午後八時。オフィスビルの二十階にある人事部のフロアは、すでに大半の電気が消え、
薄いメイクに、涼しげな一重瞼。お世辞にも華やかとは言えない彼女は、社内でも「機械」などと陰口を叩かれるほど、常に冷静沈着だった。
だが、そのストイックな印象とは裏腹に彼女の身体はあまりに扇情的だった。
きっちりと第一ボタンまで留められた白シャツの胸元は、豊かな膨らみに押し上げられて張り詰め、黒いパンプスに納められたところまでは弧を描いて細い腰のラインをはっきりと主張している。地味な服装が、かえって彼女の肉体的な成熟を際立たせていた。
「各務さん。頼まれていた、来期の採用計画の修正案です。」
声をかけてきたのは、企画開発部の若きエース。周囲からも次期課長候補と目される、有能な男だった。手渡される書類を受け取る際、男の指先が、わざとらしく各務の滑らかな手の甲をなぞる。
普通なら眉を顰めるようなセクハラ紛いの行為。しかし、各務は表情一つ変えない。ただ、誰もいないフロアを見渡すと、静かに立ち上がって、内側から課の入り口の鍵を閉めた。
「手際がいいですね。さすが、有能な方は仕事が早い」
抑揚の無い、しかしどこか鼓膜を甘く震わせる声。
各務はデスクに戻ると、椅子に深く腰掛け、すっと足を組み替えた。パンプスに包まれた張りの良い太腿が強調される。
「噂、聞いてる? 君が、仕事の出来る男を『お世話』して、さらに引き上げるって……」
男の喉が、緊張と期待で大きく鳴った。
各務はやはり無表情のまま。はたから見れば何を考えているか分からないが、かえって妙な色気を醸していた。
「有能な社員のメンタルケアも、人事の大切な仕事ですから。……確かめてみますか?」
そう言って彼女は、ブラウスのボタンに指をかけた。
男の喉が再び、今度はひきつるように鳴った。
各務は感情の見えない瞳で男を見据えたまま、ブラウスのボタンを上から順に丁寧に外していく。
きつく張り詰めていた生地が左右に割れると、そこから現れたのは、肌の白さを恐ろしいほどに引き立てる、漆黒のレースだった。
お世辞にも色気があるとは言えない薄メイクの顔。それに対して、スーツの下に隠されていた肢体は、あまりにも豊潤で、生々しい肉の気配に満ちていた。
黒いブラジャーのカップは、あふれんばかりの質量を支えきれずに歪んでいる。中央の深い谷間からは、熟れた果実のような甘い匂いが立ち上るようだった。
「……っ、各務、さん……」
男はすでに、有能なビジネスパーソンとしての体裁を保てなくなっていた。デスクの端を掴む指が、小刻みに震えている。それほどに目の前の光景に釘付けだった。
各務は促すように、パンプスに包まれた膝を男の側へと滑らせた。そして、躊躇なくブラジャーのホックをパツっと外す。
遮るもののなくなった双丘が、重力に従って、信じられないほどのボリュームでこぼれ落ちた。
たぽんと、擬音が聞こえそうな揺れる果実。それは男がこれまでの人生で見たこともない、圧倒的な大きさであった。
「驚きすぎです。早くしないと、見回りが来ますよ」
相変わらず声音は淡々としている。しかし、その手つきは極めて煽情的だった。
各務は男のスラックスのチャックを引き下げると、猛り狂う質量を容赦なく引きずり出す。そして、自身の豊かな乳房を両手で寄せ集め、その巨大な肉の質量で、男の熱源を挟み込んだ。
「あ……、く、そ……!」
熱い皮膚と皮膚が、各務の体温と共に密着する。
押し付けられた肉塊はどこまでも柔らかく、それでいて男のペニスを圧迫するように、ずっしりとした重みを持って絡みついてくる。上下に擦り合わされるたび、溢れ出たカウパーが潤滑油となり、ニチュ、ズチュと淫らな音が静まり返ったオフィスに響いた。
昼間の静かな彼女からは想像もつかない、肉体の暴力的な心地よさ。
その強烈なギャップと、想像を越えた大質量に脳を直接揺さぶられ、男の理性の堤防は、音を立てて崩壊していった。
男の腰が、獣じみた衝動で激しく跳ねる。
各務の圧倒的な乳房の肉圧に締め付けられ、擦り上げられる快感は、すでに限界を超えていた。
「あ、出、出る……っ!」
「どうぞ。そこに、出して構いませんから」
各務は眉一つ動かさず、ただ男の熱を受け止めるように、さらに胸をきつく寄せ合わせた。
直後、男は悲鳴のような吐息を漏らしながら、彼女の豊かな双丘の間へと熱い塊を激しく解き放った。ドクドクと勢いよく噴き出した白濁が、肌の白さと黒いレースのコントラストをさらに淫らに汚していく。
絶頂の余韻に突き動かされ、男の脳内は完全に狂わされていた。
この冷徹な女を、もっと貪りたい。その一心で、男は欲望に濁った目を向け、各務の薄い唇へと顔を近づけた。キスをして、彼女のすべてを支配したくなったのだ。
しかし――。
「……それは、ダメです」
各務はすっと顔を背け、男の唇を冷淡に拒んだ。その拒絶の速さに、男は冷水を浴びせられたように硬直する。ある種の一線を越えたとしても、彼女が定めたプライベートな領域だけは、決して許さないという強固な意志がそこにあった。
男が呆然とする中、各務はデスクに背中を預けたまま、パンプスを器用に脱いでみせた。
「キスはしません。でも……『こっち』なら、幾らでも良いですよ」
そう言って、彼女は黒いパンティーの布をずらし、左右に大きく膝を開いてみせた。
男は思わず、ごくりと大きな唾を飲み込んだ。
そこに広がっていたのは、すでに自身の愛液でびしょ濡れに光る、彼女の最も秘められた蜜裂だった。無表情な顔とは裏腹に、肉体はすでに次の快楽を求めて卑猥に波打っている。
拒絶と、それ以上の圧倒的な誘惑。
男は誘蛾灯に導かれる羽虫のように、その淫らな深淵へと吸い寄せられていった。
男は飢えた獣のように、各務の開かれた秘処へと突き進んだ。
ずらされたパンティーから覗く、熱く濡れそぼった蜜裂。そこへ自身を深く沈めると、まるで肉の蛇に締め付けられるような、強烈な吸い付きが男を襲った。
腰を打ち付けるたび、グチュグチュと激しい水音が静まり返ったフロアに響き渡る。各務は背後のデスクを後ろ手でつき、全身で男の重みを受け止めていた。無表情のまま、ただその肉体の内側の肉壁だけを、意思を持つ生き物のように蠢かせて男を絞り上げていく。
「あ、あ、凄……っ、各務さん……!」
オフィスという背徳感、そして彼女の底知れない肉体の包容力に、男は抗う術を完全に失っていた。背中を駆け抜ける猛烈な熱波に突き動かされ、男は獣のような声を上げながら、彼女の最奥へと本日二度目の全てを激しく注ぎ込んだ。
ドクドクと、己のすべてが吸い取られていくような、強烈な絶頂。男は各務の身体に覆い被さるようにして、しばらく荒い息を繰り返した。
やがて、男がゆっくりと身体を引き離すと、各務はイスに腰掛けたまま、無造作に両脚を投げ出した。
彼女の視線は、自身の股間へと向けられている。
そこからは、男が今しがた注ぎ込んだばかりの白濁が、ドロリと太腿を伝って床へと滴り落ちようとしていた。
各務は、それをただじっと見つめていた。
声も上げず、息を乱すこともなく、ただ事務書類の不備でも見つけるかのような、全く抑揚のない冷徹な無表情のままで。
「……っ」
そのあまりにも冷ややかな視線を目にした瞬間、男の脳内に一気に冷水が浴びせられた。
自分が今、ここで何をしたのか。会社のデスクで、人事の人間と、こんな破廉恥な行為に及んでしまったという現実。そして、どれだけ激しく貪っても、彼女の心には一歩も近づけていないという、底知れない恐怖。
我に返った男の顔から、みるみる血の気が引いていく。
「あ、す、すみません……失礼します!」
男は震える手でスラックスとシャツを乱雑に整えると、這うようにしてカバンを掴んだ。各務の返事を待つ余裕すらなく、まるで怪異から逃げ出すかのように、脱兎の如くフロアを飛び出していった。
残されたオフィス。
各務は立ち上がると、乱れた衣服を何事もなかったかのように整え、デスクに散らばった書類を整える。
そして、足元に飛散した己の愛液と、男の白濁液をハンカチで静かに拭き取ると、小さく息を吐いてパソコンの画面に向き直るのだった。