沼確バイン!!~エグいかわいいボーイッシュJKをメッチャやさしく攻略してみる~ 作:XI_01
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なおも十月のガッコ。
アキラっちにさっちんにみゆきち、それにオレの四人で机を囲んでみんなで焼きそばパンをぱくぱく食べてる謎めいた昼休み。
その最中に、前髪――赤いメッシュのさっちんが、「ちょっと聞きなよ、イクミくん」とか改まった口調で声かけてきた。
「なんぞや、さっちん」
「アカウント、譲るぞよ」
「アカウント?」
いきなりアカウント言われても、当然、なんのこっちゃわからへん。
せやさかい、も一度「アカウント?」って問うたわけや。
「ミセスって素敵だよね、大森くん、マジイケイケ」
「えっと、アカウントの話やなかったっけ?」
「ああ、そう。うん。そうなんだ」
「どういうことなん?」
さっちんいわく、ソシャゲのアカウントを譲ってやろう――いう話らしい。
ってか、話聞いてくうちに、ソシャゲってか、具体的にはMMORPGらしいことが知れた。
百万くらい課金したんやっていう。
百万!
どこからそれだけ資金を調達したんやって話やけど、さっちんはたぶん、金を集める錬金術の心得があるんやろう。
スケベな話でもギルティな話でもないんや、さっちんは絶対、集金の術を熟知してる――それくらい有能な女のコなんや。
にしてもMMORPG……なんちゅうんや? リアルタイムに一つの世界に集まっていろいろするってんか?
まあそないな感じのゲームなんやろう。
オレはアカウント、譲ってもらうことにした。十万円っちゅうあたりにリアルさを感じて、せやさかい、さっちんに対しては「がめついなぁ」おもた次第やけど、さっちんはとにかく面白い奴やさかい、そのゲームも「結構面白いに違いない」っておもたわけや。
「商談成立ぅ」
そない言うと、さっちんは右手で逆さまピースをして、ニッてわろた。
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正直、面白くなかったんだぞ。
俺んちでちゃぶ台挟んで茶ぁしてる最中、アキラっちはいきなりそないなこと言うて。
「どういうこっちゃ?」
「だ、だっておまえ、さっちんとめちゃくちゃ仲良さそうじゃんか」
「大人の関係なんやぞ」
「おおおっ、大人の関係?!」
「まあ気にしなや」
「き、気にするぞ! めちゃめちゃ気にするぞ!!」
オレは尻滑らせてアキラっちの隣に至り、それからアキラっちのことをぎゅっと抱き締めた。
アキラっちは照れくさそうに「だ、騙されないぞ。おまえは抱き締めれば解決だと思ってるんだっ」とか言うた。
「オレってそんなに軽薄?」
「そうは言わないけど……」
「愛してる」
「ばっ、馬鹿ぁっ! 安易に言うなぁっ!!」
「ところでさ、アキラっちよ」
「う、うん、なんだ?」
オレがスパッと離れたら、アキラっちは幾分、不満そうな顔したんやけど。
「ほら、先達て、オレ、さっちんからゲームのアカウント、もろたやろ?」
「ああ、うん、だからそれは知ってるんだってば」
「早速、ログインしてみたんや」
「なんかあったのか?」
いや、今んとこ、なんもないんやけどな。
「だったらなんだっていうんだ?」
「中途半端なカンジでリアルに干渉してくるらしいんや」
「は?」
「ようない。アレはようないぞ」
「だから、それじゃあよくわからないんだぞ」
あんまり感心できた仕組みやないってこっちゃ。
「だ・か・ら、それはどういう――」
「調べたんや」
「調べた? 何をだ?」
「ゲームについて。そったらわかった。変則的な、一種のデスゲームなんや」
「おっ、おおぅ」アキラっちは驚いたふうに身ぃ引いた。「デスゲーム、だとぅ?」
オレは「ああ、そうなんや」って答えた。
「ストーリー・ビギニングっちゅうMMORPGなんやけど、それにのめりこんでたらしいユーザーがけっこう死んでるらしいんやわ、自殺な」
「なななっ、なんて物騒な話なんだっ」
「あたりまえの話、そのへん解決したいとかはおもてへんねんけど、刺激に飢えてるオレ――一人のDKとしては、首、突っ込んでみたいなっておもてるわけで」
「やややっ、やめろよ――って、あたしが言うと思うか?」
「おっ、言わへんのん?」
「あたしが何を言ったところでおまえがやめるわけがないじゃんか」
まあ、そのとおり。
アキラっちはいよいよ、オレんこと、わかってきたらしい。
「自殺かぁ」アキラっちはぽかーんと、まあそりゃそうやろう。一般的な評価としてヒトの生き死にに過敏すぎるJKなんているはずがない。
「で、だ、おまえはどういうかたちで関わろうっていうんだ?」
「せやさかい、個人的な興味として、そのへんなんでデスゲーム、みんな死んでまうんかな、って」
「どうあれ危険な考え方だと思うぞ」
「まあ、そうやなくても、課金必須のゲームにトッププレイヤーとして関われるわけや。少なからずの悦は得られるやろう、ってな」
「そういう線を貫こうっていうんだったら、あたしも混ぜろよ」
「参加したいん」
「そう言ってる」
まあ、ええわ。
それくらい許容したろうやないか。
恋人と一緒になってゲームやろうなんてのはオタクの極みなんやろうけど。
ちゅうか、何かの折にはオレが守ってやればええ、それくらいの甲斐性はある。
「決まりだ。ということで、まずはあたしにパソコンをあつらえてくれ」
「あつらえなあかんのん?」
「そうだ、あつらえてくれ」
「予算は?」
「うーん……」
「予算は?」
「わかった。15万円だ」
おぉぅ。
JKにしては破格、羽振りのええこっちゃ。
「任せてもろてええのん?」
「いいよ。でも、中途半端なのは寄越すなよ」
「信用せぇってば」
オレは右手伸ばしてアキラっちの頭ぁ撫でた。
アキラっちはほっぺ赤らめて、「えへへ」ってわろた。
えへへえへへって、めっちゃ恥ずかしそうにわろた。
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スゲースゲー、おまえスゴいよ!
今日もオレんちのちゃぶ台。
オレとアキラっちはその上にそれぞれノートパソコンをのせてそれを操作してる。
何がスゴいって、それはアキラっちいわく、「このパソコンスゲー! めっちゃサクサク動く!!」っちゅうことらしい。
「十五万ももらえたら、速いん作れるってば」
「そうだ。作ってくれたんだろ? フツウのニンゲンはそのへん、わからないぞ?」
「それは言いすぎや思うけど」
「家電量販店で売ってるヤツは高いだけで馬鹿だったんだな」
嘲るように、アキラっちはわろた。
酷い言い方やけど、まあそのへん、間違ってもいーへんわけで。
とりあえず、喜んでもらえたんは良かった。
「で、『ストーリー・ビギニング』だったか? インストールすればいいのか?」
「おう。とっととしろや」
「偉そうだぞ」不満を漏らしながらも、アキラっちはうきうき、ご機嫌な様子。
そのうち、ゲーム、開きやったらしい。
当然、ノービス、無職、ろくに戦える立場やない。
オレは「初心者の街」にアキラっちんこと、迎えに行ったった。
さっちんがオレに寄越してくれたキャラの職業は『アサシンクロス』やった、二次職のさらに上、上位二次職。
可愛らしい三等身のフォルムながらも暗殺者然としためちゃカッコええ。見栄えのする外見やからやろう、向かいでノートPCに向き合ってるアキラっちは「うひゃぁっ!」って素っ頓狂な声上げやった。
「うあああぁ?! 見ただけでわかるぞ! さっちんはヘヴィーユーザーだったんだな!!」
「そうらしいわ。ちょいつこてみたけど、めっちゃ強いぞ。パーティーでもペア狩りでもほとんど無敵、最強や」
「さっちんおそるべし、だな」
「そりゃ飽きるわって話」言うて、オレはあっはっはってわろた。「あんまりやることないもん」
オレはいわゆる「壁」になったって、アキラっちのキャラの育成に一役も二役も買ったった。
アキラっちのキャラ(魔法使い職)はみるみるうちに強くなって、オレが「壁」やってるうちに強い敵も「ファイアーボルト」で焼けるまでに至った。
「おぉ、びっくりだ。楽しいじゃんか」
「まあ、楽しいんやけどなぁ」
「なんだ? なんか不満でもあるのか?」
「いや、せやから、さっちんが育てたこのキャラ、強すぎるんやってば」
事実、そういうわけでして。
「ホント、マジでイカれてる気はするよ。あたしにだって、それくらいはわかる」
「MMORPGなんてオワコンなくせに、このゲームはさらに作り込みが甘いんやわ。まあ、せやさかい、面白味を感じる奴もおるんかもな」
「バフォメットとか、ソロで狩れるのか?」
「おぉバフォメット、学んだな?」
「狩れるのか?」
「狩れる、余裕」
「うげげげげっ」
どないする?
オレはそないに訊いた。
「どないするとは?」
「このゲーム、続けるかって訊いてるんや」
「あたしはいいぞ。それなりに楽しそうだからな」
「わこた。アキラっちがそない言うなら続けたろう」
「た、ただし、条件があるんだぞ」
「条件?」
あたしと結婚しろ!!
「おお、ついにその気になってくれたか。ほなら、明日にでも大田区役所に届を――」
「ちち、違うっ。ゲームの中の話だっ!」
それやと、なんか残念。
ちゅうかまあアキラっちは逃げへんねんやし、せやったらまあええか。
にしても――。
「ゲームん中で結婚できるんは知ってんのな」
「そ、それくらいは知ってるぞ」
「結婚、すんぞ」
アキラっちは顔を真っ赤にした。
「すっ、するぞ。おまえに言われると、弱いんだ……」
「ん?」
「おまえに言われると弱いんだ!!」
一生懸命な感じで言うて、アキラっちはゲームに戻った。
オレもゲームに戻った。
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それからまあ翌々日か?
それくらいが経って。
ケータイにいきなり電話がかかってきた。
一回目は無視したんやけど二回目があって、知らん番号やったんやけど、オレは怖いもん知らずやさかい「もしもし」って応じたんや。
そったらや。
『犀川イクミくん? 電話に出てもらえて感謝する。私はクズノハ・アンナ。刑事だ』
刑事?
クズノハ・アンナ?
当然、知った人物やない。
刑事やなんて嘘に違いないっておもた、心当たりがないからや。
オレは眉を寄せながら、慇懃無礼もなんやから、「おたく、誰なんですか?」とだけ正直に訊いた。
『生意気な口を利くガキだね。虫唾を覚えるよ』
偉そうな口調。
せやけど知らんがなー。
「当然の疑問を口にします」
『言ってごらんよ、クソガキ』
「なんでオレの電番、知ってるんです?」
『きみの兄上から伺った』
兄上?
シャル兄?
奴さんはなんでも面白がるとこがあるけど、にしたってなぁ。
なんらかあっての行きずりの関係とか?
まあ、どうやかてええわな。
『イクミくん、とにかく会えないか?』
「なんでそない言うんですか?」
『おねえさんとしては美しいきみに会ってみたいなということで』
「オレは美しいかもですけど、あなたはおばさんでしょう?」
『かわいくないね、つくづく』
「お会いしますよ。やぶさかやない」
だったら言うことを聞きな。
JR蒲田駅、スタバに出向けいう話やった。
「せやけどホンマになんの話なんですか?」
『言っただろう? 私は刑事だって』
いきなり口調が著しくきつくなった。
クズノハ・アンナ氏の本音というか本質的なところが窺えて、まあまあ喜ばしいって言えた。
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くだんのスタバぁ。
オレは今、クズノハ・アンナ刑事と向き合ってる、フラペチーノ的なもんをすすりながら。
しゃべってるうちに「クズノハ」は「葛葉」やってことが知れた。
アンナはアンナでたぶんカタカナやろう、識別子は大事やけど、まあそのへん、さほど気にするようなことでもない。
葛葉刑事はそれなりに色っぽい人物やった。
艶やかな黒のロングヘアに紫色の瞳、細身の彼女は二十代の後半くらいやろう、問答無用で抱いてみたいって考えるオレはヘンタイなんやろうか。
まあ、ええわ。
話を進めようやないか。
「とあるMMORPG、『ストーリー・ビギニング』の話だよ」
それは聞いた。
「関わってるプレーヤーが次々に自殺してる」
それもまあ、そうらしいな。
「キャラクターの特性から、上位プレーヤーばかりだということがわかっている」
ふぅん。
「きみは、いや、おまえはさっちんなんだろう?」
値踏みするような視線、送ってきやる。
「そうやとして、さっちんの何が問題なんですか?」オレは二杯目――チャイティーをちゅーすすった。「自殺でしたね。察するに、さっちんが奴さんらに対して、なんやらなにやらで間接的にそうするようにそそのかしたとでも?」
「おや。直接的にとは考えないのかね?」
「ええ。そんなはず、ありませんからね。一つ進言です、葛葉刑事、もうほっとけば?」
「ナマほざくな」
「ほざきたくもなるんですよ」
難しい顔して睨みつけてくれてた葛葉刑事はふぅと息ぃ吐くと、観念したように肩ぁ落として。
「小説、それにべライトノベルなんかによくあるだろう? フルダイブ型のデスゲームだ。なんらかの目的を達成しないとログアウトできないという」
「ありますね。せやけど実際問題、今の世の中にそないなもんがあるするはずがない。絵空事や」
「むしろ、そういうところに想像力を働かせることはサムい」
「同感ですよ、まるっきり。世の中、気色の悪いクリエイターが少なくないんや」
デスゲームじゃないんだよ、そんなわけがないんだ。
――と、葛葉刑事は言い。
「『ストーリー・ビギニング』だったか」
「ええ、そうです。『ストーリー・ビギニングです』
「だったらどうして、当該ゲームの参加者が次々に自殺なんてものを遂げるのか」
「オレにはなんとなくわかりますけど?」
「言ってみろ、犀川イクミ」
「どないなカテゴリーにおいてもゲームってのは中毒性が高いでしょう?」
――で?
そう問われた。
「レベルの高いキャラクターにはそれなりに金がつぎ込まれてる。せやけど、たとえば逆立ちしたってさっちんには勝てへん」
「だから絶望したとでも?」
「浅いですかね?」
「そのとおりだ。浅薄すぎる理由だ」
せやけどそれくらいしか、オレには判断がつきません。
せやさかい、たったそれだけやとも思うんです。
「引きこもりがちのニンゲンが人生を賭して参加してるんやって思うんです。それくらいの人気コンテンツなんでしょう?」
「その点は否定はしないが……。当該ゲームでそれなりの地位が得られないと我慢できない、と?」
「そういう考え方もアリや思う言うてます。テメェの居場所ってのは大事やろって思いますね。特に自尊心なんかが関わってくると、心のいろいろがこじれてしまってもおかしくない」
二つ三つと小さく頷いた葛葉刑事。
「仮想世界であっても、そこで満足の行く結果が得られないと死にたくなるというんだな?」
「オレはそう思いますけどね」
「だが、だからそれじゃあ弱い」
「しつこいなぁ、葛葉刑事は」
「一度食らいついたら離さない。私のあだ名はブラックドッグだ」
うーん。
なんちゅうかその、「ストーリー・ビギニング」がおもろうてユーザー数も多いんは事実でなぁ。
「ヒトがどういう立場に立つか、それは自由や思いますけどね」
「ゲームにおいても、そうだと?」
「ええ。葛葉さんが『たかが』と謳うゲームでもそうです」
「ゲームなんかで死を選ぶなんておかしいと考える。しかし、そう考える私がおかしいと言うんだな?」
「二回も言わせんといてくださいよ。事象、あるいは事実がそれを証明している――かもしれへんって言うてます。違いますかぁ?」
「納得しがたい話だし、説得力に欠ける言い方だが、論理的な物言いについては合点がゆかんわけでもないな」
葛葉刑事は顎に右手をやると、そのうち立ち上がってレジのほうへと向かい。
――素手でスコーン持って帰ってきた。
スコーンを一口齧ると、「否定はしないさ」――。
「というか、否定はできないな。なんだかそんなふうに思えてきた」
正直、強いキャラ動かしてると、それなりに気分がええもんなんですよ。
それができへんからって自殺するんかって、そのへんはやっぱ疑問符が付きますけどね。
「ほんとうに俗っぽくまた子どもっぽい理屈だな」
オレは自分でもそうやってわかるくらい穏やかにわろて。
「たまたま『ストーリー・ビギニング』にハマってるって共通項があるだけで、実際のところはわからへん――っちゅうのが落としどころでは?」
「そういうこと、なんだろうな」
で、犀川イクミ、おまえはまだゲームを続けるのか?
「もうやめよう思います」
「ほぅ。潔いことだ」
「ええ、潔い旨はめっちゃ自覚してます。だってRMT的なことは好まれることやないんかもしれませんけど、それでも100万出してくれる言いますから」
「大した商売だな」
「そういうことになりますね」
つくづくクソガキだなぁ、おまえは。
そないなふうに、葛葉刑事は悪態ついてくれて。
「『ストーリー・ビギニング』の本家は中国なんですよ。知ってました?」
「それくらいはな。だからといって、だったらなんだ?」
「国と国との関係がこじれたら、途端にサービス、止められるんやないかな、って」
「それはどうかね。市場的に金儲けができるようなら閉じはせんと思うがね」
「それも一興、ってね」
「わかったよ、犀川イクミ、おまえはやっぱり嫌な奴だ」
もう話すことなんて、あらへんな。
そう考えて、オレは席立った。
「とかくゲームは恐ろしい」と、葛葉刑事。
「すべては参加する側の問題ですよ」と、オレは言い。
「何か困るようなことがあったら犀川イクミ、私はおまえに相談するかもしれない。私はおまえを買ってやることにした」
「それはかまいませんけど、それこそ金銭、発生しますよ?」
「おや、そうなのか?」
「コスパとペイの問題です」
ほななぁ、葛葉アンナさん。
オレは放り投げるように言うて、場を後にした。
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オレの助けもあってアキラっちは無事かつ早々に、ろくにデスペナ食らうこともなく、上位二次職のハイウィザードに成り上がったわけやけど、それから大した時間も経たへんうちに、「飽きたぁ」言うて「ストーリー・ビギニング」を放り出した。
「なんでなん?」
「たとえばおまえと結婚したわけだ。でも、それはゲームの中での話でしかないわけだ。触ることもできないんだし、リアルに言葉を交わすこともできない。論理でしかないゲームに魅力なんてないよ」
「ボイチャがあるぞ、ボイチャが」
「屁理屈言うな。っていうかやってみたけど、めちゃカッコいいはずのロードナイトのにいさんがめちゃくちゃピザボで萎えたぞ」
ピザボ。
いわゆる、デブ然としたくぐもった声。
まあそれが気色悪いっちゅうのはわからん話でもないんやけど。
「でも、快適な環境のパソコンが得られたのは良かったぞ。おまえは賢いんだ。あたしが知らないことをたくさん知ってるんだ」
「裏を返せば、アキラっちがアホなんやとも言える」
「な、なんだとぅっ」
オレは腰上げるとアキラっちのほうに回り込んで、右手を差し出した。
「晩飯の時間や。何、食べたい?」
アキラっちは首傾げてみせやるとニコっとわろて、「今日は串カツの気分なんだっ」――。
JRの高架下にうまい店がある。
「今日日、ベジファーストなんて流行らんしな」
「そうだぞ。痩せたいなら運動しろって話だ」
家出て夜道に出て、しっかり手ぇ繋いで、他愛もないことで笑い合いながら前に進む。