カーテンの隙間から漏れる朝日が床を照らす指揮官の私室にて
「…てください…起きて……さい…起きてください指揮官様」
シェフィールドの声で起こされた指揮官は朝日に目を細めた指揮官は何時もの冷たい目でこちらを見るシェフィールドと目が合う
「やっとお目覚めになりましたか」
「…しぇふぃーるど?」
現実ならばまだ華々しい学生生活の真っただ中といった年齢の指揮官は眠気を引きづっている体を何とか起こすことに成功する
「はい。シェフィールドでございます。朝はいつもヴァンガード様が起こされていますし、指揮官様もそれをお望みなのは承知でございます。ですが本日はお越しに向かってもお目覚めにならず、指揮官のお目覚めになる許容時間に近づいてしまいましたのでやむを得ずシェフィールドが声をかけさせていただきました。ご期待に沿えず申し訳ありません」
「大丈夫…ヴァンガードはまだ寝てるの?」
ヴァンガードが起きないのは珍しい、いつもなら朝から元気な彼女が眠れないほどの何かがあったのだろうか
「…僭越ながら申し上げますが」
シェフィールドが話を切り出すと指揮官は不思議そうにその瞳を見つめる
「…はぁ、指揮官様の言っていた通りでしたヴァンガード様の寝顔は非常にかわいらしかったです」
「でしょ、かわいいんだよねぇ、あれが、ヴァンガードは僕が起こすから、任せて」
「助かります、ではシェフィールドは朝食の準備を進めていますのでイチャイチャしてないで早くお越しくださいませ」
そう言って去ったシェフィールドは廊下で
「指揮官様があれなら当然ヴァンガード様もそう言うことで指揮官様の純粋な瞳はドキッとさせられるものですね」
と独り言をつぶやくのだった
指揮官がヴァンガードの私室の前へ向かうと扉の前には珍しい艦船が、ビスマルクが居た
「あぁ、おはよう指揮官、よかった、この時間にはヴァンガードが起きていると聞いて用があってきたのだけれど、起きていないのか返事がなくて、勝手に入っていくのも悪いしどうしようか悩んでいたところなのよ」
「おはようビスマルク、起こすから一緒に入っていいよ」
そうしてヴァンガードの部屋の扉をノックし返事がないのを確認して部屋に入るシェフィールドの言った通り彼女はすうすうと小さな寝息を立てている気になったようで顔を除いたビスマルクが「かわいらしい寝顔だな」と珍しく漏らすほどのまるで幼子のようなかわいい顔の彼女
「時間だし、そろそろ起こしてあげないとな…ヴァンガード?ヴァンガードーおきてー」
彼女の頬をぷにぷに突つく
「んん…」
ヴァンガードは小さく目を開けると指揮官の腕をつかみ軽く引き寄せる
「わっ」
そのままベッドに引きづりこまれた指揮官はヴァンガードに抱かれてしまう
「!?ヴァ、ヴァンガードっ!」
「んー、もうちょっとだけぇ、しきかんもねましょ?」
「い、今はそういうわけにもいかなくてっ」
艦船の力を前に無力な指揮官は手ぶりでビスマルクに助けを求める
「あの、悪いのだけれど私もいるのよね、ヴァンガード」
さっきまでずっとベッドに顔をうずめていたヴァンガードが勢いよく顔を上げる、目線の先にはビスマルク。指揮官がヴァンガードの顔を見上げると彼女の顔は既に真っ赤に染まっていた
「びびびっビスマルク!?」
「ええ、私よヴァンガード、鉄血のビスマルクよ」
「な、なんでここに!?」
「貴方に用があってきたのに寝ていたようだから指揮官に起こしてもらったのよ」
「い、いるならいるって言いなさいよっ!」
「いう前にベッドに指揮官をもっていって甘え始めたのは貴方よ」
以前はヴァンガードが気まずいと言っていたビスマルクも指揮官のおかげですっかり打ち解けたはいいものの、今の状況はまぁ、よくはない
「と、とりあえず部屋の外で待っててちょうだいっ指揮官もっ!」
そう言って追い出されてしまった指揮官たちはとりあえず部屋の外で雑談をして待っている
「…指揮官、いつもあんなことをしているのかしら?」
「んー?うん、否定はしないよ」
「恋愛っていうのは面白いわね、あのヴァンガードが赤面してるところなんて、そうそう見れるものじゃないわ」
「結構してるよ?キスの時とか特痛っ」
何時もの服に着替えたヴァンガードは扉を開いて初めに目に入る自分の話をしている指揮官の頭にこぶしをコツンとあてる
「なに人の恥ずかしい話してるのよ指揮官、ビスマルク、待たせたわね折角だから一緒に朝食でもどう?」
「いい案ね、せっかくなら一緒させてもらうわ。行きましょう」
朝食を準備していたシェフィールドにビスマルクが申し訳なさそうに自分の分もお願いしたいというと一人分増えるくらいなら問題ありませんと流石ロイヤルメイドといった回答が返ってくる
「…ヴァンガードはあれできないよねぇ」
「そりゃあ、私メイド隊じゃないもの。分野が違うわよ」
以前の見せてくれたメイド衣装もたまに着るヴァンガードだがメイドとしての実力は伸びもせず落ちもせずといった具合だ
「それより指揮官、今日の予定、夕方以降が開いてたけど何かあるの?」
少し体をビクッとさせた指揮官は頭の中で必死に言い訳を考えるが、好きな人に嘘を付けないという結論に至る
「その、ヴァンガードと、行きたい場所があるんだ」
「私と?」
「うん」
「指揮官から誘われるなんて珍しいわね、楽しみにしておくわっ!」
それから三人での食事を済ませた、ビスマルクの用事は大事なことだからと指揮官は聞かせてもらえなかったが話し終わったヴァンガードはすっきりとした嬉しそうな表情をしていた
「これで、よし!今日の仕事は終わり!お疲れさまーヴァンガード」
10時に始めた仕事が終わったのは大体18時ごろだった
「んーっおつかれー指揮官、じゃあデート行きましょっ!私準備してくるわねっ」
「あ、待ってそのままでいいよその服で行きたいんだ」
「この服で?いいわよ、じゃあ行きましょっか」
指揮官とヴァンガードは互いの手に指を絡めて歩き始める
「指揮官、また身長伸びたわね?もうそろそろ追いつかれちゃうのかしら…」
出会ったころからはだいぶ身長が伸びた指揮官だがまだヴァンガードには届いていないヴァンガード曰く抱きしめやすくていいらしいが指揮官としてはヴァンガードを胸に抱きしめてあげたいらしい
「その、ここなんだけどさ」
そう言って指揮官がヴァンガードを連れてやってきたのは母港外れのきれいな夕日と海が一望できるお気に入りのスポットだった
「ここね、懐かしいわー指揮官と初めて会ったのもここだったわねぇ」
「お、覚えてるの?」
「そりゃあ、辛気臭い顔した指揮官だなーとは思ったけども」
指揮官の就任当時の齢は一桁だった、若すぎる彼はあまり好い印象を得られずどの母港とも離れた立地の今の母港で日々仕事に励んでいた
「あの時のヴァンガードにはずいぶん助けられたなぁ」
その時も週一程度の頻度でこの場所を訪れ自分を責め続けていた彼の前に来たのはたまたま単独の任務にあたっていたヴァンガード、レーダーの不具合で帰れなくなり物資の助けを求めてきたのだ
「こんなところに母港があるの、あの時初めて知ったのよね本当にここを見つけられてよかったわ、ここがなけりゃあそこで今頃海の底だもの」
その後ヴァンガードはクイーン・エリザベスと直々に礼を言いに来たとき、半年がたつにもかかわらず所属艦船がおらず作戦時には派遣されてくる艦船と任務にあたっていた指揮官の現状を知り暇なときは可能な限り訪れ手伝うことを約束した。ロイヤルの者たちは当時の戦い好きなヴァンガードがその約束をするということに衝撃を受け指揮官への支援を開始した
「でも結局あれいらいヴァンガードには助けてもらってばっかりだけどね」
ロイヤルという強力な後ろ盾を手にした指揮官のもとには徐々に所属希望が集まり始めたが一番初めに彼が選んだ艦船はあの時出会ったヴァンガードだった。そこからは川の流れのように予測できない二人のコンビは様々な海域で名を上げていく、だが、ある日所属艦船が百を超え、指揮官の年齢が15を超えた時指揮官を弟のように思っていたヴァンガードはそろそろ独り立ちさせなければと脱退を求めた
「いやいや、私の戦闘欲を適度に満たし続けてくれるし、何より私を愛してくれる指揮官へのお礼よむしろ私の方がお礼を言いたいくらいだもの」
ヴァンガードが指揮官へ脱退を求めると指揮官は抱いていた恋心を告白し離れないでほしいとヴァンガードに涙ながらに伝えた、その恋を受け入れ付き合い始めた二人はそこからさらに仲良くなり今に至るのだが
「じゃあお互い好きってことでね」
「好きなんてものじゃないわ、大好きよ」
「やめてよ、好きって言われるの慣れてないんだから」
「もーかわいい指揮官ね~ぎゅってしちゃうっ…あら?」
抱きしめに来たヴァンガードを前に少しの抵抗もせず受け入れる指揮官だが抱き返しはせず手を後ろで組んだまま離さない、今日の彼は少しだけ何時もと様子が違う
「ありがとう、ヴァンガード、僕と一緒にいてくれて」
「改まってどうしたのよ指揮官、らしくないじゃない?」
異変に気付き少し離れて指揮官と目を合わせるヴァンガード、オレンジの空と沈みかけの太陽、それを返す海がが二人を彩る
「何時も、助けてくれてありがとう」
「ええ、これからもずっと助けるわよ」
「何時も、見守ってくれてありがとう」
「…ずっと一緒にいるわ、指揮官」
「何時も、愛してくれてありがとう」
「そりゃあ、あれだけ愛されてるのだものそれより大きく愛したいものよ?」
「私の、人生を変えてくれてありがとう」
「…ええ」
「だからこそ、ヴァンガード、貴方に渡したいものがあるんだ」
いつの間にか今までを思い出し指揮官の目じりから流れ出してしまった雫をヴァンガードの親指が優しく拭う、それに少し笑った指揮官は後ろに組んでいた手を前に差し出し、その手に握っていた小さな箱を開ける
「いっぱい待たせてごめん、僕と、結婚してくれませんか?」
真っ赤な夕日に負けないくらいの赤い箱の中には美しい装飾が成された指輪が置かれていた
「し、きかん?」
ヴァンガードは指輪と笑う指揮官を交互に見て状況を呑み込めていない様子だった
「本当に…?私でいいの?」
「ヴァンガードが、いいんだよ」
指揮官のその言葉を聞いたヴァンガードは唇を震わせて、目からは大粒の雫を落としてながら飛び切りの笑顔を見せる
「ええ!喜んでっ!」