深く被っていたフードを滑らかに脱ぎ払った。
陽の光の下に露わになったその姿―――ネロ・クラウディウスは、女たちがローマへと送り届けた時に見せたのと何一つ変わらない、陽光のごとき華やかで美しい笑みを浮かべていた。
「当代の皇帝、ネロ・クラウディウスは……権勢を巡る醜い闘争に敗れ、パオラの地にて自刃し、静かに息を引き取った。いまここにいるのは、ただ愛と美に生きる一人の巡礼者……ただのネロに過ぎぬ」
彼女は誇り高く胸を張り、眩しいほどの瞳を輝かせながら、庭園に集う女たちと幼子たちを見渡す。彼女の腕には、彼女と同じ髪色をした幼子が抱かれていた。
「余と想いを同じくする美しき女たちよ! 余は、いつの日か我が夫……ローマいちの至高の雄様へ捧げる、至高の愛と美を実現する黄金の舞台を築くために、この隠れ里へ馳せ参じた! そなたらの末席に加わり、あの御方への純愛を永遠に語り続け、その情熱を高らかに燃やし続ける栄誉に浸ることを……どうか許してほしい!」
その堂々たる愛の宣言を聞いた里の女たちは、互いに顔を見合わせると、心からの愛おしさと敬意を込めて深々と首を垂れた。
「「「ようこそ、ネロ様。共に愛と美を語り続けましょう」」」
十人の女たちの声が重なり合い、美しい和音となってトスカーナの空へと溶けていく。
ネロは、まるで世界中の光を集めたかのような、この上なく輝かしい笑みをその顔に咲かせる。その腕の中で、幼子は欠伸を噛み殺すように小さく喘いだ。
ローマの片隅に咲いた、歴史に名を残さぬ一つの情景であった。
無機質な重低音が、冷ややかな空気と共に仄暗い室内を微かに震わせていた。
壁面を埋め尽くす湾曲した透明なパネルには、解読不能な超高次の幾何学記号や、いずこかの言語に依るであろう幾何学的データ列が絶え間なく青白い光を放ちながら流れ続けている。極彩色に明滅する光学ファイバーのような配線が、有機的な曲線を描いて床や天井を這い、それら全てが部屋の中央に配置された巨大な円形コンソールへと集束していた。
SF映画に登場する先端的な宇宙船の操縦室を彷彿とさせるその空間は、人間離れした静寂と、冷酷なまでに洗練された高度な科学技術の匂いに満ち満ちている。
操縦室の中央コンソールの前に、一人の人物が佇んでいた。その者が身に纏っているのは、絶対零度での環境下や放射線などを遮断して惑星内での活動を実現する、極めて堅牢で高機能な全身用の環境保護スーツである。胸部には生体サインや危険検出を示す緑色のランプが明滅し、関節部は重厚なバイオメカニクス装甲で覆われ、背面には推進・生命維持ユニットがコンパクトに配置されている。厚いバイザーの奥に隠されたその容貌を、窺い知ることはできない。しかし、その重厚で武骨な保護スーツ越しであっても隠しきれないのは、圧倒的な肉体の存在感であった。スーツの装甲の曲線を押し押し広げるかのような豊満な胸元の膨らみ、固い装甲に包まれつつも豊かな丸みを主張する腰回りや太もものライン。それらは、このスーツの中にいるのが間違いなく豊かな肉付きを持った、人型の女性であることを無言で物語っていた。
「……ん」
バイザーの奥から、低く、静かな声が漏れ出た。言葉数は少なく、どこか淡々とした、感情の起伏を感じさせない独特の抑揚。
その時、彼女の目の前に浮かんでいた広大なホログラムモニターが、突如として赤く点滅し始めた。アラート音は鳴らない。ただ、情報端末の処理能力を圧迫するほどの爆発的なデータ流入を示すシグナルが、パネル全体を埋め尽くしていく。
「……通信受信。……異常な情報量。起源未特定」
彼女は保護スーツの指先を繊細に動かし、空間に浮かぶ光のインターフェースを操作した。
それは、彼女が搭乗するこの船に対し、何の前触れもなく突如として叩きつけられた一括送信のデータ群であった。送信元の座標を解析しようと試みるが、時空の歪みと高次元のノイズが干渉し、正確な発生源の特定を拒んでいる。
何より不可解なのは、そのデータのタイムスタンプであった。
「……タイムラグ、約二千標準年前。……長期間の情報途絶。なぜ今になり一括して届く……?」
船に届いた情報に紐づけられた情報単子から、詳細が明らかとなっていく。
発信元は二千年前―――遥か遠くの深宇宙へと派遣され、そのまま消息を絶っていた、長距離星系探索獣からの探索報告であった。
数万年という莫大な歳月を費やし、広大な銀河系各地へ探査ユニットを放ち、自分たちが生存可能な惑星や植民星を確保して自らの文明を発展させること―――それこそが彼ら文明の至高の目的であり、絶対の至上命令である。そして、その探索のために特殊な飼育と遺伝子改造を施され、宇宙空間を自力で航行できるよう調整された生体兵器こそが、彼らの言う星系探索獣であった。
本来であれば、その獣は調査対象となる星系の近くへ四次元座標を固定した後、現地生命体の精神を遠隔で支配、集団催眠にかけ、惑星の内部環境を変化させるテラフォーミングを推し進めるべく、支配した生命体を手足として働かせる機能を有している。だが二千年前、とある遠くの星系に到達したその個体は、何らかの理由で通信が完全に途絶し、消失したものとみなされていたのだ。
「……解析を開始。……データ解凍。データを検分する」
彼女はバイザーの光を微かに明滅させ、情報処理端末が自動的に要約・統合した報告の詳細を、パネル上で順次読み進め始めた。
彼女は知る由もなかった。なぜ、二千年間も途絶していた情報が、このタイミングで一気に流出してきたのかを。地球という惑星において、スカサハの手の宝具によって、ハレー彗星に寄生していた探索獣がら討滅されたこと。そして、それによって歪められていた特異点そのものが解消され、時空の狭間に固く拘束されていた二千年分の観測情報が一気に解き放たれ、宇宙の彼方にいる母船へと届いたのだという真実を。
「……惑星識別記号……『チキュウ』。……現地生命体、ヒト型炭素生物。……精神支配の試行、完了。……環境改変の進行度は軽微」
女性は無感情な声で、自動生成されたテキストを淡々と読み上げていく。
「……だが報告の最終シグナルで、異常な消失を確認。……極小かつ高密度の高エネルギー体による構造破壊の痕跡。……探索獣が破壊された?」
無骨なバイザーの奥で、彼女の瞳がわずかに細められた。星系を喰らい、環境を塗り替えるはずの高度な探索用生体兵器が、現地生命体によって完全に破壊されたという事実。
彼女はパネル上のデータをさらに深くスクロールさせ、最後の瞬間に記録された未知のエネルギー反応と、それを引き起こした存在に関する解析記録へと、その静かな興味を向け始めていた。
「……ふむ」
女性は無骨な指先で顎を支え、パネル上に展開された多次元的な解析図表をじっと見つめた。
二千年間もの沈黙を破り、突如として届いた探索報告。星系探索獣のロスト、現地生命体による反撃、そして時空の歪みに隠された高エネルギーの解放。ただの辺境星系探査として片付けるには、あまりにも解読不能な謎と異質な要因が絡み合い過ぎている。
思考を巡らせた彼女は、その重厚な保護スーツの右腕にある通信モジュールへと手を伸ばした。
「……単独での判断は非効率。……上層部へ回線を開く」
彼女はコンソールを素早く操作し、次元を跨ぐ超光速通信ラインを確立させた。インターフェース上に青い幾何学的紋様が躍り、やがて通信相手の個別識別番号がホログラムとして浮かび上がる。
数秒の量子同期の後、重厚で深みのある老人の声が、ノイズ一つないクリアな音質でコクピット内に響き渡った。
『……ふむ。貴殿か。此方への超光速回線を繋ぐとは……外宇宙の探索先にて、何事か生じたか』
その声には一切の動揺がなく、静水のごとき平静さと、万物を切り捨てる絶対的な意気が込められていた。
声を受けた人物はバイザーを微かに傾け、淡々とした抑揚のまま要件を告げた。
「二千年前の探索獣の探査ログを、突然一括受信した」
『ほう、一括と。行方知れずの獣というのなら以前、各星系の調査資料を整理した時の記憶がある。5万光年より遠系の星系を派遣した探査獣のほとんどが未帰還で、いずれも消息を絶つ前に最終探査報告を送信しているが、一括送信ということはこれまでになかった。何やら理由があると見える。……して、その内容は?』
「……対象星系名称、チキュウ。……現地のテラフォーミングは最初期段階で中断。……現地生命体により探索獣は完全破壊された。……だが、破壊のプロセスが異常だ」
手元のパネルをスワイプし、通信相手へとデータを超光速転送させる。相手方が送られてきたデータ列を精査するように視線を落とす気配が伝わってくる。
『なるほど……。単なる現地原生生物の暴走にあらず。時空の位相を穿ち、概念そのものを塗り替えるような強力な術理……いや、至高の個による力技か。見事なものよ。探査獣の核に風穴が空いている。これほど精密にして強力な一撃、いかにして放ったものか』
「……この星系には、我々の植民計画を妨害する、未知の障害が存在する。……この最終報告は探査獣にとっての遺言も同じ。調査の継続を進言する」
『……うむ。植民星の確保は我らの悲願。その足掛かりを潰し、成果を無に帰した存在……放置しておくわけにはゆくまい。
宜しい。そのチキュウなる星系、並びに探索獣を屠った何者かの動向……引き続き、注視せよ。ともすれば、いずれ時が来れば、この老身の刃を交えることにもなろう』
「……了解。……任務継続。……通信を終了する」
回線を切断すると、室内には再び静寂が戻ってきた。
彼女は湾曲したパネルに映る地球の青いホログラムを見つめながら、バイザーの奥で小さく呟く。
「……星の声が……私を、満たす。……チキュウは、私が破壊すべき文明か、否か。この目を以て見極めよう」
過酷な宇宙空間で育まれた無感情な瞳に、微かな熱が灯る。遙か彼方の蒼き星系で、本来なら決して手の及ばない獣を討滅した未知の強者。
その存在に向けられた興味は、静かに、しかし確実に深まり始めていた。
賢者メモ
途中で駆け足気味となりましたが、エタらないようにしつつ無事に第二特異点編を完成させました。ここまで読了していただきまして誠にありがとうございます。
同時期にアンケートを実施しましたが、多くの御回答をお寄せいただきました。そちらに関しましても重ねてご協力に感謝いたします。
本話投稿現在、第三特異点編のプロットをある程度仕上げて、本文を執筆している段階です。ある程度のストックが溜まり次第、改めて投稿を再開する予定です。それまでは暫しの間、お暇を頂戴いたします。
それでは、またいつか。
カルデア側と契約していない、人理によって召喚された女性の英霊が、特異点内で不特定多数の人間(現地人など)との間で性的関係を結ぶのは、アリか。
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有り(輪姦、和姦問わず)
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有り(和姦のみ)
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無し(主人公側の性行為だけ書いてほしい)
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なんでもいいかヌかせて!