敗北した魔法少女がコロシアムで見世物になる話 作:一畳と地下
ゴングが鳴り、試合が始まった。
瞬間、地面からヌメヌメとした液体の纏わりついたロープが僕を襲った。
「うわ!なにこれ!」
びっくりはするけど、別にこれくらいどうってことはない。
「忍法!変わり身の術ー!」
ロープは僕を空かして、小さな木人を捕らえる。
「にんにん!!」
印を結んで片足立ち。忍者のポーズ。
攻撃を完全に避けたことを会場にアピール。
(でも変わり身はあと2回しか使えないからなー…)
切り札を1回使っちゃった。
うーん……ちょっと切り時間違えたかな。
(まあでもなんとかなるでしょ!頑張れ!僕!)
びっくりして変わり身を使っちゃったけど、まだ忍術は他にもある。
それに使用回数の上限は僕しか知らない情報だし。
負ける前に勝てば良いだけの話!
切り替えていこう!
「油断大敵でござるよ!!」
また怪人がロープを足元に投擲してきた。
多分あのヌメヌメが媚薬だよね。
触れるとやばそうだから、地面に垂れてるものにも触っちゃ駄目だな。
ひょいっとジャンプで躱す。
そんで……。
「風遁!風ぴゅーぴゅーの術!」
垂れた媚薬はリング外へと吹き飛ばす。
これで媚薬に侵される心配もなし。
こりゃ負ける方が難しいかも。
ちょっと残念。
僕の忍術は合計5つ。
火遁、水遁、風遁、土遁、それと身代わりの術。
どれも相手を一撃で倒すような力強さはない。
でも僕には応用力がある。
つまり、最強の魔法少女ということだ。
「ロープ振り回すだけって全然忍者じゃないじゃん!」
怪人に向かって声を出す。
「風吹いたり身代わりも忍者はしないでござるよ!」
怪人も負けじと反論する。
「するよ!忍者なんだから!」
どうやらあの怪人は忍者ってものを知らないらしい。
気が合わないなー、もうっ。
「今度はこっちから行くよ!」
怪人に向かってクナイを投擲する。
だが怪人もそれをひょいっと躱した。
お互いに身軽だから決着つくのかな、これ。
クナイを投げて避けられて、ロープを躱して風で飛ばす。
じみー。
「ああもう!めんどい!」
様子見しようと思ったけどやめ!
つまらないけど僕の方が強いから仕方ない!
「火遁!炎メラメラの術!」
印を結んで炎を出す。
やっぱり忍者は派手な炎だよね!
「そんな炎怖くないでござるよ!」
怪人が四方八方からロープを伸ばしてくる。
全部燃やして防御する。
リング内を逃げる怪人を炎とクナイで追いかける。
その間も怪人はロープを飛ばしてくるが、周りに展開する炎がそれを燃やし尽くす。
「降参するならゆるしてあげるよ!」
逃げる怪人に向けて降参を促す。
「僕は優しい……あれっ?」
いつの間にか足に力が入らない。
片膝をついてその場に座り込む。
身体中がもじもじする。
あれ?
ロープにも媚薬にも触れてないはずなのになんで?
「炎で拙者の媚薬が揮発したでござるよ」
炎の向こうから怪人の声が聴こえる。
「炎を消さないと、どんどん揮発するでござるよ。」
媚薬が身の回りに充満してる。
炎を消して、風で飛ばす。
「今さら遅いでござるけどね!」
満足に動けなくなった僕に怪人が近づく。
や、やばい。
まさか、これは……。
「く、来るな!」
ずっと言いたかったセリフ。
全力を出したけど、僕は今負けそうになってる。
逆転の術を考えながらも、心臓はドキドキと動く。
「媚薬で昂ってるの丸わかりでござるよ。」
怪人が僕の腕を取る。
手首同士にロープを素早く巻きつける。
「ぁあっ」
素肌から媚薬が浸透してきた。
これは本当にやばいかも……!
「っ変わり身の術!」
とっさにその場から離れる。
腕を縛っていたロープも小さな木人に移される。
その場から離れたものの、身体はさっきよりも昂っている。
ここから逆転する方法……とりあえず!
「……水遁、水ばしゃーの術。」
水を出して、頭から被った。
ちょっとでも頭を冷やしたい。
そうすれば良いアイデアも浮かぶかも。
ただ頭を冷やしたところで、身体が弛緩した状態は変わらない。
怪人が遠くからロープを伸ばしてくる。
(燃やしちゃ駄目だし、風で押し流すのも無理!)
どうにか避けようとするが、間に合わない。
足首にロープがひっかかる。
「ぁっ♡」
素肌から染み込む媚薬。
ロープを引っ張られ、怪人の手元へと引きずり込まれる。
怪人が僕の身体全部を縛ろうとする。
「火遁!!炎メラメラの術!!」
引き付けたところで、自分ごと燃やすように全力で炎を出す。
そしてその瞬間に身代わりの術。
最後っ屁にして最大火力。
負けたいけど、わざと負けたいわけじゃない。
これで倒れてなきゃ……
煙の中を期待するように見る。
ごそり、と動く影が見えた。
そこからはロープで身体を覆う怪人。
ダメージはあったようだが、倒れてはいない。
「まだ戦う意思があったとは。
良い忍者でござるな。」
ヌメヌメとしたロープを持って、這いつくばる僕の所に怪人が来る。
「だが忍者とは戦う者ではないでござる。
拙者、尋問が一番得意でござる。」
腕に縄を巻かれる。
もう変わり身は使えない。
「さあ、耐え忍んでみせるでござるよ。」
男がニヤリと笑う。
これからえっちな尋問が始まる……。
僕の心は、密やかに昂りつづけていく。