怪しいサイトで天使と悪魔のラブドールを購入したら実体化した 〜ハーレムの代償で命が削られている僕の元に、なぜか女子大生退魔師達までも押し掛けてくる〜 作:nene2012
時を同じくして、その日の深夜の公園にて――
公園の中央で1人の老人が佇んでいた。白髪のボサボサ髪で黒いコートを着ている。
彼はふと何かの気配を感じたのか、その方向を見た。
そこには人の形をした闇が、いつの間にか存在していたのである。
その闇は夜の暗さより更に暗く底知れない闇であった。
老人の方も相手を知っているかのように何気なく話し掛ける。
「久しぶりじゃな……。何の用じゃ?」
「……惚けるな……我が造りしドール達の設定を勝手に変えおって……」
「なあに……面白そうだったので儂が設定を変えてやったのじゃ……感謝せい」
老人は嘲笑うような口調で闇の質問に答えた。その表情は明らかに人を小馬鹿にした態度である。
だが、その闇は何も言わずに老人をギロリと睨むだけである。闇そのものなので何処に目があるか見当がつかないが……。
人型の闇には威圧的で不安や恐怖を醸し出していた。これも人間ではなく超常的な存在であろう。
睨み付けられた老人は全く怯む様子はなく平然として更に続ける。
「どうせ、人間をいたぶり弱っていく様子を見て楽しんでおるのだろう……お主の悪い癖じゃ」
「ふっ……貴様に言われるまでもないわ……。貴様とて過去に人間どもを何万、何十万人も死に至らしめた事か……」
闇は静かに話すものの確かな迫力を醸し出していた。その言葉に老人の口元に皮肉な笑みが浮かぶ。
「ふむ……そういう事もあったの……」
老人はそう言い捨てると過去を振り返るような素振りをみせ黙ってしまう。
「おまけに衰弱して死に行くはずの我が贄に無限の生命力を与えおって……我の邪魔をして何が楽しい?」
「どうじゃ、ここは1つ勝負といかんか? 儂が無限の生命を与えし若者と設定を変えたドール達の運命を変えてみい」
「……」
闇は老人の提案に少し考える素振りをする。その間にも辺りには夜風が吹き抜け木々のざわめきが響いていた。
やがて、老人の提案に応じる決心をしたのか声を低くして話し出す。
「ならば……新たに造り出すドールと、それに支配される人間を用意しよう……」
「ほう……面白い。いいじゃろう……どちらが勝つか楽しみよ……」
「覚えておくがいい……我が勝てば贄とともども関係のある人間どもを死に至らしめてくれるわ。その時は邪魔するでないぞ……」
闇の言葉を聞くと老人は口角を吊り上げて笑う。そして、ゆっくりと首を縦に振り肯定するのであった。
「いいだろう……儂が賭けに勝てば諦めて貰おう。じゃが、我等にとって退屈しのぎには丁度いいではないか?」
両者とも人の命をこれっぽちも気にしてない傲慢な態度が垣間見える。
2人の正体は依然不明だが会話の内容から明らかに人間のものではなかった。
誰もこの会話を一切知ることは無い。何故なら結界が張っており何人も入れられないようにしていたのだから。
彼等の会話は人が目にしたり耳にする事ができない領域になっていた。
「貴様に勝って肩入れしている人間どもの生命を吸い取り死に至らしめようぞ……ふふふ」
「お主にとって人間は取るに足らない存在かもしれぬが、時に我等の想定を超える力がある……覚えておくのじゃ」
老人はニヤニヤし愉快そうに言う。それに併せて闇も嗤う。どうやら2人にとって賭けが成立したようだ。
互いに目的を共有し嘲笑い合うと闇は音もなく溶けたように消えていく。
その様子を見届けると老人は独り言を呟き夜空を見上げながら感慨に耽るのであった。
「ふむ……久方ぶりに楽しめそうじゃな……」
それから1人残された老人は公園の街灯に向かって歩いていく。
ギラギラした老人の目が突如、光ると忽然と彼も消えてしまうのであった……。
次の日――
壮太が外出から帰ってくるとアパートの玄関前に置き配でダンボール箱が1つ置かれていた。
荷物は重く持ち運ぶのに苦労する。だが、ゴリマッチョな彼は50kg以上の段ボールを腕に抱えて何とか部屋へ運んだ。
部屋に入ると早速、開梱しようとガムテープを剥がしていく。
段ボールを開け、慎重に中身を取り出す。すると、女性のドールが膝を抱えて座っていたのである。
それは長袖の黒シャツを着て黒のパンツスーツを穿いていた。
「うおっ!?……ホントにラブドールが来たんだ……」
彼は驚きつつも少し興奮して、そのドールを穴が開くほど見る。
身長は170cmぐらいだろうか。悠人のドール達より背が高い。
セクシーで妖艶な体つきをしており肌は陶器のように真っ白であり瑞々しく光沢があった。
髪の色は銀髪で目は閉じている状態で分からないが恐らく美しく端正な顔立ちだ。
造形の細部に至るまで完璧で胸も大きく全体的に男性の理想的な体型である。
その造形美に彼は呆気にとられるが次第に興奮してきて、そのドールを凝視し続けていた。
「これを好き勝手できるなんて最高じゃねぇか!」
壮太はゴクリと生唾を飲み込み興奮し始める。そして、彼女を触ろうとしたその時である。
突然、ドールの瞼が開き紫色の瞳でギロリと壮太の顔を見据える。
そして、口角を上げニヤリとし言葉を発した。
「うふふっ……初めまして、ご主人様……私の名前はネフィアで御座います」
「な、何だ!? 本当に動き出した!?」
彼は驚愕しながらドールの言葉を聞いていた。初めての体験だったら度肝を抜かれ腰を抜かしていただろう。
しかし、慌てた状態から直ぐに落ち着いていく。何故なら、ラティアとモルガを目にしていたからだ。
購入した時は半信半疑だったが悠人のドール達を見て半ば確信していたのである。
彼女達の様にラブドールに魂が宿って人間のように動き喋っている。
目の前のドールは喋ったことも然ることながら、不敵な笑みを浮かべ妖しい雰囲気を醸し出していた。
年の頃は20代前半ぐらいで壮太より少し年上みたいである。
ネフィアの口調と雰囲気に壮太は圧倒され後ずさりする。
彼女はゆっくりと立ち上がると、壮太をじっと見つめながら口元に妖艶な笑みを浮かべ言う。
「うふふっ……驚きましたか? けれど、あなたは私の『支配される者』になるべき人ですから……これから、ずっと私に尽くして貰いますよ」
彼女の声は甘く耳に心地よいが、その奥には何か底知れないものが潜んでいるような気がした。
「えっ?……尽くす……どういうことだ? 君は俺の所有物じゃないのか?」
壮太は混乱しつつも警戒心を強めた。やはりネットの書いていた文言は嘘だったのか?
ネフィアはゆっくりと壮太に近づいていく。その歩みは優雅で流れるようだったが、なぜか拒否権を与えないような威圧感があった。
「あら? 説明文をお読みになりませんでしたの? 契約内容に同意されましたから当然のことですよ」
「契約だって? そんなものは……」
言いかけて壮太は購入後のメールを思い出した。確かに妙な文章があった気がする。
【その淫靡な本能で、あなたの心身を限りなく支配してくることを忘れないでください】
気にしていなかったが、あの文章は本当だったのか……!?
そう思うと壮太の背筋に冷たいものが走るのであった……。