敗北した魔法少女がコロシアムで見世物になる話 作:一畳と地下
「…頭が痛い」
鏡の魔法少女、咲守 蒼華(さきもり あおか)が目を覚ますとそこは石造りの牢獄であった。
思い出せる最後の記憶は怪人に敗北したこと。
(状況、どうなってるの……?)
辺りを見回すと、まずは自分の鞄を見つけた。
没収されているものがないか、中身を見てみる。
スマホ、ある。財布、ある。
あと……。
「ステッキがある…なんで…?」
なぜだか魔法少女にとっての武器であるステッキは没収されていない。ステッキを振ってみる。
ステッキからは一対の鏡が出てくる。これもいつもどおり。
鏡で自分の姿を見てみると、セーラー服を着た自分が映る。いつものセーラー服、いつもの三つ編み。
敗北したというのに傷一つない。
「お目覚めのようですね。そんなに自分の姿が気になりますか?」
困惑していると、聞いたことのある声が突如後ろから聞こえた。
「私には攻撃しないでくださいね。私が死んだら君も仲間もみんな殺されてしまいますから。」
ステッキを向けた瞬間にそいつは真顔で宣った。
私が攻撃するはすがない。
そんな余裕を感じる。
「…傷まで治してなんのつもり?Dr.ブランク。」
スーツの上から染みだらけのくたびれた白衣を羽織り、モノクルをかけた青年の名前はDr.ブランク。異界の首領にして研究者。私たちからしたら諸悪の根源だ。
「それはサービスです、鏡の魔法少女。なにせこれから貴方はこの国のアイドルになるのですから。」
意味が分からない。殺さずとも殴りつけてやろうか。
そんなことを思ったのもつかの間、私の心を読んだかのように、Dr.ブランクは答える。
「殴ってもいいですが、それをすることで苦しむのは貴方の大切な人たちですよ。」
「…」
「アイドルを傷つける予定はないので、大人しく聞いてください。貴方にはこれに出て欲しいのです。」
渡されたのは一枚の紙だった。
「命の危険はない、シンプルな剣闘大会です。」
書いてある内容はその通りだった。
時間無制限。対戦相手の殺傷は反則。
降参か場外で決着。
「ずいぶんと優しいルールね。…わかったわ。」
「おや、ずいぶんと飲み込みが早いのですね。」
どうせ断ることなどできないのだから、揉めるのは時間の無駄だ。
「ですが最後まで読むことをおすすめします。貴方にやる気をだしてもらうために、豪華な賞品も用意しました。」
「3連勝で貴方たちの世界を解放します。そして貴方が守る世界には金輪際近寄らない。」
「どうです?破格の条件だとは思いませんか?」