沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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四時間目の終わりを告げるチャイムが鳴って、早速屋上で昼飯食べようって段のことやった。
見覚えのある人物――女子生徒が、姿ぁ現しやった。
オレの席まで来ると「じゃーん、登場!」とか言うて大笑いして、オレの机に乗り上げて、その長いナマアシを組みやった。
その豪放さになかば呆れながら、オレは「なんの用ですかぁ、会長」って訊いた。
今にもぶうたれそうなアキラっちの存在にはとうに気づいてる。
「いやっは、イクミくん、スゴいじゃない、ゴイスーじゃない。某SF小説賞、最終選考まで残ってるじゃない」
会長のその声が大きかったせいや。
生徒が数名、興味深そうな視線を向けてきやった。
「ホントにスッゴいことじゃない」ナマアシも色っぽければアキラっちとタメはるバインバインな会長はにっこにこ。「我が生徒会としては鼻高々なのだよ。アカデミックなニンゲン、あるいは武道の達人はいるけれど、クリエイティブな方面に特化したニンゲンは――」
立ち上がったオレは会長がそこまで言うたところで彼女の口を右手で押さえて、左手を腹に回した。
その華奢な身体を持ち上げたって、とりあえず教室の外に出た。
外に出たところで、会長んことを解放したった。
会長は大げさなまでに首ぃかしげて、オレの顔を見上げてくる。
「なになにぃ? きみが小説家として成功したらマズいのぉ?」
「小遣い稼ぎにはうってつけですけど、せやからって事実をみんなの前に晒さんでくださいよ」
「あら、どうしてかしら? 小説家という肩書は『先生』と同義なんだから、威張りまくれると思うけど?」
「そんなんオレが望むとでも? オレは静かな生活が好きなんですよ」
「小説家は静かじゃないと思う、太宰とか」
「それは古い価値観ですよってに」
だ、そうだよ、アキラちゃん。
オレの後ろに向けて、そう声をはなった会長。
たしかにそこにはアキラっちの気配があった。
「きみの立身栄達をお祝いしたいのだよ」会長は言う。「それがダメってことはないでしょー?」
「ダメです」オレはきっぱり言うたった。
「えーっ、どうしてぇ?」
「オレはまだ、小説で一円も稼いでないからです」
「これから稼げる確率は高いじゃない」
高くない、けっして高くない。
そんなに簡単に事が進むようなら、世の中は小説家であふれるに決まってるやんけ。
パーティーはしたい――それが会長の願望。
オレは固辞して、せやけど「生徒会室でしゃべりたい」っちゅう要望にはつきおうたることにした。
機嫌悪そうなアキラが、後ろからついてきてた。
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革張りで背もたれまで立派な椅子で円を成した。
会長、アキラっち、それにオレがそれぞれ座ってる。
「私はマーダーミステリーに興味があるのだよ」
おぉ会長、いきなりなんの話や?
「そっち方面なら、私だっていくらでも書けそうだってこと」
まあ、会長の言語化能力ならやれるような気がせんでもない。
「でも、じつに残念極まりないことながら、現状、ニッポンの小説界は壊滅状態でしょう?」
その点も、否定はせーへん。
「どうして小説界隈が死に絶える寸前かって、わかる?」
そりゃわかる。
せやさかいオレは、「ホンマの意味で才能がある奴は、みーんな漫画に行くんですよ」と答えた。
すると、「そのとおり」言うて、オレにビシッと右の人差し指を向けた会長。
「ほんとうにそのとおり。言葉をもって読者の想像力に委ねる時代は終わったの。これだけ目に優しいもので溢れている世の中なんだからね」
「せやったらオレが小説書いてるのなんてどうでもええやろうし、某木っ端賞レースで居残ったのだって無視すればええんちゃいますか?」
「自分で木っ端とか言っちゃうの?」
「ネットだけの繋がりですけど、知り合いに小説出してるダチがいやるんです」
「そのヒトがどうかした?」
「結構、数は打ってるんですけど、重版については童貞らしいんです」
ありがちだーっ。
そう言って、会長は腹を抱えてわろた。
「印税やのうて賞金が欲しいんです。裏を返せば、オレはそれだけでええ」
「作家先生は夢のある職業だと思うけれど? もしそれにならなくてもいいって言うなら、きみは何になりたいの?」
「弁当屋の主人かなぁ」
オレがのんびりした調子でそない言うと、隣のアキラっちはびくって身体ぁ揺らしやった。
「や、やめろ。おまえがただものじゃないのは知ってるんだ。だから、作家にだって簡単になれるだろうって――」
「おまえが嫁に来てくれるんならおまえんこと派手に食わせるために派手に稼いだるわ。せやけど、オレがそっちの婿に入らなってんなら、オレは一生懸命に弁当作ったるわ」
アキラっちはほっぺを真っ赤にしたかぁ思うと、顔ぉ背けて咳込みやった。
照れ隠しなんは間違いない。
「きみの才能も未来もかけるだけの価値が、アキラちゃんにはあるっていうの?」
「あきませんか?」
会長はきょとんとした顔を見せて。
それから極端に破顔して。
「いいんじゃない?」
「あれ?」
「なあに?」
「妬かれるとおもてました」
「残念だねぇ、そんなに簡単に手の内は見せないのだよぅ」
帰ります、腹減ったんで。
オレは言うて、椅子から腰ぃ上げるとアキラっちに手を貸した。
「なんだか気に食わないんだぞ」アキラっちは口を尖らせつつ、オレの右手を握って立ち上がった。「あたしは小説の話、知らなかったし、でも、会長は知ってたし……」
「アンテナ広げてへんのか? それとも感度の問題か?」
「知るかよバーカ、死んじゃえ、バーカ!」
アキラっちは憎まれ口を叩きつつ、生徒会室をあとにした。
オレはあらためて着席した。
「おや、追いかけなくて良いのかな?」
「もうそこまで浅い仲でもないって踏んでます」
「でも、積極的に追いかけてきてもらいたいのではないかな?」
「だいじょうぶやって言うてるんです」
「だったら、もはや語るまい」
それで?
賞レースのほうは、本気でどうなの?
「六百くらい応募はあったみたいですけど、そのうちの四作に残ったっていうだけです。現状、自慢できることでもありませんよ」
「エッセイは読んだことはあるのだよ。けっこう、欠かさず」
「一応、ご感想はいかがなものでしょうか?」
「それがね? いちいちめっちゃ刺さるの」
「それは良かったです」
「だからね? ただならぬ関係になりたいな、って」
「それは良くないです」
「そう言うだろうって思ったぁ」
会長はにこりと微笑むと、小首をかしげてみせた。
オレはオレで、笑みを返した。
「エッセイストとコラムニスト、そのへんの区別すらついてないってのが現状なんですけどね」
「べつにいいんじゃな? 評価自体は頭でっかちのおじさんおばさんに任せとけば」
「それもまた偏見やぁ思うんですけど?」
「先にも話したけど、小説界が斜陽なのは、やっぱり新しい血が足りないからなんじゃないのかなぁ」
「ざっくりで言うとそうなるんでしょうけど、そのあたりを咀嚼して作業ベースにまで落とし込めるニンゲンなんて、そうはいないですよ」
「漫画書けるヒトより小説書けるヒトのほうがずっと多いはずだからさ、でも、その道が先細りしていいなんてことにはならないと思う」
多くの言葉は無力なんですよ。
だって視覚的やないわけですから。
文字だけってのはマジとっつきにくい。
小説、今後、どんどん減っていきますよ。
だって確実にニーズが減少していくんですからね。
「きみのネガティブさはどうしたら払拭できるの?」会長は明らかに苦笑してる。
「自分の文章は現状、多少の需要があるらしいです。そんなんあやふやなもんやさかい、ずっとは続けたくないんですよ」
「ふとしたことで、きみなら有名になれると思うけどなぁ」
「アルビノで、瞳の色まで白いからでしょう?」
「その理由は嫌?」
「嫌です」
ようやくオレは、すっくと立ち上がった。
やわこい革張りの椅子は心地よかった、せやけど、高校生ごときが座ってええ代物やないな。
オレは出入口へとてくてく進む。
「話せて良かった」と、会長が言うた。
「きみのこと、まだ諦めたわけじゃないからね?」
「押し倒されたらまさかがあるかもしれへんなぁ。どれだけ気取っても、オレは聖人君子やないさかい」
「だったら毎日、勝負下着でいることにしまぁす」
オレは笑いながら、生徒会室をあとにした。