沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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ファミレス。
オレの左隣にはアキラっちがおって、オレの向かいにはさっちんがおって、彼女の右隣にはみゆきちの姿――。
「最近、暇なんや」
サラダバーで取ってきた野菜の群れをがつがつ食いつつ、オレはそないに言うた。
「何が暇なのかにゃ?」とはさっちんの言葉。
「暇は良くないよぅ」とはみゆきちのセリフ。
「エッセイは書いてる」と、オレ。
「で?」とはさっちん。「対価が少ないから不満だとでも?」
「そうなんや」
「だったら、べつにバイトでもすれば?」
「そうなんや」
すればいいじゃん?
それもまた、さっちんの物言いである。
「あたしは反対だ!」力強く、勢い良く捻じ込むように踏み込んできたのはアキラっちだ。「新しいバイトなんて必要ない! 金が必要ならあたしが稼いでやる!!」
ある種、優しすぎる、ある意味、横暴な言葉なんやけど、咄嗟にはというかなんというか、その言葉の真意を自問自答するにあたって、アキラっちはあんま意識してないらしい。
オレはゆーたることにする。
「アキラっちよ、嫁を養えへんのは男として、めっちゃあかんことなんやぞぅ?」
「おまえが浮気するっていうんだったら、あたしがおまえを養ってやるって話だっ」
アキラっちはめっちゃ恥ずかしがり屋さんやのに、目の前が見えへんくなると、「こういった発言」をくり返しやる。
まったく飛躍しすぎやと考える次第や。
さっちんとみゆきちが、ボウルを傾けてサラダを掻き込みやる。
ベジファーストなんて流行らねーよというのはさっちんのお言葉。
「すなわち、お金が必要だって話だよね」さっちんがなんや、いきなり切り返してきた、知ったふうな口ぃ利いた。
「いや、じつはそういう問題でもないんちゃうかな?」とオレは疑問を呈した。
「違わなーい」ほうりなげるように、歌うようにさっちん。「お金さえあれば、全部解決じゃん?」
それはそれで恐ろしい考え方なんやろうけど、間違いではないな、うん。
さっちんは「お金を稼ごう」と言い。「いっそ、インフルエンサーになっちゃおう」と続け。
オレが「インフルエンサー?」とオウム返しに問うたところで、さっちんは「そのとおり」と答えやった。
「インフルエンサー?」も一度問うたオレ。
「アキラにやらせれば簡単じゃん。もちエロ路線――な、インフルエンサー」
「とかなんとか言うてはるぞ?」――と、オレは話を振りつつ、アキラのほうを向いた。
「えっ?」どうやらアキラはサラダを食い狂うことに必死やったらしい。「なんの話だ?」
オレは話を整理するつもりで、静かな口調で「インフルエンサーやと」と、肝の一言を口にした。
「インフルエンサー?」
「アキラっちはバインバインやん?」
「ばばば、バインバイン言うな、バインバイン言うな」
「とはいえ、そのへんうまく活用すれば、金銭が得られるやろうっていう話」
アキラは顔を真っ赤にして、勢い良く立ち上がった。
「みみみ見損なったぞ、イクミ! あたしが大衆に消費されてもいいって言うんだな!!」
おおげさな物言いや。
嫌やったら断れ言うてるつもりやし。
「どうあれこの提案はポシャるんやよ」
「そ、そうなのか? ポシャるのか?」
「いやだって、現役高校生がエロスとか」
「まままっ、まあそうだな。未成年は何をするにも気をつけないとな」
以降、べつにする話もないさかい、ばくばく肉食うた、アンガス牛のステーキ、いっとう高いヤツ。
自腹で食えるあたり――いや、自腹やないと食わへんねやけど、食えることには感謝したい。
「いいの? ここは奢ってくれるってことで」とは、さっちん。
「ええよ。女のコには奢ったるもんや」
「愛してるぜっ」
「さっちん、きみは即物的すぎや」
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日曜日。
朝っぱらから真白の髪をアップに結って、アキラんち――「七尾の弁当」に出向いたった。
開店前やさかい、店先にはまだ誰の姿もあらへん。
オレは店先で膝ぁ折って、アキラっちが姿見せるのを待ってた。
そのうち、アキラっちが姿ぁ見せやった。
まず表に顔出して、左右を確認するのがルーチンなんやろう。
アキラっちはオレんこと見つけると、安心したみたいに「おはだ、イクミ」とか微笑んでみせやった。
オレの左隣にしゃがみやった。
「え、エロいぞ、アップに結うな、エロいぞ?」
「オレはとことん男らしくありたかったんやけどなぁ」
「ど、どういうことだ?」
「だってなんや、真っ白やってのは、女々しいやろ?」
「女々しいっていうのは差別だぞ? アルビノだからって、差別だぞ?」
「ああ、そうやな、かんにん」オレはぺこりと謝罪した。
するとアキラは「いいっ、いいよべつに」と戸惑ったように言い――。
「今日も仕事終わるまで待ってたるさかいな」
「い、家で待ってろよ。ちゃんと訪ねてやるから」
「追い回されるより追いかける恋愛のほうがずっと好きなんや」
オレが「にひひ」とわろてみせると、アキラっちは顔を真っ赤にしやった。
せやけど、「で、でもさ?」と前置きすると、かなーりかわいい感じで微笑みやったんや。
「あ、あたしはさ、今の状況がほんとうに好きなんだ。楽しいって思ってるんだっ」
「オレはいつも不安におもてるんやぞ? おまえにはもっと楽しい状況がありえるんやないかって」
「らしくないじゃんかよ。あ、あたしは言いたいぞ? もっと自信を持てって、めちゃくちゃ言ってやりたいぞ?」
「もう言うてるやんか」
「あたしたちって、まだ、その……してないじゃんかよ」
「セックスの話かぁ?」
「そ、そうだ。今すぐにでも、おまえはしたいんじゃないのか?」
うーんと首を捻って考えた。
したい気もするし、まだもうちょい取っておきたい気もするし。
「迷ってるんだろ? それがいいんだよ」アキラっちは晴れやかにわろた。
「まあ、一回してしもたら、毎日やろうしなぁ」
「だろ? だからいいんだ」
自分が言うたセリフの恥ずかしさに気づいたんか、アキラっちはあらためて顔、赤らめやった。
「インフルエンサーの話や」
「い、いきなり話を切り替えやがったな。金儲けの話か?」
「うん、そうや。健康的なバインバインを披露するだけで金銭は得られるやろう」
「健康的なとかいう言葉はなんのフォローにもなってないぞ。っていうか、バインバインしつこいな」
「合法か非合法かのギリギリのラインで金、せしめたろうや。だいじょうぶや。撮影はオレがしたるさかい」
「ばばばっ、BAN上等?!」
「おうよ」
「……ややっ、やっぱ嫌だっ!」
「えーっ、愚民どもの阿呆な反応、見たないのーん?」
「見たくない、見たくないぞっ」
「せやったら諦めるかぁ」
「そうだぞ、諦めろ」
「せやけどなアキラっち、思うんや」
「な、なにをだよ?」
外見だけで金取れるのは、一つの権利やろ?
「かもだけど……」
「世の中、どうしたって、奪う側と奪われる側に振り分けられるんや」
「だ、だったらおまえはだイクミ、おまえはどっちだっていうんだよ」
「どっちでもええな。オレはつまらん男やさかい」
一転、アキラっちが怖い顔になった。
「あたしにつまらん男を好きになれって言うのかよ」
「誰もそんなん言うてへんやろぉ」
アキラっちは不満そうにほっぺ膨らまして。
「なあイクミ、あたしたちは絶対に、面白おかしくあるために生きてるんだぜ?」
目の前がくらくらするような、それでいて目の前がぱっと明るくなるようなポジティブすぎる言葉やった。
「そないなふうに言われると弱い」オレは苦笑した。「弱いなぁ」
「あたしは好きだ、おまえのことが」どもるでもなく、そないに言いやった。「でなけりゃとっくにセクハラで訴えを起こしてるんだ」
まあたしかに、そうかもしれへんな。
「胸揉ませろぉ」オレはそない言うて両手伸ばした。
「ヤだよ、ばーか」って、アキラっちは笑いながら逃げやる。「仕事がはけたらいいけどなっ」
「ほなら、待ってるわぁ」
「ああ、待ってろよ」
どこに持ち合わせていたのか、アキラっちは右手伸ばしてオレの頭にキャップをかぶせやった。
「残暑に、あたしからのせめてもの差し入れだ」
あまりに愛おしい言い方なもんやさかい、オレは胸の奥底から感動してしもた。
ほんとうに欲しいもんは、何も得られへんやろうなっておもてた。
自分の「白い」外見とか関係なく、オレはいろいろへたっぴやから、なーんも得られへんねやろうって考えてた。
それがどうや。
オレが欲しかったもんに違いない奴が、アキラっちゅう名前で、今、まさにそこに、存在してやる。