怪しいサイトで天使と悪魔のラブドールを購入したら実体化した 〜ハーレムの代償で命が削られている僕の元に、なぜか女子大生退魔師達までも押し掛けてくる〜 作:nene2012
深夜、アパートの一室でノートパソコンが放つ青白い光が僕の顔を照らしていた。
僕の部屋の棚や机、果てにはタンスや冷蔵庫の天板にもアクリルケースがある。その中には入っているのは美少女フィギュアである。
部屋中、フィギュアで溢れているが不潔にはしていない。掃除はきちんとしている筈だ……。
時計の針は深夜12時を回っている。大学に入り、このアパートに住みだして1年以上経っていた。
「……はぁ。やっぱり、どれもこれも高いな」
タメ息交じりに僕はそう呟く。
僕こと
趣味は美少女フィギュアを集める事、そして美少女フィギュアを愛でる事である。
今夜もパソコンの前でオークションサイトを眺めていた。
「お手頃で魅惑的なフィギュアはないかな?」
マウスを回していく間に見慣れた出品リストが目に入る。
限定品、再販品、塗装剥げあり難あり。どれも知っているメーカー、知っているシリーズだ。
そのとき、画面の端に見慣れないポップアップ広告が現れた。
いつもなら無視するはずの文字列だが書いてある文章に反応して僕の指先がピクリと止まる。
【あなただけのドールを手元に置いて日々の生活に潤いを与えてみませんか?】
【あなたの営みをサポート。等身大サイズドールが今ならモニター価格で無料配送】
「ドール……? ラブドールって事か? ホントなら数十万以上する代物じゃないのか!?」
ドール、等身大サイズのフィギュアと言えばラブドール。
安いものなら数万円から十万円台だが、高級品なら百万以上するものもある。
――怪しい。絶対怪しいサイトだろう。
しかし、怖いもの見たさでサイトにアクセスしたいという欲求が沸々と沸いてくる。
僕は、その欲求を抑えきれずにマウスを思わずクリックした。
クリックしてしまったのは、深夜特有のテンションと、オタクの業というやつだろう……。
開かれたのは、お世辞にも洗練されているとは言えない、海外の通販サイトのようなデザインのページだった。
サイバー感のあるフォントで、購入可能な『商品』が2体、並んでいる。
1体目は『純潔の天使・ラティア』——白を基調とした衣装を纏った美少女のドール。
金髪で顔の造形は息をのむほど精巧で、写真越しでも今にも瞬きしそうな目をしていた。
2体目は『夜の悪魔・モルガ』――漆黒の髪にボンテージ衣装の美少女ドール。
露出している魅惑的な肌と長い尻尾が足元に垂れている。笑みを浮かべた唇の端が、どこか挑発的に見えた。
どちらのドールも、等身大サイズで膝を抱えて座っていた。
ラティアは金色の髪に白い肌、青い瞳にどこか慈愛に満ちた顔つきである。
モルガは日焼けした小麦色の肌に黒髪、赤い瞳と妖艶で淫らさを彷彿とさせる顔立ちだった。
「……おいおい、顔の造形が半端ないぞ……人が作ったものか?」
画面を拡大した瞬間、僕は息を呑んだ。
エロさよりも先に、造形物としての異常なクオリティに頭を殴られたような衝撃を受けていた。
肌の質感、指先のキメ、髪の毛のパーツの自然さ等、現代のラブドール製造技術を遙かに超えている。
まるで、生きている人間をそのままシリコンで型取ったかのような、背筋が寒くなるほどのリアルさであった。
しかも、信じられないことに価格の欄には『¥0(モニター限定)』と書かれている。
通常なら数百万円は下らない高級等身大ラブドールがである――絶対、詐欺サイトだろ。
「どうせ詐欺サイトだ、後から高額な送料を請求されるってやつだな。……でも、これが本物だったら? 世界最高峰の等身大ラブドールが、僕の物になるっていうのか……?」
喉がゴクリと鳴る。物欲と理性が、深夜の脳内で激しく火花を散らしていた。
これ以上は危険だ。ブラウザを閉じようとした、その時……。
指が勝手に購入ページにアクセスしていた。
画面をページの最下部までスクロールしていく。そこには赤い文字で規約のようなものが書いてある。
【本製品は二交代制(12時間ローテーション)のサポートプログラムが組み込まれています。購入ボタンを押した瞬間から、あなたとドール達の『契約』が成立します。キャンセルは不可能です。尚、代金は掛かりませんが代わりとして代償が伴いますので御注意下さい】
「えっ? 代償ってなんだ? 代金は掛からないって言うけど購入したらキャンセルできないんだよな……」
理解できない文だが、よくある通販サイトの規約にも近いものがある。
よく考えてみると、こんな文が書かれていて購入しようと思う奴の気がしれない。
カチッ――僕の指は意に反して購入ボタンを押してしまっていた。
焦ってマウスを動かそうとするが、カーソルがピクリとも動かない。それどころか、画面中央にポップアップが表示された。
【購入を確定しますか?】
【 YES 】 / 【 YES 】
「あっ!? 選択肢がYESしかないじゃないか! ここは閉じた方がいいか?」
マウスを動かして、閉じるをクリックしようとする。
だが……カーソルは動かないフリーズしたのか? 仕方なく電源ボタンに手を触れようと指を動かす。
その瞬間、バチィッ!! と部屋の電球が激しく明滅し、モニターから強烈な白い光が溢れ出た。
すると……突然画面上にポップアップが表示された。
【契約が成立しました。これよりドールはあなたの所有物となります。発送は翌日となり置き配となりますので、あしからずご了承ください。御購入有難うございました】
「なんだよ……勝手に購入画面になったと思ったら、今度は勝手に完了? 詐欺サイトだったのか?」
マウスを動かしてみると、カーソルは普通に滑らかに動く。
さっきまでとは打って変わり、画面は元の状態に戻っていた。
「まぁいいや……明日も朝から講義があるし、さっさと寝よ」
僕はサイトを閉じパソコンの電源を落とすと、ベッドに入る。
7月上旬なのでエアコンのタイマーをつけた。
そして、深夜のテンションで変な買い物をしてしまったと少し後悔しながら眠りにつく。
しかし、この時点では購入画面で僕の名前・住所を記載していない事に気付かなかったのであった……。