沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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夜、さっちんとみゆきちを川崎は銀柳街の一蘭に連れてったって、京急で戻って、雑色駅の改札抜けたところで別れた。
もう暗いさかい「送ったるよ」言うたんやけど、二人揃って「だいじょーぶでーす」、断られた。
さっちんいわく、「早くアキラのところに行ってあげなよ」とのこと。
アキラっちは今日も家業の弁当屋の看板娘。
よっしゃ、行ったろ。
でもって、弁当、ごちそうになったろ。
うきうき、スキップでもしたくなる。
まだ十月に入ったのっけやけど、日が暮れるんがずいぶんとはよなった。
ブレザースタイルの制服にもようやく慣れてきた。
ネクタイの締め方も、そろそろ堂に入ったもんやと思う。
まだまだ楽しく高校生活を楽しめるんやと思うと、なおも楽しくなってきた。
――いきなりのことやった。
一直線に続く商店街を進んでると、後ろから「犀川イクミくん」って声かけられた。
ん?
聞いた覚えのない声やな、誰やろなって思いながら振り返る。
びっくりした。
すでに目の前におったからや。
顔の位置が近すぎる、ホンマに驚きや。
女性的な甘ったるい顔がしたんは間違いないんやけど、男性的な強引さをまとっているようにも見えた。
危険な感じを覚えたもんやから、オレはバックステップ踏んで五メートルほど距離取った。
そない人通りの多い商店街やない、ゆえに、二人だけで向き合うようなかたちになった。
真っ黒な髪は短くも長くもない、中途半端なやっちゃな。。
年は同じくらいやないやろうか。
上から下まで真っ黒なジャケットスタイルで、ええ男なんは間違いなかった。
「誰や、おまえ。知り合いちゃうよな?」
「仮に知り合いだったとしても、覚えていないんだね」
「いんや、絶対、間違いないな。オレはおまえとは会ったことなんてないぞ」
「結局、それは正解だけど」
「何者や?」
「早速、明かそうか?」
名前はどうでもいいよね。
僕はグールだよ。
「……は?」呆気に取られてもうた。
「だから、グールなんだってば」にこりと笑った、男。
「グールって、人を食うっちゅうアレか?」
「そう、そのとおり」
「そのグールさんがなんの用や? っちゅうか、ずっとつけてくれてたんか?」
そうだよ――と、男は答え。
最近はずっとそうって答えて。
「いっさいきみは気づかなかったね」
「オレは気配に敏感なつもりや。おまえの尾行がうまかったんやろう」
「いきなりおまえ呼ばわりかい?」
「気色悪いやっちゃからな」
で、グールさんがなんの用や?
オレはそないに訊いた。
「僕はヒトを食らうことで力を得てきた。何人も食べてきた。警察は顔も姿もわからないまま、僕を指名手配した」
「顔も姿もわからないまま?」
「だって、ヘマなんてしないから」
オレは「ふぅん」って鼻ぁ鳴らしてから、「も一度訊くぞ。おまえはオレになんの用なんや?」と答えを求めた。
「イレギュラーの血肉をむさぼれば、あるいは能力が劇的に向上するんじゃないか、ってね」
「なるほど。オレが真っ白やからってわけや」
オレは「かかってこい」って顎しゃくってみせた。
「逃げないの?」
「逃げたところで、おまえは簡単に追いついてくるやろ? しかしホンマにグールさんなんかね。ブラフかもっておもてるぞ」
「こんなに人肉を食べたいんだ。そうであるに決まっている」
「おまえに噛みつかれたら、オレもグールになってまうんか?」
「その事例はないよ」
「せやったらやっぱ、おまえは単なるカニバリズムの権化や思うけど?」
グールのほうが、カッコいいよね?
不敵に笑み、そう言うと、アスファルトの地面を蹴り、グール殿は突っ込んできた。
乱暴に振るわれる左右の拳をすんでのところでかわす。
かわせたけどちょいすばしっこすぎる点、ホンマに人外なんかもしれへんな。
やっぱりやるね。
でも、今度はもっと速いよ。
グール殿が組みついてきた。
両腕を拘束されつつ、抱き締められたような格好。
おいおいおい、やめてくれや。
そう懇願しようとした瞬間、左の肩――しかも首筋に近いところに噛みつかれた。
ぎゃああああっ!!
弱っちぃ奴ならそないなふうに痛がったんかもしれへんな。
オレは頭突きかまして、拘束から逃れ、離れた。
確かに左肩を食われた、削がれるように。
メッチャ痛い、最悪や。
とっとととんずらこきたい。
せやけど相手はバケモノみたいに速いんやから、それも無理やろう。
そのときやった。
個人商店の居酒屋から、知ってる人物が現れた。
朝から晩まで酒飲んでやる、ある程度、顔見知りの、すっかり頭髪の寂しいおっちゃんや。
ナイスタイミング。
オレは「おっちゃーん!」って声かけた。
赤ら顔のおっちゃんはこっち向いて、「おーう、イクミぃ!」って応えてくれた。
「高校生が暗い時間に外出とは感心せんぞぉ」
とか言われた。
「どうするんや、グール殿」オレは訊く。「これで目撃者ができたぞ。それとも、あのおっちゃんを殺してからオレを殺すかぁ?」
グール殿は顎に右手をやり、幾分考えるような素振りをみせたのち、「いや、やめておくよ」と退く旨を言った。「ほんとうに、目立ちたくはないんだよ」ということらしい。
グール殿は「またね」言うと身ぃ翻してすたすた雑色駅のほうに向かった。
「ふぃぃぃぃ」オレの口からは安堵の言葉が漏れ出て、ぺちゃんと座るとなおいっそう、命拾いした気分になった。
すでに酔っぱらいらい酔っ払いのおっちゃんが近付いてきて、オレのことを見下ろした。
「おいおい、ほんとうにどうしたんだ、イクミ、って、えっ?! なんだその肩は」
肉持っていかれた左肩のことを指してやろう。
大した出血なんや。
「じ、じっとしてろ。救急車、呼んでやるから」
「いんや、だいじょうぶ」オレは立ち上がった。「ホンマ、大したことないさかい」
「でも――」
「ありがとうな、おっちゃん」
オレはおっちゃんに抱きついて、両手でぽんぽんと背中ぁ叩いた。
*****
翌日の、生徒会の活動?
とにかくオレは、生徒会室におった。
アキラっちとは今日も離れ離れ。
オレはそないなこと気にせぇへんけど、弁当屋の看板娘のアキラっちもそないなふうにおもてくれてるわけやから、オレらはやっぱツーカーで、きちんと愛し合えてるんやろう。
ブラウンの髪にめっちゃ綺麗なグリーンアイ――やっぱどこぞとどこぞとのハーフなんやろう生徒会長の蝶野ミキさんは「最近、結構、ウチの活動に顔出してくれるよね」と嬉しそうに言うた。時間が空いてるさかいそうしてるっちゅうのは嘘やない。
オレは会長と向かい合う格好で椅子に腰掛けてる。
「活動や言いますけど、特にやることなんてないなぁって感じてます」
「良いのだよ。きみはマスコットみたいなもんなんだから」
「マスコットですか?」
「アルビノは貴重です」
「嬉しくない理由です」
「そうおっしゃらずに」って、会長は微笑んだ。
「ところでだ、犀川」とか声かけてきたんは、さっきから腕組みしたまま会長の左隣に立ってる獅子堂ネモちゃんや。
ゴツい彼女は今日も今日とて筋骨隆々、ケンカしても絶対勝てへん最強の女のコや。
「その左肩のケガはどうした? かなり深手だと見えるが?」
「そうそう、私も気になってた」とは会長の言葉。
「いや、大したことはないんやよ」
「深手だろうと言った」
「だいじょうぶやってば」
強がったんかもしれへん。
だってじくじく痛むから。
「何があったか教えてくれない?」とは会長の言葉。
「ただのケンカです」とオレは答え。
「ケンカのことはよくわからないけど、肩に傷を負うなんて想像がつかない」
「私もそう思う」最強ネモちゃんが同意した。
二人とも、観察眼と評価の仕方が優れてるみたいや。
かくかくしかじか、オレはホントのところを話したった。
現実離れしてることやし、奴さんは界隈にいるらしいんや、せやさかい、あるいは不安に陥れてまうかとも考えたんやけど。
二人はべつに脅威を感じたようなところはのうて、ただ思考にふけるようなところをみせた。
「グールねぇ」そんなのいるのかなぁと会長。「でも相手はそう謳ったわけだし、実際、噛みついたとなるとなぁ」――。
「ヒトが想像しうるものは、実際に存在してもおかしくないものだ」ネモちゃんの言葉には、なにやら説得力を感じてまう。
どうやら狙われてるみたいなんや。
オレはこれまた正直に打ち明け――。
「理由でもあるのか?」とはネモちゃん。
「珍しいものを食べれば、もっとパワーアップできるやろう、ってさ」
「それは一概に錯覚だとは言えないな」
「ネモちゃんは伝説みたいなん、信じるん?」
「一般論だよ。私はそう考える」
どうしたらええかな?
オレはそないに訪ねた。
「どうせまた狙ってくる」
「せやさかいネモちゃん、そうやからこそ、オレはどうがんばればええんかな、って」
「がんばる必要はない」
「っちゅうと?」
「私を連れて歩け。必ず駆逐してやる」
さすがのオレの、目ぇ丸くしてしもた。
「いや、それはお断りや。オレのせいでネモちゃんのこと、危険にさらすわけにはいかへんよ」
「だったらどうして事実を明かしたんだ?」
「明かしただけや。他意はないんやって」
「だが、私は考えを曲げやしない。一度決めたことは、やりきるたちなんだよ」
「本気?」
「冗談は嫌いだ」
ネモちゃんなら大丈夫だと思う。
生徒会長は付け加えるようにそう言い――。
「どうしても来るん?」
「じつは最近、獲物に飢えていてな」
「それはそっち都合やーん」
「ついていくぞ、私は」
「わこたよ。もはや語るまい」
オレの口からは深々とした吐息が漏れた。
*****
放課後。
オレは目的地もなくネモちゃんと歩いてる。
多くないんやけど、すれ違うニンゲンはみんながみんな、ネモちゃんをチラ見しやる。
他意なく言う、ネモちゃんは惚れ惚れする筋骨隆々の身体の持ち主や、そりゃ、目を向けたくもなるっちゅうもんや。
路地に入って、長いまっすぐ道をゆく。
「おまえの家はこっちなのか?」とネモちゃん。
「いや、家はもう過ぎた」と答えた。
「だったら、どこに向かっているんだ?」
「決まってる。アキラっちんとこや」
「ラブラブだと?」
オレはわろた。
「ラブラブとか、ネモちゃんの口から聞けるなんてな」
ややあってから――。
商店街へと続く直線を進みながら――。
「ああ、そろそろ現れたようだ」
オレはまるで気配を感じへんさかい、「そうなん?」って訊ねた。
「存在を消すことに長けている。やり手のようだ」
「勝てる?」
「勝つさ」
ネモちゃんが振り返った、オレも身を翻した。
先日の黒ずくめの男が七、八メートル先に立ってたんや。
「今日は助っ人がいるようだね」嘲笑うように、グール殿。
「オレが引導、渡してやりたかったんやけどな」
「肩が痛むとでも?」
「ま、そういうことにしとこうやないか」
来い。
そう告げると、ネモちゃんは顎をしゃくってみせ。
「短いスカート、死ぬほど似合ってないよ」グール殿はネモちゃんをそう評価し。「身体ががっちりすぎるんだ」
「そんなことは百も承知だ」と、ネモちゃんはまるで気にする素振りを見せない。
グール殿は地を蹴ると右の拳――オレ目掛けて振るってきた。
あいだに割って入って、それを片手で――右手で軽々と止めたのは何を隠そう、ネモちゃんやった。
相当自信がある一撃やったんやろう。
グール殿は驚いたように目を見開いた。
「軽いパンチだな」ネモちゃんは嘯いた。
それから今度は自らが左の拳を引き絞り、アッパーカット、確実に五メートルは、グール殿は宙に舞った。
一撃でのしたわけで、せやったら恐ろしく感じておかしくないんやけど、オレにはネモちゃんが輝いて見えた。
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放課後、翌日の生徒会室。
今日もオレは生徒会長と向かい合って座り、会長の左隣にはネモちゃんが立ってる。
「さすがネモちゃんの一撃だねぇ」感慨深そうに言うた会長。「で、グールさんはどうなったの?」
「警察に捕まえてもらいました」オレは答えた。
「いずれ連続殺人犯だってバレるんだろうから、死刑?」
「未成年みたいやし、どうでしょうかね」
ホント、ネモちゃんはお手柄だね。
そりゃそうでしょうよ、会長殿。
「にしても、ほんとうにイクミくんはグールにならないね」
「まさかとも思いますからね。あるいは遅効性のウイルスなんかもしれませんけど」
「アキラちゃんは? なんて?」
「自業自得や言われました。意味わからへん」
「でも、実際は心配してるに決まってるよ?」
「それはわかってるさかい、オレはヘラヘラしてるんです」
ネモちゃん、おおきにな?
オレは彼女に話振った。
「かまわない。軟弱で貧弱な男ばかりだということは知っているからな」
「オレもその限りなんかなぁ」
「そうでもないだろうと思ったから、手を貸してやった」
「ホンマ、おおきにな?」
「かまわんと言った」
つくづく男前すぎる。
鬼のような身体してやるけど、惚れてまうやろーっ!