沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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「ソシャゲ、ですか?」目をぱちくりとアキラっち。
「うん」と清々しく凡庸な感じで飛鳥井くん。
「ソシャゲは大陸の方々が圧倒的に得意なんだ。その傾向は、もうずっと続いているね」
「えっ、えっ?」
「そうである以上、僕たちは敵国認定されてもおかしくない国家にお金を払っていると言ってもなんらおかしくないんだよ」
「えっ、ええぇっ?」
「さりとて強いのは中東のプレイヤーだね。オイルマネーはスゴいよ」
ようわけがわからんねやろう。
アキラは目を白黒させてやる。
「コンテンツの出所としては、やっぱり中国がヤバいよね」と飛鳥井くん。「いつサービスを打ち切ると言われてもしょうがないのに僕みたいな廃課金者が少なからずいる。これは由々しき事態だよ。僕みたいのは馬鹿だとも言う。ホント、ほどほどにしておけ、ってね」
「そりゃ、そうやわなぁ」はっはとわろたオレ。「しかし、丁々発止、喧々諤々」
「なかなかいいね、議論する?」
「しやしませんわ」
「僕は事実しか言ってない。その余地なんて、元からないんだ」
否定のしようがないなぁ。
飛鳥井くんはいよいよゴツいヘッドホンをつけようとする。
まだ話ぃしてみたいさかい、「まあまあ」言うて、オレは「そうせんように」、お願いした。
「課金兵が強いんですか?」
「うん、そうだね。だから僕のバイト代はほとんどそれに消えてる」
「おぉっ、それはそれでおもろいな。かたちのない物に金かけるんは尊いように思えるさかい」
「かたちのない物だからこそ、ときどきむなしくなるんだよ。きみはきみで、犀川くん、稼ぎがあるように聞いたけど?」
誰からの情報やろうか。
おおかた会長ってとこやろう、彼女には話した覚えあるしな。
「飛鳥井くんはどないな小説が好みですかぁ?」
「なんだい、やぶからぼうに」
「興味ですよってに」
「率直だね」
飛鳥井くんは顎に右手をやって、「うーん」と首を捻った。
「小説じゃなきゃダメ?」
「けっしてそないなことはないです」
「好きな映画ならあるよ。『ユージュアル・サスペクツ』」
「おぉ、渋いこっちゃ」
「知ってるの?」
オレは深く頷いた。
隣を向く、アキラはきょとんと目ぇ丸くしてた。
「あれは素晴らしかったなぁ。ラストシーンでウソーって声を上げちゃったくらいさ、ほんとうにスゴい作品だよ」
「良かったです、趣味が合うみたいで」
「それは、なによりだね」
「ええ。良かったです」
で、二人は? 付き合ってるの?
案外、しつこいやん、飛鳥井くん?
「つつつっ、付き合ってるとかっ?!」どもりまくったアキラっち。
「いや、まあつきおうてます」オレは平然と。
アキラっちの顔の真っ赤さに拍車がかかる。
「ふぅん」と興味深そうにうなずいた、飛鳥井くん。「僕もそのうち、恋人を作ったりするのかなぁ」
「たぶんですけど」
「なんだい、犀川くん――もとい、親しみを込めてイクミくん。何が言いたいんだい?」
「一人以上、恋人ができますよ、飛鳥井くんが、本気を出した場合」
飛鳥井くんはきょとんとなると、丸めた右の拳で左の掌を打ったんやわ。
「なるほど。それは考えもしなかったよ」
「おとぼけ」オレは呆れた。
「みたいだね」と、飛鳥井くんはわろてみせた。
「でもね、イクミくん、言っておくと、僕の好きなヒトはたった一人に限られているんだ」
「それってどなたですかぁ?」
「会長なんだ」
おぉ。
ここに来て、爆裂的な展開ががが――。
「誘ってくれたのが彼女でなければ、僕は生徒会に入ってない」
「そのへんのこと、会長はご存知なんですか?」
「知らないと思うよ。現実味をもってこの旨を他者に打ち明けたのはこれが初めてだし」
「だとしたら、ごちそうさまです」
「そうだね。僕に内心を明かさせたこと、きみには重く受け止めてほしい」
まったく発したとおり、ヘヴィな文言や。
「協力、しましょか?」
「いいよ、べつに。やるだけやるから。やるだけやってダメなら諦めるだけだから」
おぉぅ。
メッチャ潔いな。
「難しいよね恋愛って、つくづくそう感じてる段階なんだ」
「なんやねんな、飛鳥井くん、えっらい弱気やんか」
「いや、嘘嘘嘘、じつはそんなにへばってない」
「とはいえ、恋はリアルに難しい」
「だよね」
飛鳥井くんが浮かべたのは、きっと苦笑いや。
「にしても、生徒会ってのはどこもそうなんかな? 陰キャばっかなんが払拭できへん」
「そのへん僕も気にしていて、だから、陽キャっぽい企画を立ち上げるつもり」
「おぉ、ホンマに?」
「付き合ってよ、その際には」
「もちろん」快く、オレは返事した。「そろそろいよいよ夏やし、それに即したイベントがええな」
「考慮するよと言っておこうかな」
「お願いします」
じつは僕もお弁当屋さん、訪ねたことがあるんだよ。
そのお弁当屋さんが「七尾の弁当」やって聞かされたもんやから、アキラは目をぱちくりさせやった。
「えっ、そうなんですか?」驚いたに違いないアキラっち。
「ウチはあんまり遠くないし、なにより評判だから」にこりと笑った飛鳥井くん。
するとアキラは「き、気付かなくてごめんなさい……」と殊勝にも謝罪し。
飛鳥井くんは「いいんだよ」と微笑み。
「僕は影が薄いからね」と、飛鳥井くん。
「これからも立ち寄ると思うから。一般的な接客をしてもらえると助かります」
飛鳥井くんはぺこりと頭を下げ――。
恐縮するようにして、アキラっちは「ごめん、ごめん、ごめんなさい」とか、謝ってみせやった。
「にしても飛鳥井ってファミリーネームは、カッコええよね」と、オレ。
「よく言われるんだけど、どうしてかな」と、彼。
「そりゃ先輩、まず響きがなんやよ」
「ブギーポップは? 関係ある?」
「ほぼ、ないやろうね。もう三十年近くも前の小説なんやさかい」
「読んだことがあるんだよ」
「ほぅ。してセンパイ、ご感想は?」
「彼」は天才だったと思う。
だった――とは?
今はわからないから。
そりゃあ、そうやなぁ。
だよね?
「いまだに『炎の魔女』には惹かれてばかりだけど」
「炎の魔女かぁ。鮮烈すぎたなぁ、彼女は」
「うん、そう。霧魔凪――正直に言って、僕はいまだに彼女を超える人格に会えないでいる」
趣味は合いそうや――そないなふうに、知ることができた。
「今度、映画を見に行こう、『閃ハサ』だよ、『キルケーの魔女』。七尾さんも一緒でいいからさ」
「閃ハサ」やら「キルケーの魔女」やら言われたところで、アキラっちはピンとこぉへんことやろう。
実際、首ぃかしげやった。
「会長への思いについては、『最大限、がんばれ』って言っときます」
「要らない。僕が本気なら、僕自身でなんとかするだろうから」
逞しいし、頼もしい限り。
「好きな映画に好きな小説。有意義な情報の交換だった。ありがとう、イクミくん」
「ついでに好きなロックバンドも聞かせてもろてええ?」
「ELLEGARDEN」とか、即答やった。
「やっぱ趣味、合うなぁ」
「彼らはサイコーだよ。好きなナンバーも言おうか?」
「いや、要りません。それ言い出したらキリなくなってまいそうやさかい」
「それはそのとおりだね。イクミくん、きみは勘も察しもいい。賢いんだろうね」
恐縮至極、素敵な言葉に胸が躍って高鳴った――。
好きやな、飛鳥井くん。
オレはきみんことが大好きや。