敗北した魔法少女がコロシアムで見世物になる話 作:一畳と地下
「……私を変えて。ミラーサファイア。」
コロシアムの入口に立ち、魔法少女へと変身する。
涙と潮でぐちゃぐちゃに汚れたドレスも今は元の綺麗な姿だ。
大丈夫。予習はしたし、油断も慢心もない。
昨日はおじさんの見た目に騙されたが、今日は手加減なんてしない。
最初から本気なら、私は負けたりなんかしない。
自分に言い聞かせながら、コロシアムへと入場する。
『鏡の魔法少女!ミラーサファイアの入場です!
今日はどんな姿を見せるのでしょうか!!』
アナウンスはきっと昨日のような姿を期待している。
「今日も可愛い姿見せてくれよー!」
「ミラーサファイアちゃんさいこー!!」
昨日は私を応援してるように感じた野次も今は腹立たしい。
手を振るなんて浮かれて馬鹿みたいだった。
睨みつけて返す。
『今日はどうやらご機嫌ななめのようです!』
腹立たしいアナウンスは無視して、精神を統一しよう。
昨日は相手の挑発に乗って失敗した。
今日はつまらない試合と言われようが、私の得意を押し付けて勝利する。
『さぁ対戦相手の入場です!』
『今日の相手は怪人ペットトレーナー!!』
スモークの向こうから出てきたのは、私よりも年下に見える男の子だった。
多分中学生くらい?身長は私よりもわずかに低い。
黒い髪が少し目にかかっていて大人しそうに見える。
右手でトランクケースを引っ張り、左手には鞭を持っている。
「今日はよろしくね。いい試合にしよう。」
ぼそっと少年が呟いたのが聞こえた。
「……昨日みたいにいくと思わないで。あなたが誰だろうと手加減なんかしないわ。」
そう、手加減はしない。
どんなに恐ろしい動物を繰り出そうが、どんなに可愛らしい動物を繰り出そうが容赦はしない。
その覚悟を決めて私はここに立っている。
もう2度とあんな惨めな思いはしたくない……
『それでは挨拶も済んだようなので、試合開始です!れでぃ〜ごー!!』
少年のもつトランクケースに狙いを定める。
きっとあの中からなにか出してくるに違いない。
「……くらえっ!!」
鏡の展開よりもワンテンポ早く光弾を撃つ。
トランクケースが吹き飛んだのをみて鏡を展開する。
トランクケースは微動だにしない。
でもあれだけ大きく吹き飛んだなら、中の『ペット』も無事では済まないはず。
「めんどくさいことをするね。あとで拾いにいかなきゃ。」
だが少年はあまり気にした素振りを見せない。
「肝心のペットは動かないみたいね。ちょっとでも動いたらあなたも撃つわ。」
「……なにか勘違いしてる?なにもしないから、鞄の方を見てみたら?」
少年に狙いを定めたまま、トランクケースを一瞥する。
壊れたケースから溢れていたものは…
たくさんの小さな卵のようなもの
えげつないひだひだのついた棒のようなもの。
首輪。手錠。
ルームサービスに載っていたような大人の玩具だ。
「……勘違いしてるみたいだけど。
僕はペットなんて連れてきてないよ。」
「君を従順なペットに躾する。だから怪人ペットトレーナーなんだ。」