怪しいサイトで天使と悪魔のラブドールを購入したら実体化した 〜ハーレムの代償で命が削られている僕の元に、なぜか女子大生退魔師達までも押し掛けてくる〜 作:nene2012
7月の夜は昼間と違い少し涼しく、ほのかな蒸し暑さが同居していて、街灯の明かりがぼんやりと辺りを照らしている。
そんな夜の公園でベンチに座って俯いて座っていた。辺りには誰もおらず僕1人だけがそこにいるだけである。
今、僕は猛烈な孤独感に襲われていた。アパートに残してきたモルガが気になってくる。
だが、今アパートに戻れば彼女が再び性的な誘惑を仕掛けて最終的にエッチをしてしまう恐れがあった。
「はぁ……」
1人っきりになると溜息しか出ない。今日のモルガの過激な要求に押し潰されそうになっていた。
モルガのエロティックな誘いから何とか逃げ出した。彼女には悪いが暫くセックスは出来ないと思ったのである……。
ラティアも話せばわかると思っていても一緒にいれば彼女の仕草や愛らしさに男としての本能を刺激される。
結果的に我を忘れて終いには彼女とセックスしてしまう展開になる気もした。
「はぁ~……彼女達とエッチしても命を削られなければいいのになぁ~……」
何処か虚無的になりながら、夜の人々の喧噪が消えた公園でポツンと1人、時間が過ぎるのをただ待っていた。
ふと人の気配がして、その方向を見れば1人の男性がこっちに向かってくる。だが、足音はしていない……。
男が近付くにつれて公園の外灯の明かりで姿が露になる。
彼は老人だろうか、見た感じはボサボサ髪の白髪であった。
しかも、7月だというのに黒いコートを着ていた。暑くないのだろうか……。
目を見ると鋭くギラギラした眼差しで僕を食い入るように見詰めて話し掛けてきた。
「ちょっと失礼……」
「?……はい」
老人は僕の前まで来るとベンチの隣にゆっくり座り顔を覗きこんできた。
いきなり見知らぬ人に話し掛けられ、しかも間近で覗き込まれるので僕は困惑していた。
「お主、良くない物に憑かれておるようじゃのぉ……」
「えっ……?」
彼の視線は鋭く妙な圧力を掛けてくる。僕は戸惑いながら何を言っているんだと思いながら返す。
「あの……どういう事ですか?」
「お主の最近の生活で色々変わった事がある筈じゃ……儂に正直に話すがよい」
老人はぎらついた眼で僕の目を覗き込む様に見たまま問いただしてきた。
ただの変な老人ではなく底知れない何かを秘めている気がする。そんな事もあり、自然と抵抗感なく彼に話し始めていた。
「え……ええ、実は……」
そして、怪しいサイトで間違って購入したドール達の事を細かく話し始めた。
すると彼は神妙な面持ちで黙って聞いているばかりであった。
「ほう……」
そして、ラティアとモルガの事を話し終えると男は「そうか」と呟き腕を組み片手を顎のあたりに乗せ考えるような仕草で沈黙していた。
その間も僕は老人の一挙手一投足を見ていた。何故か彼といると不思議な安心感があり不安はなくなっていた。
「ふむ……そのドール達のことじゃが……おそらく、人ならざる者が造り出した超自然的な存在であろう……。その者達がお主の精を求めてくるというのは生気を喰らう為であろうな……」
「そ……そうなんですか!?」
「しかし、お主の話を聞く限りじゃ、その者達自身には生気を貪っているという自覚はないようじゃ……恐らく造りだした者が設定したのかもしれんのぉ」
そう言うと彼はウンウンと何度も頷き、まるで他人事のように聞いていた。
僕はその態度に少しムカつくが、この老人を頼りにする以外手の打ちようがないのである。
「ちなみに、どうすればいいのでしょうか……?」
「儂が出来る事は、お主の生命力が削られないように無限の生命力を与えてやる事だ……」
「む……無限の生命力?」
老人は僕の目を見詰め深刻な表情をしている。
その目の異常なほどの昏さにヒヤリとするが不安ではなく抱きとめるかのような感覚も持ち合わせていた。
そして、しばらく熟考した後口を開く。
「通常の人間なら衰弱していって死んでしまう…………ただし、儂の力をもってすれば大丈夫であろう」
「ほ……本当ですか?」
「普通なら助けはせん……だが、お主が直面している事態に興味を持った……儂が何とかしてやろう」
そう言うと彼はニヤリと微笑んだ。その表情を見て僕は安堵の気持ちになったのである。
老人の言葉は自信満々であり不思議と信じられるような気がした。
そして、彼は立ち上がると右手を僕の額にかざし始める。
老人の手からは得体の知れない力が宿り始める。
「今から、お主に無限の生命力と精力を与える……準備はいいか?」
「精力も……?」
「話を聞く限りじゃドール達を満足させてあげたいのであろう?」
「はっ……はい、そうです」
僕が返事をすると老人は右手を額に当て目を瞑り力を入れる動作をする。
すると額から体全体にみなぎる力が染み渡っていくのが分かった。
「うっ……」
最初はあまりの違和感に呻き声が出たが次第にそれが心地よさに変わり、全身を駆け巡る力の流れを感じる事が出来た。
「もういいぞ……」
そして、老人は僕の額から手を離しベンチから立ち上がると僕を見下ろすように説明してくる。
「これが無限の生命力と精力じゃ……命を吸い取られても生命力が回復していく仕組みとなっておる。今後、どれだけ搾り取られても問題ないだろう」
「ありがとうございます! もう彼女達とエッチしても命を吸われる事は無くなったんですね?」
「正確に言えば……吸われても吸われた分だけ補充されるという仕組みじゃ。ついでに、お主と因縁のある異性に対して好意を持たれる能力も付与しておいたぞ」
僕の質問に対して、老人はニターッと笑い頷くのであった。
彼の言葉に僕は歓喜していた。彼女達との性行為により生命力が失われる心配が無くなったと聞いて安心するのである。
「ところで……あなたは一体何者なんですか? 何故、見知らぬ僕に手を貸してくれるのですか?」
「お主が面倒を見ておるドール達を造った者に、遠からず因縁があってのぉ……。正体は詳しくは言えぬが人でない……」
老人は僕の質問に薄気味悪くニタニタと笑い答えた。そんな彼を見て不気味な印象を受ける。
更に彼は謎めいた言葉を残して闇夜の中へ溶け込むように徐々に姿を消すのであった。
「まぁ、よい。若者よ……お主の健闘を祈ろうではないか……」
「あっ……」
そう言った途端、彼は音も無く暗闇の中へ溶け込んでいった。
僕はしばし呆然としていた。まるで狐に化かさされたのかのような感じだ……。
しかし、僕の疲労感や倦怠感は無くなって清々しい気分になっていた。
すぐに気持ちを切り替えると彼に感謝する。
「ありがとう、お爺さん! あなたのお陰でラティアとモルガと一緒にいられるし……彼女達をもっと幸せにできるんだ!」
老人に礼を言うと、踵を返し急いで公園を飛び出しアパートに駆け戻るのであった……。