怪しいサイトで天使と悪魔のラブドールを購入したら実体化した 〜ハーレムの代償で命が削られている僕の元に、なぜか女子大生退魔師達までも押し掛けてくる〜 作:nene2012
夕刻から時間が過ぎていき夜8時が訪れる。僕とドール達は外の夜風を浴びながら出発した。
そして、暗くなった道路を歩き公園に向かう。道中、彼女達が不安そうに言ってくる。
「私達で勝てるでしょうか?」
「新たなドールって、どんな奴なんだろうね?」
「セクシーで妖艶なドールだよ。勝たないと僕も君も死ぬ運命だ……絶対に勝つよ!」
2人は僕の言葉に頷く。今は勝つことを考えて実行に移すだけだ。
やがて公園に到着するとネフィアと壮太がベンチに座っていた。
「……来たな……悠人」
「壮太……」
「さあ、今宵は命を懸けた戦いがこれから始まるのよ……」
壮太は睨む様に僕を凝視する。既に狂気と憎悪の感情に支配され、正気を失いかけていた。
そして、ネフィアの方はこれから始まる戦いが、さも面白いかのようにニヤニヤして愉しそうである。
「……戦う前に結界を張らないと人目に触れると思うんだけど……」
「退魔師達が来たら結界を張るわ……それまでは待って頂戴」
僕が疑問を投げかけるとネフィアは軽く答える。公園全体を見渡して見たが人っ子一人いない。
ただ、ネフィアの張る結界が如何ほどまで効果があるのか未知数である。僕達は、とりあえず彼女を警戒する。
その時、公園の入り口の所で結衣とイザベラが待ち合わせ通り到着した。
「悠人……来たよ」
「私達もハルトを助けるカラ!」
2人はこれから始まるであろう戦いに血気盛んに意気込んでいる。僕は2人と共に一緒に並び立つ。
彼女達の姿をよく見ると結衣はいかにも巫女という出で立ちで上半身は白い着物で下半身は赤い袴をはいていた。
しかし、動きやすさを考えてか足元はスニーカーである。確かに足袋と草履では思ったように動けないのか知れない。
手には払い串とお札を持っている。僕の部屋にドール達を祓う為に押し掛けて来た時と同じ道具を持ってきていた。
イザベラはエクソシストなので黒い司祭服を着て紫色のストールを首に掛けている。
彼女も手に十字架と聖書を持っている。彼女達の姿はいかにも退魔師という風貌だった。
「結界を張るんでしょ? 早くしてもらえる?」
「ユイ……少し、焦りすぎヨ……」
「そう焦らないで、今から張るから……」
結衣は彼女を急かすように迫りイザベラが宥めている。するとネフィアが頷くと両手を上げ呪文を詠唱する。
彼女は何語かも判明しない不可思議な呪文を唱えると、巨大な魔法陣が公園全体に展開していく。
幾何学模様が描かれている不思議な紋様の円形の図式……アニメや漫画で見られるような怪しい魔法陣。
魔法陣が展開されて暫くすると、青白い光が輝き辺りを照らしていく。
そして、次の瞬間、空間が歪み出し大きな異変が起きる。それは、まるで透明のガラスで包まれたような形状の壁が現れるのである。
この障壁によって公園全体を覆ってしまい外界とは完全に隔絶された異空間となっていた。
「うわっ……一体何が起きたんだ?」
「こ、これが結界!……人間技じゃない代物……」
「今まで……こんな結界を張ってくる悪霊は見た事ないネ……」
僕は突如起きた不可解な現象に驚愕していた。結衣とイザベラは驚きながら結界を見渡している。
そんな戸惑う僕達を見てネフィアはニタニタしながら嘲り笑っている。
「ふふふ……さあ、これで準備は整ったわ。もう誰にも邪魔されないわ……」
「イラつく笑い……ムカつくわね……」
「そうネ……でも、負けないヨ……」
結衣とイザベラは強気に言い返すと得物を構え闘志をみなぎらせて臨戦態勢に入る。
僕達の様子を見て彼女は冷笑を浮かべる。そして、ラティアとモルガに顔を向け憎悪の目で睨んだ。
「あなた達を倒せば……『創造主』から人をたぶらかし生気を吸い取る真のドールとして認められる……死になさい」
「どうやら……私達のことが嫌いみたいですね……」
「特に恨みはないけど……アンタを倒さないとねぇ……悠人の命が掛かってるから」
ネフィアはドール達に憎悪を剥き出しにして煽ってくる。2人のドールも冷静に受け止め言葉を返す。
すると彼女は舌打ちし、壮太の腕を取る。そして、顔を近づけると口にキスをした。
「うぐっ……」
「さあ……行って……悠人を倒しなさい……彼は友達でなく憎くて堪らない怨敵よ」
ネフィアは優しく耳元で囁く。その言葉に反応して頷くと彼は虚ろな目をしたまま前進してきた。
彼が体に力を入れると全身の筋肉が盛り上がり顔にも血管が浮き出ていた。
そして、手身近に公園の木製のベンチに向かって手刀を思い切り振り下ろす。
ベンチはベキッ!と音を立てて真っ二つになる。人間の肉体の限界を超えたパワーを発揮するようだ。
「壮太が……操られている……」
僕は変わり果てた壮太を茫然として見詰め呟く。結衣とイザベラが僕を守るように前に出る。
そして、壮太が狂気じみた大声を上げ走り出す。目標は、すぐ目の前にいる僕に対してである。
「悠人ぉ! ……何故お前が……俺より先に、いい思いをするんだぁ!!」
「ひっ!?」
「お前がぁぁ……羨ましかったぁあああ!!」
壮太は興奮しているのか口から泡を吹き鼻からは鼻血を垂らしていた。
それにも構わず怒号を放ち、猛然と向かって来る。彼は腕を振りかざし殴りかかってきた。
僕は咄嗟に身を屈めて回避すると、拳が頭上のすぐ上を掠める。凄まじい風圧が走り砂埃が舞い上がった。
そして、次の瞬間風圧で髪がばらけてしまう。もし命中していたら命はなかっただろう。
「あわわ……こんな力で殴られたら死んでしまう」
「凄い力ね……限界まで力を引き出されている……」
「ソウタはあのドールから完全に操られてイル……早く取り押さえないとハルトが危ないヨ」
僕は壮太の超人的な力の猛威に戦慄するが結衣とイザベラは冷静に彼の能力を分析していた。
今の壮太は明らかに常軌を逸脱している。最早、怪物の如き存在に成り果ててしまっている。
「どうしたらいい……?」
「悠人! 私で壮太を抑えるから!」
「とんでもない馬鹿力で暴れてるカラ意識を失わさせるしかないヨ!」
結衣が素手で構え、毅然と前に出る。イザベラも構え迎え撃つ。
無暗に壮太を傷つけず失神させる方向のようだ。
しかし、今の壮太の怪力を下手に防御すれば彼女達は骨折し内臓を損傷したりする恐れがある。
だが、お構いなしに壮太は獰猛な獣のような唸り声を上げ、結衣に標的を変えた。
「うおぉぉおおお!! 邪魔するなぁ! お前達も……ぶっ潰してやる!」
「壮太君、目を覚まして! アイツなんかに心を奪われては駄目よ!」
「どけぇ! このクソ女がぁああ!!」
壮太は怒りに任せて結衣に蹴りを放つ。彼女は華麗にステップ踏んで横に躱す。
結衣は彼の攻撃を紙一重で避けている所に隙を見てイザベラが背後から蹴りかかった。
彼女の長い右脚の鮮やかな上段蹴りが彼の後頭部を襲いバキッ!と鈍い音を立てる。
普通の人間なら意識を失い倒れるところを一瞬動きを止めニヤーッとした嫌な笑みを浮かべて背後のイザベラの足を掴むのであった……。