沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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オレには結構気に入ってる男子がおって、いやっは、そこにはモチ愛や恋といった思いはないんやけど、彼はめっちゃ軽薄そうな物腰なんやけどじつは素直で実直で誠実で、せやさかい、オレは奴さんと比較的積極的に関わることを良しとしてるわけや。
奴さん、ある日、オレに話しかけてきたんや。
「おぉぉぉい犀川ぁ、おまえだけが頼りなんだよぉぉぉ」――とかなんとか。
「なんや、どないした、ミシマぁ」
そう。
奴さんの名は
自炊というか自立を重んじてる三島は、昼飯はカップ麺率が高い。
今日は「焼きそば弁当」やった、たしかネットでまとめ買いした言うてたな。
アキラっちとさっちんとみゆきちは少し離れたところでメシ食いながら、ひそひそしながら、こっちに目ぇくれてやる。
話をしにきてくれたんやさかい、オレは三島の相談に乗ったろうって一瞬で決めた。
「なんやねんな、三島、なんやつらいことでもあったんか?」
「おまえに俺の気持ちがわかるかよ!!」
おぉっ。
おまえだけが頼りとか言うたくせに、なんやいきなり、キレやったぞ
「最近、俺のことを馬鹿にする奴がいるんだ」
「奴って、男? 女?」
「女だよ」
どうあれ、せやったら、きっとかわいいもんに違いないって思う。
「甘いんだよ、おまえは!!」
いきなり怒鳴られて顔近づけられたもんやさかい少なからず身ぃ引いた、びっくりまではせーへんかった。
「で?」オレは目をぱちくり、訊いたった。「それって誰やねんな?」
「ミナミだよ、ミナミだ」
ミナミ?
ミナミ?
――思い出した。
あの大人っぽいクラスメイト、くすみカラーの髪した女のコな。
目つきになんや、達観してるような色があって、とにかく大人っぽいから知ってる。
「何があかんねんな。あのコに馬鹿にされたら、オレやったら喜ぶぞ?」
「おまえ、馬鹿なんだな。話した俺が馬鹿だったかもしれん……」
相談しくさっといて、「失礼なやっちゃな」――。
「なあ、ミナミって、友だち、いんのかな?」
「三島くんよ、つくづくなんやねんな、いきなり」
「だってさ、ミナミってアイツ、誰とも距離取ってねぇ?」
「おぉ、案外、ちゃんと観察してるやないか」
「ちげーよ、馬鹿。誰でもちょい見たらわかるっつの」
そういうもんやろうか?
なお、馬鹿馬鹿言われてもなぁんも気にせーへんオレはホンマに馬鹿なんかもしれへん。
「で、ミナミさんに絡まれかまわれしたら何が悪いねんな?」
「ミナミって悪女だって噂じゃないかよ」三島は顔を真っ青にした。「やだぞ、俺は。そんな女と仲良くなっちまったら、最悪極まりねーじゃねーかよ」
そういうバイアスのかかった他人っちゅうか他者の言い分、趨勢には、一言、物申してやりたい。
実行に移すことにする。
「おまえ、そりゃミナミさんに失礼やぞ。たしかに遊び人やっちゅう噂はあるけどさ、オレは彼女んこと、それほど悪いとはおもてへんぞ」
「抜かせ、馬鹿、犀川、おまえは女が相手なら誰のことも悪く言わないだろーがよ」
うん。
まあ、そのとおり。
「最近、ミナミと一緒に帰ってるんだ」
「ガッコからの帰り道の話?」
「それ以外に何があるってんだよ」
「そないイライラすなや」
「イライラはしてねーよ? してねーんだけど」
で、要する、なんの依頼や?
オレはそないなふうに問いかけた。
待ってましたと言わんばかりに表情を明るくしたのは三島やっちゅうわけ。
「ミナミに訊いてやってくれよ」
「おまえに――三島っちに構うのはどういう了見なんかってか?」
「了見? 了見ってなんだ?」
たしかにじじくさい単語を持ち出してしもたかもしれへん。
ちゅうたかて、どう考えたところで馬鹿なんは三島氏なわけやけど。
「難しい言葉はどうだっていいよ」
「とにかく、おまえんことをどないおもてるか、そのへんを訊き出せればってか?」
「うん、そういうことだ」
それは難しい課題ではないんかもしれへん。
せやったら「自分でなんとかせぇ」と言いたくもなるっちゅうもんなんやが。
ま、ええやろう。
間を取り持つ機会に恵まれるのは、もはやオレの宿命みたいなもんや。
「ほならミナミさんこと、ちょい借りるぞ」
「借りるも何もねーよ。現状、俺はミナミとは無関係なんだからよ」
「本気でそないおもてるんか?」
「気味悪いのは嫌だろ?」
失礼なやっちゃな。
女のコ相手に気味悪いとか――。
*****
まあ、オレが不義理を働くことはないってわかってるからやろう。
ちょいミナミさんに用事があるんや言うたところで、相棒たるアキラっちはなあんも言わへんかった。
――っていうのはメッチャ嘘で、オレが女のコとしゃべってるだけでもへそ曲げやがるのがアキラっちなわけで。
それでも一度、頼まれてしもたことはやり遂げたらなあかん。
よって、オレは放課後ののっけに、まずミナミさんを捕まえた。
「やっほー、犀川。私に声かけるとか珍しいね、っていうか、初めてじゃない?」
うん、そのとおり。
珍しいどころか初めてやっちゅうのも、事実やろう。
「一緒に帰ろうや。用件は道中、打ち明けるさかい」
「犀川んち、私の帰り道とは逆だと思うけど?」
「よう知ってるやん」
「たまたま」
「頼まれ事、なんやわ」
「誰からの?」
「せやから、そのうち話すってば」
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ミナミっちはガッコ近くのコインパーキングを月単位で契約してるらしくって、だったら何を駐車してるんかっていうと、それは原チャらしかった。黄色いそのコはイタリア製やっていう。趣味のヒトやなって感心した。「お年玉を使ってね」っちゅうあたり、ええ暮らししてるコなんやろう。
「犀川が言うから愛車、今日は置いて帰るけどさぁ、雨が降ったりしたら嫌だなぁ」
「オレには雨が降らんことを祈るしかできへんな」
「そのへんのわかりやすさ、私は好きだよ」
にこっとわろてみせたミナミっちは、かなり魅力的やって言えた。
なおもすくすく帰り道。
「えっと、それでなんだっけ? 三島の奴が私のこと、煙たがってるって話だっけ?」
「それはちゃうぞ、ミナミっち。あいつはそこまでは言うてへんぞ?」
「だったら、どういう話なのかな?」
わからへん。
――って、オレは正直に首ぃかしげてみせた。
「特別、三島にかまってるつもりはないんだけどなぁ」
「向こうは気にしてるみたいや」
「だからさそれって、三島が女のコとあんまり関わったことがないからじゃないの?」
おっしゃるとおりやろう。
オレは深く頷いた次第や。
「とはいえ三島は困ってる――困ってるっちゅうか、真意が知りたいんやろうな」
「真意って、私の?」
「そうに決まってるやろぉ」
「視線を感じる」
「いきなり、なんの話?」
そういうとこだぞ。
ミナミっちはそないに言いつつオレの顔を難しい表情で見上げてきた。
「犀川のビジュアルは目立つの。そんな奴と歩いてたら私も目立つの。控えていただきたいですね」
「そない言われてもなぁ」
「三島の話なんてどうでもいいじゃん」
「そうなん?」
「そうだよ」
せやったら、オレは三島になんて報告すればええんやろう。
――なんて、きっと考えるまでもないことなんやろうけど。
「私の悩み、言ってやってもいい?」
「うん、ええよ?」
「誰かと仲良くなるのが苦手なの。いっぽうで、みんなとの距離の取り方だけ、めちゃくちゃうまくなっていく」
「えぇっと――」
「気にするなっていうか、安心しなよ。こんな話、誰にもしたことなんてないから」
「気に入られても困るっちゅうもんなんやけど」
「おぉ、なぜですか?」
なんとなく。
そないなふうに、応えるしかない。
「じつはさ犀川、この先にアイツがいるんだ」
「アイツ?」
「だから、三島の話」
「待ち合わせ?」
「アイツ、そこのコンビニでバイトしてるんだよ」
そういうことか。
「寄ってくの?」
「うん、よく寄ってる。だって他意はないから。あははって愛想振り撒くくらいはするって」
何を言いたいんか、どういうことなんかはいまいちようわからへんねんけど。
「べつに会いたいってわけじゃないよ。だって明日になればガッコで会えるんだから」
「そうやけど、なんや、軽いなぁ」
「そうだよ。三島って、そういう奴じゃん?」
そういう奴?
そういう奴なんやろうか。
「それでも私は当該コンビニに寄ってやろうと思う」
「なんでや?」
「いつものことだから」
ミナミっちは、そないに言うて微笑んだ。
*****
ミナミっちと並んでコンビニに入った。
いらっしゃいませと声があり、そっち向いたら三島っちの姿があった。
うげ、とでも言いたげな苦々しいツラぁ浮かべると、三島っちは目ぇ伏せた。
なんでおまえはミナミのことを連れてきたんだよ。
明らかに、そうとでも言いたげやった。
ミナミっちは店内を物色しやる、してやる。
その隙に、オレは三島っちのもとへと赴いたったっちゅうわけや。
「どういうことだよ、犀川。なんでおまえが連れてきたみたいになってんだよ」
「いや、ミナミさんが来たい言うからさ」
「いっつも来るんだよ。なんでかいっつも来るんだよ」
オレは右に左にとゆぅっくりと顔ぉ傾けて、「あかんの? それは」って訊ねた。
ほったら三島っちは殊の外、難しい顔しくさって。
「誰も迷惑だとか、そんなことは言ってねーよ。ただ、なんで来るのかなってさ」
ミナミっちがオレの隣にきやった。
隣にきて、「あははぁ、考え過ぎだぞ、三島ぁ」とか気だるげに言うた。
「そういうの嫌い?」と続けたミナミっち。「私はべつに嫌じゃないけどぉ」
「お、俺だってべつに嫌だってわけじゃねーんだよ」とは三島っち。「ただ、なんてか……立ち位置がわからねーんだよ」
「そんなの気にすんなって話だと思うわけですが?」
「無理言うな。律義さとか誠実さとかって、そういう話って、ぜったいに必要だろ?」
どうあれ、今、オレのそばにはミナミっちと三島の姿がある。
もはや言わずもがな。
じつのところ、二人はくっつきたがってるんや、ないんやろうか。
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コンビニも三島っちのことも後にして、夕焼け空の道を進む。
ミナミっちが「からあげクン」奢ってくれたさかい、それをぱくぱく食べながら――。
とことこ前を行きながら。
「あのね、犀川、私ね? 中学時代にひどい失恋したんだ」
「ひどい失恋?」
「うん。浮気の現場に出くわした。っていっても、キスの場面だったっていうだけの話なんだけど」
それはそれで、ヘヴィーやないやろうか。
「ミナミっちは美人さんやのになぁ」
「彼には彼女のほうが美しく見えたんでしょ」
ミナミっちは「あはは」と放り投げるようにわろた。
「たとえば、三島のアニキが昔の男に似てるとか?」
「もしそうならとりあえずぶん殴ってるって思わない?」
「思う。せやさかい、もうぶん殴ったったんかなって」
「そこまで非常識じゃないつもり」
「まあ、そうやろうね」
犀川んちに行ってみたいなぁ。
――とか、ぽかぁんとミナミっち。
「そんなことをしたら、私は犀川にハメられてしまうのだろうか」
「一応、オレ、カノジョ持ちなんやけど?」
「だったらジェントルにおいしい食事でも提供してくれる?」
「そうなったらしゃあないなって話」
男は基本的にみんな冷たい。
――とか、ミナミっちは言い。
「そうかなぁ」
「そうだよ」
「女に優しくできへん男なんて、死んだほうがええって思うけどな」
「カッコいいように見えて、じつは男尊女卑的なセリフ」
「わこてるよ。せやけど、そういう価値観の中で育ったもんやから」
「いい環境だね」
「せやろ?」
ミナミっちは「明日、ちょっと行動を起こしてみようと思う」とか言うた。
「行動?」
「うん。犀川にこんなふうに誘われて、ちょっと考えをあらためてみた」
オレは一つ首をかしげてみせた。
「それは喜ばしい変化なんやろうか」
「どう転ぶか、次第でしょ」
ミナミっちは穏やかな笑みを浮かべた。
「駅まで送るわ」
「いい。愛車拾って帰るから」
「せやったら、愛車んとこまで送るわ」
「犀川ってホントにイイヤツなんだね。鼻血出そー」
夕焼け空はまだ続く。
*****
翌日、いつもどおり弁当屋で恋人のこと拾って、ガッコに向かう。オレが女のコとしゃべってるとへそ曲げやるのがアキラっちやけど――美しい言い方をすれば――オレの愛情は確固たるもんやと伝わってはいるんやろう。嫉妬の塊みたいになることは減ってきたように感じてる。
「で、ミナミはおまえになんの用事だったんだ?」と、アキラっち。
かくかくしかじか。
オレは経緯を短く説明した次第。
「へぇぇ。くっつきそうだってことかぁ」と、感心したようにアキラっち。
「せやけど、なぜか三島っちはメチャクチャ怯えてる」
「女に好かれた経験が皆無だからじゃないのか?」
「おぉ、アキラっちおまえ、けっこうひどいこと言うんやな」
「事実、三島ってモブじゃんか」
ホンマにひどいこと言いやった。
――ガッコの昇降口、その手前。
ミナミっちが立ってたわけや。
「おっはー、犀川」
「おはよー、ミナミっち」
「ミナミ、あたしには挨拶ナシか?」
「細かいことは抜き。ちょっと旦那、借りるね?」
「うっ、や、やだっ! なんかすっごくイヤだぞっ!」
とりあえず、話聞いたるわ。
そないなふうに乗り気なところを見せると、「裏切者ぉぉぉっ!」とか叫びながら、アキラっちは走り去った。
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1-Aのベランダ。
ミナミっちと並んで白い砂のグラウンドのほうを眺めてる。
「告ってみた」
いきなりの言葉にちょい面食らったけど、オレ自身、オレは察しが悪いほうやないっておもてる。
彼女のほう向いて「なんでまた? ホンマに?」って訊ねた。
「揺らぎを設けてみたら、どうなるかなって」
「揺らぎ?」
「そ、あえて。お互いに平行線でも良かったんだろうけど」
「結果は?」
ベランダに誰か出てきて、それは三島やった。
ミナミっちの向こうに並びやった、なんや、つまんなさそうに前を見てやる、ふくれっ面にも見える。
「なんだよ。仲良さげじゃん」
「妬いてんのかぁ?」
「ああ。相手がおまえじゃなけりゃそうなってたかもな」
へぇ。
正直やん。
「つっても、付き合うことになったとか、そういうんでもないんだけどな」
えっ。
そうなん?
「オレはてっきりオッケーしたんかと」
「オッケーはしてねー。けど、ダメとも言ってねー」
ミナミっちがこっち向いて浮かべたのはきっと苦笑――。
「どういうことなん?」
「いきなりはムリなんだって。要するに――」
「まずはオトモダチから、って?」
「そういうこと」
さばさばしてるミナミっちにふさわしい、さばさばした口調やった。
オレの頭の上には「?」が浮かぶ。
「ずっと友だちやったやんか、おまえら」
「そんなことないよ。ただの知り合いだった。そうは思わない?」
オレは幾分思考してから、「まあ、そうか」っちゅうた。
知ってる限りの範囲での判断なんやけど、なんやめちゃめちゃ納得がいった。
「ゆっくり歩こうってよ、俺としては、いいな、ってよ」
「かなり譲歩したんだよ? それでも、ダメだったらダメで手を変え品を変えしたであろうわけで」
「軽いノリでそういうことができるだろうって思ってるから、俺からしたら女って怖いんだよ」
「だったら別れる?」
「そうは言ってねーよ。つーか、まだ付き合ってもいねーし」
なんやお二人さん、仲良くやれそうやないですか。
「なんか、わかった」
――と、突然、左方から声。
そっちを振り向くと、今日もショートヘアが凛々しいアキラっちがおった。
「なんや、今日もパンツルックかいな」
「いたずらに、あたしは自分を安売りしたりはしないんだ」
「なるほー。で、何がわかったんや?」
「イクミ、おまえ、キューピッドだったんだな」
オレは目線を宙に泳がせてから――。
「ま、そうなんかもな」
そったらアキラっちは、「良かったな」ってわろてみせた。
何が良かったんかっちゅうことなんやけど、「良かったじゃん、お二人さん」ということらしかった。
三島の言葉、「まだ何も始まっちゃいねーよ」――。
ミナミっちはくすくす笑いながら、「こんな照れ屋といつかセックスするんだと思うとおなか痛い」――。
三島はそっぽを向いたまま頬を染め、「馬鹿」と言った。
青春とは、時にぎこちなく、不器用な概念を指す。