怪しいサイトで天使と悪魔のラブドールを購入したら実体化した 〜ハーレムの代償で命が削られている僕の元に、なぜか女子大生退魔師達までも押し掛けてくる〜 作:nene2012
「ちょっと! 悠人君、大丈夫?」
「ハルトー! 昨日より顔色が悪いヨー」
突如、澄んだ女性の声が響く。振り返ると、つやつやの長い黒髪を揺らした女性とクセ毛の茶色の髪をした長身の外国人女性が立っていた。
それは結衣とイザベラであった。2人とも僕を心配するような表情でこちらを見ている。
「相席してもいい?」
「どうぞどうぞ、隣に座って頂戴な」
彼女達の希望に壮太は喜んで答える。結衣とイザベラが僕に寄ってきた。
2人は僕の顔をしげしげと覗き込んでいる。
見詰められ困惑する僕に助け舟を出すかのように壮太が2人に話し掛けた。
「なぁ、結衣ちゃん、イザベラちゃん、悠人が最近具合が悪そうだから心配してるんだが……」
「昨日、私も悠人君に帰る前忠告したんだけど……」
「ワタシも気になってたヨ……ハルト、具合悪そうだネ?」
「昨日の待ち伏せはそれだったのか……。それで、さっき聞いても大丈夫って言うだけで詳しく教えてくれないんだよ~」
「ちょっと、壮太! 彼女達には関係ないだろ!」
壮太に注意すると皆は僕をジッと見てくる。凄く居心地が悪い……。
僕の言葉を待っているようだが一体どんな風に言えばいいんだろう……?
そう思っている間に結衣が言葉を掛けてきた。
「信じて貰えないかもしれないけど……私達、普通の人には見えないものが見えるの」
「ハルトには良くないものに憑りつかれているヨ‥‥‥」
2人の話がオカルト的な話題に変わっていったので壮太は彼女達を白い目で見る。
「……何を言っているんだ……」
「このまま放っておけば、貴方死ぬわよ……」
「そうヨ、冗談じゃないカラ……」
壮太は呆れて言うが結衣とイザベラは真剣な表情になって僕を見詰め言ってくる。
凝視してくる2人の眼光は鋭かった。
この様子だと皆に隠し通すことは難しいと判断し、渋々本当の事を話すことを決心する。
僕はオドオドしながら総ざらい話すのであった。
「わ……わかったよ。実は……」
そして、僕は最近起きた事全てを3人に話し始めた。もちろんラティアとモルガの事についても全部である。
話の内容があまりにも非科学的すぎて誰も信じてもらえないと思っていた。
しかし、意外なことに2人とも僕の話を否定せず真剣に聞いてくれたのである。
壮太も半信半疑ながらも意外と真剣に聞いているのが気になるが……。
「なるほどね、そういう事があったんだ……」
「そのドール達が悪霊かもしれないネ‥‥‥」
「以前、言っていた怪しいサイトのラブドールが送られて来たんだな……」
結衣が納得したように頷く。イザベラも興味深そうに聞いていた。
一方、壮太は僕の話した内容に開いた口が塞がらないといった表情になっている。
当然だろうなと思っており、自分でも他人事だったら信じられないと思っただろう。
結衣は腕組をして考え込むと決めたのか口を開いて言うのであった。
「よし、午後の講義が終わったら私達をアパートに連れて行ってくれる?」
「ええっ!? 本当にアパートに来るの?」
「そうじゃないと祓えないでしょ……私達は退魔師なの」
「た……退魔師?」
聞きなれない言葉を聞き僕は茫然とする。結衣はウンウンと頷くと続ける。
「そうよ、私は退魔の巫女だからね……」
「ワタシはエクソシストだヨ」
イザベラは自分の顎に手を当てニンマリしている。どうやら退魔師を名乗っているが、にわかには信じ難い。
そう思いながら結衣達を交互に見て考え込んでいると壮太が疑問を投げかける。
「退魔師って映画や漫画の様に化け物を退治する職業か?」
壮太の言葉に結衣は目を大きく開けて、ふむと言って答える。
「知らないのも無理はないけど日本古来より続く、由緒正しい伝統の巫女の血筋を持っているの……」
「ええっ! 巫女?」
「イザベラはヨーロッパで代々悪霊ハンターとして活躍してきた名高いエクソシストの家系だから」
壮太は目をパチパチさせて驚く。前触れなく彼女達の経歴を知って信じられないようではあるが……。
「でっ……でも、彼女達は僕に悪意があるように思えないんだけど……」
「そのドール達に妖や妖異な存在が憑いているかもしれないじゃない!」
「この国では妖怪と呼ぶんでショ? 魔術や呪術によって出現させられた類もいるネ……」
2人は見つめ合い険しい顔付きで話し始めるのであった。そんな彼女達を見ているうちに段々怖くなっていく……。
そして、僕は思わず2人に叫んで注意する。
「そんな恐ろしい存在じゃないよ!」
「とにかく、そのドール達に悪いものが憑りついていると判断すれば祓わなければならないわ」
結衣は力強く断言したのであった。彼女の言葉を聞いて焦りを感じる僕は思わず大声を出した。
「ま……待ってくれ!」
僕は立ち上がり、必死に訴えるのだった。
ラティアとモルガは僕に対して優しいし好意を持ってくれていると思う。
少なくとも彼女達の意思で僕の生命力を吸い取っている訳じゃない筈だ。
それに、いきなり退治されるのは納得いかない。
「落ち着けって悠人、お前の為だ! 彼女達に任せるんだ」
壮太が僕の肩にポンと手を置き、宥めるように言ったのである。
けれど、ドール達が退治されるかもしれないという不安が拭えないままだったのであった……。
結局、退魔師を名乗る結衣とイザベラと友人の壮太を伴ってアパートまで帰って来る事となった。
そして、帰宅すると鍵を差しドアノブを捻るとガチャリと音がしてドアが開く。
中から出迎えたのは今の時間はラティアであった。突然の訪問者に彼女は面食らいながら驚愕していた。
今まで壮太どころか誰とも合わせた事がないのだから……。
「あ……あら? どちら様でしょうか……?」
「あっ、え~と……大学の友達……」
「そっ、そうなんですね……」
僕はそう答え彼等をアパートに招き入れる。彼女はまだ状況が呑み込めないようで戸惑っているみたいであった。
それから、部屋に移動し皆を座らせるとラティアも心配そうに僕の隣に正座する。
結衣達は僕が彼女とどういう関係なのか理解できずにジロジロと見据えている。
それだけでなく自分達より美しいという意味で嫉妬が混ざった複雑な表情も見せていた。
反対に壮太はラティアの美貌を見て羨望の眼差しで彼女を見て顔が緩んでいる。
人間では成し得ない美貌がラティアにはある。壮太のみならず女性陣達も羨ましむ容姿だったのである。
「悠人君、彼女が例のドールなの?」
「うん……そう」
「あの……ラティアさんと言いましたね? 私達は魔を祓う退魔師です 」
「た……退魔師ですか? 私を祓うのですか?」
「このままでは悠人君は命の危機にあるのです……自覚がないかもしれませんが、あなたが悠人君の命を吸い取っているんです」
結衣の言葉にラティアは衝撃を受ける。そして、自分の両手を見詰め首を傾げる。
彼女自身、僕の生命力を吸収しているつもりはないのだろう……。
「あなたは妖が生み出した生気を吸って人をたぶらかす悪しき存在です……だから祓わねばなりません!」
「ワタシもエクソシストとして人を欺く悪霊を放っておけないネ!」
2人は厳しい顔つきで問い詰めるように言う。すると、ラティアは俯き目に涙を溜め黙ったままだったのであった……。